No.623803

氷が溶けるまでの間

alkainさん

喫茶店でのふとした話です

2013-09-29 22:32:38 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:164   閲覧ユーザー数:163

喫茶店って久しぶりに来たな。何年かぶりの友人に会いにここへ。

「いらしゃいませ」

店員の声が響く。

「待ち合わせなんだけど、先に来てないかな?」

店員は首を振り席へ案内してもらう。

「オレンジジュースを」

注文を済ませて、ゆっくりと待つことにする。氷が溶ける間に、彼女は来るだろうか。

 

     『結婚します』

 

昔の男にわざわざ披露宴の参加不参加を聞くって。それも相手は知ってる奴らしい。

今日はこっちから誘った。こないと思ってるけど。直接何か言ってやらないと気がすまない。

 

客はまばらにいるが皆声を潜めているようで静かだった。ここでコーヒーでも頼めば俺だって大人のふりぐらいは出来ただろう。でもそれはある理由でできなかった。オレンジジュースを飲む。さすがしっかりした喫茶店だ味がいい。

 

カラン。カラン。

氷が溶ける。彼女はこない。そりゃそうか、住んでるところも遠い、旦那は俺の知り合い、会いに来る通りがない。

 

「文庫でも持ってくればよかったな」

 

ひとりごちで、ジュースを飲む。ずいぶん薄くなったな。顔をしかめる。一体何に期待したんだろう。

 

レジに伝票を持って行って会計を済ます。

 

グラスの氷は完全に溶けきっていた。


 
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