No.623241

【恋姫二次創作】死神の毒 終幕の食人

番外編in允恭だよー。
本編はもう少し待ってねー。
これだけで允恭のテーマの人がわかったら……

2013-09-28 02:01:40 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:789   閲覧ユーザー数:761

カニバリズム

 

人間が人間の肉を食べる行動、あるいは宗教儀礼としてのそのような習慣をいう。

 

食人、食人俗、人肉嗜食、アントロポファジーともいう。

 

この行為は三国の世でも行われている。

 

後に蜀漢の皇帝となる劉備が戦いに敗れ逃走中、劉安という男の家で一晩の宿を借りた。

 

彼は劉備を泊めることを誇りに思い精一杯のもてなしをしようとしたが、貧乏で食事の用意もままならなかった。

 

そこで劉安は自分の妻を殺してその肉を狼の肉と偽り振る舞った。

 

翌朝出立の為に厩に向かった劉備は、厨房で劉安の妻の死体を発見する。

 

劉備が夫人について問い詰めると、男は隠しきれずに昨夜の肉が妻の肉であることを明かす。

 

この後の劉備の反応は人それぞれで、感激したと解釈した人も居れば、激怒を通り越して恐怖を感じていたと解釈した人もいる。

 

つまりどちらの可能性もある。

 

更に昔では孔子や孫二娘など人肉の食に関係のある人物はたくさんいる。

 

そして、この物語の一人の女性。

 

正史は当然男。

 

しかし、この歪んだ外史では女。

 

その者が自称する名は『允恭』

 

彼女はこの歪んだ外史により、自分の生きた証さえ歪まされた。

 

彼女には姉が居た。

 

彼女には両親が居た。

 

現代の考えでは当たり前のようなことだが、この時代は家族と共に過ごせるなどあり得ないことだった。

 

決して裕福とは言えないが、彼女は家族を持ち、愛を持っていた。

 

自分に対して厳しくも優しく接する家族の温かさに彼女はいつも喜んでいた。

 

彼女には友人はいなかった。

 

友人の家庭は家族が最低一人は欠けていて、彼女は周りと普通に接することが出来なかったし、周りも彼女と普通に接することが出来なかった。

 

それでも彼女は幸福だった。

 

幸福というものは一生続くものでは無い。

 

幸福というのは心が満ち足りていること。

 

常に心が満ちているなどと言うことは絶対に無い。

 

人間は常に高みを望む。

 

より良い環境へ、より便利へ、より幸福へ。

 

その過程で争いが起きようと、一つの劇としか感じることは無い。

 

当然だ。

 

実際にその争いを体験していないのだから、劇を見ているようなふうにしか捉えられないに決まっている。

 

だが彼女は体験した。

 

歪んだ外史の中でも、人に作られた話の中でも、運命の決まっている一本道の上でも。

 

体験したのだ。

 

百聞は一見に如かず。

 

彼女は家族と久しぶりに喧嘩をした。

 

裕福では無い家庭。

 

子供が二人もいて、大人が二人居るのに食が満ちるはずがない。

 

姉は我慢する。

 

姉は彼女に自分の分さえ与える。

 

しかし育ち盛りの彼女にとって足りるはずがない。

 

次第に彼女の心は家族だけでは、満たされないようになる。

 

彼女はそんな時に思い出してしまった。

 

正史での自分を。

 

一人の将として働く自分を。

 

将軍として偉い立場で、今よりは確実に良い食、今よりは確実に良い暮らし。

 

今まで自分の心を満たしてきた家族よりも、以前の家族が良いのではないか?

 

彼女はふと思ってしまった。

 

隣の芝生は青く見える。

 

周りの者の物の方が良いように見える。

 

今までは同じくらいの裕福では無さそうな子供を見て、自分には家族が居ると自分を上に考えていた。

 

そこで思い出してしまった。

 

更に上を。

 

喧嘩とも言えないほどの些細な言い合い。

 

ただただ彼女は親に文句を言った。

 

親は何も言わず、何も言えなかった。

 

裕福で無いのは自分たちのせいだ。

 

そう考えているために、何も言えず余計に彼女の不満は溜り、彼女は山へと飛び出した。

 

姉や親は泣きながら探す。

 

姉は何よりも妹を大切にしている。

 

姉は妹を支えているのと同時に、自分も妹という存在のおかげで耐えていられたのを知った。

 

姉は既に狂気を孕んでいた。

 

それはいつからだったのか、彼女が文句を言い始めてからだったのか、彼女が姉に甘えだした時だったのか、彼女が生まれた時だったのか。

 

それは本人さえ分からないのだから、他人が知る訳がないだろう。

 

無二の親友なら別だろう。

 

だが居ない者の話をしても仕方がない。

 

結局彼女は近くの山へと来ていた。

 

反省と共に、後悔し、懺悔していた。

 

正史での自分を思い出したからこそ、冷静になれたのだろう。

 

辺りも暗くなる頃、姉が彼女を発見した。

 

涙や鼻水で顔中濡れている二人は、更に泣き出す。

 

彼女は何度も何度も姉に謝る。

 

当然親にも謝るつもりだった。

 

だがもう幸福は戻ってこない。

 

一つの小さな歯車が外れたことにより全てが止まり、全てが壊れてしまった。

 

親は息をしていなかった。

 

首に小さな傷があり、血が辺りに飛び散り、目からは生気が消え、舌がだらしなく垂れて、生物だったとは思えぬようになっていた。

 

腕の辺りを獣にでも噛み千切られたかのようになっていて、そこから見える肉は赤黒く染まっていた。

 

姉は彼女に向かっていった。

 

いつかお姉ちゃんがたくさんご飯を食べさせてあげるよ。

 

だから今は『これ』で我慢してね。

 

お姉ちゃんが先に食べて毒見をしてあげたよ。

 

怖がらなくてもいいよ。

 

そんなに震えなくていいよ。

 

お姉ちゃんがいつも守ってあげるから。

 

お姉ちゃんが幸せにしてあげるから。

 

彼女は絶望した。

 

それはどんな絶望だったのか。

 

親が死んだ絶望?

 

姉が人を殺した絶望?

 

姉が人間を食べた絶望?

 

自分のせいでこんなことになった絶望?

 

もう二度とあの幸福が戻ってこないと分かった絶望?

 

彼女はただ姉を恐れた。

 

今まで自分を甘やかし、時に厳しく叱り、最も自分のことを思ってくれた姉を恐れた。

 

そして、殺していた。

 

何度も何度も姉の腹に刃を刺した。

 

気付いた時にはその光景をただただ呆然と見ていた。

 

彼女は荒れた息を無意識のうちに「シー、シー」と吐き、周りに音が漏れるのを恐れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、彼女は正史と同じように将となった。

 

大将軍となり、正史の自分よりも上に行こうとした。

 

しかし無能な君主により、仲の良かった三将と共に君主が逃げる時間を稼ぐことになる。

 

相手は曹操。

 

こちらは歴史で表舞台で堂々としていられない者。

 

敗北は誰から見てもわかっていた。

 

そんな時に、また思ってしまった。

 

こんな歪んだ外史が無ければ、自分は二度も無能な君主に仕え、二度も無能のために死ななくてよかったのに。

 

姉が狂い、親が死んだのはこの外史のせいだ。

 

八つ当たりより酷いただの言いがかり。

 

だが、彼女は自分が正義だと信じて変わらなかった。

 

将軍故にそうとしか考えられなかったのだろう。

 

そのまま彼女は怒りにまみれたまま死んだ。

 

正史と全く同じ死に方で、死んだ。

 

外史はそれでも彼女を許さなかった。

 

三度目。

 

幼い時に思い出し、そこでも裕福ではなかった。

 

怒りと絶望により、この外史を滅ぼそうと

 

この外史を消滅させようと思った。

 

この時も同じ死に方。

 

同じ者に首を刎ねられ、死んだ。

 

違ったのは無能な君主では無く、他の君主に居たことだった。

 

彼女にとっては死よりも二度目の姉の狂った目が忘れられず、毎晩毎晩姉を殺した時を思い出した。

 

そして四度目。

 

希望など失った時に、装と名乗る男と出会った。

 

彼は自分よりももっと昔から、何度も何度もこの歪んだ外史と、偽物の正史を体験していた。

 

彼女は彼について行くことに決めた。

 

その時から彼女の目はあの姉の目と同じようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうもぺぺぺです。

 

へ?

 

食人要素が少ない?

 

いやいや、彼女は実際にその光景を見たわけですから。

 

普通の人間じゃあトラウマで済むかどうか……

 

しかも番外編なんで笑って許してネー。

 

ってな言い訳で勘弁してください。

 

 

 

 

 


 
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