No.633454

現象起こしの転生者 第六十六話

notrinkさん

神様と転生した主人公が
めだかで原作に入るお話

※注意※
めだかボックスの二次創作です

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2013-11-02 14:45:13 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1216   閲覧ユーザー数:1203

第六十六話 平等な女と異常な女と元恋する乙女

 

「鶴喰くん、随分遅かったね、君の倒したい奴ならもう倒されちゃったよ」

 

「ああ、そうか。まぁ仕方ない、妥協しよう」

 

安心院は善吉を手助けせんとしためだかを尻に敷きながら鶴喰梟一行を歓迎した。

めだかは善吉が言彦を倒してしまったので尻に敷かれるがままだ。

 

「じゃあさ、今回はその妥協に何を持ってくるんだい?

今回もなにか面白いそれっぽいものを持ってきてくれるんだろう?」

 

「うーん、俺としちゃあ今回はそのままでもいいんだがなぁ。

いや、この際だ、面白そうだしそれっぽいものでも退治してみるか」

 

鶴喰梟はそう言いながら手を叩いた。

そして安心院を指さし笑顔で言った。

 

「じゃあ、お前でも倒してみるかな」

 

「いいね、とても面白いそれっぽいものだ」

 

安心院はめだかから腰を浮かせ、微笑を浮かべる。

 

「いいよ、かかってきなよ小僧。

全米が燃えるような迫力ある戦闘をしようじゃないか」

 

言葉遣いの創始者と、

天然チートの悪平等による戦争が勃発した。

 

    ****

 

世界の言葉に通じるスキル『世界通用語(ワールドボイス)』

異国の言葉を理解させるスキル『意味明確(ライトミーニング)』

綴りを間違えないスキル『書き違えのないように(バッドライティング)』

演説を成功させるスキル『演台の上の人気者(スポットライト)』

誤解を生まないスキル『伝わる気持ち(リンクリング)』

相手の言葉を理解するスキル『言語理解(アンダーストーク)』

映像を文字に置き換えるスキル『言葉で説明(リバースコード)』

丁寧にしゃべるスキル『お上品な口(エレガントマウス)』

………ETC………ETC………

安心院なじみには言語系スキルも多々ある。

やはり一京の中では微々たるものだが、それでも何百はある。

が、何にしても問題解決にしか役に立たない、

言葉を戦闘利用してくる相手に対する戦闘用の言語系スキルは少なかった。

声を固形化するスキル『声音硬化(フリーズドライ)』

とか、大声のスキル『核声器(ビッグボイス)』

などなど、あるにはあるが………

 

「どうにも決め手にかけるんだよね」

 

婚約者の影武者と戦った時のように、

相手の戦闘技術は既存の戦闘技術ではない。

故に、安心院にとってスタイルはできるできないで言えばできないに近い。

しかし、できないに近いだけ、たったそれだけである。

 

「よし、じゃあ僕は僕で新しくスタイルを作ってみようか」

 

それだけ故、安心院が新しくスタイルを身につけようと思いついたのも道理だった。

そして、いつものようにすぐに出来るようになったのも、いつもの道理だった。

 

「まぁ、お手本に合わせて使用してみようか」

 

「よそ見か? のんきなもんじゃないか」

 

二人はただ笑顔で話をしているだけ、

しかし、安心院は先程からスキルを打ちっぱなしだし、

梟はそれを変換して返しまくっているのである。

何故通じないか、それは片方は人外である、

もう片方は死人である……いや、変態……いや、言葉遣いである。

スタイルを受けた経験から、安心院はスタイルに順応、対処しており、

梟はスキルを逆説を使い無効化している。

当事者たちから見てもなんとも面白く無いバトルである。

 

「よそ見くらいさせてくれよ、こんな退屈な時間は久しぶりだぜ?」

 

「仕方ないだろう? 退屈なら二言三言受けてみたらいいんじゃないか?」

 

「うーん、それもいいかもしれないけど、

そうなると零くんとの約束である君を倒すと言うのを破っちゃうんだよ」

 

笑顔で安心院は舌を出す。

そこには見慣れぬ『平』の文字が。

 

「ん? 安心院さん、何だそれは?」

 

気づいた梟が問いかける。

 

「ああ、これかい? 簡単なことさ」

 

安心院は笑顔で続ける。

 

「僕のスタイルだよ、名前は平等使いとでもつけておこうか」

 

なんとも僕らしいスタイルでね、と安心院は続ける。

 

「平等に平等に、何がなんであれ同じ意味にするスタイルみたいだ」

 

彼女の見ている世界をそのまま写したようなスタイルだと零であれば言うだろう。

彼女は己に放たれる言葉たちをすべて平坦に、ひとつの意味に捉えた。

その意味は『死』。スタイルを死という意味に変換してしまえば、

スタイルは今までのものと同じように、その意味を持って彼女を襲うだろう。

しかし、彼女は死ねないのだ。たった一人にかけられたスキルのせいで。

 

「なるほど、できない事があるのも案外便利かもしれない」

 

彼女はのんきにそんなことを思った。

そして、自分が打ち出すスキルに手を加えることを思いついた。

簡単なこと、スタイルに対する対処法をスキルに施してみようということだ。

なるほどなんとも簡単で、なるほどなんとも強い。

スタイル対策をされれば逆説は通じないし、変換だってできない。

安心院はこの面白くない戦闘を終わらせるためにも、

零との約束をさっさと終わらせるためにも、

自分のスキルにあるスキルを付与した。

 

無視するスキル『私には縁のない話(エリアアウト)』

 

この一つのスキル、それを付与されただけで、鶴喰梟は安心院の言語スキルに撃沈した。

 

「ふむ、案外楽だったね、命は取らないから安心しな鶴喰くん。

ただ、今回は退いておいたほうがいいんじゃないかな、

きみのお姉さんっぽいものは、また後で手に入れたらどうだい?」

 

「う……ぐふ……そうだな、そうそうするか、

今回の勝負の行方も仕方ないとしよう、じゃあまたな安心院さん」

 

そう言って鶴喰梟は安心院に背中を向けた。

ついでというように右手に一枚のカードを持ちながら。

 

「ただいま安心院さん……あれ? 不知火は?」

 

「ああ、あの子なら鶴喰くんに連れて行かれたよ」

 

「え!? 安心院さん黙って見てたんですか!?」

 

驚きながらも怒りを込めて善吉が安心院を見る。

安心院は「そう睨まないでくれ」と言って善吉に弁解する。

 

「世界の絶対的ストーリー上、不知火ちゃんは鶴喰くんに連れて行かれなきゃならないようでね。

そうしないと零くん達の存在が危うくなる可能性もあるそうだから仕方ないんだ。

大丈夫、そんなに心配しなくても後で助けに行くよ、

僕は安心院さんだからね、安心して信用してくれ」

 

善吉は納得出来ないような顔だったが、

零達が消えるかもしれないと言われてはしかたがない、

おとなしく引き下がった。

 

「でも、終わったら助けますからね!」

 

そう言い残したので、おとなしくというわけでもないか。

 

   *****

 

「ふむ、これは面倒だな」

 

黒神めだかは腕組みをしながら目の前の光景の感想を言った。

 

「そうですか? そんなに面倒ならもっと増やしますか?」

 

「いや、遠慮しておこう、もっと面倒になりそうだ」

 

めだかの目の前には八百人の人、人、そして人、それもすべて同じ顔。

すべてクローン人間ですと言われても疑問を持たないであろうその光景、

杠かけがえ八百人、同じ顔がズラリと並んでいる光景は、

めだかでなければしばらく思考停止になりそうな光景だった。

 

「さて、私にはもう一人敵がいたはずだな?」

 

「そうですね、今もあなたの後ろにいますよ」

 

「!?」

 

めだかはその言葉につられて振り向いた。

が、そこには先ほどの通り杠がたくさんいるだけ、

予想していたはずの相手はどこにもいなかった。

 

「嘘ですよ、あの子なら他の客人の方に言ってますよ」

 

「他の客人?」

 

「ほら、誰でしたっけ……そう十三組の十三人でしたっけ?」

 

「そういえばあやつらも不知火の記憶を覚えていたな」

 

めだかは納得して頷くと、戦闘のために意識を切り替えた。

 

「じゃあ心配する必要はないな、

あの人達なら言葉遣いだろうが三分もかからないさ」

 

「あら、随分と信頼しているんですね、あの子を舐めちゃいけませんよ?」

 

「舐めてなんかないさ、ただ、

あの二人がいるのに言葉遣いが勝てるわけがないだけだよ」

 

杠かけがえはめだかの言葉の意味がよくわからなかったようだ。

が、その言葉の意味を考ようとする間はない。

なぜなら、めだかはセリフを言い終わった瞬間に彼女に突撃したからだ。

 

「さぁ戦おうか杠かけがえ! 

八百人相手のスパーリングとはなかなか楽しそうだ!」

 

めだかは杠に駆けていった。

 

    ****

 

「ねぇ王土、ホントにこっちで大丈夫なの?」

 

舗装されていない道を黙々と走るバスの中。

零に加勢するために乗っている表の六人と冥利とまぐろの内、

運転席に座っている王土に一番前に座る行橋が聞いた。

 

「そのはずだ、創が創ったカーナビがそう表示してる」

 

「でも王土だからなぁ、無意識に干渉してたりするんじゃないの?」

 

「………」

 

王土はそれはないと応えたかった。

しかし、完全に制御できるようになった今でも無意識に干渉していることがある。

その可能性がないと言い切れないため、彼は黙るしかなかった。

 

「じゃあ、僕に見せてくれ、都城から離せば大丈夫だろう?」

 

別の席に座った宗像がそういった。

王土が後ろに向かってカーナビを投げる。

宗像が受け取ると、その表示はノイズに包まれ切り替わった。

 

「ああ、表示が変わった。干渉してたみたいだね」

 

「むぅ、やはり無意識までは制御できんか」

 

「前のことを考えると随分成長したけどね」

 

「じゃあ、僕の方で指示をだすよ」

 

宗像はカーナビを見ながら王土へと指示を出そうとした。

その時、車体の左に何かが着弾し、爆発した。

 

「む!?」

 

何かによる爆発の衝撃によりバスが横転する。

だが、その程度でダメージを負う十三組ではない、

最初は宗像が、ついで高千穂が、バスの側面に踊りでた。

彼等の前には女が一人、ナース服を来た寿常套だった。

 

「こんにちわ~はじめまちて」

 

「なんか、とてつもなくうざそうな奴が出てきたな」

 

「そうだね、僕もなんだか彼女とは関わりたくないな」

 

彼等は彼女が発する異様な雰囲気に若干引いていた。

特に「はじめまちて」の部分が威力が高かったようだ。

 

「悪いけど此処から先はいかちまちぇんよ~」

 

「ねぇ! さっきから変な赤ちゃん言葉使ってるの誰!?」

 

古賀が寿の赤ちゃん言葉につられて出てきた。

そして彼女の目の前には先程赤ちゃん言葉を発した寿。

 

「ああ、その女か……うん」

 

古賀はシラけた目で寿を見る。

精神的にはノーマルの古賀にとって、

もともとからアブノーマルの二人よりダメージが大きかったようだ。

若干どころか上半身を限界までのけぞらせて引いている。

 

「三人ともひどいな~わたち泣いちゃいそうだよ~」

 

「知り合いみたいな言い方やめてくれないか?

僕達は今が初対面だろう? 済まないが押し通らせてもらうよ」

 

「じゃまするのか? なら倒してでも通らせてもらうぜ。

俺の友人がピンチみたいだからな、また喧嘩したいんだよ」

 

「邪魔するなら潰しちゃうよ? 

姫ちゃんとクッキー作る約束してたんだもの!」

 

宗像、高千穂、古賀の三人は車体を踏みつけ寿へと突撃した。

が、それを見ながらも寿は童謡を歌い出した。

 

『!?』

 

三人の体が幼くなっていく。

寿の歌は等比数列方式で時間が巻き戻っていく。

近づけば近づくほど幼くなるならば、接近は禁物。

彼女の眼の前についた頃には、十三組の三人は赤ん坊になっていた。

 

「ぶーぶー!」

 

「む。しまった、出てくるまでに三人がやられてしまったか」

 

「少し遅かったね、座席がこうも邪魔になるとは思わなかったよ」

 

遅れて出てきた王土と行橋はそう言って頭を抱えた。

そして、自分たちも幼児化し始めていることにピンチを感じた。

 

「これは……ヤバイな、スキルの制御ができなくなった」

 

「僕もだよ、零くんに能力を制御させてもらったのは最近だからね」

 

だが、彼等は零から事前に言葉使いへの対応の仕方その他もろもろを教わっていた。

後はどうやってそれをできるようにするか、

 

「おい、お二方、さっさとこれつけろ」

 

「ああ、悪いな名瀬」

 

バスから伸びた手が、二人に向けてヘッドフォンのようなものを投げる。

二人がそれをつけると、彼等の幼児化が止まり、もとの年齢にまで外見が戻った。

 

「!?」

 

バスの窓から名瀬がひょっこりと顔を出した。

彼女の頭にも行橋達と同じヘッドホンのようなものが付いている。

 

「言葉使いは相手と意思疎通がないと意味ないらしいな、

怒り狂って言葉が聞こえていないとか、そもそも意思疎通不可とか、

もしくは、仕手が一つのことに集中し過ぎていたりとか」

 

名瀬は口を三日月にして種を明かす。

 

「このヘッドホンは集中し過ぎてる状態、

フローと呼ばれる状態に強制的に移行する機械だ」

 

「なっ、そんなものできるわけが……」

 

「これが作れたのはある人物のおかげだぜ、

皆も知ってるうちの学園が誇る理外点、

神谷零と終創、あの二人がこの機会の中枢部分を作ってる」

 

名瀬に寿の声は届いていない、

構造を説明するのに『夢中』で寿の寿のことなど目にすら入っていない。

 

「行橋よ、どうだ、聞こえるか」

 

「大丈夫だよ、零くんに制御させてもらった僕たちは

一度フローに入るとその状態をある程度維持できるみたいだね」

 

「ああ、そのようだな、まぁ集中する事柄を決めておかないといけないのが億劫だが」

 

「まぁいいじゃない、これで戦いやすくなったでしょ?」

 

「まぁ戦うということに集中すれば大したことじゃないな」

 

そう二人言い合っていると、バスの上にまたも現れた影があった。

雲仙の姉こと冥加だ。彼女も頭にヘッドホンを付けている。

 

「零を助けに行くの、あなたは邪魔」

 

「……」

 

三対一、寿は窮地に立たされた。

だが、相手側の赤ん坊は手に入れた。

彼女は笑う。この勝負勝ちしか見えないと。

 

「押し通る」

 

冥加が高速で移動し、掌底を、寿に、

 

「ふんっ」

 

打ち付けた。

 

 


 
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