悠里の一日

みなさんこんにちは！あたしは張郃、字は儁乂。真名は悠里って言います！

本日はあたしが語らせてもらいます！

さてさて、あたしの朝は以外と早いんです。家族みんなのご飯を作らないといけませんから。

最近では、晋で習った料理も作ったりして子どもたちに好評です。

あ、あたしの子どもじゃないですよ？うち、孤児達を何人か保護してるんで、その子たちです

ご飯を作ったら、今度は出かける支度です。今日も晋でばりばり働いちゃいます！

悠里「いってきまーす！」

「おー、行ってらっしゃい」

今のはうちのお父さんです。と言っても血の繋がりはありませんが。

でもそんなこと関係なくお父さんが大好きです！

あたしが家を出る頃には、街はすっかり慌ただしくなります。

最近では、黄巾党も減ってきてさらに活気付いてる気がします

民1「おはよう、張郃ちゃん。今日も元気そうだねー」

悠里「おはようございます！元気はあたしの取り柄です！」

民2「やぁ、張郃ちゃん！今日は店に寄らせてもらうよ！」

悠里「ありがとうございます！必ず来てくださいね！」

街を歩いていると、このようにみんなが話しかけてくれます。

時々、差し入れとかも貰ったりしています。本当に嬉しい事です！

しばらく歩くと、私の勤め先である『晋』に到着します。

あたしはいつものように思いっきり扉を開けます

悠里「おはようございます！」

挨拶は元気よく！その方が気持ちが良いってもんです。

咲夜「おはよう、悠里」

返してくれたのは、あたしが姉さんと呼ばせてもらっている司馬懿こと咲夜姉さん！

あたしと同じ黒髪で、肩につくかつかないかくらいの長さの髪。

とても整った顔立ちで、女のあたしからみても綺麗だと思ってしまいます

悠里「今日もよろしくお願いします！」

咲夜「ああ、よろしくな」

そう言って咲夜姉さんは微笑んでくれた。

あたしと年は変わらないはずなのに、とても落ち着いている大人びた人。

東おじさんはたしか…クールビューティー？って言ってましたっけ。

とにかく！あたしがいろんな面で尊敬している方です！

あたしが別室で着替え終わり店内へ戻ると、厨房には男の人がいました。

この店の主人の東零士おじさんだ

零士「おはよう悠里ちゃん。今日もよろしくね」

悠里「おはようございます！お願いします！」

長身で、髪は寝癖のように跳ねています。本人曰くおしゃれだとか。

とても優しくて、面倒見の良い、どこか渋みのある男性です！

最初の仕事は店内の掃除です。飲食店なので清潔は保っておかないといけません。

咲夜姉さんと東さんは、料理の仕込み等、主に調理場で仕事しています。

お二人の動きは凄いですよー。以心伝心とはまさにこの事です。

何も話していないのに、お互い必要な物を必要な時に渡しています。

結婚はいつかと聞くと、東おじさんは笑って流すのに対し、

咲夜姉さんは思いっきり顔を赤くして話をそらそうとします。

意識しているのは咲夜姉さんだけみたいです

朝のお仕事が終われば、次はいよいよ開店です！あたしの業務内容は基本的に接客です。

東おじさんか咲夜姉さんが作った料理をお客さん達にお出しする係りです！

この時たまにお客さんとも話したりします。例えば…

悠里「あ！げんさん！最近、わんこちゃんとはどうですか？」

げんさん「何のことだ？つか、あいつを犬扱いしてんじゃねぇ！」

悠里「やだなぁ、げんさん。私は本当に犬の事を言ったかもしれませんのに、いったい誰の事を言ってるんですかねぇ？」

げんさん「ッ！さ、さっさと飯持ってこい！」

なんて、お客さんを弄ったり

悠里「あれ、ももさん？弟分さんが金返せって探してましたよ？」

ももさん「うげっ！弟めぇ～。奴は金の亡者か」

なんて、誰かの連絡係になることもあります。この街での顔が広い故ですね！

「失礼。ここにはメンマは、置いてないのですかな？」

零士「メンマ…ですか。申し訳ありませんが、うちでは扱っておりません」

お客が引き始め、店内が静かになった頃、店には一人のお客さんがいた。

うわぁ、綺麗な人だなー。でもなぜか、残念っていう顔をしてる。なにかあったのかな？

悠里「どうかしたんですか？」

零士「あぁ、悠里ちゃん。実はこちらのお客様がメンマをご所望でね。

でもうちはメンマ置いてないしなぁって話をしていたんだ。

咲ちゃんもさっき、買い出しに出ちゃったしでね」

メンマさん「うむ。宿の主人がこの店を絶賛されていたので来たのだが…

メンマがないとはがっかりだな」

零士「ほう？」

メンマさんは挑発するかのように言ってきた。

対して東おじさんも、なにか思うところがあったらしい

零士「こちらも本当に残念です。

メンマさえあれば、お客様に最高のおもてなしを出す事もできたのですが…」

メンマさん「ふむ」

なぜか二人とも、挑発しあっていた。

悠里「あ、あの！よければ買ってきましょうか？」

なんとなく空気に耐え切れず、あたしは切り出してみました。

すると視線があたしに集中したので、ちょっとビクッとなってしまいました。

だって、なんか怖かったんですもん…

零士「いいのかい、悠里ちゃん？」

悠里「はい！せっかく来てもらったんですし、東おじさんの料理食べてって欲しいじゃないですか」

メンマさん「ふむ、では私もご同行してもよろしいですかな？

メンマに関しては、私はちょっとうるさいですぞ」

零士「わかった。なら二人が帰って来るまでに、僕も最高のメンマ料理を考えておくよ」

というわけで、何故かあたしはメンマさんとメンマを買いに市にやって来ました。

なんていうかこの人、掴み所のない感じの人です

悠里「あ、そう言えば、お名前聞いてもいいですか？あたしは張郃っていいます！」

趙雲「私は趙雲だ。旅の武芸者で、今は仕えるべき主君を探す旅に出ておる者だよ」

お互いに自己紹介を済ませる。メンマさん改め趙雲さんは旅をしている人なんですね。

それにこの人、何気にスキがないなぁとは思ってましたが、武芸者だったとは

悠里「趙雲さんはメンマが好きなんですね」

趙雲「聞いてくれるか？メンマは私にとって命の次に大切なもの！そもそもメンマは…」

それから店に帰るまで、延々とメンマについての講義を聞いていました。

この人のメンマ愛がヒシヒシと伝わってきましたが、正直最後までは聞けませんでした

悠里「ただいま戻りましたー」

零士「おかえり。遅かったね。それにちょっと疲れてる？」

趙雲さんは、メンマに拘りがあるらしく、市についてからかなり時間をかけてメンマを探してしまいました。

もちろんその間も、メンマ講義は続いてました

趙雲「すまないな。最高の料理を出されるとあっては、

こちらも最高のメンマを用意しなくてはならないと思い、少々時間をかけ過ぎてしまった」

店を出た頃は、まだ陽は高い所にありましたが、今じゃすっかり傾いちゃってます

咲夜「メンマ？なんの話をしている？」

咲夜姉さんが裏からやって来ました。どうやらすれ違いに帰ってきていたようです。

私は咲夜姉さんに、今回の事について話しました

咲夜「メンマ料理ねぇ。大丈夫なのか零士？」

零士「ふふ、やるだけやってみるよ」

そして東おじさんは厨房に行き、調理を始めました。しばらくすると、いい匂いが漂ってきます。

零士「完成だ。本日限定、メンマ定食！」

東おじさんは自信満々に料理を趙雲さんにだす。

どれも見たことない料理ばかりだけど、凄くいい匂いがします！

零士「こちらからメンマ丼、メンマ入り豆腐ハンバーグ、そしてメンマです」

最後の一品はメンマなんですね。ん？ハンバーグ？

悠里「え？ハンバーグって肉を使うものじゃなかったんですか？」

そう。確かハンバーグは挽肉を使っていたはず。なのに今回は白いし、何より豆腐と言っていた

咲夜「完成していたのか？」

咲夜姉さんはどうやら知っていた様子。新作なのかな？

零士「あぁ。悠里ちゃんの言うとおり、ハンバーグは本来肉を使う物なんだが、

これは肉の代わりに豆腐を使っていてね。豆腐、ネギ、ひじき、そして今回はメンマが入っている。

油も使ってないから健康にもいいし、食べてもあまり太らないから女性にも向いているハンバーグなんだ。

いい機会だったから作ったんだけど、なかなかどうして、結構な自信作だよ」

悠里「ほぇー。そうなんだぁ。…ゴクリ」

やばい。ちょっと、いやかなり食べてみたいかも

零士「ふふ、まだ残ってるから後で咲ちゃんと食べておいで」

悠里「あ、ありがとうございます！」

趙雲「ふむ、この白いのはわかった。ではこちらの丼ものはなにかな？」

趙雲さんは、メンマ丼と称されたものを指差す。

零士「こちらは、メンマを卵とじにして、さらに特製のタレ、玉ねぎ、ネギなんかも入っている。

ちょっと濃口で作ったけど、メンマ本来の味もちゃんとある。こっちも自信作だね」

趙雲「調理されていないメンマがあるのは、何故なのですかな？」

零士「相当のメンマ好きとお見受けしたので、そのままのメンマも食したいと思い、出させてもらいました」

趙雲「ほほぉ、わかっておるではないか。では頂こうかな」

いよいよ実食の時。あたしが作ったわけでもないのにドキドキします！

趙雲「どれ、まずはこの白いのを…はむ…もくもく……これは！」

趙雲さんが豆腐ハンバーグを一口食べ、しばらくするとカッと目を見開く。ど、どうしたんだろう

趙雲「ふわふわの歯ごたえのはずが、時折あるメンマのシャキシャキ感、飽きが来る気がしない！」

おぉ、なにやら語り始めました

趙雲「こちらのメンマ丼も素晴らしい！

確かに濃口なのに、メンマの味はしっかり残っており、これがまたメンマとよく絡み合っている！」

どうやら絶賛のようだ。東おじさんも安堵の表情を浮かべています

趙雲「感服いたしました。私の名は趙雲、字は子龍、真名は星と申す。

貴殿の名を伺ってもよろしいですかな？」

零士「まさか趙雲とは……東零士だよ。しかしいいのかい？真名まで教えちゃって」

星「無論だ。確かに最高のメンマ料理であった。そのものに最大の敬意を払うのがメンマ道。

もちろん、そこの二人も真名で呼んでくれて構わない」

悠里「いいんですか？私は悠里っていいます！よろしくお願いします！」

咲夜「こいつら二人はわかるが、私まで呼んでしまっていいのか？ほとんど絡んでないぞ」

星「細かい事を気にするな。ここを気に入ったのだ。しばらくは入り浸る。

その都度、絡んでいけばよいだけの話ではないか」

咲夜「そうか。咲夜だ。よろしくな」

料理が凄いのか、東おじさんが凄いのかはわからないけど、また一人友達ができました。

この店では本当に、いろんな人達と出会えて退屈しません！

星さんが帰った後も、夜までお仕事をします。

夜になると時々、柄の悪いお客さんが来て迷惑する事もあるんですが、今日は平和に終わりました。

閉店後は掃除をして終わりです。掃除で始まり、掃除で終わるって感じですねー。

そしてその後はお風呂です！東おじさん曰く、「飲食店の従業員が汚いのって嫌じゃない？

それに一日の疲れを癒し、明日に備えるためにも、風呂は最適なんだ」だそうです。

毎日お風呂はそこらの貴族でも出来ない事なのに、

ここではそれが当たり前になっているから、本当に凄いですよね。

ちなみに、今日は咲夜姉さんと入りました。

詳しくは言えませんが、咲夜姉さんも意外と凄いんですよ？

お風呂から上がれば帰宅です。今日も一日よく働きました。

また明日も、楽しい一日なるといいな！