No.634222 模型戦士ガンプラビルダーズI・B 第5話コマネチさん 2013-11-04 20:55:54 投稿 / 全6ページ 総閲覧数:999 閲覧ユーザー数:961 |
勝負を控えた二人。お互いの空気は殺伐さは無いものの、緊張で張りつめていた。
「でも……アタシとしても見たいバトルではあるけどさ。大丈夫なのアイ?アンタ二連続でバトルする事になるわけだし辛くない?」
「大丈夫だよ。むしろ今ので慣らしになった感じだから、大体疲れてたら私の方から挑戦したりしないよ」
心配するナナにアイは笑って返す。
「そう言ってくれると助かる。全力で行かせてもらうぞ!」
反対側のGポッド付近にいるコンドウが答えた。
「望むところですよ!」
アイもまた答える。そしてお互いがGポッドに入った。
今回のバトルフィールドは『テキサスコロニー』
最初のガンダム作品で登場した地で、名前の通り西部劇の舞台であるテキサス州の気候風土を模して建造されたコロニーだ。
当然荒野だらけである。しかし本編設定では戦争のゴタゴタで砂漠化も進んでいるという設定だ。これも再現されていた。
AGE2Eのオリジナルウェア、ナイトメアでホワイトベースから飛び出したアイ、今までで一番の強敵と戦う事に気分は不安と高揚で一杯だった。
「コンドウさんは……?」
飛びながら辺りを見回す。遠くにバッファローの群れが走っているのが見えた。
少し探すとコンドウのゼク・アインが見えた。砂漠の大地をホバーで巻き上げながら進む。
「見つけた!」
「!」
アイがシグルブレイドを構えゼクに迫る。ゼクもアイとほぼ同時に存在に気付いたようだ。日本刀、ガーベラストレートを抜き飛び上がる。
「はぁああっ!!!」
「うぉおおお!!!」
アイはナイトメアの小手部分のスラスターを点火、これによりシグルブレイドを打ち付ける勢いが増す。
ナイトメアとゼク、二機の刃がぶつかり合った。
「くぅっ!」
「ちぃっ!」
お互いに手ごたえがないと解ると一度バックステップにより離れる。そしてお互いが迅速に次の行動に移る。
アイは再び接近しようと試みる。得意なレンジに持ち込み一気に勝負をつけるつもりだ。
守りに入ったら自分がやられると思うが故の行動だった。
反面コンドウはある程度距離を置き、ナイトメアを近づけまいとビームライフルを連続で撃ってきた。
「くっ」
浅い考えだったか。と距離を取りつつ回避行動に移るアイ、だが動きを読まれてるのかコンドウの射撃が正確なのか正直避けづらい。
「甘いな、動きは早くとも読めない動きじゃない!」
「くぅっ!読まれてる!?」
その時だった。シグルブレイドを持った左腕がビームで撃ち抜かれた。
「あっ!」
撃たれたのは肘の部分、砕けた肘より下の部分がシグルブレイドごと足元に落ちる。
その際アイの意識がシグルブレイドに行く。そのアイの隙をコンドウは見逃さなかった。
ガーベラストレートで一気にナイトメアを切ろうと迫る!シグルブレイドを拾っていたら間に合わない。
「メエエエェンッッ!!!」
――だったら!!――
すぐさまアイは手裏剣を二つに分離させ右足の裏に装着。水蜘蛛に四刃剣のうち二つをとりつけた足は足から剣が生えたかのように見える。改造の元になった農丸のギミックだ。
「何ィ!?」
驚きながらもガーベラストレートを振り下ろすコンドウ、ガキィッ!と金属がぶつかり合う音が響く。
ナイトメアはハイキックの体勢でゼクの刀を受け止めていた。
「やってくれる!だがその体勢がいつまで続くかな!」
そのまま鍔迫り合いになる。だがパワーはゼクの方が上、体勢の問題もあるだろうがナイトメアの方が劣勢だった。
「くぅ!解らないからこうするんですよ!」
「!?」
肩に残した四刃剣の内二つ、そのひとつから銃が展開しゼクの頭部目掛けて放たれる。
仕込み銃シグマ、これも農丸のギミックだ。
「ぅおっ!?」
とっさにかわすもゼクに隙が生まれる。その隙をついてシグルブレイドをアイは回収、右手に持つとゼクに斬りかかった。
「はぁぁっっ!!」
「ぬぅ!!」
再び鍔迫り合いになる二機、が、さっきの勢いをつけたぶつかり合いはともかくとして、
先程書いた通りゼクのパワーは受け止めるのが精いっぱいだ。
コンドウのゼクは刀を持つ手に力を込める。刀とシグルブレイドがこすれると火花が散った。
「うおりゃぁぁっ!!!」
「く!うぅぅっ!?」
業を煮やしたコンドウはナイトメアを薙ぎ払った。吹っ飛ばされたナイトメアは土煙を巻き上げそのまま後ろの岩山に激突する。
ガンプラが岩壁にめり込み破壊される岩山。
トドメをさそうと近づくコンドウ、が、ナイトメアの足に先程の手裏剣が無いことに気が付いた。
「手裏剣がない?!ハッ!」
コンドウが気づくと彼の横から手裏剣が迫ってくる。吹っ飛ばされた後さりげないところでアイは投げていたのだ。
とっさに回避するコンドウ、が、ビームライフルは手裏剣に巻き込まれ破壊されてしまう。
「なかなかの奇策、正直驚いたぞ。だが俺を追いつめるには少々詰めが甘かったな」
「簡単に勝てるなんて思ってませんよ!まだまだこれから!!」
お互い剣を持ち肉薄した。
……
「うぇぇ……なんつー戦いよ……」
観戦していたナナは何度もぶつかり合う二機を茫然と見ていた。
「あぁ!もう始まっちゃってるッスよツチヤさん!」
「待てソウイチ、そんな慌てて走るなよ」
と、突然下の階から二人の男が上がってきた。ナナとちょっと離れた場所でアイとコンドウの闘いを見始める。
「コンドウさんが戦ってるって事は、三対一の闘いはもう終わってしまったみたいだな」
眼鏡をかけた細身の青年が言う。コンドウより若そうな青年だ。
三対一というのは前回アイの戦ったケイ三兄弟とのバトルの事だ。
「どうでもいいッスよ。それよりコンドウさんが興味を持つ相手ッス、二人のバトルを見る方が余程重要ッスよ」
もう一人、こちらは少年だ。おそらくアイより年下だろう。ぶっきらぼうな喋り方で生意気そうな印象だ。
――何?こいつら……――
ナナは二人を不審に思った。
斬り合いを初めてからしばらくの時間が経つ。徐々にアイはコンドウに追いつめられていた。
スピードの方はアイのAGE2Eナイトメアの方が上なのだが
コンドウのゼクは素早い動きで対応、打たれる一撃は重くナイトメアは受けてから攻撃に転じることが出来ないでいた。
これはリックドムⅡの下半身によるホバーを利用した戦法だった。
本来ゼク・アインは可動範囲に難がある為パワーはあっても接近戦は苦手なガンプラだ。
しかしホバーによる高速移動で勢いをつけて叩きつける。これによる一撃はかなりの物でナイトメアも押されつつあった。
そして次のゼクの面を上からシグルブレイドを受ける。その衝撃でナイトメアは膝をついた。
「アイ!」
観戦モニターを見ながらナナが叫ぶ。
「ここまでのようだな!覚悟!」
そしてコンドウのゼクがトドメを刺そうと刀を振り上げる。だがアイはまだ諦めてはいなかった。
「まだだ!!」
アイのナイトメアは膝のニードルガンをゼクのモノアイ目がけて撃った。
「!?ちょこざいな!」
すかさず刀で薙ぎ払うゼク。しかしその隙にアイは距離を取り……
「あなたの一撃が重いならぁ!」
「!?あの姿は!」
AGE2Eナイトメアはシグルブレイドを胸に取り付け。ストライダー形態に変形、そして全力噴射、ゼク目掛けて突っ込んだ。
「捨て身の!ストライダァァッッ!!!ダァァァイブッッッ!!!!」
「なんだと!!」
「あれは!?」
「変形機能を残してるんスか!?」
驚くコンドウと二人の男、突っ込んできたAGE2Eナイトメアをゼクは右手で刀の塚を、
左手で刃の部分を持ちガーベラストレートの中心部で受け止めた。お互い全開のパワーで相手を押す。
「うぉぉおおお!!!!」
ガーベラストレートの刀身、シグルブレイドとの接触部分に亀裂が入る!
「くっ!!調子に…!!!」
ゼクは受け流そうとする。が、勢い余って二体とも派手に同じ方向に吹き飛んだ。
『うぁぁっ!!!』
同じ叫びが聞こえた。
ゼクは勢いに負け後方に吹っ飛び地面を削るように跳ねながら転がる。
ナイトメアも放物線を描きながら飛び、ストライダー形態のまま墜落。
その際二人のGポッドの振動は相当な物だった。
しばらくして勢いが止む。
「う……止まった……コンドウさんは……!?」
アイは朦朧とする頭を振り、ストライダー形態から人型形態へ変形。そして前方を見て「あっ!」と叫んだ。
コンドウのゼク・アインは目の前で同様に倒れていたからだにいたからだ。
なお、コンドウもアイと同じ心境だった。
「チャンス!覚悟!!」
アイはナイトメアのシグルブレイドでゼクを突き刺そうとする。
「くっ?!甘い!!ヤタテェェ!!」
コンドウのゼクも手に握られたままのガーベラストレートでナイトメア目掛けて、突きをかける。
『うぉおおおおお!!!!!!!!』
お互いの剣の切っ先同士がぶつかり合う!直後!
何かが割れる音が響くと共に……
AGE2Eナイトメアのシグルブレイドが割れた。そのままナイトメアは
ゼクのガーベラストレートに胸……コクピットを突き刺される。先程の突撃による剣の負担はシグルブレイドの方が上だったのだ。
その所為で突きの負荷にシグルブレイドは耐えられなかった。
「嘘……」
アイの口から驚きと悔しさの混じった声が漏れる。
ガーベラストレートが胸から引き抜かれると同時にナイトメアは倒れ込み爆発。
「後一歩だったな……だが」
アイの負けだ。コンドウはガーベラストレートの刃を眺める。直後、ガーベラストレートの刀身が折れた。負荷がかかっていたのはコンドウのゼクも同様だった。
「俺の剣を折ったのはお前が初めてだよ……」
「負けちゃった……」
ヨロヨロとGポッドから出てくるアイ、ナナはすぐさまアイに駆け寄った。
「アイ、大丈夫?」
「あ、大丈夫だよナナちゃん。ちょ、ちょっと燃え尽きちゃっただけだから、ここまで必死なバトルも久しぶりだったし」
そこへコンドウが駆け寄ってきた。
「いい戦いだった。今日というバトルが出来た事を俺は誇りに思うよ」
そう言うとコンドウは握手を求めてきた。アイもまた負けた悔しさはあれどここまで全力のバトルが出来た事が嬉しかった。
「あはは、光栄です。でも今度は負けませんからね」
小さな手と大きな手が重なり合う。今度は負けない。アイはその気持ちを胸に抱く。
「あぁ!楽しみにしている!」
「いいもの見させてもらったぞコンドウさん」
とそこへ先程観戦していた二人の男が現れる。
「まさかアンタでもあそこまで接戦となるとはな。その子は話で聞いてた以上の実力だよ」
「おお来てたのかサブロウタ、ソウイチ」
眼鏡の青年をコンドウが親しそうに呼ぶ。
「そうスか?俺は最初っからコンドウさんが勝つと信じてたッスよ」
「失礼な事言うんじゃないソウイチ」
少年が言う。身長155㎝のアイと身長差はほとんどない。横の眼鏡の男が注意した。
「誰ですか?この人たち?」
「同じガンプラサークルの仲間だ、もっと早い時間に呼んではいたんだが……遅いぞお前達」
「悪い。ちょっと車が渋滞に引っかかっちゃって」
そして眼鏡の男がアイに向く。
「それにしてもいいバトルだったよ。いつか俺達とも戦って欲しいな」
「あなたは……?」
「俺はツチヤ・サブロウタ」
ツチヤと眼鏡の男が名乗り、
「俺はアサダ・ソウイチ」
少年が名乗る。そしてコンドウが続く。
「そして俺、コンドウも含めてチーム『ウルフ』ってわけだ」
「今回は挨拶みたいなもんだがリーダーのコンドウさんをああまで唸らせたんだ、いずれ俺たちとも戦ってもらおう!」
「やるからには勝ちはもらうッスよ」
二人の男は自信満々にアイに向い宣戦布告をした。
「ウルフ……」
アイの戦いはまだ始まったばかりだった。
これにて第5話終了です。
今回はアイの初敗北の話となります。
今後しばらくはコンドウとその仲間達とのバトルが中心となります。
もっと想像力を磨いて書かなければ!!
※二枚目の写真ではナイトメアの左腕は繋がってますが実際は破損したままです。
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第5話「荒野の決闘」
ケイ三兄弟に見事リベンジを果たしたアイはそのままコンドウと連続でバトルする事になった。
かつてない強敵とのバトルにアイのガンプラ魂は大きく燃え上がっていた。