No.636978

床主東署

i-pod男さん

とある民間軍事会社に勤めていた傭兵は、僅か二十六でその生涯に幕を閉じたが、次に目を開けた時には、赤ん坊として生まれ変わっていた!

チートな特撮の武器も『神の介入』と言う事で出します。

2013-11-15 07:16:13 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:604   閲覧ユーザー数:594

両手を振って血行を取り戻そうとしたが、相変わらず殆ど感触が無い。何度か力一杯拳を打ち合わせてようやく感触が少しだが戻って来た。バイクのハンドルに手をかけるが、ケルベロスを撃った所為で手が震えてアクセルが捻れない。あれは使い所の見極めが大事だな。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「ヒロ・・・・?お前、何で・・・・?」

 

コータに渡させたハンドガンとさすまたを持った田丸ヒロが俺の手をハンドルから外し、俺を後ろにズラして前に座った。

 

「あんたの連れと一緒に逃げて来て、刀持ったコがあんたが一人で戦ってるって・・・・銃声が止んだから見に来たんだが、噛まれちゃいねーみたいだから安心したぜ。どんだけダイハードなんだお前?」

 

バイクの操縦方法は心得ているのか、ハンヴィーの方にバイクが前進し始めた。思ったより体力を消耗したのか、タンデムシートから落ちない様にするのも一苦労だ。

 

「ほらよ、姉ちゃん。噛まれちゃいねえよ。かなりばててる様子だがな。」

 

孝と冴子が俺をハンヴィーの中に押し込み、孝がガードチェイサーに乗ってヘルメットを被った。

 

「次は・・・・どこに行くんだ?」

 

俺は乱れた呼吸を整えながら訪ねた。

 

「麗のお父さんを探しに行きます。ですから、今から僕達が目指すのは床主東署です。滝沢さんは少し眠ってて下さい。一人であの数の<奴ら>を相手にしたんですから・・・」

 

「着いたら起こしてくれ。バイク、壊すんじゃねーぞ。」

 

そう言って俺は目を閉じて、意識は薄れて行った。

 

 

 

 

どれ位の時間が経ったかは分からないが、俺が目を覚ました頃には空が段々と曇り始めていた。その内雨でも振るんだろうな。随分と柔らかい枕があったお陰で良く眠れ・・・・

 

待て、『枕』?そんな物を積んだ覚えは無いが・・・・

 

「ようやく目を覚ましましたね、滝沢さん。」

 

俺は上を見ると、冴子が俺を見下ろした。つまり俺は冴子の膝枕で恐らく鼾を盛大にかきながら眠っていたらしい。起き上がって口の端から垂れている涎を拭くと、背筋を伸ばした。

 

「ここは?」

 

「東署の駐車場です。皆疲れていたので仮眠を取っていました。ですが滝沢さんが中々目を覚まさないのでしばらく待っていたんです。」

 

「悪いな。で、今回の目的は何だっけ?武器調達だったか?」

 

「お父さんを探してるんです!」

 

起き抜けで思考がクリアーではない俺にジガジガしている麗が噛み付いた。

 

「だからと言っていつまでもこんな所に籠っているとは考え難いぞ。雨風は凌げても食料も水も無い。常識的に考えてここにいるとは思えない。」

 

「あの、自分もそう思います・・・・ここは武器はあってもその他に必要な物とかはあんまりないですし。」

 

あさみが俺の言葉に同調して恐る恐る手を挙げる。

 

「そんな事、行って見ないと分からないじゃない!」

 

「確かにな。だが俺はあくまで可能性の話をしている。落ち着け。」

 

俺は起き上がると、立てかけてあるモスバーグを取って中に弾が入っているのを確認した。両腿のホルスターのシグ、サイレンサーとM327、その予備弾もちゃんとある。

 

「あ、滝沢さん、このマシンピストルですけども・・・・」

 

「ああ?」

 

「弾切れになりました。」

 

孝が申し訳無さそうに引き金を何度か引いて空になった事をアピールする。どうやらここに来る途中で<奴ら>を殲滅する為に使いまくったらしい。まあその内弾切れになるとは予想していたがな。仕方無いか。

 

「冴子、お前にやるよ。コイツは剣にも変形出来る。使い慣れてる刀とは違うだろうが、いざその刀が折れたら使え。普通の物よりは丈夫だ。」

 

少なくともその筈だ。数百ともつかない数の<奴ら>を斬って来たこの反りの無い赤い刃は、罅所か刃毀れの兆しすら見せない。剣に変形させて冴子に渡す。ひゅっと振って感触を確かめる。

 

「重さも丁度良い・・・・」

 

「だろ?まあ、鞘が無いのが唯一の難点だが、銃の形に戻してこのホルスターで背面に収納しろ。俺よりも剣術に特化したお前が持っていた方が効果がある。さてと、この中は俺の庭だ。どこに何があるかも分かってる。それに、万一場所が変わってても現役の奴がいるからな。」

 

俺達は車から降りると、東署の駐車場を見回した。血にまみれた<奴ら>の死体、散乱した機動隊のポリカーボネート製の楯や制服の帽子、書類、ビラなどなど。だが、それ以外には人らしき人は見えない。ショットガンのベルトを肩に掛けると、シグを抜いてサイレンサーを装着した。ブラスチェックを行うと、セーフティーを外し、左手にマグナムを持つ。

 

「最悪の事態は覚悟してたけど、ここまで酷いとは・・・・・」

 

「覚悟してたって、どう言う事よ!?」

 

暗にここにいた奴ら全員が死んだと言う事を仄めかす孝に麗が逆上する。だが、自分の言葉が示していた事を思い返すと、下唇を噛んで何も言わない。

 

「何よ!?何で何も言わないの!?」

 

俺は振り向き様に麗の横っ面を張り飛ばした。

 

「落ち着け。あくまで可能性の話だ。充分あり得るだろう?」

 

「あのお〜・・・・」

 

「どうした?」

 

「ここにタイヤの跡が沢山あるんで、恐らく乗った人達の一部は無事かと思います。EMPの効果が現れなかった電子機器を積んでないタイプの車は。」

 

「そうね。恐らく私達がショッピングモールを出た後位にはもういなくなってるわ。でも中に誰かがいると言う可能性も捨て切れない。」

 

「中に入って確かめるしか無いな。この中なら武器や弾薬は補充出来るから、その後に麗の親父さんを見つける手掛かりを探そう。他に何かあるか?」

 

「リーダーならちょっとは自分で考える物よ?」

 

「作戦を立てられる優秀なスタッフがいてこそリーダーだろ?」

 

俺と沙耶を見やる孝に、俺は嘆息した。善くも悪くもコイツはリ—ダーに向いてるな。

 

「中岡さん、銃が置いてある場所って分かる?」

 

「ん〜〜と・・・・あさみは交通課であんまり銃を使う事は無いですから。でもあるとしたら拳銃保管庫です。」

 

沙耶に指名されたあさみは目をきつく閉じて記憶の中を漁りながら答えた。

 

「だが、保管庫は恐らくもう漁られてるだろう。そこは使えねえ。それにああ言う部屋は暗証番号で開くタイプの厳重なロックが掛かってる。今でもそうだろ、あさみ?」

 

「あ、はい。先輩に寄ると六桁の暗証番号を入力してから初めて開くって言ってました。」

 

「でも、もういーえむぴーとかの所為でもう使えないんじゃない?」

 

静香が口を添えた。そう考えるのが自然だろう。

 

「ああ。静香の言う通り恐らくもう使い物にならない。行くとしたら・・・・証拠品保管庫だ。だろ?」

 

「はい!そこなら色々と違法な物も置いてありますから!」

 

あさみの表情がぱっと明るくなった。

 

「そうだ!警察の支給品じゃないから仮に銃があるとしたらきっとそこにある筈です!」

 

コータもあさみの『違法な物』と言う言葉に反応して興奮気味に捲し立てた。

 

「内装を変えてない限り、あれは確か三階だ。そうだろ、麗?」

 

「はい!中学の時にちらっと見ました!銃も入ってます!」

 

「よし、じゃあ上に行くぞ!麗と俺が先頭に行く!」

 

「後ろは任せろ。冴子、行けるな?」

 

「勿論です。」

 

階段の方では幸い<奴ら>の数は少なく、かなりスムーズに登る事が出来た。三階でも大して<奴ら>の姿は無い。

 

「あれよ!廊下の突き当たり!」

 

SATの服装をした<奴ら>が前と後ろから現れた。サプレッサーを付けたシグをシングルハンドで構え、引き金を引いた。籠った低い撃発音と共に九ミリ弾が頭を貫き、壁に血と脳味噌の欠片を撒き散らす。倒れてはいるが、念の為に頭にもう一発ずつ銃弾を食らわせるとサプレッサーを外してシグをホルスターに納めた。

 

「ヒャッッホオオオオオオオオイイイ!!」

 

コータが狂喜が孕んだ歓声を上げた。


 
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