初めて見たのは旅立ちの日だった
ボロボロになって空を見上げると虹が見え、『彼』は飛んでいた
それだけじゃない
ホウエンに行くきっかけにもなったし、そのあとも少ないが何回か俺は見た
美しい羽を持つ――――ホウオウを
「ホウオウ……だって?」
リトがサトシは1/4ホウオウと言った後、その場は静寂に包まれた
とても信じられない話に着いていけないのだろう
そんな中、最初に口を開いたのはデント
「…ポケモンの中には人間に擬態できるやつもいる。コンもその一種だ。サトシ…お前にもそんな経験ないか?」
「………あった」
思い返してみればサトシはアルトマーレでラティアスに出会っていた
彼女の場合、カノンと言う少女の姿を借りていたに過ぎないが
「それに……ママさんからも聞いてきたんだよ」
「ええっ!?」
「それっていつ…?」
「サトシに戦い方を教えてた間に」
そう、リトはすでにサトシの母…ハナコに全てを聞いていたのだ
サトシの父のことを…全て
「ママさんが18歳の時に、着物を着て道端に倒れていた青年を見つけたらしくてさ。一端自分の家に連れてって介抱することになったらしい。その人曰く、自分は西の方向から旅をしに来た。だがポケモントレーナーではないので野性のポケモンに対処できずに怪我をした、と」
「……………そこまでだったら、俺だって…」
「まだ続きはある。しばらくママさんとその青年が暮らしているうちに二人は恋に落ちた。だが、青年はその恋は実らないと言った。青年は初めてママさんに本当の姿を見せた。それが……」
「…ホウオウ」
「そう。でもママさんは少し驚いただけで、後は気に止めなかった。自分が愛した人には変わらないからだとよ。そしてママさんが19歳になって……お前が産まれた」
サトシの知らない真実…だがサトシはまだ納得していない
では何故、父は…ホウオウは自分達の前から姿を消したのか?
「でも、何でサトシの前から姿を消したんだい?」
『それに関しては私が話そう』
「ミュウツー…」
『私はここに来る前にホウオウに出会っている。そこで聞いたのだ……どうしてもサトシとサトシの母の前から姿を消す必要があったのか』
ミュウツーが淡々と話し出す
それはまるで録音機のようにすらすらと言い出している
『…ホウオウはかなり珍しいポケモンだ。だからこそ、悪しき心を持つ人間が狙っている。サトシの母に出会った時の傷はその人間達の負わせた傷だ。恐らくその人間達の目的はホウオウのせいなるほのお……だとすればホウオウの子であるサトシにもせいなるほのおがあると言えよう。そうなるとサトシが巻き込まれる。そう思ったホウオウはサトシ達親子の前から姿を消し、たった一匹世界を飛び回っていった』
「ママさんもサトシが充分に理解できる歳になるまでは喋らないことにしたらしい」
「…そっかぁ……」
「ピカピ……」
次々に出てくる真実に対してサトシはただ一言だけ言う
その顔は迷いや困惑はない
ただ受け入れているだけだ
「パパが………ポケモンでホウオウなんだ…」
「サトシ…」
「それで、お前は今何を考えてる?」
「何にも?ただ、嬉しいだけだよ。あんまりパパの事知らなかったから一気に知れて」
「…逞しいよ、お前は」
ただただ息を吐くリトは苦笑いしていた
普通なら困惑する所だが逆に嬉しそうにしている
こういう部分が記憶を無くした当時の自分に欲しかったと思う
正直羨ましい
「それでだ……さっき言わなかったサトシを元々の年齢に成長させる方法は、サトシの中にあるせいなるほのおを使わせてもらう」
「せいなるほのおを?」
「せいなるほのおは元々生命力の塊みたいなもの。それを錬金術を使ってサトシを成長させる」
そこで一息つく
自分の事、計画してきたことを一気に話して疲れたのだろう
「それでその計画はいつやるんだ?」
「…今からだよ」
「「「今ぁ!?」」」
「だってそうだろ?紫のオーズになった時点で俺の封印は解けてるんだし。いつギルが出てくるか分からないからな」
突然のことに声を揃えて突っ込むサトシ達
だが、リトの説明ももっともだ
このままではサトシが手遅れになってしまう
「そうと決まればシロガネ山に行くぞ。あそこに人はあんまり来ないし、許可は取ってあるし…スケット達がいるからな」
――――――。
二時間後、シロガネ山に移動したリト達はさっそく準備をしていた
錬金術の本に書いてある通りの魔方陣を手分けして描いている
「――よし。これで完成だ!サトシ以外離れてくれ!」
「ピカチュウ、お前も離れててくれ」
「ピッカァ!」
リトは魔方陣の完成を全員に告げ、サトシ以外を魔方陣から遠ざける
もしも、ギルが出てきた時に誰かの中に入らないようにするためだ
護衛にサトシ達のポケモンが付いているので安心だろう
リトはサトシに魔方陣の中心に立つように指示し、自分はその場で目を閉じる
「(……待たせたな。計画始動だ)」
【待ちくたびれたぞ!】
【そうだね。もう少しで寝ちゃう所だったよ】
【メズール、俺がんばる~】
【一緒に頑張りましょうね、ガメル】
【……………】
リトは体内の人格…グリードと話す
順にウヴァ、カザリ、ガメル、メズール、そしてアンク
だがアンクはリトに返事をせずに黙ったまま
「(……アンク?どうした?)」
【いや……何でもない】
【アンクらしくないね、どうしたの?】
【ふんっ!いまさら怖じ気づいたか?】
【誰がだ、この虫頭!】
【メズール、止めなくていい?】
【はぁ…みんな、これからやるのはクウガの坊やとの契約であり、私達の復讐なのよ。しっかりしてちょうだい】
口喧嘩しかけるアンクとウヴァを含めた全員に話しかける
――これは契約………サトシと言う人間を救うために力を貸して欲しいが為の契約
――これは復讐………自分達をこきつかったギルへの復讐
そのために自分達はここまで来たのだと
【分かってる!このまま引き下がる分けねぇだろ!】
【右に同じく……だね。ギルには痛い目にあって欲しいし】
【二度と蘇らぬようにしてくれるわ!】
【うん、俺もやるぞ~】
【…だ、そうよ?クウガの坊や】
「(ああ……よろしく頼む)」
リトは自分の胸に手を突っ込み、中から五色のメダルを取り出す
…そしてそれと同時に、失われた感覚が元に戻り、中の具体的達の反応が無くなった事を感じた
「サトシ!」
「うん!」
リトはタカ、トラ、バッタのメダルを投げ渡し、魔方陣のギリギリ外側まで下がった
メダルを渡されたサトシはオーズドライバーを取りだし、腰に巻き付ける
バッタ、トラ、そしてタカのコアメダルをセット
オースキャナーを取り外し、一回深呼吸…そしてスキャンした
「…変身……!」
『タカ!トラ!バッタ!…タ・ト・バ、タトバ、タットッバ!』
今までとは違いメダル状のエネルギーがサトシの広範囲で回る
リトはその瞬間に残りの二枚のメダルをサトシに投げ入れた
そして変身完了
仮面ライダーオーズ・真タトバコンボとなったと同時に体から紫の電流が流れる
「く…うぅうう…!」
「サトシ!」
「サトシ!耐えろ、少しだけでいい!」
苦しそうなオーズをみて叫ぶタケシ
一方のリトは錬金術を発動させ、励ます
すると段々とオーズの胸から青と白、そして紫のメダルが出てくるではないか
「あと…少しぃぃぃぃ!!!」
「んんんぅぅ……!」
リトも汗だくになりながら錬金術を発動し続け、オーズも苦しみに耐える
――そしてとうとう、三枚のメダルがオーズから出て残りの紫のメダルも出てくる
それと同時に魔方陣は消え、九枚の紫のメダルはオーズの背後に浮かぶ
これは成功と言えよう
後は………
「今だっ!…サトシィィィィ!!」
「はっ!?…よっしゃああああッッッ!!!」
ギルの意識の入ったメダルを破壊するだけ
オーズは飛びそうになった意識を元に戻し、紫のメダルの力でメダガブリューを取り出す
予め貰っていたセルメダルを入れ、必殺の体勢に入った
『タトバ!…~~~♪~~~♪~~~♪』
「セイヤァァァァァァアァァ!!!」
タトバ版【グランド・オブ・レイジ】は器用に紫のメダルのみを切りつけた
その際、小規模の爆発が起こる
「やった…?」
爆発が起こったのをみて、マサトは呟く
不安な顔でその様子を見ていたタケシ達も内心そう呟いていた
爆発の後、チャリン、と音がしてそこを見ると…そこにはひび割れた紫のメダルがある
少し触れれば割れてしまいそうだ
「終わっ………た…あ」
「そっ…そうだな……」
錬金術を発動させていたリトと苦しみに耐えてきたオーズは疲れてその場に座り込む
オーズはその時変身解除して
「リト!サト……シ?」
「ピカピ…?」
「「「…………………」」」
「ん?みんなどうしたんだ?」
「あー……サトシ、鏡、鏡見て」
リトとサトシ達の元にやって来たタケシ達はサトシを凝視する
サトシは訳が分からない顔をしていたが、リトから渡された鏡を見て驚いた
「んな!!!?なんじゃこりゃぁぁ!?」
「そりゃぁ驚くわ」
鏡に写ったのは少し大人びたような自分の顔
そう、サトシはせいなるほのおにより歪む前の元の年齢に成長したのだ
その容姿はそのままサトシを大きくしたようだ
イッシュから着ていた服はぱつんぱつんになり、前を開ける始末
後ろ髪も少し伸びていた
「一応成長するって言ったんだけどなぁ…」
「嘘……サトシが…かっこよく見える」
「ちょっといいかも…」
「お姉ちゃん!?」
「わー……」
「こ、子供…じゃないわね……」
「見た感じ僕とタケシと同じくらい…だね」
「ああ…それでサトシ、気分はどうだ?」
「なんかもう……いい感じ?」
「「「それどこのロケット団だよ」」」
サトシのボケにほぼ全員がツッコミを入れる
だがリトはすぐには喜べないでいた
――何かがおかしい…そう思いながら
「…!?サトシ、避けろ!!」
「えっ?…おわっ!?」
リトが何かに感づき、サトシはすぐに避ける
サトシのいた場所に突き刺さったのはセルメダルを繋ぎ合わせた触手
どこから伸びたのかと触手の根本がある場所を見ると、そこはタケシ達が隠れていた場所にあった今まで集めたセルメダルの入ったバック
「なっ…!?何でバックから!?」
「まさか……サトシ!さっきのメダルは!十枚目のメダルは!?」
「えっ…?あっ…!?」
サトシはすぐにメダルをしまったはずのポケットに手を入れるが、そこには穴が空いていた
恐らくさっきの触手がギリギリかすって破けたのだろう
リト達はさっきの触手を見ると先端部には三色のメダルが
「まさか…まだ、意識があるのか!?」
「そんな…まさか…」
『ゆ…ルさん…ゾォ……』
「「「!?」」」
バックから聞こえてくる低く、嫌な声
そこからは邪悪さと貪欲さが伝わってくる
「ギル…まさかお前!」
『器ゴトき…が…我のメダルヲシハいする…などあり得ン。……我が計画ヲサマタゲタたいザイ…コノ世界デ…つぐなぁえェェェ!!!』
声…ギルが叫ぶと、赤、黄、緑、白、青のメダル、そしてギルのメダルが回転し、セルメダルがそれに集まる
セルメダルは急激に数を増やし、上空に浮かんで黒い正八面体の物体となった
さらに周りには六色のコアメダル状のエネルギーが合計54枚陣を組むように変化した
「まずい…まずいぞ…!」
「あれ何なんだよ、リト!?」
「説明は後だ!!ここにいるポケモンを避難させた後、すぐここを離れるぞ!!」
リトの言葉に戸惑いながらも、サトシ達は自分のポケモンを呼び出しまわりにいるポケモン達を避難させるように指示する
その間にリトはミュウツーに予め何かあった時のためにシロガネ山に呼んでいたジムリーダーや四天王達に戦闘体勢に入るように伝えるようにいった
数分でそれらはすみ、リト達はシロガネ山から離れた
今はトキワシティまで来ただろうか…その時だった
正八面体の物体が動き出したのだ
「う、動いた…!」
「あれは本に書いてあった禁断の力……この世の全てをセルメダルに還元して、それを吸収することを繰り返すことで世界を無に還す…。本当は殆どのコアメダルを使わないと出来ないんだが、アイツ……無理矢理やりやがったな…!」
ギリギリと歯が擦れる音が聞こえる
相当悔しいのだろう
メダルの器はさっそくシロガネ山付近の自然と山肌をセルメダルに還元しながら削り取る
そしてゆっくりと南下しながら進行
このままではマサラタウン近くまで来てしまう
「おい、マサラタウンに進んでるぞ!」
「リト、あれを止める方法はないの!?」
「破壊……それしか方法は無い」
逃げ惑う人々を見ながら答えるリト
その目には怒りが色濃く写っている
だが、その怒りを抑えようとする理性も写っていた
その隣には同じく人々を見るサトシ
「悪いサトシ、お前の住む世界……滅茶苦茶になりそうだ」
「リトのせいじゃないよ。むしろありがとう。俺に守る為の力をくれて」
「…それだけで救われるよ」
冷静な会話をしながら今度はメダルの器を見据える二人
そんな二人の後ろに彼らのポケモン達がいた
「ピカピ…」
「ごめんピカチュウ、今回は結構危ないから連れていけない。けど安心してくれ!!俺は必ずアイツを倒す!!そして……ポケモンマスターになる!!」
「ピカ…ピカチュウ!」
「きゅーん…?(りと、あんなのと戦うの…?)」
「まあな。完全に壊さなかったから、今度こそやってけじめをつけるよ」
「ガウ!!(でも、相手がでかすぎます!!)」
「フォォォウ…(勝ち目があるとは思えないな…)」
「メー(とか言ってもいくんだよね、リト)」
「当たり前だよ。俺は、仮面ライダー…だからな」
「ピチュピー…(マスター…)」
「どうした、ミミ?」
「ピッチュピ!!(絶対…絶対帰ってきてよ!!絶対だからね!!)」
「ああ、俺を誰だと思ってる………なんつってな」
リトはトライチェイサーを押しながら、サトシは腰にオーズドライバーを付けながらメダルの器の進行方向に歩いていく
そんな二人の後ろ姿を見送るタケシ達は自分達になにかできることを探そうとするもの、マサラタウンに行って避難させようとする者に別れて行動しようとしていた
「さぁ、サトシ。泣いても笑っても、これがラストだ。褌しめなおすぞ」
「褌ってよく分からないけど……気合入れるってことだよな」
「ああ……皆の笑顔を守るためにも」
「夢を明日に、繋げる為にも」
「「アイツを倒す!!」」
リトはアマダムを出現させ、サトシは背後に浮かぶ恐竜メダルを手に取った
それぞれポーズとメダルをセットし、変身の体勢に入る
「「変身ッッ!!」」
『プテラ!トリケラ!ティラノ!…プットティラ~ノザウルース♪』
表れたのは二人の戦士
黒く禍々しい体に赤い複眼
ベルトの霊石までもが闇のように黒いその戦士はまさに《究極の闇》
仮面ライダークウガ・アルティメットフォーム
紫の硬く、獰猛さをイメージさせるアーマーに緑の複眼
かつては暴走し、邪悪な意思を持つ者に使役された力は新たな主を得て《古代の暴君》は守る為の戦士となる
仮面ライダーオーズ・プトティラコンボ
クウガAFはトライチェイサーに乗り、プトティラは空中を翔びながらメダルの器の元へ進んでいった
ウィザード…終わっちゃいました…
いやもう、一年間とちょっと御苦労様でしたよ
てか、何でインフィニティーの指輪渡しちゃうのかな、晴人
そして今気付いたんですけど……1話でマサラタウンに着いたときにバリヤード書くの忘れてた…くそorz
まあ、そんなこんなで最終決戦です
どうぞ、ウィザードの感想でもこの小説の感想でも愚痴でもいいのでコメントプリーズです
でわでわ
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正直自己解釈です