ガルム一行が戦闘を終えて数時間後…
「ただいま~」
「あ、おかえり~」
Unknown一行が、
「畜生、まさかあそこまで喰い尽くされるとは思ってもいなかったぜ…」
「あ~あ~…だから金は多めに持って行けって言ったのに」
「いや~ご馳走様です♪」
空っぽの財布を手に持つ支配人に、ディアーリーズは綺麗な笑顔でサムズアップする。
「…aws、今ならアンタの苦労が分かる気がするぜ」
「そうか、それはこちらとしても嬉しい限りだ」
支配人とawsがガッチリと握手する。同じ苦労人同士、通じる部分があるのだろう。
「ア~ン娘ちゃ~ん♪」
「げ、姉貴!?」
朱音が抱きつこうとUnknownに飛び掛かって来たが、Unknownはそれを素早く回避。互いにジリジリと距離を置く。
「さぁ、今度は別の服も着て貰おうかしら~?」
「ゴスロリも着せといて何を言うか……今日はもうやめてくれないかな本当に…!!」
「問・答・無・用!!」
「来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
朱音から逃げるべく、Unknownは猛スピードで逃走。そんな彼を朱音が黙って見てる筈も無く、同じく猛スピードで追いかけて行ってしまった。
「うわぁ~…もう見えなくなっちゃった」
「朱音さんも相変わらずだな…」
「いつもの事でしょう」
二人の追いかけっこを蒼崎とげんぶが遠目で眺め、竜神丸は興味無さ気にタブレットを操作する。
そこへ…
「帰ったぞ~」
「ただいま戻りました」
「あぁ~疲れた…」
「テメェ等、俺にばっか運ばせてんじゃねぇ…!!」
ガルム、ルカ、Blaz、miriの四人も帰って来た。何故かmiriだけは、気絶したまま縄で縛られている魔導師達をズルズルと引き摺っているが。
「お帰り……ってうわぁ、また随分と拾い物が多いな今日は」
「くそ、何で俺がこんな事を…」
げんぶは運ばれて来た魔導師の人数に驚き、運び疲れたmiriはその場にへたり込む。
「バリアジャケットからして、管理局の魔導師ですか?」
「俺達を捕まえようと面倒臭い事してきたんでな、返り討ちにしてやった」
「それはまぁ、ご苦労な事で」
「ぬ、ぐ…」
気絶していた魔導師部隊の隊長が、意識を取り戻し目を覚ます。
「お、起きたか」
「!? 貴様等…!!」
miriの顔を見た途端、隊長は彼をギロリと睨み付ける。
「そうか……まさかとは思っていたが貴様等、OTAKU旅団か…!!」
「何だ、今頃気付いたのか?」
「犯罪者共が……我々管理局の部隊に歯向かう等、許されぬ事をしてくれおったな…!!」
「だったら管理外世界にまでちょっかい出して来んじゃねぇよ。こっちからすりゃ良い迷惑だ」
「黙れ!! 管理局は正義の組織だぞ!! そんな我々に歯向かうのが悪い!! 従えんような奴等は全員悪だ!!」
miriに指摘されても、隊長は黙るどころか怒鳴り散らす。
「ていうかアンタさ。自分達が追い詰められそうになった途端、自分の部下も捨てて一人で逃げようとしてたよね。その辺はどうなのよ?」
「うるさい!! 犯罪者一人、碌に捕まえられないコイツ等が悪い!! くそ!! 本来なら今頃貴様等を本部まで連行していた筈だというのに…!!」
「おうおう、責任転嫁しやがったよ。管理局の魔導師ってのは皆こうなのかねぇ?」
「ふん、犯罪者めが!! 社会のゴミがこの私に説教などしてくれるな!! 反吐が出るわ!!」
(あぁ、何を言っても無駄なタイプだなこいつ…)
隊長のあまりの開き直りっぷりに、ロキは流石に何も言えず内心で呆れ果てる。
「あ、ところで隊長さん」
「何だ!!」
「…あなたの部下達、皆起きてますよ?」
「!?」
竜神丸に言われて隊長が振り返ると、部下達は既に意識を取り戻し起きていた。部下達は全員が隊長を見ている。
「ま、まさか聞いてたのか!?」
まさか聞かれているとは思っていなかったらしく、隊長が慌て出す。
「あれ、気付いてなかったんですか? まぁなんて間抜けな…」
「う、うるさい!! ゴミは黙っていろ!!」
「「むしろお前が黙ってくれ」」
「のごぁっ!?」
流石にうるさいと思ったのか、ロキと蒼崎が思い切り隊長を蹴り飛ばす。
「それにしても、哀れなものですねぇ? 部隊のリーダーには恵まれず、こうして我々に捕まる羽目になるなんて…」
竜神丸はニヤニヤと嘲笑うかのように魔導師達を見据える。
「…あぁ、分かってたさ」
「む?」
一人の魔導師がボソリと呟く。
「隊長はいつだって人使いが荒いんだ……俺等の心配なんて微塵もしちゃくれねぇし、自分の出世の事しか考えてねぇし……俺達もいずれ使い捨てにされるんじゃねぇかって、そう思い始めてた…」
「…そう思っていたなら、何でこんな奴なんかに素直に従う?」
「理由はそれぞれ違うが……俺の場合は、家族を養う為だ」
「!」
家族という言葉に、げんぶが反応する。
「俺が収入を得ねぇと、家族に美味しいもん食わせてやれねぇからな。嫌でも従うしかなかった」
「俺も大体同じだ」
別の魔導師が答える。
「娘が生まれつき、身体が不自由でな。そんな娘の為だと思って、今までずっと耐えてきた」
「…俺も、ミッドに家族がいるんだ」
「あぁ、俺もだ」
「俺は結婚してはいねぇけどよ……せめて収入だけでも得て、お袋に安定した生活を送って欲しかっただけなんだ」
「…全員、嫌々従わされていただけだったのか」
げんぶがボソッと呟く。
管理局は旅団からすれば敵ではあるが、彼等にだって家族はいる。彼等の帰りを待ってくれている人がいるのだ。
「まぁ、ここに捕まった時点で俺達はもう終わりみたいだけどな」
「おやおや、やけに諦めるのが早いですね」
「家族の顔、もう一回くらい見たかったが……覚悟は出来ている。他の皆もそうだろう?」
その言葉に、他の魔導師達も頷く。全員、気持ちは同じなようだ。
「お、おい!? 何を勝手に話を進めている!! そんな勝手な事は許さんぞ!!」
「「だからお前が黙ってろっての」」
「ぎゃふっ!?」
ただ、約一名だけは違ったが。隊長は部下の魔導師達に怒鳴るが、ロキと蒼崎の拳骨によって再び黙らされる。
「素直なのは良い事ですね。私や二百式さん、朱音さんが戦った部隊の連中よりも、いくらか肝が据わっている…」
竜神丸がホルスターから拳銃を抜き、一番前にいる魔導師の額に銃口を向ける。銃口を向けられた魔導師は目を閉じ、引き鉄が引かれるのをジッと待つ。
「待て」
「!」
そんな竜神丸と魔導師達の間に、げんぶが割って入る。
「…何のマネですか?」
「殺す必要は無いだろう、弾の無駄になるぞ。それに」
げんぶが横目でチラリと魔導師達を見る。
「ここで殺したら、コイツ等を待ってくれてる人達に辛い思いをさせてしまう。そうだろう?」
「「「「「!?」」」」」
撃たれると思っていた魔導師達は、一斉に顔を上げる。そんな事を言われるなど、思ってもいなかったからだ。
「俺もげんぶに賛成だな」
「俺も賛成」
「俺も~」
「! miri、ロキ、蒼崎…」
げんぶの意見に賛同したmiriとロキ、そして蒼崎も割って入る。
「無抵抗な奴まで殺すのは、俺の主義に反してるんでな」
「家族の為に頑張る……それって結構、素敵な事だと俺は思う」
「一人か二人いるだけでも、結構違うんだぜ?」
「「「お前の場合は複数いるよな」」」
「突っ込み早いなお前等!?」
蒼崎が何故か突っ込みを入れられる中、一人の魔導師が恐る恐る尋ねる。
「あんた等、何で俺達の事…」
「勘違いするな、お前等の為じゃない。お前等を待ってくれてる人達の為だ」
「だったら、こっちにも一回くらい顔を見せなよ兄貴は…」
「少し黙っとれ弟よ」
魔導師達をビシッと指差すロキだったが、ルカの一言にはちょっぴり図星だったようだ。
「…そうは言いますがあなた達」
竜神丸が口を開く。
「仮に生かしたところで、彼等の記憶を消せばまた我々に攻撃してきます。そんな面倒な事を私はいちいち繰り返したくありませんよ。消したい記憶を自由に選べる程、私の能力だって便利じゃない」
「なら、私の艦隊に来るのはどうだ?」
「!?」
会話の中に、先程まで追いかけっこをしていた筈のUnknownも加わって来た。
「…アン娘さん、またですか」
「姉貴の魔の手からは逃げられなかったよ、畜生」
ちなみに、現在のUnknownの服装はゴスロリではなくメイド姿である。追いかけっこの後、結局は朱音に捕まって着替えさせられたようだ。
「…まぁそれはともかくだ。私の率いている艦隊でなら仕事もたっぷり与えられるし、もちろん給料も全員分与える事だって出来る。ただし、我々は札付きだ。家族に会う事は難しくなるだろうから、家族への収入はこちらの手の者で届けてやっても構わない」
「…ん? アン娘さんの部隊?」
ここで蒼崎が気付く。
「確か、アン娘さんの部隊って…」
「あぁ。ゼルグート級航宙戦艦が3隻、ハイゼラード級航宙戦艦が500隻、ガイデロール級航宙戦艦は500隻だったな、後はメルトリア級航宙巡洋戦艦が1500隻で、デストリア級航宙重巡洋艦が3500隻、それとケルカピア航宙高速巡洋艦が7000隻、他にもクリピテラ級航宙駆逐艦が…」
「「「「「すいませんUnknownさん、その辺で充分です」」」」」
「あぁちなみに、最近またちょっぴり戦力が増えたぞ」
「「「「「だからもう充分だっての!?」」」」」
これ以上は長くなると判断したロキ達で、Unknownの説明を遮る。
「とにかく、アン娘さんの艦隊は勢力がでか過ぎるんだよな。俺達も敵にだけは回したくない」
「…マジかよ」
Unknownの戦力がどれだけヤバいかを聞かされた魔導師達は唖然とする。先程まで怒鳴っていた隊長もそこまでとは思っていなかったらしく、口をポカンと開けて呆然としている。
「どうするかはお前達の自由だ。あくまで管理局側にいるか、それともこちら側に来るか……自分の頭で考えて、答えを決めてみせろ」
「「「「「……」」」」」
Unknownの提案に、魔導師達は無言のまま考え始める。
「アン娘さん、あなたという人はまた…」
「まぁ良いじゃない。せっかく人手が増えるんだもの」
「! 朱音さん…」
竜神丸が魔導師達に向けていた拳銃を、横から朱音が下ろさせる。
「竜神丸さんは考え方がちょっぴり堅過ぎるわ。せっかく部下が増えるのなら、それに越した事は無いわよ。それに」
横目でチラッと隊長を見る。
「…尋問するんだったら、お手頃な餌がいるじゃない♪」
「いや、おい!? 何故私の方に向く!?」
薄々嫌な予感を感じてきたのか、隊長の表情にも焦りが見え始める。
「…仕方ありませんね」
竜神丸は拳銃を下ろす。
「アン娘さんがそういうのであれば、そちらの事はアン娘さんにお任せします。部下の管理はそちらでお願いしますよ?」
「「「「「…!」」」」」
竜神丸が指で×字に切ると、魔導師達を縛っていた縄が×字にスパッと切れる。
「尋問については、私の能力で記憶を覗くのが先決です。その後については…………まぁ、皆さんにお任せするとしましょうか」
「「「「「…ほう?」」」」」
その言葉に朱音だけでなく、ロキ、蒼崎、okaka、ディアーリーズも反応する。
「うわぁ、ここにドSがいっぱいいる…」
「い、胃が痛くなってきた…!!」
「耐えろaws、俺も同じ状況だ…!!」
「ははは…」
ドS達の黒い笑みにげんぶがドン引きし、awsと支配人は己の胃をキリキリ痛め、ルカは乾いた笑みを浮かべる。
「では、そういう事で……イワン」
「ぬぉ!?」
竜神丸が指を鳴らすと、何処からかイワンがヌッと登場。片手で隊長を掴んで持ち上げる。
「お、お前達!! コイツ等を捕まえろ!! 今ならまだ、チャンスを与えてやっても良いぞ!!」
往生際の悪い隊長は、部下達に旅団メンバーを確保するよう投げかけるが…
「「「「「……」」」」」
魔導師達は誰も、自分のデバイスを構えようとはしなかった。
「お、おい!? 何を戸惑っている!! 早くそいつ等を―――」
「隊長」
一人の魔導師が口を開く。
「こんな時に言うのも申し訳ありませんが、ハッキリ伝えておきます」
ペコリと頭を下げてから言い放つ。
「もう、アンタには従えない」
「なっ!?」
「俺達は、彼等についていきます」
そういって、魔導師は自分のデバイスをその場に放り捨ててしまった。それに続いて他の魔導師達も同じように自分のデバイスを足元に放り捨てていく。
「き、貴様等……管理局を裏切る気かぁっ!!!」
「はいはい、うるさい人はさっさと行きましょうね~?」
「き、貴様等、絶対に許さんぞ!! 私は管理局の魔導師だぞ!! こんな屈辱、私は絶対に忘れんからな!! お、おい、やめろ!? この薄汚い手を離さんか!? 離せ!! 離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
苦し紛れの抗議も空しく、隊長はイワンによって尋問室まで運ばれて行ってしまった。
「…では、我々も向かいましょうか」
「えぇ、今夜は楽しい夜になりそうよ~♪」
「祭りの時間だヒャッハー!!」
「さて、久しぶりの尋問だ。アレを使うとするか…」
「ストレス発散にはちょうど良いですねぇ」
「なぁ、尋問用のアレって何処に片付けてたっけ?」
竜神丸に朱音、蒼崎、ロキ、ディアーリーズ、okakaも後に続き、尋問室まで向かって行った。
「…後でうるさい悲鳴が聞こえてきそうだ」
Unknownはやれやれと言った感じで溜め息を吐いてから、残った魔導師達に振り返る。
「なぁ、本当に良いのか? 俺達は…」
「決めたのはお前達だ。裏切るようなマネでもしない限り、部下として迎え入れるだけだ」
Unknownが手を差し出す。
「ようこそ、OTAKU旅団へ。我々はお前達を快く歓迎する」
「…すまない、感謝する」
一番前にいた魔導師も手を差し出し、アン娘と握手する。それをげんぶやmiri達は静かに笑みを浮かべながら見守っている。
こうしてまた、僅かながらもOTAKU旅団の戦力が増加するのだった。
「「「「「これからずっとついて行きます、姐さん!!」」」」」
「ちょ、違う!! これでも私は男だ!!!」
「いや、そんな格好してたら誰でも間違えるでしょうよ。アン娘さんの場合は特に」
最も、やはりUnknownは魔導師達からも女性と間違えられていたようだが。
ちなみに、尋問室では…
「さて、この次は水攻めでもしてみますかね?」
「何を言う、そこはこの
「いやいや、それだけじゃ物足りんでしょう。そこは敢えてウイルス研究の実験台に…」
「むしろ、AMIDA部屋にでも放り込んでみるとか?」
「それならやっぱり、一度コジマ部屋に放り込んでみるべきじゃないかしら?」
「う~ん、迷い所ですねぇ…」
ドS組のメンバーが、どんな尋問(という名の拷問、そして虐め)をするべきなのか会議を始めてしまっていた。
「それじゃ、まずは
「「「「「は~い」」」」」
「お、おいコラ!? 何をする気だ貴様等!!」
「それではイワン、運んじゃって下さい」
「ま、待て、やめろ!? よせ…ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!??」
半日に渡り、尋問という名目の虐めは続いたという。
場所は変わり、デルタの自室…
「ガハ、ゴホ…!!」
洗面所にて、デルタは口元を押さえて咳き込んでいた。
「はぁ、はぁ……コジマ抑制剤を使っても、キツいものはキツいですか…!!」
右腕で口元を拭いてから、デルタはベッドの上に倒れる。
(まだ、朽ちる訳にはいかない……少なくとも、今はまだ…!!)
デルタの右手には、少量の血が付いてしまっていた。
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