留置所は不気味な程に静まり返っていた。閉じ込められた<奴ら>が何体かいたが、どうでも良かった。目的の物はここには無い。駐車場の方へ向かって行く。だが、使える車は一台も無かった。まだ手付かずで残っていたのは、巨大な青と白のトラックだ。物陰に身を潜めて様子を見ると、トラックの運転席が開き、私服姿の男が降りて来た。あいつは・・・・!
「しぶといな、片桐。」
「滝沢!お前生きてたのか?!」
「まあな。その台詞、そっくり返すぜ。そのしょぼい装備で良く生き残れたもんだ。所で、そのトラック、動くのか?」
「幸いな。鍵もあるし。あれ?後ろにいるポン刀引っ下げたビューティフォーなお嬢ちゃんは?」
「チームの一人だ。残りは全員上で待ってる。」
「チーム?」
俺はとりあえず今まで起こった出来事をかいつまんで話した。冴子も自己紹介をする。
「お前も来るか?こんな戦車みたいなトラックがあれば、移動が楽になる。<奴ら>をある程度は強行突破で轢き殺せるし。」
まさかと言う所で俺が出会ったのは片桐竜二、床主東署警備部門所属のSPだ。上はタンクトップにベスト、ヒップホルスターにシグP230、ショルダーホルスターにはH&K P2000、そして右手にはコルト・ガバメントらしき銃が握られている。左腰には幅が広いマチェットみたいな物がシースに入れてある。言ってしまえばランボーのアジアンバージョンだ。見た目と身長の所為でまだ幼く見えがちだが、片桐は俺と年齢は同じで銃の腕前はハンドガンだけなら俺よりも上だ。何より反射神経とクイックドローの速さが半端無い。要人警護中に、誰よりも速く武装した不審者三人に反応して一人は脳天、残り二人は腹をぶち抜いた。あれを見た時久々にすげえと思ったな。他にもとある財閥の会長を狙って来た犯罪集団を近年稀に見るニューナンブとシグの2丁拳銃で皆殺しにしたと聞いた。
「良いぜ。乗りな。電力がダウンした筈なのに何故かこのトラックだけは動くらしい。中もすげーんだ。かなり広いぞ?」
中に乗り込むと、片桐はハンドルを切ってトラックを巧みに操り、地上階に続く坂を登って行くと、正面の出入り口前に停まった。
「孝、静香!」
「滝沢さん!どうしたんですか、これ?!警察車両じゃないスか!!」
「説明は後でする。静香、トレーラーの中にハンヴィーをバックで入れろ。バイクは俺が横付けして入れる。」
作業を終わらせると、トラックは走り出した。とりあえず自己紹介やら片桐と俺の関係を簡単に話してやると、やっと安心してくれた。あさみは過去に良く片桐にからかわれていたらしく、コータの後ろに隠れた。
「にしても、凄いわね、この中。何なの?」
沙耶がいぶかし気に車内を見て回る。ラックには銃弾の紙箱やガードチェイサーに積んである武器の銃弾などが入っている。コータは目を輝かせて辺りを見回していた。あさみもガキみたいにはしゃぎ始めた。
「警察車両には間違い無いが、多分これはSATやSITとはまた違う特殊班の車両だろう。見た所防弾仕様だし、EMPの処置もしてある。外のマークも警察の物だが、SAULとしか書かれていない。」
「大方上層部が作ったんだろうよ。あのバイクの方も納入中に手違いでどっか行っちまったらしいが、まさかお前が持ってたとはな。」
「偶然だよ、偶然。」
「さてと、僕達がやる事で残っているのは二つ。一つは麗の家に向かって、麗のお母さんがいるかどうか調べるのと、明後日までに新床第三小学校に向かう事だ。片桐さん、良いですか?」
地図を見ながら運転をしている片桐に孝が訪ねた。
「んー、まあな。親は俺がガキの頃に死んじまったし、俺にゃ嫁もガキもいねえ。ただ、問題があるとするならこのトラックだ。転がす自信はあるが、民家の路地をこの小回りが利かないトラックが上手い事移動出来るとは思えないんだ。コイツは横幅があるから横転の可能性は低いが、急カーブとかはほぼ間違い無くアウトになる。後孝、俺の事は名前で読んでくれて構わない。」
「はあ・・・・まあともかく、ここら辺の道筋は僕や麗、後滝沢さんが知ってますから大丈夫な筈です。」
「そっか。お前らは会って間も無いが、滝沢が信頼してるなら俺も信頼してやるよ。暫く寝てな。特にあさみ、やっと男見つけたんだから、添い寝位してやりな?」
「ちょちょちょ、なな何言ってるんですか片桐しゃん!?あいた!?」
「クハハハハハ!盛大に舌噛みやがったな。やっぱお前弄くるの面しれーわ。なあ、滝沢?」
爆笑しながら運転を続ける片桐に吊られて最初にコータ、次に孝、数分後には俺を含めた全員が笑い始めた。こんな地獄の中で、僅かでも緊張を解せる事が分かると、皆が安心し始めた。笑いが収まってから、運転している片桐以外がそれぞれ目を閉じて体力補給の為にしばしの休息を取った。しばらくしてから殆ど全員が思い思いの体勢で眠り始めた。
「ふぅ〜〜・・・・」
俺はと言うと、静香と一緒に近くの酒屋からかっぱらったウィスキーの瓶を傾けていた。当然葉巻も吸ってる(俺だけだが)。
「あら、毒島さん。眠れないの?」
「はい・・・・」
「お前なあ、言っただろ?汚れた者同士、俺が受け入れてやるって。」
俺は着ていた革ジャケットを脱いで頭に乗っけていたサングラスを外すと、冴子を差し招いた。今の俺はカーゴパンツとタンクトップだけだ。静香はと言うと、XXLサイズのシャツと動き易いホットパンツで肉付きの良い太腿を惜しげも無く見せていた。
「それを言うなら俺達、じゃないかしら?」
アルコールが回り始めた静香は意外とスイッチが入ってリビドー全開になる。俺のタンクトップの中に彼女の手が滑り込んで来た。火照った体が冷房で冷えた俺の体を温める感触が心地良い。最初に会った頃は、傭兵時代の悪夢にうなされて何度こうしてもらった事か。本当に、色んな意味で静香は良い女だ。
「こー言うスキンシップはね、自分と相手に精神的な安心感を与えてくれるのよ?人間て一人じゃ生きては行けないの。支えが必要なのよ。私には皆がいるし、リカもまだどこかで必ず生きてる。だから、私は生きて行ける。でも、毒島さんにはそれが無い。」
「だから、俺達が与えてやる。来いよ。」
まあ、コイツの場合は母性の象徴とも言える胸がデカ過ぎるってのがあるんだがな。それは兎も角。俺はナチュラルに彼女の細いウェストに腕を回して体を密着させた。それを見て冴子は顔が赤くなる。彼女が答える前に、俺は静香と一緒に彼女の腰回りに手を伸ばして引き込んだ。俺達の間に倒れ込んだ彼女からは、静香とはまた違う甘い匂いがした。
「あ・・・・・・」
「自分を受け入れられないなら、まずは俺を受け入れさせてやる。」
顎に手を添え、自分の方を向かせる。
「俺の目を見ろ。俺の瞳はお前よりも汚れているだろう?」
「はい・・・」
「だからお前が負い目を感じる事は無い。」
ゆっくりと、だが確実に彼女の唇を奪った。まあ、後々調子に乗り過ぎて後々沙耶がマジギレしたのはお約束って奴だ。
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とある民間軍事会社に勤めていた傭兵は、僅か二十六でその生涯に幕を閉じたが、次に目を開けた時には、赤ん坊として生まれ変わっていた!
チートな特撮の武器も『神の介入』と言う事で出します。