目の前は真っ暗、何も見えない。
目を開ける、真っ白、何も見えない。
色が同化していて先が続いてるのかどうかわからない。
明るすぎて目がくらみ、目を開けるのが辛い。
なんとか明るさに瞳孔が慣れてきたため、状況を見る。あぁ、本当に真っ白だ。ここはどこだ?
僕は死んだのか?
もしかしてここは天国か? もし天国なら、嬉しいけどね。
って僕死んでるのに何言ってるんだ?
「初めまして」
不意に後ろから話しかけられると、僕は振り返る。
正に神様のような、白い神聖な服を着て僕の向かい側に立っていたのだ。金髪の神聖なる女性、この人には純白な服が似合っていた。頭をおおいまるで修道服みたいだ。
声は綺麗に残酷に、はっきりと、そして無感情にそう聞こえた。
あなたが神様ならちょうどいい、質問したいことがある。
…僕は、死んだんでしょ? 顔を彼女に向けて目を真っ直ぐ見た。
「えぇ、そうよ。五十嵐勇太君。それとここは天国などではないわ」
なぜ女神様だってわかったか?
そりゃお前…僕が名乗ってもない名前を言い当てたからね。しかもあの容姿、一発でわかりやすいでしょ神様なんて。
五十嵐勇太、それが僕の名だ。
あ、だけど天国じゃないのね。天国に行けて少し嬉しかったんだが…
誤解を招く言い方だが、五十嵐勇太は自殺志願者ではないことをここに記しておく。
▼ ▼ ▼
五十嵐勇太はただの一高校生であり、何の特技もない、平凡な高校二年生である。
そんな奴が死んで世界が変わるかと言われたら、変わらない。
そんなものだと思う。死ぬって事は。人に忘れ去られても時間は残酷に過ぎるだけで、世界は何事もなく回る。
そして僕こと、五十嵐勇太は…
「簡潔に言うわ、あなたは死んだの」
「不慮の交通事故でね、女の子を助けた」
簡潔にスパッと言ってくれた神様。ただ…簡潔すぎてびっくりした。
もうちょっとこう…なんていうか、感情を入れて欲しいというか他人事かもしれないけどもうちょっと同情して欲しいというか…いや、何でもないです…
「…それは、私が悪かったの」
悪い? どうして?
「いやね、ちょっとした手違いで死なせちゃったのよ…本当に。ごめんなさい」
いや、気にしなくていいさ。別に神様のことは攻めたりしないよ。
「許して、くれるの?」
あぁ、まぁ短い人生であったけど僕はそれなりに楽しめたと思うよ。後悔なんて山ほどあるけど。
だけど、いいんだ。気にしないで。
「優しいのね、あなた。いやぁごめんごめん(棒)
怒られなくて済んだわ~、はぁ…やっと荷が下りたわ~」
ちょっと待てやぁ!!
「はい?」
すっとぼけんな!
お前それ全ッ然謝ってないよな!
それにちょっとした手違いって何なの? それって死ぬようなもんなの!?
さっきの神様だろう発言取り消す必要がありそうだよ、人、いや神様は見かけによらないってことが今ここで
わかったよッ!!
僕は全身全霊のツッコミをして、執拗に質問を当て続ける、そりゃ必死になるだろ。
僕の人生をいやぁごめんごめん(棒)で片づいたら警察いらねぇよ!
今言った警察はここでは関係ないけども!
「禁則事項です♪」
女神様のウインクを直に受ける。まぁ顔は整ってるから様になってるけど、ありえないわ。呆れるわ。
可愛いからって何でも許されると思ったら大間違いだ。
ホント、僕は女の子を助けたはずが女神様に、いやこの死神様の鎌に掛けられた挙げ句、死んだと思うと…
「はぁ、はぁ…ちょっと一つ聞いていい?」
「何かしら? 禁則事項以外なら」
頭が混乱するからその回答はやめてくれ。
僕が助けた女の子、今も無事…だよね?
というか、僕が助けた意志って…僕だけのものだよね? その禁則事項に操られたってわけじゃないよね?
質問だらけだが、聞きたいことなんだ。どうしても…それだけは…
「えぇ、無事よ。何事もないわ。あなたが死んだこと以外は。
後もちろんそれはあなたの意志よ、助けようが助けまいがあなたは必ず死んでいたわ、不死身でない限り」
もうちょっとオブラートに包んで言ってくれないかな? すげぇ嫌な気持ちになるんだけど。
まぁ、無事ならいい、それで満足だ。
それで僕は死んだならもうここに用はないはずでは?
連れってくれるなら天国がいいね。
…自分が死んだはずなのに何前向きなこと言ってるんだと思う、うん、本当におかしい。
「そう、今からあなたはもう一度生きてもらうわ。私の償いであなたを生き返らせる。要は―――転生よ」
転生…? って何?
「あら知ってるのかと思ったわ。あなたみたいな高校生ならこういう話しは飯の種かと思っていたんだけどそうでもないのかしら?」
いや、知らんけど?
「そう、後転生させてあげるのに死神とは失礼ね、鎌なんて持ってないわよ」
いや、比喩だけど? ほら、死神って鎌持ってるイメージあるじゃない、トランプのジョーカーの絵柄にある奴で死神見たいな奴が鎌持ってるよね。
「あぁ、そう。トランプは私もやってるわ。まぁ私はポーカーのほうが好きだけど」
「女神様がポーカーやるんかい!」
賭けをしてるとか神聖な神様が何やってるの!?
あからさまに当たり前ような感じで言ってるけど、みんなが考える女神様のイメージが人間的でびっくりしたよ!
その女神様は顎に人差し指を当てて、上向きになってそう言った。
「で、あなたを転生させるんだけど…」
で、じゃないっつの…
スルーとか、心は鋼で出来ているのかい? 言ってる間、ポーカーだけにずっとポーカーフェイスだからさ。
…審議とかやめてよね。
「どこの世界がいい? あなた自身が選ぶ権利があるわ」
流石に僕の世界に戻ったらダメ、だよね…というか、もう以前に会った人とは会えないんだよね。
「そうね、それに時代や場所はこちらで選ばせてもらうわよ。そんなことさせたら禁則事項みたいなことが起こるから。以前に会った人と会わせるなんて、危険なことはさせないし、記憶も消去させられるわ」
やっぱりか…
記憶は、覚えていたい。みんな…といっても両手で数える程度だけれども、
それでもかげがえのない僕だけの記憶だから、それだけは消されたくない。
「へぇ、信念は強い方なのかしら? そういう真っ直ぐな人は好きよ」
そ、それはありがとう、綺麗な人に好きなんて言われたのは初めてだよ。
「それに意外と一級フラグ建築士のスキルを天然で持っている…?」
ぶつぶつと何か唱えてる神様がだったがスルーし、とりあえず自分がいた世界以外を考える…何でもいいんだけどな、僕が住んでる並行世界でも…
「ならこちらで選んでしまっても構わないのね」
あ、あぁ…危ない世界以外ならいいけど?
なんかこう…地球が荒廃してる世界とか、ウイルスが俟ってるゾンビだらけの世界は回避したい。二度目の死を迎えたくない。
「わかったわ、そうね…
それじゃ魔法少女の世界にレッツゴーしてみましょ」
それじゃ魔法少女の世界って何だよ! それに軽いななんか…!
どうやって決まったのか恐ろしいな。
「構わないって言ったわよね? 異論は認めない」
ぐうっ…やっちまった…自分で選択すると言えばよかった。
わかったよ、それでいい。ちなみにその魔法少女の世界って?
「魔法少女リリカルなのは、という世界よ。知らないのなら今ここで教えるけど?」
「頼むよ、ああえーっと…」
「どうしたの?」
「ストーリーはいいや、その魔法少女に会いたくないし…変なフラグ立つの嫌だし…
世界観だけ教えてもらえれば後はこっちでなんとかするよ」
リリカルなのは、聞いたことはあるけど、見たことはないや。魔法少女はおじゃ魔女か、
初代プリキュアとか…ハッ!
まずいな、僕がどの世代かがバレる…!
▼ ▼ ▼
一通りは教えてもらったが、意外に難しい設定が多いな。魔法少女にしては…
まぁ聞き流してしまった部分は多々あるけど、大丈夫でしょ。ということで準備が出来たため、早速行く事になった。
「それと、あなたにも一応能力をつけておくわよ、何かあった時のために。
能力の詳しいことはあちらで行ってからお願い、あなたの記憶を引き出してつけておくから」
まぁ、用心に越したことはないからお願いするよ。出来れば痛いのは嫌だし、戦いたくないけどもしものための常套手段だ。
「それと容姿はどうする? このままでいいの?
まぁあなたはかっこいいからそのままでいいんじゃないかしら?」
それはどうも、褒められて悪い気はしない。といっても自分ではかっこいいなんて一度も思った事無いけど。
「時々キモオタみたいな奴がやってくるんだけど…」
それってあんたが死なせたからじゃないのか?
「そういうのに限って要望がうるさいのよ。
金髪オッドアイにしろとか、能力チートでktkrとか」
さ、さいで…
メタ発言過ぎてよくわからんが、そういうことだろう。そういうことってどういうことか自分でもわからんが。
ここの世界観がそろそろ崩れ始めそうなのでこの話しを打ち切り、本題に戻る。
答えの方は変わらなくて良いよ、このままで。
「じゃ、いってらっしゃい。勇太くん」
魔法陣が僕の下に輝き始め、白い光が僕を包む。
「あ、あの! 最後に…名前、教えてもらっていい?」
神様ばっか言ってて結局名前聞かなかったらここに来て聞いた。
「私は女神タリエル、タリエルとでも呼んで」
タリエル…
それじゃもう会わないけど、さようなら。
「手紙でも送れるから会えない訳じゃないわよ、間接的にだけど」
言い終わったとき、僕は魔法陣に包まれ視界が真っ白になる。
どんな物語が待ってるんだろうだなんて…考えないし、考えたくもない。
それと後になって後悔するのだが、生まれた場所と時間も。
「あ、それと設定は主人公たちと同じ場所、同じ時代、同じ年齢で生まれているから。
たぶん会わずべくして会うんじゃないかしら? ふふっこれでハーレム主人公決定ね、wktk」
こ、こいつ…! 死神でもない…!
僕の望みをも踏みにじった、
「悪魔だぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁ!!」
魔法少女ってことは絶対に化け物とかを相手にするわけだけど…
僕の目の前に現れるのだけはやめてくれよ…ハッ!
それフラグじゃない!? 押すな、押すなよぉ…のフラグじゃない!?
こんな締め方で悪いけど、とりあえずはここで締めさせて欲しい。ちなみに今僕は真っ逆さまに落ちている。身体中の力が抜けて重力に逆らい頭から落ちている。周りは何の境目めもな単一色の真っ白な世界のままだ。底が見えない、いつまで落ちればいいのだろう…
頭に血が昇り始めて酔いそう…
平凡に生きていたいという願いは叶うのだろうか、無理か…こうなるなら自分で決めればよかった。
全く…後悔ばかりだ。
僕が書く最初の一ページをここに刻む…
なんてキザのことをしてみたり。そしてまた視界は真っ白になり、僕は意識を手放したのだった。
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とある少年、五十嵐勇太はある少女をたすけるために事故に遭い
死んでしまう…
彼は神様のミスによって死んでしまったため償いとして転生させてもらい、リリカルな世界へと旅立つ。彼の目に映るは何の物語か。
これは、英雄になるまでの物語。
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