No.62334

ミルファの言い訳

スーサンさん

テストの結果が悪く、
必死に言い訳を考えるミルファちゃんのマヌケなお話です。
念のため、ミルファちゃんは大好きですから、あしからず……

2009-03-09 09:27:13 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1997   閲覧ユーザー数:1923

「う、うむ~~……」

 見上げられた答案用紙を見つめ、ミルファは考え込むように唸った。

「なんど見ても……零点」

 見事なまでにでっかく、○と一個だけ書かれた答案にミルファは泣き出しそうになった。

「こんなの持って帰ったら、またお姉ちゃんに叱れるよ~~……」

 夕暮れの落ちる並木道で大声を出すミルファに周りの人は彼女の持っている答案を見て、お気の毒さまと軽く目を閉じ、見なかったふりをした。

 それが余計にミルファをいたたまれない気持ちにさせ、涙を浮かべた。

「今日、テストが返ってくるのはお姉ちゃん知ってるし、ダーリンの家に逃げれば、ひっきーがチクるし……ああ、四面楚歌」

 ヘタリと腰をつくミルファだが、返ってきた答案用紙はその点数を変えることもなく、諦めろと言いたげに風になびいていた。

「考える手は二つ……テストの結果をどぅやってごまかすか、それとも、お姉ちゃんの怒りを和らげるか」

 どっちもかなり難しい選択だとミルファは覚悟した。

 テストの結果を隠せば、お仕置きが待っている。

 だからといって、素直にお仕置きを受けるのもまた地獄……

 同じ地獄なら、少しでも、苦痛の低いのを選ぶのがいいに決まっている。

 だが、そこは怒られるのを避けたい人間の性……もとい、メイドロボの性。

 バレた時の恐怖よりも目の前の恐怖を避けたくなるのはメイドロボでなくとも同じだろう。

 ミルファは手に持った答案を教科書の中に隠し、カバンの中にそっと入れた。

「……大丈夫、自分を信じなさい、河野ミルファ」

 

 

「ただいま~~……」

 ガチャンッと家のドアを開け、ミルファはコソコソと泥棒のような動きで家に入っていった。

「お帰りなさい!」

「……」

 妙に上機嫌に返事を返すイルファの声にミルファは少し安堵したように息を吐いた。

 よくわからないけど、どぅやら、機嫌がいいらしい……

 これなら、もしかして答案を見せても、軽いお仕置きですむかも……

「ミルファちゃん、テストの結果どうだった?」

「ドキッ……!?」

 思いっきり、カバンの中身をひっくり返しそうになり、ミルファは焦った。

「きょ、今日は先生の都合で返ってこなかったの!」

「そんなはずないでしょう……貴明さんにチェックしたら、返ってきたと言ってましたよ?」

「うぅ……」

 なんで、そんなに用意周到なの。

 ミルファは何回目になるかわからない恨みを実の姉に向け、必死に言い訳を考えた。

「そ、それが、私のときだけ、採点にやり直しがあったらしく……」

「そぅ、じゃあ、先生に頼んで、答案を貰ってこようかしら……私が採点すればいいし」

「ああ、間違えた……ゆーじ君と見せっこしたら、ゆーじ君に答案持ってかれたんだった!?」

「じゃあ、今から取りにいきます」

「ああ、お姉ちゃんがわざわざそんな事しなくっていいから?」

 慌てて、食卓に上がり込み、両手を振るミルファにイルファは怪しい目で彼女を見た。

「さっきから、言ってることが支離滅裂ですよ……答案持ってるんでしょう?」

「ギクリ……」

「今、見せれば、お仕置きは考えてあげます……でなければ」

 ニッコリ微笑み、イルファは邪悪に目を開いた。

「私が貴明さんを貰っちゃおうかしら?」

「はい、これが答案です!」

 コンマ何秒としない俊足の速さで答案を差し出すとミルファは全身に寒気をおぼえた。

 一応、イルファはお仕置きは考えるといった。

 それは今、見せれば、痛い目にあわなくって済むということである。

 だが……

「ミルファちゃん……」

 まるで地響きを上げそうな震える姉の唸り声にミルファは腰を抜かしそうになった。

 というよりも、本当に抜かしていた。

「お、お姉ちゃん、お仕置きは考えるって……」

「考えました。考えた結果、このテストの点数ではお仕置きは避けれません!」

「お、お姉ちゃんがかわいい妹をダマした!?」

「人聞きの悪いことを言わない……」

 指をポキポキと片手で器用に鳴らすとイルファは引きつった笑顔のままミルファに近づいていった。

 ミルファも誰か助けがないか、往生際悪く辺りを見回し、指を指した。

「あ、瑠璃ちゃんが着替えながらお姉ちゃんを誘ってる!」

「え……どこどこ!?」

 一瞬で隙を作ったイルファにミルファは慌てて立ち上がり逃げ出そうとした。

「な~~んて」

 グワシッとスカートの丈を掴まれ、ズッコケル妹にイルファは厳しい目でいった。

「素直に出すだけならかわいいものを、ごまかそうとするなんて許して置けません!」

「お姉ちゃん、待って待って……話せばわかる!」

「なに、犬養さんみたいなこといってるんですか?」

「犬養さん?」

 犬小屋でワンワンと吼える雑種の犬が頭の中に駆け回り、ミルファはハッとなった。

「鬼、人殺し……もとい、メイドロボ殺し~~~」

「問答無用!」

 ぴぎょわ~~と訳のわからない悲鳴が姫百合家のアパートに全域に響き渡り、近くを通りかかった人間はヤレヤレと首を横に振ったとか振らなかったとか……

 

 

「おはよう、ミルファちゃん……なんか、ヤツれてるね?」

 貴明の言葉にミルファは痩せこけ、青くなった頬を必死に膨らませながら笑った。

「大したことないよ……ただ、人生ってなにかなって思ってるだけ」

「……?」

「ハハッ……」

 力無く笑うミルファに貴明は追い討ちをかけるようにいった。

「そぅいえば、今日は科学のテストが返ってくるけど、自信ある?」

「か、科学……あぁ」

「ミ、ミルファちゃん、大丈夫……しっかりして!?」

 見事に目を回し気を失うミルファに貴明は訳もわからず目をしばたかせた。

「なんなんだ?」


 
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