喫茶店って久しぶりに来たな。何年かぶりの友人に会いにここへ。
「いらしゃいませ」
店員の声が響く。
「待ち合わせなんだけど、先に来てないかな?」
店員は首を振り席へ案内してもらう。
「オレンジジュースを」
注文を済ませて、ゆっくりと待つことにする。氷が溶ける間に、彼女は来るだろうか。
『結婚します』
昔の男にわざわざ披露宴の参加不参加を聞くって。それも相手は知ってる奴らしい。
今日はこっちから誘った。こないと思ってるけど。直接何か言ってやらないと気がすまない。
客はまばらにいるが皆声を潜めているようで静かだった。ここでコーヒーでも頼めば俺だって大人のふりぐらいは出来ただろう。でもそれはある理由でできなかった。オレンジジュースを飲む。さすがしっかりした喫茶店だ味がいい。
カラン。カラン。
氷が溶ける。彼女はこない。そりゃそうか、住んでるところも遠い、旦那は俺の知り合い、会いに来る通りがない。
「文庫でも持ってくればよかったな」
ひとりごちで、ジュースを飲む。ずいぶん薄くなったな。顔をしかめる。一体何に期待したんだろう。
レジに伝票を持って行って会計を済ます。
グラスの氷は完全に溶けきっていた。
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
喫茶店でのふとした話です