『――君があの日、ここに居なかったことを神に感謝している。
私は、君の前に恥ずかしい姿を晒してしまっていることだろう。本当にすまない。
エイダ、君の無事を祈っている』
最後に自分の名を記し、男はペンを置いた。スタンドの明かりが、男の細面を照らしている。頬はこけ、来ているシャツは垢で黒くなっていた。ここに閉じ込められて、どれだけ経ったのか。月日の認識に麻痺してきている。
彼が書いたのはおそらく読まれることない手紙だ。ただ、書かずにはいられなかった。吐き出さずにはいられなかった。それは贖罪を求める自分の醜さだと、彼は自嘲する。今まで手をこまねいていたために、そして、今更行動を起こしたために最悪の結果を招いてしまった。
部屋を何者かがノックしている。他にも幽鬼のような足取りで、床を軋ませている音も。だが、ここに生者はいない。
彼は額を抑えた。
せめて、自分ひとりでやるべきだった。そうすることができる機会は今まであったのだから。それを逃してきたのは自分だ。
マーチンとアンジェラ、若い二人を巻き込む必要はなかった。機会を待てばよかったのだ。あれは完成してしまったのだから。今頃になって事の運びを急いたのは自分だ。
彼は重い息をつくと、静かに立ち上がった。
彼には最後の仕事が残っている。
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PS版「バイオハザード」をベースにした小説です。人物設定等はかなりいじくっていますので、そのあたりはご了承ください。