No.623953

涼宮ハルヒの恋姫5

ガリ眼鏡さん

脇役登場

2013-09-30 16:25:59 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:541   閲覧ユーザー数:527

 

 

 

暑い……

 

 

ちょっと暑い。なんとなくそんな気がした。関羽さん達と同行して一ヶ月くらい、桜の花が散るこの時期には暑さを感じてもいいくらい晴れ渡っていた。本日も晴天なり。てか?そんなある日の出来事。

 

 

 

 

鈴々「や~ま~があ~るか~ら山な~のだ~♪か~わがあって~も気にし~ない~♪」

 

とある山中にて、鈴々が妙な歌を歌いながら先頭を歩いていた。

 

関羽「こら、妙な歌を大声で歌うな…恥ずかしいではないか。」

 

鈴々「何言ってるのだ!山の中を歩く時は熊避けのために歌を歌った方がいいのだ!じっちゃんがそう言ってたのだ!♪」

 

注意にも構わずニコニコする鈴々に、関羽さんはあきれ顔になる。俺も歌おうかな?

 

星「そうだ。こんな山奥で愛紗と鉢合わせしたら、熊が驚くだろう。」

 

関羽「そうそう、こんなところで私にバッタリ会ったら熊がかわいそう…ってなんでだ!! 」

 

さりげなく星に釣られて発言した関羽さんが即座にノリツッコミを返す。と…急に星がニヤリと笑みを浮かべた。

 

関羽「な、なんだ?私の顔に何かついてるか?」

 

星「いや、公孫賛殿よりもやはりお主の方が面白い。と思ってな。」

 

関羽「は、はぁ…」

 

星の返事に微妙な表情になる関羽さん。するとその時……

 

 

 

???「きゃあああああああああああああああああ!!!! 」

 

どこからか悲鳴が聞こえたのであった。

 

 

第五話『キョン、化け物を退治せんとするのこと』

 

 

 

山の中にある人気のない場所…そこでは白い着物の少女が三人組の賊に追い詰められていた。

 

白い着物の少女「ひどい…!私を騙したのですね…!」

 

アニキB「別に騙しちゃいねぇさ」

 

白い着物の少女「けど…!村への近道を教えてくれると言ったのに、こんな所へ連れてきて…!」

 

追い詰められながらも、少女は臆することなく賊たちにまっすぐな視線を向けていた。

しかし賊の頭目はニタニタと怪しい笑みを向けながら口を開く。

 

アニキB「近道ならちゃんと教えてやるぜ?もっとも村へのじゃなくて、天国へのだけどな」

 

白い着物の少女「天国!?それじゃあ…私を殺すつもりなのですね…!?」

 

チビB「そうじゃねぇよ。気持ち良くして天にも昇る心地にさせてやるのですよ♪」

 

少女の問いかけに賊たちが笑いながら答えた……その直後。

 

関羽「お前達の連れて行ってくれる天国とやらは、たいそう良いところのようだな?」

 

アニキB「そりゃあもちろん最高に…って、なんだおめぇら!?」

 

突然聞こえた声に賊たちが振り向く、そこには俺、関羽さん、鈴々、星の四人がいるだろう。

 

星「聞いて驚け!この者こそ、噂と違って『絶世の美女』ではないので気付かぬかもしれんが!! 」

 

関羽「おい!! 」

 

星「黒髪の山賊狩りだっ!! 」

 

前に出て、関羽さんの紹介を済ませ(関羽さんは内容にツッコミを入れていたが)、自身も武器を構える星。

 

鈴々「弱い者いじめする奴は許さないのだ!! 」

 

キョン「覚悟の上、できてるな?」

 

同じように武器を構える俺と鈴々に続き、関羽さんも勇ましく前へ出る!

 

関羽「残念ながら天国への道案内はしてやれぬが…!! 我の偃月刀で、地獄へ送ってやろう!! 」

 

アニキB「やれるもんならやってみやがれぇ!! 」

 

恐れることなく賊たちは襲い掛かる………が。

 

バキーッ!!

 

チビB「地獄へぇ~~!! 」

 

ドカーッ!!

 

アニキB「行ってぇ~~!! 」

 

ゴシャーッ!!

 

デブB「きまぁ~~〜!! 」

 

パコーンッ!!

 

賊B「酢〜〜〜!! 」

 

あっさりと吹っ飛ばされるのであった。

 

鈴々「ザマミロなのだ!! 」

 

キョン「やれやれ。」

 

賊達を吹っ飛ばした俺達の元へ少女が駆け寄る。

 

白い着物の少女「助かりました…ありがとうございます。あんな怖そうな人達を、あっという間にやっつけちゃうなんて…皆さん、本当にお強いんですね。」

 

関羽「い、いや、何…それほどでも…///」

 

キョン「当然のことをしたまでです…」

 

純粋な眼差しを向ける少女に対し、やや照れくさそうに返事をする関羽さん。

 

白い着物の少女「あ…申し遅れました。私は……」

 

ふと、少女は自己紹介をしようとした…のだが、若干考えるようなそぶりをした後…

 

白い着物の少女「と…と……トントンと申します!! 」

 

鈴々「鈴々と似てていい名前なのだ!」

 

トントン「そ…そうですか…」

 

しかし少し無理のある名前を名乗ったが鈴々の受けは良かったようだ。改めて、関羽さん達も自己紹介を始める。

 

関羽「私は関羽。」

 

鈴々「鈴々は張飛なのだ!」

 

トントン「…貴方様は…」

 

星「趙雲です。」

 

キョン「俺はジョンスミスです。」

 

トントン(へぅ///スミスさん、かっこいいです////)

 

自己紹介を終えたところで、関羽さんが口を開く。

 

関羽「どうです、トントン殿?村の方へ行かれるのなら、我々と一緒に行きましょう。」

 

トントン「よろしいのですか?」

 

鈴々「気にすることないのだ!『旅は道連れ、世は』…世は……」

 

『世は情け』が答えなのだが、その先が出てこない鈴々…と、ここで星が一言。

 

星「『酔わせて何をするつもりぃ?(ちょっと色っぽく)』だ。」

 

鈴々「そうそう、それなのだ!」

 

関羽「ちっがーう!ていうか、それじゃ意味が分からないだろう!」

 

キョン「はぁ…やれやれ。」

 

星の冗談を普通に聞き入れる鈴々にツッコミを入れる関羽さん、そして俺のため息。その光景を見て、トントンは微笑んでいた。

 

 

 

 

 

ここは、とある太守の屋敷。様々な資料を抱え、太守の部屋に訪れる人物の姿があった。その人物の特徴は緑髪のおさげで眼鏡をかけた少女…名は賈駆、字は文和。彼女はこの屋敷に仕える軍師であり、自分の仕える太守の元へ報告と確認を兼ねて資料を運んできたのだが……

 

賈駆「…あれ?月…月!?どこにいるの!?」

 

肝心の太守は、忽然と姿を消していた。

 

賈駆「あの子ったら…また性懲りもなく抜け出したのね…!ったく、この忙しい時にぃ~…!」

 

この会話から察するに、賈駆は“月”と呼ぶ太守は度々屋敷を抜け出すらしい。プンプンと怒ってる賈駆が歩いていると…廊下の突き当たりで、一人の女性とはち合わせる。灰色の髪の女性、名は華雄と言う。彼女もこの屋敷にしかえている人物の一人。

 

賈駆「あ、華雄将軍…」

 

華雄「なんだ、賈駆ではないか。浮かない顔でどうした?」

 

賈駆「月が…いや、董卓様がまたいなくなってしまわれて…」

 

華雄「というと…例のアレですか?お忍びで下々の暮らしぶりを見て回るという…」

 

賈駆「えぇ…」

 

華雄「やれやれ。…困った太守様だな。」

 

賈駆「領民と触れ合って直にその声を聞くのは、決して悪いことではない!」

 

華雄「なら別に良いではないか?」

 

賈駆「そうはいかないわ!ここのところ地方の賊の征伐に人手を取られて、逆にこの辺りの治安は悪くなっているというのに!それに、物の値段が上がって民の間では不満が募っているし…山の方では人食い熊が出るとか何とか!! 」

 

華雄「おっ落ち着けって。賈駆。そんなに心配ばかりしていては早死にするぞ?」

 

賈駆「華雄将軍…貴方達は悩みがない分長生きしそうねぇ?」

 

華雄「ま、身体は鍛えてるからな!! 」

 

今日は此処も平和………………なのか?

 

 

 

 

 

 

村へと向かう俺達は、トントンからある噂話を聞いていた。それは………今から向かう村に化け物が出ると言うものである。

 

関羽「えぇ?化け物?」

 

トントン「はい…ある日、村の庄屋様の門に白羽の矢が打ち込まれ…それについていた矢文に『今宵、村の外れにある御堂に食べ物を備えよ。さもなくば災いが降りかかるであろう』と書かれていたとか…最初はたちの悪いいたずらだと放っておいたらしいのですが、朝になると門前に山から運ばれてきたと思われるとても大きな岩が置かれて………」

 

星「ほう………」

 

トントン「『これは人間業とは思えない。化け物の仕業だ』と考え、その日の夜に御堂に食べ物を備えたところ、それ以降は大体七日に一回の割合で催促の矢文が打ち込まれるようになったのです。」

 

キョン「なんと奇っ怪な…」

 

トントン「ですけど、これはあくまで街で聞いた噂…本当かどうか確かめたくて…」

 

ふと、ここで星が。

 

星「しかしトントン殿、何故そのようなことを?…ただの娘が思いつきでやることとはとても思えぬが」

 

トントン「え!?あ、いや…それは、その……」

 

キョン「……?」

 

確かに、村娘が興味本位でやることとは思えない。指摘されてしまい、トントンが慌てていると……鈴々が突然声を上げて何かを指差す。

 

鈴々「なんなのだあれは!?」

 

指が差された先には既に目的の村があったのだが、注目すべきは………庄屋の屋敷の門前にデンと置かれた巨大な岩。近くで見てもかなり大きく、それなりに大きい門をあっさりと越えてしまっている。

 

キョン「…これは……」

 

トントン「きっと、これが化け物の運んできた岩ですのね…」

 

関羽・鈴々「「(ゾワッ)!! 」」

 

こんな大きい岩を運ぶなど…どう考えても人間業とは思えない。俺を初め、関羽さん達も実感していた。

 

俺達は庄屋の元を訪ね、改めて話を聞くことにした。

 

トントン「庄屋様…それでは化け物が出ると言うのは、やはり本当だったのですね?」

 

庄屋「はい…困り果ててお役人様にも訴えてみたのですが…『化け物が出たなどといい加減なことを言って御上の手を煩わせるな』と、お叱りを受ける始末…」

 

トントン「そんなひどいことを…!! 」

 

思わず立ち上がるトントンにポカンとする一同。我に返ったトントンが座ったのを見てた、結構凄い人だな。そして庄屋は改めて話を続ける。

 

庄屋「それで、村の力自慢の若者や旅の剣客などに化け物退治をお願いしたのですが…いずれも手に負えず、ホウホウと帰ってきて…」

 

関羽「そんなに恐ろしい化け物だったのですか?」

 

庄屋「…しかと姿を見た者はいないのですが、ある者は身の丈三尺の身体で赤く眼を光らせていたとか、ある者は鋭い角と牙を持っていたとか、全身毛むくじゃらで唸り声を上げていたと言う者もいて…一体この村はこの先どうなってしまうのか…」

 

化け物の容姿について色々な例をあげる庄屋の話を聞いて、関羽さんと鈴々は若干怯えている。

 

星「こういう時こそ我々の出番だな」

 

関羽・鈴々「「ええぇっ!!!!!?」」

 

星「ん?どうした?お主たちから言い出すと思っていたが?」

 

突然の星の申し出に驚く関羽さんと鈴々。星はというと、逆に驚く二人を見てキョトンとしていた。

更にトントンは星の申し出を受け入れている。

 

トントン「お願いできますか?」

 

庄屋「ですが、相手は正体不明の化け物…」

 

トントン「この方たちは、恐ろしい山賊をあっという間に倒してしまうほどお強くて…ですから、化け物相手でも自信がおありなのでしょう。」

 

庄屋「おぉ…ならば是非…」

 

最初は庄屋も戸惑ったが、トントンの言葉を聞いてもしかしたらと思い頼みこもうとする。

しかし関羽さんと鈴々は何故か困ったような反応を取る。

 

関羽「い、いや、そんな勝手に決められても…!」

 

鈴々「そ、そうなのだ!鈴々にも色々と都合があるのだ!」

 

トントン「駄目なのですか……?(ウルウル)」

 

関羽「う…!だ、駄目……ではないが……」

 

トントン「お願いします…村の方々が困っているんです…(ウルウル)」

 

関羽「っ…」

 

トントン「お願いします……(ウルウル)」

 

ウルウルとした視線を送るトントン。…可愛い、撫でたいな。

 

関羽「…そ、そういうことなら…」

 

トントン「良かったぁ…引き受けて下さるのですね!」

 

関羽「あ、いや、別にそういうわけでは…!」

 

トントン「ありがとうございます!」

 

喜びながら手を取るトントンに、関羽さんも鈴々もますます断りきれなくなったと気まずい表情を浮かべていた。

 

星「……ふふん…♪」

 

キョン(あ、なんかいやらしいこと考えてる。)

 

そんな二人を見てニヤリと笑みを浮かべる星を見て、俺も微妙な顔をしていたのはここだけの話。

 

 

 

 

 

キョン「それにしても、こんなデカイ岩をよく投げられるな。」

 

俺の世界でもデカイ岩を持ち上げられる奴はいない。この世界の怪力の人物か、はたまた別の人物か……

 

 

そんなとき。

 

 

???「あの化物のおかげで此処の食べ物も無くなる寸法になるぜ。」

 

???「何とかして食い止めなくちゃねぇ。」

 

この邑の住民だろうか。しかし、何処かで聞いた声だな。そして振り返る。其処には、俺の世界に居た脇役にて雑魚中の雑魚。

 

キョン「お前等!」

 

???「ん?」

 

???「え?」

 

キョン「谷口、国木田!久しぶりだなぁ!」

 

 

谷口と国木田がいた。

 

 

谷口?「…なんだそのダサい名前は。そしてお前は誰だ?」

 

 

 

 

 

 

……は?

 

 

 

 

 

 

キョン「おいおい。冗談は無しだぜ。俺だよ、ジョンスミスだ!」

 

 

…しまったぁぁぁぁぁぁ!!! 何故偽名を言ったんだ俺はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

 

谷口?「ジョン?知らねぇなぁ…村木田(そんきだ)、知ってるかぁ?」

 

村木田「僕も知らないよ。君は誰なんだい?」

 

そりゃそうだよなぁ、偽名で言っちまたんだから。

 

キョン「ほらぁ、いつもあだ名で呼んでたじゃねぇか。キョンって…」

 

谷口?「……俺はお前と会うのは初めてだが……それにしても間抜けな顔だなぁ。」

 

村木田「谷崎(たにざき)!そんなこと言っちゃ失礼だよ!」

 

谷崎「おぉ、そうか?そいつは失礼した。俺は谷崎。字は無い。」

 

村木田「僕は村木田。谷崎と同じで字は無いからそこの処は宜しく。」

 

谷崎?村木田?変な名前だなぁ……俺を初め見るとは………だが、一理言える。こいつらは俺の知ってる二人だが、俺の知ってる二人じゃなく、赤の他人になってる。おそらくあの鏡が原因なのではないか。はたまた、ハルヒの仕業か……だな、ありえる。あいつといると、ろくな事がないからな。ハルヒの片鱗はよく知ってるし、長門や古泉や朝比奈さんからハルヒのことを聞いてるからな。長門曰く、『進化の可能性』。朝比奈さん曰く、『時空の歪み』。古泉曰く、『神』。そんな三人が要注意とする人間、涼宮ハルヒ。……なんで俺はハルヒのことを説明しなければならないのだ。…ていうか最初の話何だっけ?

 

キョン「谷崎と村木田か…改めて俺は性がスミス、名はジョン、字は無いからジョンとでも呼んでくれ。」

 

谷崎「おう!こちらも宜しくな。処でジョン。あの岩を投げたのはどんな奴だと思う?」

 

キョン「知らん。怪力馬鹿がやったか、誰かがやったか…だな。だが、怪力馬鹿でもこれは持てないだろうという推測ができる。たとえ持てたとしても、ちょっとの距離しか飛ばない。というところだ。」

 

村木田「僕も同じ事を考えてたよ。やっぱり化物なのかなぁ…」

 

谷崎「絶対化物にちげぇねぇ。食べ物貰って何がしたいんだが……」

 

キョン「う〜〜〜〜〜ん………………」

 

 

 

そんな事を考えてると、

 

 

 

関羽「ジョン殿ーっ!」

 

キョン「あっ、呼ばれてる。そんじゃな谷崎!村木田!」

 

 

そして俺は関羽さんの元へ急ぐ。

 

 

 

谷崎「……何処かで会ったかのような感じがする……」

 

村木田「僕もそう思ってたよ。彼はいったい……」

 

 

 

 

 

その日の夜…一同は大量の食べ物を積んだ荷車を引く村人や庄屋と一緒に御堂へと向かっていた。松明を片手に進む山道は薄暗く、辺りを警戒しながら進んでいく。

と…ここで星が口を開いた。

 

星「二人して何震えている?もしかして怖いのか?」

 

関羽・鈴々「「(ビクッ)!! 」」

 

どうやら本当に怖いらしい。

 

鈴々「こ、怖くなんかないのだ!」

 

関羽「そ、そうだ!この震えはその………武者震いだ!」

 

空気を読んでいるのかいないのか分からない発言に、必死に反論する関羽さんと鈴々。「武者震い」と言い切る関羽さん。突っ込んでいいのかなぁ?そう考えてると…

 

星「む!(ピタッ)」

 

関羽・鈴々「「ひゃーーっ!?」」

 

キョン「どうした?何か出たのか?」

 

突然星が立ち止まり、関羽さんと鈴々も軽くだが悲鳴を上げる。俺は問いかけるが……

 

星「いや……せっかく月がキレイだったのに、雲が出てきたなと思ってな」

 

関羽「な、なんだ…そんなことか…」

 

大した問題ではなかったようなので、再び先へ進む一同。と…

 

星「あ!(ピタッ)」

 

関羽・鈴々「Σひえぇっ!?」

 

キョン「今度はなんだ?」

 

再び立ち止まった星に、又俺が問いかけるが…

 

星「昨日茶店で団子を食べた時、愛紗。お主私より一本多く食べただろう?」

 

関羽「た…確かにそうだったかもしれぬが…今そんなことを話さなくても…」

 

キョン「星、わざとやっているだろ……」

 

またどうでもいい話題を引っ張り出し、のうのうと先へ進む星。……やれやれ。

 

 

 

やがて御堂に辿り着く俺達。積荷を荷車から降ろした後、俺達に後を任せ、庄屋達とトントンは先に村へ戻ることになった。

 

庄屋「では…頼みましたぞ」

 

トントン「化け物退治、頑張って下さいね。」

 

関羽「う、うむ!」

 

鈴々「ま、任せるのだ!」

 

トントン「気をつけて下さいね。スミスさん。」

 

キョン「え?えぇ。」

 

 

庄屋たちが去った後、俺達は御堂の中へと入る。ろうそくの明かりがないと真っ暗になりそうなくらいの薄暗さで、いかにも何か出そうな雰囲気だ。とにかく化物が出るまでは御堂の中で待機することになったのだが…

 

星「そう言えば…あれもこんな風に月の出ない夜だったな…」

 

関羽・鈴々「「(ゴクッ)…!」」

 

その時に関羽さんと鈴々は俺の腕を掴んでいる。…嬉いのだが、離れて下さい。

 

 

※ここからしばらくは、星の怪談話をお聴き下さい。

 

 

 

 

………………………………………

 

 

 

 

 

日のあるうちに山を越えるつもりで歩き始めたのだが、どこかで道を間違えたのか行けども行けども人里は見えず…これはもう野宿するしかないと思った矢先…どこからか、春先のものにしては妙に生温かい風が吹いてきて…ふと御堂を見つけ、そこで休むことにした。

 

どれほど眠ってしまったのか、カリカリと何かをひっかくような音で私はハッと目を覚ました。最初は天井裏でネズミが立てている音かと思ったが…よ~く耳を澄ましてみると、どうやら「それ」は真新しい棺の中から聞こえてくるらしい。嫌な予感を覚えつつ、それでも何故かまるで吸い寄せられるかのように私は棺の蓋に手をかけ、恐る恐る開けてみると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星「う゛あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 」

 

関羽・鈴々「「ひやああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!! 」」

 

 

突然の星の絶叫にビビり気絶する関羽さんと鈴々。そしてそのまま倒れた。俺はこの話、怖くなかったが、両腕が痛てぇ。

 

 

星「おっと…ちょっとやり過ぎたか?ジョン殿が怖がらながったのが残念ですが……」

 

キョン「全く…ほら、関羽さん、鈴々。」

 

 

とにかく俺は関羽さんと鈴々を起こす。しかし目を開けた二人の視線に飛び込んだのは…

 

 

星「目~~を~~覚~~ま~~せぇ~~~~~」

 

 

俺の後ろでろうそくを顔の下に構えていた星だった。

 

 

関羽・鈴々「「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 」」

 

 

星の顔に更に怯えて御堂から飛び出してしまった関羽さんと鈴々。そのまま走っている内に、二人は「何か」にぶつかった。尻もちをついた二人が顔をあげると………

 

???「……………」

 

赤く眼を光らせている影が、二人を睨みつけていた。

 

関羽「ば、化け物ぉ…!! 」

 

鈴々「なのだぁ…!! 」

 

 

本当に出てきたと思いこんだ二人は、その場に倒れてしまう。この二人が英雄劉備の義姉妹なのか?

 

 

星「やっとおでましか」

 

???「……………」

 

 

御堂から星が出てきたのと同時に、雲が晴れる。月明かりに照らされ現れたのは………白い虎の毛皮を被った関羽さん程の背丈の少女だった。その手には、刃が鋭くとがった戟を携えている。

 

星「正体を現したか。言っておくが私はそこで倒れている二人と違って、そんなものには脅されぬぞ。」

 

咄嗟に飛びかかる星…しかし少女は臆することなく、その手に携えた戟で星の一撃を薙ぎ払う

 

星(な、なんだ…!?この重い一撃は…!?)

 

多分星は、あまりの一撃の重さに内心で驚いたのだろう。しかし怯んでいる暇はないと即座に切り結ぶが、少女の力強さに押され気味になる。

 

星(こいつ、強い…!だがっ!! )

 

星も負けじと攻撃を繰り出す。だが攻撃を防いだ際に、衝撃で己の得物が飛ばされた隙をつかれ…

 

ドッ!!!!!!

 

星「ぐあっ……!!!!! 」

 

みぞおちに一発喰らわされ、星の身体はその場に崩れ落ちる。そして少女の得物は俺の方に向ける。

 

???「次……お前の番………」

 

俺の番なの?あんまりやりたくないんだけどなぁ…仕方が無い、いっちょやるかぁ。

 

その後の話は辞めこうと思う……まぁ、別の話で言おう。

 

 

 

 

 

翌日の朝。

 

関羽「何!?化け物ではない!?」

 

星「あぁ…まぎれもなくあれは人間だった。」

 

関羽「おのれぇ…謀りおって…!だが、そうと分かればもう怖くないぞ!! 」

 

星「つまりそうと分かるまでは怖かったと?」

 

関羽「あ、いや…そういうわけでは…とにかく、化け物でないのなら次に会った時は必ず成敗してくれる!」

 

鈴々「コテンパンにしてやるのだ!」

 

星「……確かに奴は化け物ではない…だが、強さは化け物並みだ。」

 

トントン「化け物並み…」

 

忠告の後、星は持っていた犬の飾りを眺めていた…昨晩みぞおちを突かれた際、少女の戟についていたものが外れたためである。

 

鈴々「あれ?お兄ちゃんは?」

 

トントン「そういえばスミスさんいませんね。」

 

星「我々が気がついたときは居なかったからな…」

 

関羽「ジョン殿……」

 

 

 

 

その後

 

 

 

関羽「しかし、ここまで付いてこなくともトントン殿は村で待っていて良かったのでは?」

 

トントン「化け物でないのなら、こんなことをするのにも何か理由があるはず…もしそうなら、ちゃんと話をして…」

 

星「あった。おそらくこれが…奴らの足跡だ」

 

鈴々「行ってみるのだ。」

 

全員が星の見つけた場所に来てみると…確かに足跡が残っていた。少女のもので間違いない。足跡をたどった一同がさらに先へ進んでみると…

 

関羽「おい、あれ…」

 

星「ふむ。奴の隠れ家で間違いないな。」

 

その時!!!

 

ガキィィィンッ!!!!!!!!!!

 

気配を感じた関羽さんが、咄嗟に背後からの攻撃を防ぐ。仕掛けてきたのは間違いなく、昨晩星と対峙した少女だ!!

 

関羽「危ないから下がっててください!! 」

 

トントン「はい!」

 

星「気をつけろ…奴だ!! 」

 

???「…昨日勝手に気絶した二人。」

 

関羽「さ、昨夜は不覚を取ったがもう油断はせぬぞ!///」

 

鈴々「鈴々たちの強さを見せてやるのだ!///」

 

さりげなく昨晩気絶したことを突っ込まれ、若干顔が赤い関羽さんと鈴々。

 

星「貴様、化け物でなければ名があろう!」

 

呂布「…呂布……奉先。」

 

 

名乗った直後、呂布は即座に斬りかかる!! 関羽さん達は防いだり攻撃したりするが、少女の強さを前で踊らされてるように感じると聞かされたなぁ。

 

鈴々「こんなの初めてなのだ…!」

 

関羽「な、なんなんだこいつらは…!?」

 

星「言っただろう…強さは化け物並みだと!」

 

 

再びぶつかり合う、呂布と関羽さん達。激戦が続く中、呂布が勢いよく戟を振り回したことで一本の木が斬られる。

 

 

子犬「アンアン!」

 

その時、なんとその木が倒れそうな位置に子犬が出てきた。

 

トントン「あっ!!」

 

呂布「!!!!!」

 

関羽・鈴々「「!!!!!?」」

 

トントン「危ないっ!! 」

 

 

それに気付いたトントンが咄嗟に子犬を抱え…!!

 

 

 

ズズーーーーーン!!!!!!

 

 

 

呂布「……!!!!!」

 

木が倒れた瞬間を、唖然としながら見ていた呂布……しかしトントンたちは無事だった。間一髪のところで、俺が木を押さえていたからなぁ。

 

関羽・星・鈴々「ジョン殿(お兄ちゃん)!!?」

 

キョン「危ねえっ…」

 

子犬「クゥーン…(ペロペロ」

 

トントン「うふふ…駄目よぉ、くすぐったいわ。」

 

トントンの顔を舐める子犬の無事を確認、安心した。

 

関羽「ジョン殿!トントン殿!今助けます!」

 

鈴々「待ってるのだ!」

 

やがて木は関羽さんと鈴々のお陰で駆除できた。関羽たちが出てきたのを見た呂布…いや、恋は武器を下ろす。

 

恋「お前達……いい奴。いい奴と闘えない。」

 

 

 

たき火の所に腰を落ち着かせた俺達。星が恋に犬の飾りを返したところで、トントンが口を開く。

 

トントン「村の人たちに食べ物を貢がせていたのは、犬と馬の餌のためだったのですね。」

 

恋「…自分たちで餌代を稼ごうとしたこともあったけど…///」

 

若干顔を赤らめる恋が言うには…

 

 

 

…………………………………

 

 

 

 

一度はメイド的な店で勤めたこともあったらしい。

 

 

恋「お帰りなさいませ………ご主人様……」

 

男性客E「……ええっと………」

 

 

 

男性客A「俺、チャーハンとギョーザで!」

 

男性客B「俺も同じのを…でも、チャーハンは大盛りで。」

 

男性客C「俺は坦々麺!あと春巻きも!」

 

男性客D「俺はホイコーローに白飯、あと卵スープ…」

 

 

恋「………ラーメン四丁。」

 

男性客達「「「「だああっ!!!!!(ズコーッ)」」」」

 

しかし、上手く接客出来なかったり料理の注文を覚えきれなかったりと上手くいかずじまいだったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

鈴々「全然ダメダメなのだ。」

 

関羽「お前が言うな!! それにしても何故ジョン殿は呂布と一緒にいたのですか?」

 

キョン「俺は昨日の出来事で仲良くなった。真名も預けられたしな。」

 

関羽「…………………」

 

 

関羽さんが浮かない顔をしている。俺、変なこと言ったかな?

 

 

星「しかし、子犬一匹のためにあれだけの食べ物はいらぬだろう。」

 

恋「一匹じゃない………」

 

星「え?」

 

恋が指笛を吹くと…洞窟からかなりの数の犬が出てきた。

 

関羽「こ、これは確かに…」

 

恋「友達……みんな、捨てられたり、怪我したり……かわいそうで…ほっとけなかった…」

 

しょんぼりしている恋…慰めてやりたいなぁ(変な意味ではなく)……と。

 

???「あ!月!」

 

近くに馬を止め、少女が駆け寄ってきた。それに気付き、トントンも立ち上がる。

 

トントン「詠ちゃぁぁぁん。」

 

???「月!連絡が来るまでボクらがどれだけ心配したか!」

 

トントン「ごめんなさい…」

 

???「民の声を直接聞きたいのは良く分かるよ、でももし危ない目にあったりしたら…!」

 

トントン「それなら大丈夫。今回は…あの方たちが助けてくれましたから」

 

二人に対し、トントンは俺達を見ながら告げる。

 

???「って、危ない目にあったの!!?」

 

トントン「うん。少しだけ」

 

???「なっ…ぬぬ」

 

関羽「あの…お取り込み中申し訳ないが、お主は一体?」

 

失礼ながら会話に入ってきた関羽さんに対し、少女は改めて自己紹介した。

 

賈駆「我が名は賈駆、字は文和!こちらにおられる太守の董卓様にお仕えしている者よ。」

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

 

キョン「なんとっ!!!!??」

 

関羽・鈴々・星「「「えええ!!!?」」」

 

まさか、俺の知ってる三国志でもありえない。この子が暴君として有名な悪役人。董卓仲謀だとは……

 

賈駆「それで、化け物の件はどうなったの?」

 

トントン「もう解決しちゃった(にっこり)」

 

賈駆「あ…そう…(かっくり)」

 

笑顔で答えるトントンに、賈駆もうなだれるのだった。

 

やがて俺達と恋、そして庄屋は屋敷に招かれた。しばらくして現れたのは…高貴な衣装を身に纏ったトントン、改め董卓だった。その高貴な中にも清純なたたずまいに、一同も感嘆の表情になる。当然俺もだ。

 

庄屋「なるほど…そういうことでしたか。」

 

董卓「確かに、呂布さんのしたことはよくないことです。でもそれは、傷つき捨てられた犬たちを救うため…決して悪心から出たことではありません。門前の岩もすぐにどけますし、出来る限りの償いもするそうです。そうですね、呂布さん?」

 

無言で頷く恋、事情を把握した庄屋も快く受け入れる。

 

庄屋「わかりました。既に本人たちからも謝ってもらってますし…村人には私の方から話しておきましょう。」

 

董卓「そうして頂けると助かります…ところで詠ちゃん、役所では「化け物が出る」という訴えを取り合わなかったとか?」

 

賈駆「う…それは…」

 

庄屋「董卓様、もう済んだことですから…」

 

董卓「いいえ、よくありません。民の声をおろそかにしないことこそ、政事の基本です。」

 

 

庄屋の言葉も構わず、董卓は知らないところで起こっていた自分の失態を反省している。見た目はか弱い少女ではあるが、太守としての風格を醸し出している証拠だった。カッコいいな。

 

 

賈駆「かしこまりました…次はこのようなことがないように、他の役人にも厳しく言い聞かせておきます。」

 

董卓「いいでしょう。それから…あの子たち、私の所で飼ってあげられないかしら?」

 

と、恋が連れてきたたくさんの犬を見ながら質問する董卓。かなりの数のため、賈駆も思わず困ってしまう。

 

賈駆「て……あの犬全部?」

 

董卓「詠ちゃんも、この間から街の治安が悪くなったのは警備の兵士が足りなくなったからって言ってたでしょう?だったら、あの子たちをきちんとしつけて街の警備の手伝いをさせたいの。どう?いい考えだと思わない?」

 

賈駆「た、確かに…ちゃんとしつければ泥棒よけにはなるけど…」

 

董卓「それなら大丈夫。呂布さん、お願いできますか?」

 

 

振り向きながら……恋に問いかける董卓。

 

 

恋「…(コクコク)」

 

董卓の言いたいことを把握し、純粋に董卓の言葉に頷く恋。

 

賈駆「ま、待って月!ボクらはまだ飼っていいとは…!」

 

しかし、賈駆はまだ納得してないと反論する……が。

 

董卓「……ダメ、なの?(ウルウル)」

 

 

出た。董卓の今にも泣きそうなお願いモード(命名、俺)

 

 

賈駆「う゛……」

 

董卓「お願い……(ウルウル)」

 

賈駆「いや…それは…」

 

更に恋と大量の犬たちからも視線が向けられている。断りにくくなってしまい…

 

賈駆「…分かった…飼うよぉ…」

 

 

折れた。あの視線を断ち切れる奴がいるなら是非来てほしいもんだね。

 

 

董卓「(パアァッ)…!詠ちゃん、だ~い好き!!(ガバッ!!)」

 

賈駆「あーもぉっ!! ///言っとくけど、こういう無茶なお願いは今回だけだからね!? ///ホントに今回だけ…って!?」

 

董卓に抱きつかれて困惑していた賈駆に、更に恋が抱きついてきた。

 

恋「……(スリスリ)」

 

鈴々「きっとお礼の気持ちを表しているのだ!」

 

賈駆「だ、だったら口で言えーーーーっ!! ///ていうかくっつくなーーーーっ!!!! ///」

 

 

まぁ、なにはともあれ、化け物騒ぎも解決したのでめでたしめでたしであった。

 

 

 

 

 

 

 

……さっきから頭がズキズキするな……何だろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

うぐっ……グスッ…ども…ガリ眼鏡です………

 

キョン「どうしたガリ眼鏡?何泣いてんだよ。」

 

星「どうされたのですか?」

 

実は……9月25日に我が家の愛猫が一匹死んでしまったのよ。

 

キョン「…それは悲しいな…」

 

星「……ちなみに猫は何匹いるのですか?」

 

…………死んだ猫を含めて9匹。

 

キョン「多っ!! そんなにいると大変なんじゃ…」

 

次回、涼宮ハルヒの恋姫。第六話『張飛、孔明と張り合うのこと』

 

キョン「って人の話を聞けぇ!!!!! 」

 


 
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