episode218 かつてそうであった者
千冬とハルファスベーゼは激しくメビウスの輪を描きながら刃を交えていく。
「くっ!」
「っ!」
ビームサーベルを逆手持ちにしてビームサイスの斬撃を受け止めると、左手のビームサーベルを突き出すもとっさに相手の力を利用して後ろへと飛び退いてかわす。
すぐに背中のウイングの間にあるキャノンを展開するとビームを放ち、ハルファスベーゼの左側のクロスバインダーを撃ち抜く。
「ぐぅ!」
ハルファスベーゼも左側を破壊されながらも右側のクロスバインダーを展開してキャノンを放ち、フリーダムの左側の翼とキャノンを撃ち抜いて破壊し、ビームが左肩のアーマー上部を掠めて装甲表面を蒸発させる。
両者は一部を破壊されながらも飛び上がり、激しく刃を交えながら上空を飛び交う。
「はぁぁぁぁぁ!!」
千冬は瞬間加速を掛けて一気に飛び出すと一瞬の速さで右手のビームサーベルを振るうも、ハルファスベーゼはビームサイスを振るって刃の軌道を無理矢理変え、左手を握り締めて拳でフリーダムの頭部を殴る。
「ぐっ!!」
衝撃で頭が揺さぶられるも、千冬は左手のビームサーベルを振り上げてハルファスベーゼの胸部を切り裂く。
直後に左脚を横に振るって右横腹に蹴りを入れて吹き飛ばす。
ハルファスベーゼは左手にビームサイスを展開してブーメランの様に投擲すると、その瞬間に千冬は両腰のレールキャノンを展開し、音速に弾丸を放つと同時にビームサイスに砲身が切り裂かれ、爆散する。
弾丸はそのままハルファスベーゼの胴体に直撃し、もう一発が左腕を撃ち抜いて破壊する。
「うおぉぉぉぉぉ!!」
千冬は勢いよく飛び出すと、左手のビームサーベルをハルファスベーゼに向けて突き出す。
「っ!!」
ハルファスベーゼは左手に持っていたビームサイスをとっさに右手に展開して振り上げ、フリーダムの左前腕を切り裂いた。
「うぐっ!!」
意識が飛びそうな位の激痛が千冬に襲うが、切り落とされた腕より血を流しながらもすぐに宙を舞う左腕の手に持つビームサーベルの柄頭に右手に持つビームサーベルの柄頭と連結させると、再度ビーム刃を出してそのまま勢いよく突き出す。
「っ!?」
ハルファスベーゼは避けるかも無く、ビームサーベルの刃が胴体を貫く。
「う、ぐふっ・・・」
「・・・・」
切り落とされた左腕より血を流し、激痛に耐えながらも千冬はハルファスベーゼを見る。
「き、貴様・・・・・・自らの腕を・・・囮に使ったのか」
「・・・そうでもしないと、お前の目は欺けないと思ったのでな」
痛みを紛らわすかの様に奥歯を噛み締める。
「・・・・」
「なぁに、腕は二本ある。一本ぐらい・・・どうって事は無い」
「・・・・」
ハルファスベーゼは俯くと、「くっくっく・・・」と静かに笑い出す。
「お前ほど面白いやつは見た事が無い。やられて尚、ここまで気持ちが昂るとはな」
「・・・・」
「お前に倒されるのなら、悪くはない」
「・・・・」
千冬はゆっくりとビームサーベルを引き抜きながらハルファスベーゼから離れる。
「さらばだ・・・織斑千冬よ・・・」
そう最後の言葉を語ると、ツインアイの光が消え、直後に爆散する。
「・・・・」
千冬は気が抜けてからか、フリーダムのPICが停止してそのまま海へと落ちていく。
「っ?」
しかし直後にアーロンのダークハウンドが墜落するフリーダムを抱えて回収する。
「なんて無茶を・・・腕を犠牲にするとは」
左腕がない千冬をアーロンは少し驚愕する。
「いつもの事だ。まぁ、さすがに今回はただでは済まんがな」
「・・・・」
「まぁ、いいんだ。これで」
「・・・・」
アーロンは一旦ネェル・アーガマへと帰還する。
――――――――――――――――――――
「・・・・」
周囲が爆発の影響で抉れている中、床に出来たクレーターの中央にフォビドゥン・アクアがボロボロになりながらも楯無は蒼雷旋を赤いレギルスの首に突き付ける。
「まさか・・・ここまでやるとはねぇ」
「・・・・」
「予想以上だよ。人と言うのはここまで力を付けれるものなのだとね」
敗北して尚、ドクターアルベルトは態度を崩さない。
「・・・あなたには理解できないわ」
「・・・・」
「私は以前あなたに憎しみを抱いて、あなたに復讐を果たそうと戦いに挑んだ。そしてあなたの思う壺となって負けた」
「・・・・」
「憎しみや復讐で戦ったって、何も生まない。ただ自分だけが苦しむって、そうやって言ってくれた人が居た」
「・・・・」
「私はもうあなたに復讐などは考えていない。ハヤセだって、それを望まないから」
「・・・それで、私をどうすると言うのかね?」
「・・・罪を償ってもらうわ。あなたがして来た罪を・・・全て」
そうして楯無は赤いレギルスにエネルギーチェーンを巻きつけて動きを封じる。
「ドクターアルベルト。あなたを拘束します」
「・・・・」
――――――――――――――――――――
「やれやれ。あぁも言っておきながらも、こうも簡単にやられるとはな」
「いや、ほとんど颯姉さんの活躍じゃん」
その頃リアスたちは、ネェル・アーガマの甲板上で拘束されているジアス、アインス、ツヴァイクを見張る。
「しかし、相変わらずやつは逃げ足が速い」
「そうだね。あの状況で私から逃れるなんて」
颯は格納庫より予備のスタングルライフルを持ってきてリアアーマーにマウントする。
「だが、一人ではどうする事も出来ん。あのまま逃がしても問題は無かろう」
シノンは背中の四連装マルチランチャーとビームキャノンを放ってレギナを撃ち落す。
「いや、あのシス姉だぞ。何をしでかすか分からないんだぞ?」
ノーヴェは両腕のアンカーの基部にマウントされているビームブーメランを両手に持って拭き放つと同時に放り投げ、レギナを二体切り裂く。
「そうっすね。まぁ、どうするんっすか、颯姉さん」
ウェンディはアローフォームにしたタクティクスアームズを前に向けて矢状のエネルギーを放ち、龍型無人機を撃ち抜く。
「・・・私が言うの?」
「今となっては、戦闘機人最強はお前だ。指揮を仰ぎたい」
「・・・・」
颯はシノンを見ると、ゆっくりと頷く。
「・・・兄さん達が戻るまで、私達でネェル・アーガマの護衛を!各自の判断に任せます!」
「了解した!」
「了解っす!」
「・・・・」
「分かった」
「あぁ」
そうしてノーヴェとノインはジアスたちを格納庫へと連れて行き、颯たちはネェル・アーガマの各所へと配置して敵を迎撃する。
――――――――――――――――――――
「く、くぅ・・・!」
その頃、ニューロ内部でシスターは壁を伝いながら前へと進む。
「まさか・・・このわたくしがあんな欠陥品共に・・・!」
歯を食いしばりながらも、一歩一歩前に出る。
颯と激戦を繰り広げるも、FXバーストモードを発動させたAGE-FXに滅多打ちにされて撃破される寸前に何とか逃げ延びた。
「まだ・・・ですわ。こんな所で終わるわけには・・・行きませんわ。わたくしの野望の為にも・・・!」
歩く度にクロノスの装甲が剥がれ落ち、関節のパーツより悲鳴が上がる。
「もっと・・・もっと・・・力が・・・私に力があれば・・・!」
「いいだろう。お前に力を与えてやろう」
「っ!?」
シスターはとっさに後ろへと振り返ると、その瞬間胸に何かが入る。
「うぐっ!?」
その瞬間身体が焼けそうな痛みが全身に走る。
「あ、がぁ・・・!?」
そして身体中を何かが蝕んで行き、次第にそこから色が漆黒に変化し、六角形の赤い斑点が次々と現れる。
その視線の先には、ファントムの姿があった。
「異なる世界で、そこで現れたアンノウンから手に入れた異端の力・・・」
「・・・・」
破損箇所が白く発光すると、次の瞬間には完全に元の状態へと戻る。
「喜べ。お前は最強たる力を手に入れた。但し――――」
そしてシスターの瞳が赤く発光すると、バイザーが目元を覆い、漆黒のボディーより六角形の赤い斑点が次々と身体中に現れる。
「代償として、お前はもう元の姿へは戻れない」
そうして悲痛な叫びを上げるシスターをよそに、ファントムは姿を消す。
――――――――――――――――――――
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
ティアは息を切らしながら周囲を見渡す。
周囲にはレギナや龍型と人型の残骸が転げ落ち、1、5ガンダムのボディーには無数の破損箇所が見られる。
「何とか・・・防衛は出来た」
後ろにあるニューロの駆動炉には、隼人より渡された爆弾と、スタルクリゲールが設置されている。
(後は・・・)
手元にある起爆装置を見る。
(・・・最後の仕事だね)
と、起爆装置を押そうとした――――
「っ!?」
その瞬間、背後から何かに突き刺され、胸から赤いビーム刃が飛び出る。
「あ、がぁ・・・!?」
震えながら胸から飛び出る赤いビーム刃を見ると、首だけ後ろを向く。
そこには六角形の赤い斑点が身体中にある漆黒のクロノスが居た。
「し、シスター・・・?」
ティアが言葉を漏らすと、クロノスのバイザーより赤いラインが横に発光すると、赤いビームサーベルをティアより引き抜く。
「・・・・」
そのまま床に両膝が付くと、前のめりに倒れる。
「・・・・」
シスターは後ろを振り向くと、右掌より赤いエネルギーを出すと、それを床に叩きつけて周囲に広げると、足元にある残骸に赤い光が浸透し、白く発光すると一つの形を形成し、漆黒のボディーの各所に六角形の赤い斑点が現れ、ツインアイやバイザーのラインが赤く発光する。
そうしてそのままシスターと同じ現象によって変貌した無人機たちを引き連れていく。
「う、ぐぅ」
胸から血を流しながらも、ティアは激痛に耐えながら立ち上がる。
(な、何が・・・あって・・・)
すると駆動炉区画に、更に無人機たちが集まり出した。
「・・・くっ!」
ふらつきながらも、ビームライフルを構える。
「死んでも、ここは・・・・・・死守する・・・!」
そして一斉に無人機たちがティアへと襲い掛かる。
――――――――――――――――――――
「うおぉぉぉぉぉ!!」
一夏はアロンダイトを振り上げ、マスターフェニックスがクロスバインダーソードを振り下ろして刃が激しく衝突して交わる。
両者は同時に弾かれるように離れると背中の左側の長距離ビーム砲を展開してビームを放つと、マスターフェニックスはクロスバインダーソードの剣先を向けて同じく峰の根元の銃口よりビームを放ち、ビーム同士が衝突して大爆発を起こす。
爆発が起きている中でも両者は飛び出して得物を振るって刃を交えると、一夏は左手を突き出すもすぐに右脚を振り上げて左腕を上に蹴り上げるとすぐに左手のクロスバインダーソードを振るうも一夏は瞬間加速を掛けて一気に後退する。
「はっ!」
すぐに右手のクロスバインダーソードを振り下ろすと光波を放つが、一夏はアロンダイトに零落白夜を発動させて纏わせて振るい、光波のエネルギーを消滅させる。
「面白い。面白いぞ!!お前との戦いは本当に血が滾る!!」
「あぁそうかい!!」
一夏は背中の光の翼を羽ばたかせて残像を出しながら接近するとアロンダイトを斜めに振り下ろすも、とっさにクロスバインダーソードを前に出して斬撃を受け止めると同時に押し返し、左手のクロスバインダーソードを振るって更に光波を放つ。
とっさに左手の甲よりリフレクターを出して光波を跳ね返すと、アロンダイトを勢いよく横に振るって光波を放ち、マスターフェニックスの右肩の先端を切り裂く。
「はぁぁぁぁぁ!!」
ヴィヴィオは床を蹴って跳び出すと拳を突き出すも、クイーンは横に飛んでかわし、背後から無人機が鉤爪を振るってくるがとっさに売り炉へと振り向く際に右脚を振るって無人機の爪を蹴り砕く。
「アクセルスマッシュ!!」
そのまま左手にエネルギー弾を纏わせて突き出して飛ばし、無人機の砕いたほうの左腕に直撃させて破壊する。
「っ!」
すると右からビーム状の鞭を撓らせて振るい、右肩のアーマーを叩き付ける。
「ぐぅ!」
するとクイーンは頭部の黄色いビットを切り離してヴィヴィオに向けてビームを放ってくるも、とっさに宙を蹴ってビームをかわす。
「アクセルスマッシュ!!クロスファイアー!!」
すぐに右手にエネルギー弾を纏わせて放つと、エネルギー弾は拡散して無数のエネルギー弾がクイーンと無人機を襲う。
「ちっ!」
ビットを破壊され、そのまま後ろへ下がると、無人機が胸部より砲口を出し、黒紫のビームを放つ。
「ディバイン・・・バスター!!」
背中のウイングより日の輪のようなエネルギーリングを展開し、オレンジ色のエネルギーを纏った右手を突き出して高エネルギーを花って黒紫のエネルギーと衝突させて大爆発を起こす。
輝春とクラリッサは交互にビームを放つも、フェニックスゼロは左右に飛んでかわし、両手に持つビームライフルを放つと両者は左右に散ってかわす。
「くそっ!」
エネルギー切れになったビームライフルを捨てると、両腕のシールドライフルを放ってフェニックスゼロを牽制すると、その間にクラリッサが接近して左手のバスターソードを振るうが、上へと飛び上がって攻撃をかわす。
「中々やりますね」
フェニックスゼロはバインダーキャノンを展開し、二人に向けてビームを放つも、輝春は残って右側のグラストロランチャーを展開してフェニックスゼロに向けて放つも、スラスターをふんしゃして右へと飛んでかわす。
その間にもクラリッサが一気に飛び出してロングバレルビームライフルを放ちながら左手のバスターソードを振るうが、フェニックスゼロは左手にビームサーベルの柄を展開すると同時にビーム刃を展開し、斬撃を受け止める。
「輝春!」
「おうよ!」
輝春はクラリッサがフェニックスゼロを押さえている間に反対側から接近し、右腕のシールドライフルよりビームサーベルを出して横に振るうも、フェニックスゼロはビームライフルを収納すると同時にもう一本のビームサーベルを出して攻撃を受け止める。
「くぅ!」
「っ!」
二人はスラスターを噴射してフェニックスゼロを両側から押すも、パワーは同等だった。
「「っ!?」」
すると突然その区画に大量の赤いビームが降り注ぐ。
「な、何だ!?」
輝春とクラリッサ、フェニックスゼロはとっさに赤いビームをかわし、他のメンバーも回避するが無人機は次々と撃ち抜かれて撃破されていく。
「無差別攻撃だと?」
「くっ・・・!」
一夏とマスターフェニックスは得物を振るって赤いビームを切り裂いて防ぐ。
「お前たちの無人機は見方でも攻撃するのかよ!」
「俺が知るか!」
「何が起きて・・・」
「・・・・」
するとビームが飛んできた方から、無数の赤い点が現れる。
「・・・・」
「あれは・・・」
そして変貌したシスターを筆頭に、同様の姿に変貌した無人機たちが現れる。
「何だ・・・こいつらは・・・」
「これは・・・この模様・・・・・・ま、まさか!?」
「貴様!一体どういうつもりだ!」
クイーンはシスターへと近付いていく。
「我々に刃向かうとは、何と言う――――」
「クイーン!!それからすぐに離れろ!!」
「なに?」
フェニックスゼロはとっさにクイーンに警告するが、次の瞬間にはシスターは右手を真っ直ぐに伸ばして手刀を突き出す。
「っ!?」
気づいた時には、手刀はクイーンの胴体を貫く。
「ぐぅ!」
とっさにシスターを蹴り飛ばすと、後ろに下がる。
「貴様・・・この私に傷を・・・」
しかしその直後、胴体より違和感が現れる。
「っ!?」
すると貫かれた箇所から全体へと黒く変色し始めていた。
「な、何だ・・・これは!?」
「・・・・」
見る見るうちに黒く変色していくと、各所に六角形の赤い斑点が出現する。
「―――――!!!」
次の瞬間には言葉にならない悲痛な叫びを上げ、ツインアイが赤く発光してうな垂れる。
「・・・やはりこれは・・・・・・『ネウロイウイルス』!?」
フェニックスゼロは驚愕の声を上げると、変貌したクイーンはこちらの方を向くと、無人機を呼び寄せると、自分と同じように胴体を右手を突き出して貫くと、同じように変貌させて自分の身体に合体させる。
「なんだ、そのネウロイウイルスって」
「・・・我らがあのお方より受け取り、開発した侵食型ウイルス。だが、あまりにも危険すぎて開発を中止した代物だ」
「あのお方だぁ?」
「お前たちには関係無い。だが、なぜあのウイルスがこいつらに」
フェニックスゼロはバインダーキャノンを展開して構える。
「どういう代物なんだ。ウイルスって言うからには、感染後何が起こる?」
「・・・ネウロイウイルスに感染したら・・・自我を失い、敵味方関係なく全てを破壊し尽すまで活動を続ける。私は便宜上あれを『ネウロイ化』と呼んでいる」
「ネウロイ化・・・」
輝春はじわじわと迫ってくるネウロイ化した無人機とシスター、クイーンを見る。
「人間達。お前達は気に入らないかもしれないが、こちらも同じ気持ちだ。今は争っている事態ではない」
「・・・・」
「このまま争っても、両者とも全滅を待つだけだ」
「・・・共同戦線を張ろうって言うのか」
少し苛立った様子で言う。
「今はそれが最善の策だ」
「・・・・」
「ここで死にたくないのなら、そうするしかないぞ」
「・・・・」
「お前たちと共同戦線だと・・・」
一夏も少し苛立った様子で言う。
「俺も同じ気持ちだが、あのフェニックスゼロがあそこまで本気になって言うのは、相当まずいってことだ」
「・・・・」
「・・・分かったよ。みんなも、それでいいか」
「・・・気は進まないが、今はそうするしかないのだろうな」
「・・・・」
「・・・僕も、それでいいよ」
「・・・・」
他のメンバーは渋々と承諾する。
「一つだけ言える事は、決してやつらの直接攻撃を受けるな。そうなったらもう終わりだ」
「聞いたな。絶対にやつらの攻撃を受けるな!」
そうして輝春達はバインド達と共同戦線を張り、ネウロイ化した者達に向けて攻撃を開始する。
―――――――――――――――――――――――
「・・・・」
隼人は前のめりに倒れているバルバトスを見る。
『ようやく・・・終わったんですね』
中に居るツヴァイがボソッと呟く。
「あぁ。これで、長かった戦いが終わる」
『これで、世界は救われたのでしょうか?』
「まだバインドが全て殲滅したわけじゃない。これから戻って援護に向かう」
『了解です!』
『はい!』
と、隼人は後ろを振り向いてゆっくりと前に進む。
「・・・ふ、フフフ・・・」
「っ!」
隼人はとっさに前のほうへと振り返ると、倒したはずのバルバトスが震えながらも起き上がる。
「まだ生きているのか!?」
隼人はとっさに身構える。
「見事だと・・・言っておこう。だが、これで終わりではない」
「なに?」
「我らが陛下が戻った今、貴様達に万に一つ勝つ要素は無い」
「陛下・・・だと?」
隼人は一瞬冷たいものが背筋に走る。
「精々足掻くがいい」
と、バルバトスはツインアイの光が消えると、そのまま前のめりに倒れて、バラバラに砕ける。
「陛下だと?どういうことだ?」
『バルバトスがバインドのトップではなかったのか!?』
『じゃぁ一体、陛下って言うのは・・・!?』
すると、玉座の上にある結晶体が輝き出す。
「っ!」
あまりもの眩い光に隼人は左腕でツインアイを庇う。
すると結晶体より何かが出てくると、そのままバルバトスの残骸の前に着地する。
「な、なん・・・だと?」
腕を退けてそれを見た隼人は、信じ難い光景に目を疑う。
目の前にいたのは・・・・・・エクセリオン・ゼロと瓜二つの黒い存在が居たのだ。
形状はエクセリオン・ゼロとほとんど同じで、角だけはエクセリオン・ゼロより猛々しくは無い。カラーリングはエクセリオン・ゼロで白と青、赤であった部分は黒く、金色であった部分は銀色に、黒い部分は赤くなっており、特にツインアイであった顔は赤いバイザーになっていた。
「何だ・・・この威圧感は」
擬似的に神経がぴりぴりとしており、軽く金縛り状態になっていた。
『なんてデタラメなエネルギー数値だ!?今までやつらとは桁が違う!?』
『それより、どうして隼人さんのエクセリオン・ゼロと姿が・・・』
「・・・・」
するとエクセリオン・ゼロと瓜二つの機体は顔を上げてアルティメット・ゼロを見る。
「やはり、お前は俺が思う以上の存在だな」
「・・・・!」
「だからこそだ。お前と言う存在を待っていたのだろうな」
「・・・何者だ。お前がバルバトスが言う陛下なのか!」
「そうだな。俺はバインドを全て統べる者。そして創造主だ」
「・・・・」
「我が名は『ダークネスカイザー』」
「ダークネスカイザー・・・」
「・・・と言うのは、通り名でな。お前だけには特別に本当の名を教えておこう」
「本当の・・・名前だと?」
『どういうことだ・・・』
『・・・・』
「俺の名は『レイ・ラングレン』。かつてはお前の様な存在だった者だ」
「な、に?」
『・・・・』
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トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!