第42剣 統一デュエル・トーナメント
キリトSide
2月に入って少し経った頃、第29層のボス攻略をアスナとスリーピング・ナイツが行い、見事攻略に成功した。
当初、アスナは今回クーハに譲ろうとしていたがそれをクーハは断った。
彼曰く、「オレはオレにしか出来ない彼女との思い出の作り方がある」ということらしい。
弟分が成長した様子を見れて、個人的には嬉しかった。
さらに幾つものイベントを考えては実行し、様々な思い出を作っていく。
クーハとユウキも、それなりにデートの回数を重ねたそうだ。
そして2月中旬、『統一デュエル・トーナメント』が行われることになった。
『統一デュエル・トーナメント』とは、ALOプレイヤー達によって開催されるデュエル大会である。
腕に覚えのある者、実際に腕利きの者、勝利を求める者、賞品を求める者など、
動機は各自でそれぞれながら数多ものプレイヤー達がこれに参加する。
勿論、俺達も今回は出場を決めており、出場登録も済ませた。
なお、大会主催者側の意図なのか、俺達アウトロードの男性陣は全員が東ブロックに集められた模様。
7人で潰し合ってくれということなのか、それとも他の参加者への配慮の方が大きかったのかは定かではないが、
それはそれで仕方がないので俺達は特に気にしないことにした。
まぁ、むしろ早い段階でコイツらと戦えるほうがありがたい…。
「キリトくん達は東ブロックなんだね」
「アスナはどっちだった?」
「わたしは西ブロック、ユウキとリーファちゃんも一緒だよ」
「そうか。リベンジマッチだな」
「頑張るよ! キリトくんも頑張ってね♪」
「当然、目標は優勝……いや、どちらかというとユウキとの再戦だな」
そう、元々俺とユウキは再戦する予定があるのだ。
折角だし、ここで再戦を行うのも一興というやつだ。
しかし、俺の言葉を聞いたアスナはジト目で声を掛けてきた。
「ふ~ん、キリトくんはわたしが負けると思ってるんだ?」
「贔屓目に見てほしいか? それとも、公平な判断で言ってほしいか?」
「むぅ、彼女としては贔屓目に見てほしいけど、こういうことは公平に見てもらうのが一番だもんね…。
そういうわけで、わたしがユウキに勝てる確率はどれくらいですか?」
「2割ってところだろうな。運が良くても3割」
「うっ、やっぱりそんなものなんだね……でも、全力で行くんだから!」
俺から見たアスナの勝てる確率、これはいまの状態での見解である。
もしも彼女が
まぁ、それは万が一でも余程のことがない限りはないだろう……なんせ、発生条件が俺関連だからな。
「ま、お互いに全力で、だ」
「勿論!」
今大会、俺達が闘うとすればその舞台は決勝以外はない。
どうなるかは分からないが、俺とアスナはお互いに右手で拳を作り、それを軽くぶつけてから
さて、と……1回戦の俺の相手は、コイツなんだよな…。
「最硬の盾が相手か…」
「いいねぇ、その例え。それじゃあお前は最強の剣だな」
俺がした例え、その意味は対戦相手がシャインであるということだ。
大会中は《二刀流》を使わないって制限を掛けてるから、正直に言うと彼の防御力と防御技術を抜けるかどうか…。
純白と翡翠の愛剣『イノセントホープ』を抜き放って構え、シャインも愛用している剣と盾を構えた。
「それじゃ、マジで行くぜ」
「上等だ」
流れるカウントダウン。そして0になった瞬間、俺はシャインに向けて駆け出した。
キリトSide Out
アスナSide
わたしは自分の番が回ってくるまでの間、キリトくんとシャインさんのデュエルをみんなで観戦しています。
「うわぁ~、なによアレ…」
「剣とソードスキル、体術と格闘スキルを織り込んだ攻撃、みたいだけど…」
「まったく解らないんだけど…」
リズが引き攣った顔で呟いて、シノのんがなんとか現状を把握し、それでもサッちゃんは呆然と漏らした。
「キリトもキリトだが、シャインもシャインだな…」
「最強の攻撃力と最硬の防御力か、凄いな~…」
エギルさんとケイタ君も呆れと感嘆を含んだ言葉を漏らした。
みんなの様子を傍目に、わたしはある可能性に至っていた。
あそこまでの動きのキレの良さ、SAO全盛期並みの技術、やっぱりキリトくんは、それにシャインさんも…。
「ユイちゃん。キリトくんはまたナーヴギアを使ってるんだね?」
「はい、そのようです。推測するに、クーハさんを除いた『
ユイちゃんの言葉に観戦していたみんなも驚いた表情をしてから、納得のものになった。
そして話しをしている間にも、2人の戦いに幕が下りようとしていた。
拮抗していた激しい攻防は、シャインさんの僅かな隙を突いたキリトくんの怒涛のラッシュによって拮抗が崩れ、
そのままキリトくんが押し勝った。
「うぅ、シャインが負けてしまいました…」
「残念でしたね」
少々落ち込んだ様子をみせるティアさんをシリカちゃんが慰め、逆にわたしは少し嬉しかったりするけど。
そこにわたしの元に1通のメッセージが届いた。
大会側からで、5分後に試合が始まるから控え室に来るようにとのことだった。
わたしはみんなにそのことを伝えてから自分の試合の為にその場所に赴いた。
試合の相手は毎月のランキングでも上位に名前を残している男性だったけれど、
わたしは最初からラッシュを決めることであっさりと勝利してしまいました。
その後も順調に勝利していったわたしは、準々決勝でユウキと戦うことになりました…。
うぅ~、キリトくんに頑張るよって言ったものの、やっぱり勝てる気がしないよ~。
ま、まぁでも、負けてなにかあるわけでもないし、わたしはわたしの全力で頑張ればいいよね。
そう考えて意気込んだところで、わたしの側にリズとシノのんがやってきた。
「ようやくユウキとの試合ね」
「勝算はあるの?」
「あはは、勝算はあまりないかな~。いつも通り、自分の全力で戦うだけ」
リズとシノのんの言葉にわたしは苦笑してからちゃんと答えた。
そんなわたしに対し、2人はニヤリと笑みを浮かべてから、耳元で囁いた。
「そんなアスナに朗報よ~」
「このおまじないを聞けば、勝てる確率は大幅に上がるわね」
「ろ、ろうほう? おまじない?」
な、なんなの? 2人ともニヤニヤして、なんだかちょっと怖い…。そして、続いて2人から放たれた言葉は…。
「キリトがね、アンタが勝ったらご褒美あげようかな~って言ってたわよ」
「…え?」
「もしかしたら、あ~んなことやこ~んなことをしてもらえるかもね」
「………え?」
「「それどころか、きゃっきゃっうふふっ、な展開になるかもしれないわね~」」
「……………え?」
ご褒美? あんなことやこんなこと? きゃっきゃっうふふ?
なにその楽園、桃源郷、エデン、アガルタ、パラダイス、アルカディアは…。
わたしの脳内は一瞬でピンク色に染まって、キリトくんからのあ~んなことやこ~んなことを妄想……うん、いい…。
「リズ、シノのん……わたし、勝ってくる…」
うふふ、ユウキ。本気で
わたしはデュエルの舞台へと足を踏み入れる。
その傍らで…。
「ど、どうすんのよ…。あそこまでいくとは思わなかったんだけど…」
「…キリトに頼みましょう、さっきのことを…。それしかないわ…」
「そ、そうよね。アスナにさっきの嘘でした、なんて言えないし…」
「というか、あのこ『コハ~』とか言ってなかった?」
「……空耳であってほしいわね…。でも、いまのアスナを表現するなら…」
「「餓えた野獣…」」
リズとシノのんがそんなことを話していたのは知らなかった。
アスナSide Out
キリトSide
作者が面倒くさがった結果(作者「お願いします、それは言わないでください!」)、
俺の試合が書かれることはなかった(作者「いや、マジで本当にごめんなさい!」)。
試合の結果だけを言うならば1回戦はシャインに勝利し、ハクヤとヴァルが闘って勝利したハクヤを2回戦で倒した。
1回戦でハジメとルナリオが闘って勝利したハジメと、同じく1回戦で上位に属するプレイヤーを倒したクーハが2回戦で戦い、
なんと辛くもクーハがハジメを討ち破ったのには『神霆流』一同が揃って驚いた。
しかし、俺は3回戦にてそのクーハを倒し、準々決勝を勝ち抜き、
準決勝の対戦相手であるユージーンを倒し、決勝への駒を進めた。
これでいいのか、作者?(作者「ありがとうございます…」)
さて、その一方で西ブロックはいまから準々決勝が行われることになり、俺達は揃って観戦を決め込んでいる。
なぜなら勝負のカードはアスナVSユウキだからだ。
以前のあの2人のデュエルの結果を知っている俺達からすればアスナがどう戦うのかが見物であるのだ。
そして、入場してきたアスナを見て……愕然とした。
「「「「「一体何があった?」」」」」
全員揃ってその感想。簡単に言おう、いまのアスナは間違いなく狂戦士状態だ。
そこで彼女に会ってきたと思われるリズとシノンが戻ってきた。その表情は気まずそうである。
「2人とも、アスナになにがあったんだ?」
「キリト、お願いだからアスナが勝ったらあの娘に何かしてあげて…」
「お願いします、本当に…」
うん、その言い方でなんとなく察しがついた。
差し詰め、アスナを焚き付けてみたもののあんなことになったと…。
しかも俺の名前を使って、というところだろうな。
「まぁ、それ自体は吝かじゃないから構わないが、あまり勝手なことは言うなよ?」
「「はい、ごめんなさい…」」
苦笑しながらも釘を刺しておけば、素直に謝った2人。しかしこの状況、個人的には大変面白くなってきたと思う。
「アスナの本気状態に入った理由についてはスルーするとして…いまのアイツの状態なら、
ユウキに勝てる確率は最大で5割だな。最低でも4割から4割5分ってところか」
「そんなに高いの…?」
俺の推察にカノンさんは少し驚き、他のみんなも似たような反応をしている。
動機は欲望が占めてるかもしれないが、この際は置いておくとしよう。
それに、最近は御無沙汰だったしな…(黒笑)
「なんにせよ、面白くなりそうだ…」
俺達は改めて、デュエルの舞台に居るアスナとユウキに視線を向けた。
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
はい、今回は短かったうえにこんな風に纏めて申し訳ないっす・・・。
いや~キリト達の戦いを書こうにも、逆に決勝戦よりも派手になっちゃうかもしれないと危惧した結果、纏めた次第です。
一方でアスナさんは欲望を垂れ流しにしていますw
次回はアスナVSユウキ、そして決勝戦になります・・・キリト無双ですw
それではまた・・・。
Tweet |
|
|
19
|
6
|
追加するフォルダを選択
第42剣です。
今回と次話はデュエル・トーナメントの話しになりますが、期待はしないでください。
どうぞ・・・。