反董卓連合編其三
零士「さて、張済さん。今洛陽で何が起きてるんだい?」
私たちを襲った襲撃者は、董卓軍の張済だった。
五年前、月のところに居た時に一緒に訓練した人物のうちの一人だ
張済「は!我々は中央からの要請で、軍事補強ということで上洛しました。
しかし、上洛当時の洛陽は酷いものでした…。重税、暴行、賄賂、腐り切っていました。
しかもそれを、帝のご子息である劉弁様、劉協様の意思に反した、
十常侍や奴らに与した文官によるものでした。
それを見かねた董卓様、賈詡様は、劉協様の御協力もあり、十常侍や文官の粛清に成功しました。
その後は、我々が代わり洛陽の立て直しに取り掛かり、順調に治安も良くなりつつありました」
そこまでは、私たちが得た情報にも合う。
月は暴政を行っていなかったんだな…本当によかった
零士「そこまでは僕達の調べた通りだね。問題はその後か。
ある時期を境に、洛陽の情報が一切入らなくなった。
そして流れた何進、劉弁の暗殺。何があったんだ?」
張済「何進大将軍に関しては、我々が上洛する以前に既に殺害されていました。
我々はその後釜という形で上洛しましたから。無論、我々は無実です。
賈詡様の推測では、何進大将軍は用済みとなり、十常侍に暗殺されたのだろうとのことでした」
咲夜「まぁ、十中八九そうだろう」
張済「はい。問題は劉弁様の件です。
我々が上洛して一ヶ月が経とうとする頃、ある事件が起きました。それが劉弁様の暗殺です」
咲夜「って事は、劉弁殺害の噂自体は真実なのか。犯人は特定したのか?」
張済「はい。最悪の形で判明しました…」
咲夜「最悪の形?」
張済「犯人は、弾圧したと思われていた十常侍の生き残り、張譲と段珪でした」
咲夜「粛清に失敗していたのか?」
張済「恐らく、粛清部隊の中に、奴らの息のかかった者がいたのでしょう。
その者らが偽りの報告をし、張譲と段珪は死んだ事になった。そして劉弁様を殺した」
咲夜「なるほどな。だが、それならすぐに奴らを殺しに行けば済む話だろ。
なぜこんな事態になっているんだ」
張済「私が言いたかった最悪の形…董卓様と劉協様を人質に取られたのです…」
咲夜「なに!?」
月が人質?………なるほど、見えてきたぞ、今回の事件
張済「我々が劉弁様暗殺の報を聞き、取り調べているところに、
張譲と段珪が董卓様と劉協様を人質に取り現れました。
そして奴らは、董卓様の命が惜しくば命令に従えといい、今に至るというわけです」
思った通りだった。詠は月を溺愛している。その月を囚われたんだ。従うしかない。
洛陽についての情報操作も、恐らくは張譲と段珪の仕業か。
そしてその二人の内どちらかが、袁紹の下へ行き、暴政があったと吹き込んだ。
そんなところか。だが、まだわからない。目的は一体なんだ。
何故月たちを嵌めて、戦争なんか起こした。
それも情報操作をしていたという事は、最初から月たちを嵌める為になる。
いったいなんなんだ…
張済「洛陽では、賈詡様が董卓様を捜索中です。
しかし、監視も居ますし、連合の脅威もあり、順調とは言えません…。
東殿、司馬懿殿、差し違えなければ、我が主、董卓様の救出に手を貸してくだされませんか!」
そう言った張済さんは頭を下げた。張済さんの手は震えていた。
主を奪われ、恥辱にまみれ、自分で救出に行きたいにも行けず、私たちに頼む。
彼の手の震えが、その悔しさを物語っていた
零士「なるほど。だいたいわかった。これはますます、洛陽に行かないといけなくなったね」
零士はこちらに向き微笑んだ
咲夜「あぁ。大切な友人が囚われたとあっては、引かない訳にはいかない」
張済「では!」
咲夜「あぁ。その張譲と段珪ってやつ、私が殺して月を助けだす!」
張済「!!…うっ、くっ、感謝します!」
張済さんは、涙を流していた。
ふふ、あんな月でも、ちゃんと太守なんだな。
こんなにも慕われているなんて。
この人の為にも、必ず助け出さないとな
その後、張済さんの誘導で洛陽に向かう。
さすがに深夜ということもあり、何度か休憩を挟みつつ向かった。
その道中
零士「さて、どうしたものかな」
咲夜「………この戦争の事か?」
零士は無言で頷く。
今回の戦は、暴君を討つ為に結成された正義の連合による正義の戦。
世評も、月が暴君であると認識され、連合軍を支持している。
つまりこの戦は、暴君を討たない限り終わりはない。
戦争の終結には、董卓という贄が必要だった
咲夜「実際の黒幕は、張譲と段珪だ。だが、証拠がない。
いや、あるにはあるか。劉協という証人が立証してくれたらもしかしたら」
零士「うん。でも確率は低いね。
結局、劉協が何を言ったところで、董卓に脅されて言わされていると思われるだけだろう」
咲夜「そうなるよなぁ」
私はもう一つ、案を思いつく。
だがこれも、運の要素が強い
咲夜「なぁ、張済さん」
張済「なんでしょう?」
咲夜「今の連合軍に、月の顔を知っている人間はいるのか?」
張済「どうでしょう…賈詡様は董卓様の事をひたむきに隠そうとしていましたが…
実際に賈詡様に聞かなければなんとも」
咲夜「そうか。ありがとう」
零士「ははぁ、なるほどね。
いい策かも知れないけど、少しばかり運頼みな感じだね」
張済「あの、何の話でしょうか?」
咲夜「この戦を、どうやって終わらせるかだ」
張済「勝てば良いのでは?」
咲夜「それじゃあダメだ。
仮に今回勝てたとしても、月の風評はさらに悪くなるし、今後も命を狙われる。
この戦争が起きた時点で、あるいみ月に救いはないんだ。月が死ぬまで、戦は終わらない」
張済「そんな!」
零士「落ち着いてくれ張済さん。
僕たちはそうならない為に、今考えているんだ」
張済「むぅ、申し訳ありません」
咲夜「一つ案があるんだが、その案がなかなか運任せなんだ。
前提条件として、連合軍側に月の顔を知る者が一人もいないこと。
もしいなければ、私たちが助けた後、どこかに逃がし、董卓の影武者として、屍を一つ用意する。
董卓軍の誰かが董卓を殺した事にすれば、今後命を狙われる事もないはずだ」
張済「なるほど。確かにそれならば…しかしなかなか厳しい条件ですな」
咲夜「まぁな。だが、月を無事に助け出すには、この策が一番なんだ」
零士「とりあえず、詠ちゃんとも話し合ってみようか。
恐らく連合側もまだ、汜水関あたりだろう。まだ時間はあるはずだ」
零士の言うとおりだ。先の事も重要だが、まずは月の救出が最優先事項だ。助けた後考えればいい。
その後も私たちは洛陽を目指す。
いざ救出って時に力が出なきゃ意味がないってことで、一度長時間の仮眠を取った。
そして起きる頃、辺りはすっかり明るくなり、陽が差していた。
そして
咲夜「いよいよだな」
零士「ああ。気を引き締めよう」
私たちは洛陽に着く
月を助け出し、元凶をこの手で討つ
私の友人を傷つけた罪、その命をもって償わせてやる
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こんにちわ
反董卓連合編の3話目です
若干だらだらしてますがどうぞ