No.620814

リリカルなのはSFIA

たかBさん

最終話 いきなりパチュンした俺は『傷だらけの獅子』に転生した。

2013-09-19 12:58:23 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:10540   閲覧ユーザー数:9114

 最終話 いきなりパチュンした俺は『傷だらけの獅子』に転生した。

 

 

 

 二つのスフィアを手にした時に起こった大爆発。

 その時に巻き起こった光の中心にいたガンレオンは必死にその光の中で『痛み』に耐えていた。

 

 『尽きぬ水瓶』の力。自分が愛している者。慈悲の対象を癒し、強化するという力。その力は万人に与えられる。それはつまりどんな物のダメージを癒し、強化するという事。

 それを拒否することは出来ない。問答無用のヒーリングと強化が施される。

 

 性質に『偽りの黒羊』の『嘘』を入れ混ぜる。

 癒しの『嘘』は『痛み』。

 あの二つの光る雪。

 緑の光は『尽きぬ水瓶』のヒーリング効果を及ぼす物だった。

 だが、その雪を浴びた後に赤紫の雪。『偽りの黒羊』の力を浴びた瞬間、その癒えた効果は『嘘』つまり、『痛み』。ダメージになる。

 疲労困憊かつダメージを負った体でそのようなことになれば死人が出るのは目に見えている。

 

 『本能』的にそれを感知した『傷だらけの獅子』は己の力で自分の力の糧になる『痛み』をその場に押さえつけていた。

 

 

 高志視点。

 

 「がああああああああああああああ!!」

 

 自分の手の中で暴れ狂う二つのスフィア。荒れ狂う力の光は触れるだけでも反転した『癒し』。『痛み』が襲い掛かってくる。

 二色のスフィアの光。

 癒され、気が緩んだところにダメージが襲い掛かってくる。それに抗うことは出来ない。なら、受け止めるまで!

 あの不死者であり強力な魔力を持つアサキムでも受け止めきれなかったこの光。それに鑑賞できるのは俺達が『痛み』を糧にする『傷だらけの獅子』だからこそ。

 

 「それに、今までのプレシアの折檻や理不尽に比べたら…」

 

 (お兄ちゃんがいなくなったあの日の心の痛みに比べたらこんなものぉおおお!)

 

 

 

 オオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!

 

 

 

 獅子の咆哮が鳴り響く。

 『慈悲』の『嘘』の光に『痛み』で干渉する。そうする事でこの光を浴びてもダメージを負う事は無い。

 だが、その干渉によりダメージを負うことは無くなっても、その影響を完全に消し去ることは出来なかった。

 ダメージを無くしただけでジ・エーデルの狂気は消し去ることは出来なかった。

 

 ギィイイイイインッ。

 

 金属に傷を入れるような音が耳元で鳴り響くと同時に、『尽きぬ水瓶』と『偽りの黒羊』の間に何やら歪み(・・)が見えた瞬間、俺と融合していたアリシアが悲鳴を上げる。

 

 (そんな?!スフィアの封印も終わっていないのに次元振動まで?!)

 

 次元振動って、確か…。その発生した世界を崩壊させる巨大な地震の事だよな!なんで、そんな物がこんな時、こんな場所で起こるんだよ!

 

 (…そうか!この時、この場所だからだよ!この宙域で『水瓶』!『羊』!『山羊』!『獅子』!それにアサキムは他のスフィアを持っているから五つのスフィアがぶつかり合えばそこに魔力だまり出来るのは当たり前だよ!)

 

 ただでさえスフィアは一つだけでも強大なエネルギーを生む。

 そのエネルギーが拡散する前に一定空間の中に充満して、その空間が破裂することで次元振動が起こる。

 簡単に言えば全てを呑みこみ押しつぶすブラックホールが発生する。

 そんなことが起これば俺達はもちろんミッドにいるなのは達もそれに巻き込まれて…。

 

 「どうにかできないのか!アリシア!」

 

 (何とかしたいけど!でも、まだスフィアの封印が済んでいないの!今、少しでも手を緩めたら『嘘にまみれた慈悲』で私達が死んじゃう!そうなれば『嘘にまみれた慈悲』はミッドに降り注いでフェイト達が死んじゃう!)

 

 未だにスフィアの封印は済んでいない。だけど、目の前で自分を殺す爆弾が生成されている光景を見せられては…。

 

 「スフィアは取り込めなくてもいい!今、この場を乗りきる事だけに集中しろ!」

 

 (わかっているよ!でも!でも!)

 

 スフィア鎮静化まで残り三十八秒。

 次元振動発生まで残り三十秒。

 

 ガンレオンが叩き出した残酷な報せに俺とアリシアの目の前が一瞬、真っ暗になる。

 スフィアを封印するころには次元振動はとっくに発動している。

 つまり、どう頑張っても間に合わない。

 だけど、その事を受け入れることなんて出来ない!諦めたくない!ましてや…。

 

 「自分が惚れた女を守りきれないなんてっ!そんなのは絶対に嫌だ!」

 

 俺がそう叫びながらアリシアと共に封印処置を施していると背後に巨大な気配と魔力を感じた。

 

 『まったくもってその通りね。それに、それくらいの気合がないと私の大事なアリシアは任せられないわ』

 

 『お待たせしました!私も封印作業に参加します!』

 

 それは俺と同じ緑色の光。『揺れる天秤』の魔力を充電したアースラだった。

 

 『このアースラ自体に封印の魔方陣を施し、『揺れる天秤』で強化しました!いわば神殿のようなものです!二つのスフィアをアースラに!』

 

 リニスさんの声を聴いて俺は『揺れる天秤』『偽りの黒羊』をアースラに投げつける。

 アースラにぶつかった二つのスフィアはリニスの言葉通り、封印されていくかのようにその光を徐々に弱めていく。

 だけど、俺はそれに見向きもせずに目の前で起こりかかっている次元振動を止めるべく二つのスフィアがあった空間。いわば次元震源の処置に取り掛かる。

 ガンレオンの黄金の翼はもはやそれの宿主であるガンレオンのゆう三倍以上の大きさになり、その震源を優しく包み上げる。

 そして、更にそれを抱き上げるように『揺れる天秤』の光に包まれたアースラがガンレオンの足元にたどり着く。

 

 次元振動発生するまであと五秒。プレシアが愚痴る。

 『前に私が起こしかけた次元振動のデータが役に立つなんてね…』

 

 緑色に輝く船。その中で輝く黄金の翼。それに抱かれるガンレオン。

 

 四秒。リニスがそんなプレシアを見てため息をこぼす。

 『…できればそれを止めたリンディの情報もほしかったです。『揺れる天秤』!私に答えて!』

 

 そのガンレオンの両手で包みこむ次元震源は今にも破裂寸前だった。

 

 三秒。俺に語りかける。これが終わりになっても後悔が無いように。

 (…お兄ちゃん。…大好き)

 

 ガンレオンは涙を流す。

 

 二秒。俺も後悔が無いようにそれに答える。

 「…俺も大好きだ」

 

 悲痛に染まった涙を。

 

 

 

 

 

 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!

 

 

 

 

 

 次元振動の発動阻止は間に合わなかった。

 ガンレオンの咆哮を耳にしながら、俺の目の前は真っ黒になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パチュン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 沢 高志視点。

 

 ・

 ・・

 ・・・。

 

 「・・・・・・・・・・・・・・俺は帰って来たんだ。『元の世界』に」

 

 …長い。長い夢を見ていた。

 そんな気分だった。

 まるでずっと眠りっぱなしだったかのように体を動かそうとしたらミシミシと関節から音が鳴った。

 自分の体につなげられた幾つもの点滴の管。

 そして、俺の寝ているベッドの傍で俺の母親が俺の枕元でリンゴを剥いている。

 

 「お前も災難だったね。就職が決まったと思ったら隕石に弾き飛ばされるなんてさ」

 

 なんて悪態をつくも、一週間意識を取り戻さなかった俺がいきなり目を覚ました時には顔をくちゃくちゃにしながら泣いて喜んだ俺の実母その人である。

 

 「正確にはその余波だよ、母さん」

 

 そう、俺は沢高志。二十一歳。もうすぐ誕生日だから二十二いや、二十三か?どっちでもいいか。

 就職が決まったことで、就職祝いで電車に乗って実家に戻ろうとしていたら、まるでピンポイント狙撃をしたかのように俺の目前(・・)まで隕石が落ちてきて爆発したらしい。

 その時の衝撃波凄まじい物で俺の傍にいた乗客の半分は鼓膜が駄目になったらしい。

 らしいというのは被害者の中で一番怪我が酷かったのが俺で、俺が目を覚ます頃には他の被害者は全員退院済みであるからだ。

 俺の目の前で爆発した隕石の衝撃で、なんと俺は走行中の電車の窓から弾き飛ばされたのだ。さいわいにして背の高い雑草が生えた河原に落ちたのが幸いしてどうにか死なずに入れた。だが、その時の衝撃で足首から先を電車に残して弾き飛ばされるというホラー演出もしてしまった。

 俺は全身打撲に鼓膜破裂という全治一年の重傷を負った。

 なぜか、全身疲労骨折という謎の症状も負って。

 

 心当たりがないわけではない。

 これは魔法の世界で戦っておった怪我だ。

 『魔法少女リリカルなのは』の世界で『スーパーロボット大戦Z』に出てくるガンレオンの力で少年少女達と命を賭けたバトルしてきたんだと…。

 

 「・・・」

 

 「またあんたはそんなふうに手を握ったり開いたり」

 

 自分の中に感じていたスフィアの存在。

 アリシアが自分の中にいるという感じがしない。

 

 「…まだ、自分はこことは違う世界にいたとか言うのか兄貴?」

 

 母さんがリンゴを剥き終え切りそろえると、個室の病室に沢家次男。俺の一つ下の弟の鋼(コウ)が入ってくる。

 その後ろに親父と一番下の弟の白(ハク)も一緒だ。

 

 「でも、確かにおかしいよな。なんで電車に乗っていたはずの兄貴が病衣(・・)のままだったんだろうな?」

 

 そう、入院患者が切るような病衣を着たまま電車に乗る人間なんて珍しすぎる。

 というか、乗る前に駅員に止められるだろう。

 

 「ハクと一緒に河原で夜釣りに言っていたら爆音が起きて、そこに行ってみればあちこち汚したお前が芝の上にいたんだもんな」

 

 俺が身に纏っていたガンレオンの鎧もなくなっていた。

 ガンレオンが。いや、アリシア達と過ごした時間が夢だとは思えなかった。

 何故ならあの世界に行く前の俺の体はそこらにいる平均男性よりもひょろい体つきだった。だけど、今の俺の体は半年以上もベッド生活をしたとはいえ未だにムキムキなのだ。

 週刊ジャンプのトリコや孫悟空程とは言わなくてもそれなりに筋肉がついており、腹筋も未だに八つ以上に分かれている。

 それがあの世界で激戦を繰り広げて鍛え上げられた体だから。

 

 「そんなわけないだろ。そんなことよりテレビでも見ようぜ」

 

 だけど、それについての問答はしない。

 したところで頭に異常があるのか、精神に異常があるのかと心配されるだけだったからだ。あの世界にいたという証拠が少なすぎるから証明できない。

 だから、もうその話はしない。これ以上俺の家族に迷惑をかけないように。

 

 ぽちっ。と、枕元に置いていたテレビのリモコンを操作してテレビの電源を入れる。

 そして映し出される。某A国の大統領が紫色の髪をした女性にひれ伏している映像を。

 

 

 

 『我等A国はプレシア・テスタロッサの建立した大国『アルハザード』に忠誠をつくします』

 

 『尽くします?』

 

 『いえ!尽くさせてください!お願いします!』

 

 

 

 ぽちっ。

 

 うん。俺は何も見なかった。何も見てないぞ。

 決してあっちの世界で俺にしていたように、この世界で最強と言われる国の大統領(トップ)に土下座をさせている姿なんて見ていないからな。

 途中で言い直した混じりっけなしの怯えに染まった大人の顔なんて俺は見ていない。

 思わず、チャンネルを変えてしまった。テレビには普段なら決して見ない株式市場の中継が映し出されていた。

 

 

 

 『奴が!奴が来たぞ!』

 

 『強欲の天秤が来たぞおおおおおっ!』

 

 『日本株まで荒らしに来たか!リニス・テスタロッ』

 

 

 

 ぽちっ。

 

 うん。俺は見ていないぞ。

 新聞片手にまるで競馬に来たかのように赤ペンでチェックしているショートカットな巨乳美人なんて見てない!見てないったら、見ていない!

 次に映し出された映像はミュージシャンやアーティストの新曲を紹介する番組。

 最近のアイドルや歌手とか入れ替わりが激しいからな…。

 

 

 

 『今週のランキング一位はアイドル界に突如現れた『黄金天使』アリシア・テスタロッサ!そして、水樹奈々さんのデュエット曲ツイン・エ』

 

 

 

 ぽちっ。

 

 いかんだろぉおおおおおおっ!

 その二人を一緒にしたらいけんでしょぉおおおおおおお!

 中の人は同じだろ!確かに見た目はアジア系と西欧系だけど、その二人を一緒にしたらいけないでしょおおおおおっ!

 と、俺は叫びたい気持ちを必死に抑えながらチャンネルを変更する。

 

 

 

 『大国『アルハザード』の行動理念。それは、私の、私による…』

 

 

 

 紫の髪をした美人熟女は一度言葉を切って言い切る。

 そして、十分な溜めした後に言いきる。

 

 

 

 『『娘の為だけの国』よ』

 

 

 

 「やり遂げろよおおおおおっ!私欲で国を作るんだったら最後まで自分を貫き通せよおおおおおっ!」

 

 いや、親馬鹿な事をしているから貫いているのだろうか?いや、ただブレていないだけなのだろうか?判断が難しい。

 とにかく、俺の我慢は限界だった。

 思わずツッコミを入れてしまうのは仕方ないだろう。

 現に隣では弟達はもちろん。おふくろまでも手の甲をテレビに向けている。

 

 ぽちっ。

 

 そのツッコミの衝撃でチャンネルが再び株式市場の中継に変わる。そこには…。

 

 

 

 『もう、お終いだァあああ…』

 

 『円の安全神話が、崩壊、した』

 

 『バブル崩壊再来ぃいいいいい!??!』

 

 

 

 「「「………」」」

 

 …つっこめなかった。

 この就職難無職(入院生活の所為で決まっていた内定取り消しなった)の俺にとってけっして笑えない雰囲気だった。

 頭を抱える人。口の中に手を突っ込む人。どこか放心している人など、多くの人達が荒れに荒れていた。

 そんな中、たった一人だけホクホク顔のリニスが映し出されていた。

 不整脈のマラソンランナーの心電図のように映し出された円相場。

 …俺、退院したら就職できるかな?

 

 これ以上は見ていられなかったのでチャンネルを変える。

 この時点で俺の家族の表情は笑えない蔵に引きつっていた。

 どうやらドッキリという訳でもなさそうだ。

 そしてチャンネルを変えると、先程の歌番組が映し出される。

 

 

 

 『アリシアさんの好きなタイプはどんな人ですか?』

 

 『はいっ。沢高志さんです!』

 

 

 

 「ぶっふぉうっ?!」

 

 番組の司会の人にアイドルお決まりの質問をされたアリシアが個人名をさらっと、そして、ポン。と言い放った。

 ほら周りの人が驚いているでしょ!

 かくいう俺の傍にいる家族の皆も俺の方を見ている!

 前もって俺の与太話(俺からしたら事実)を聞いている分驚きはその分大きかった。だが、そこでさらに驚きが増す。

 アリシアの発言に熱狂的過ぎるファンが暴走して、手に持ったペンライトを握りつぶしながらアリシアに突撃しようとする。だが、

 

 『チビ君、ゴー』

 

 『ぎー』

 

 『ぶぎゃあああああっ』

 

 どこに隠れていたのか、舞台の真下からちっこいガンレオンことチビレオンが飛び出して暴徒を殴り飛ばす。

 まあ、あの(・・)プレシアだもんな。

 なにかとやらしい(注意:タカシ独自の見解です)ことが絶えない芸能界にかわいい我が子を無防備に放り込むはずがない。

 しかし、プレシアさん。十体は多すぎやしないかい。ああ、チビレオンさん達。人間の首はそんな方向に曲がりませんよ!

 てか、いつの間に!そして、どれだけ作ったんだよ!

 

 「アイドルって自分が好きな人を公言していいものなのか?」

 

 親父が見当違いな所にツッコミを入れているが無視しよう。そうこうしている間にチャンネルは変わらないのに画面が切り替わる。どうやらこの番組は予め収録しておいて編集した物らしい。

 すると、どこかで見たことがあるような病院が映し出される。と、同時に院内が騒がしくなる。

 その画面の真ん中には先程テレビを騒がせていた三人の姿。その後ろをぞろぞろと数十体のチビレオンがついてくる。ある意味ホラーだろ。何気に一体歩いてはいるけどマグナモード?になっているし…。

 その三人は病院内に入り、階段を上り、とある病室の前で立ち止まる。

 

 そこの病室のプレートには『沢 高志』と書かれた名札がかかっていた。

 

 

 

 

 スフィアが暴走して次元振動が起こる。

 次元振動が起こりはしたものの、すぐに『傷だらけの獅子』と『揺れる天秤』で抑え込むことに成功する。だが、抑え込むタイミングがほんの少し遅れた為、ガンレオンとアースラのあった宙域が次元振動に飲み込まれ、俺が転生する前の世界に転移させられた。

 

 「次元振動。いわば虚数空間に放り込まれたのに別次元に放り投げだされたのはもしかしたらスフィアの力かも知れませんね」

 

 「タカは元々ここの世界の人間だからね。何らかの力が働いてもおかしくはないわ」

 

 「ごめんね、お兄ちゃん。すぐに迎えに来れなくて…。この世界がよくわからない所だったからすぐに迎えに行けなかったんだよ」

 

 この世界に転移してきた俺達がいた場所は地球の大気圏。地球の引力に引っ張られるかどうかの位置だった。そして、運悪く俺ことガンレオンはその引力引っ張られて墜落した。その墜落先が俺。

 つまり、転生する前の俺は転生した俺に殺された。

 ・・・なにこれ?ループ?

 衝撃波とか隕石の余波とか説明されたのは、それしか考えられなかったからだ。

 そう、向こう側の世界の三人が証明するまでは…。

 

 「で、でも、その話が本当ならアリシアさんはうちの息子と一緒に落ちてきたということになりますよね!その証拠は…」

 

 母さんが病室に入ってきたアリシア達に質問する。

 ぞろぞろと引きつれているチビレオンだけでも信用するに足りていると思うが…。

 

 「じゃあ、証拠を見せます。ん~♪」

 

 アリシアが笑顔でその質問に答えながら唇を俺の唇に押し付けてくる。そして、

 

 「…ユニゾン」

 

 カッ。と、病室を緑色の光で染め上げてアリシアと俺はユニゾンした。

 この自分の中にある別の存在。そして、いままでうんともすんともいわなかった魔力が再び息づく。

 

 (さらにガンレオン。セット・アップ)

 

 鋼鉄の鎧。ガンレオンが現れる。

 

 「…。…何か不思議だな。足首が無いのに、足先の感覚があるってのは」

 

 (お兄ちゃん、顔真っ赤♪)

 

 うるさい!

 いきなりキスなんかするから驚くに決まっているだろう!

 俺はアリシアがユニゾンすると同時に彼女が持っていたガンレオンのデバイスが起動してくれたことに少しだけほっとしていた。今の顔は家族にも誰にも見せたくない。

 アリシアの話だと、

 墜落した際にダメージオーバーにより鎧が強制解除される寸前で残りごくわずかの魔力で、ユニゾンアウトしたアリシアを守る為にガンレオンは待機状態になりながらもアリシアを障壁で守り続けた。

 その際にアリシアは人目のつかない暗闇落っこちて気絶。

 それからしばらくしてアースラからこの世界の地球に降り立ったリニスが助けに来た。が、俺はその時既に救急車で運ばれた後だったらしい。

 

 「その後は大変だったわよ。貴方の事を探しながらこの世界の事を少し調べたら出るわ、出るわ。あの手この手で私達を懐柔して悪用しそうな輩の集団が。アースラの機能が生きていたから最大限に利用して、身元を作り、十分な地位を確立するために国を作ったり、その資金源を手に入れたり、発言力を手に入れたりで大変だったわ」

 

 ああ、だからの、

 

 地位というか建国。プレシア。

 資金集めと言う名の市場荒らし。リニス。

 発言力(アイドル?)。アリシア。

 

 な、わけね。

 どれもやり過ぎじゃないかな?!

 技術チート、プレシア。ある意味最強なのでは…。

 

 「仕方ありませんよ。バトルフロンティアを失った以上アースラの武装はほぼ皆無。アリシアもガンレオンは多少使えるとはいえ、これだけの技術力、他の人が見たら何が何でも欲しがるでしょうね」

 

 「だから、私達は貴方の行方を知っても会う事を控えていたのよ」

 

 一歩どころか百年も千年も先を行く技術力を持ったプレシア達。俺という人質を手に入れて彼女達を囲い込もうとする輩は確かにいるだろう。

 

 「でも、やっぱりどこの世界も物を言うのは…。金か」

 

 どこの世界も世知辛いっすね。

 

 つまり、技術チートを持っているテスタロッサ一家はその技術を使いいるはずのない人間の身分を作り、荒稼ぎ。その際たるものが先程の株式市場の映像。

 どの株が下がるか上がるかをアースラのネットワークで先回りし、荒稼ぎをしたという事だ。

 しかもご丁寧に日本ではなく外国の市場から荒らしに荒らしまくった。

 そして、その資金でチビレオンを量産。武力をある程度蓄えながらアリシアをプロデュース。アリシアの綺麗な容姿と元気な性格もあってか一躍有名なアイドルになる。

 そして、チビレオンで作った脅迫。もとい、コネを作って建国。とは言っても砂漠化進んでいる土地を買い取って他国が手出しできないようにしただけだ。

 

 「つまり、プレシアさんは女王様と言う事ですか?」

 

 「…まあ、そうなるわね」

 

 ふっ。と、目線を逸らすプレシア。

 ちなみに俺の兄弟は『リリカルなのは』を知っている。なので目を逸らす理由を察した俺達兄妹もプレシアからそっと目を逸らす。

 …なんだか居た堪れない。

 

 「でも、お母さんとお兄ちゃんは私が小さい頃よくそんなプレイしていたよね?」

 

 そんな空気をぶち壊す。我等がヒロイン。その名はアリシア。

 てか、いつの間にユニゾンアウトしやがった!?

 ガンレオンも解除して、俺の上で寝転がりながら爆弾発言を投下する。

 

 「プレシアさん?!」

 

 母さんがプレシアから離れる。

 

 「それは本当ですか!」

 

 どうして目を光らせる親父…。その欲しがっているような目は何だ…。

 

 「私も混ぜてもらったんだよ~♪」

 

 「親子丼か!親子丼ですか?!」

 

 アリシアの発言に食いつくハク。

 そういやお前ってまだ高校生ぐらいだっけ。そう言う事には興味津々なお年頃だもんな。

 

 「…やはり、兄貴はMか」

 

 俺は弟からもM疑惑をもたれていたのか!?

 違うからね!

 

 「いいえ。高志はSですよ。…ベッドの上では」

 

 リニス?!

 

 「私は知っているんですよ。リインフォースに迫られた時、ジンオウガのように相手を組み伏せ、ティガレックスのように彼女を貪るイビル・ジョーの姿を」

 

 「やめて!業者から苦情が出るから!というか、何故知っている!?」

 

 […ぎー]

 

 「チビか!チビレオンで覗いていたのか!」

 

 [ぎー]

 

 正確には俺達の元になったプロトタイプっすよ。と、言っているように見える。

 

 「ひどい!プライバシーの侵害だ!」

 

 「そんなことより、私はもっと気になることがあるんだけど…」

 

 ゆらりと、俺の首根っこを掴む柔らかい指。

 だというのに、その柔らかい指に似合わない力で締め上げられる。

 

 「ねえ、私の事好きだって言ったよね?それなのに、リインフォースさんと?」

 

 「…う。そ、その」

 

 「…しちゃった?」

 

 「………」

 

 「………。…したんだ」

 

 「…はい」

 

 無言の沈黙。というか、お互いの家族が見ている目の前で、そのぅ、そんなことを言わなければ…。

 

 「……やってやる」

 

 「は?」

 

 「私もするの!ちょうど危険日だし!」

 

 「なにがちょうどいいんだ?!」

 

 「既成事実を作ってお兄ちゃんを私だけのものにするんだもん!」

 

 だもん。て…。

 お前、もう二十歳は過ぎただろう…?

 

 「やーってやるぜぇえええええ!」

 

 だからといって熱くなれとは言ってないだろう!

 

 「ヤればデキる(子どもが)!」

 

 「意味深!」

 

 「今からしよう!すぐしよう!」

 

 ベッドの上で可愛らしいアイドル衣裳のアリシアが病衣の俺を脱がしていく。

 アリシアさん!駄目です!だって、だって…。

 

 

 

 だって、プレシア様が見ている!

 

 

 

 「…タカ」

 

 ひいっ、久しぶりに見た憤怒一色に染まった表情!鬼色顔面!しかも、血の涙を流した状態のスーパーモード!

 …俺は今日、ここで死ぬ。

 

 「ここでアリシアを受け入れたらあんたを惨たらしく殺す」

 

 「う、受け入れなかったら…?」

 

 「万人が目を逸らしたくなるように惨めに殺す」

 

 DEAD OR DIE。

 

 「どっちにしろ俺が生き残れないじゃないか!」

 

 このやりとりも久しぶりだなぁ。と、思う俺はもうおかしくなっているのかもね…。

 

 「大丈夫だよ!むしろイかす!」

 

 「やめんか!エロ娘!」

 

 下ネタかよ。

 

 「エロくないもん!処女だもん!」

 

 「エロ=経験有りじぇねえよ?!」(…たぶん)

 

 「そう言いながらも処女と聴いた瞬間に、私のお腹に堅くて熱いものが…」

 

 「…タカァ」

 

 ひいいいいいいっ!地獄の底へ呼び込みそうな怨嗟にまみれた声が!

 だって、仕方ないでしょ!アリシアみたいに金髪美人がアイドル衣裳で可愛らしくメイクしていて、その上柔らかい感触と甘い香りで五感を刺激されまくったら…。

 それが自分の惚れた女なら尚更…。

 

 「では、邪魔者は退散しますね」

 

 と、リニスがそう言いながら修理したSPIGOTで俺の家族とプレシアを部屋の外に連れ出す。

 

 「丁度ベッドの上ですし」

 

 「病院のベッドはこんな事をするために設置されたものではないよ!」

 

 リニスさん、貴方も大概ですね!

 

 「人避けの結界を展開!」

 

 『傷だらけの獅子』の恩恵で多少の魔法なら使えるようになったアリシア。

 出来る事ならこう言う事じゃなくて他の事でその力を発揮してほしい。

 

 「アリシア?!」

 

 「さ、さすがに…。あまり人には知られたくないし、ね」

 

 「いやいや、こんな時に顔を赤くしても…。これ以前の貴女の行動が赤面ものですよ!?」

 

 その恥ずかしがる仕草はすげー可愛いけどね!

 

 

 

 その後の行動?

 少しは想像ついただろう。だが、あまい!

 

 

 

 

 

 その後の情事は君達が想像したものよりエロかった!

 それから三時間後。リニスに「やっぱりベッドの上では…」と、言われたけど、否定できない自分がいました。てか、また見てたのかよ!

 

 

 

 

 フェイト視点。

 

 この世界に来るまでの事を自慢するようにニコニコ顔で新設された機動六課。いや、特務六課の施設内にあるロビーで私達機動六課のメンバーに、アリサやすずか達も招いて話を聞いていた。

 お姉ちゃんは顔を赤くしながらも情事の事も事細かに。

 その後ろで母さんに締め上げられているタカシを背景にしながら。

 

 「と、言う事があってね~♪それからさらに半年の間にお母さんがあっちの世界の地球を統治して、『アビス』っていうこっちとあっちを繋ぐ門みたいなものをお母さんが作ってね、こっちに戻ってきたんだ!ああ、大丈夫、あっちのお義母さんたちの所には量産したチビ君達を置いて来たから大丈夫!」

 

 なんでもあちらの世界において来たチビレオン達は≪自己学習・自己増殖・自己修復≫を行うので武力的には何の問題は無いって言っているけど…。それってオーバーテクノロジー。というか、あっちの世界からしてみたらロストロギアなんじゃ…。

 

 あと、この世界に来たのは私達に会う事が目的の一つでもあるが、あと二つある。

 あの時回収し損ねた『尽きぬ水瓶』『偽りの黒羊』の回収と、『悲しみの乙女』のリインフォースを味方につけてアサキム対策を強化する事。

 そして、完全に覚醒したタカシに触れたことで私とヴィヴィオが『放浪者』になった。それで、突然異世界に飛ばされないようにとスフィアの力を利用してこの世界に固定することだ。

 そうする事で突然の異世界への転移を防ぐことが出来る。

 なんでも≪アビス≫の運用を改良した物らしい。…私の母さんって本当にすごい。

 

 「…だから、なんだ」

 

 でも、そんなことより私は気になることがある。

 それは目の前の姉であるアリシアの状態である。

 

 「…うん?」

 

 こてん。と、首を傾けるお姉ちゃんは私より年上なのに可愛らしく見えてしまう。

 

 「お姉ちゃんのお腹がそんなに膨れているのは…」

 

 「うん♪」

 

 にゃっはー♪と、猫が笑ったかのように笑顔を見せるお姉ちゃん。

 そのお腹は太ったというにはあまりにも一部が大きい。

 

 「あはははは♪そりゃ、私みたいに美人で可愛い人に迫られたらデキるものもデキちゃうよねぇ♪」

 

 つまり、そういう事…。

 

 「…い」

 

 「にゃ?」

 

 「ずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるぅううううううういぃいいいっ!お姉ちゃんばっかりずるいぃいいいいいっ!なんでお姉ちゃんばっかり私が欲しいの取ってくのぉおおおおおっ!」

 

 「「ふぇ、フェイトさ…ん?」」

 

 私が急に癇癪(かんしゃく)を起こしたことにエリオとキャロが驚いていたが関係なかった。

 

 

 

 「私だって、私だって…。私だって、タカシとの家族を、赤ちゃん欲しいのーっ!!」

 

 

 

 ぷしゃっ。

 

 ぱたりと倒れる音がしたので振り向いてみると、エリオと母さんが鼻血を出しながらその場に蹲っていた。

 …あれ?私、今何気に凄い事を言わなかった?

 ・・・。

 ・・・・・・。

 っ?!!

 

 「わ、わわ、私、今なんてことををををををおおおおおおおっ!?」

 

 顔が熱い。物凄く熱い。鏡を見なくてもわかる。今の私の顔はピンクを越えて真っ赤だ。

 でも、でもでも仕方ないんだよ!

 この想いに気がついた瞬間、今までくすぶっていた火が一気に燃え広がったように感情が溢れてしまった。しかも、それはこの五年間消えるどころか燃え上がるばかりで…。

 

 「とにかく!お姉ちゃんばかりずるいの!私にくれてもいいでしょ!ちゃんと養うから!」

 

 「ぐはぁっ!」

 

 今度はタカシが口から血を吐いて倒れる。

 

 高志はテスタロッサ家と仲がいいという理由でまともな仕事に就くことが出来なくなった。かといって、役職が高い仕事が出来るかと言えば高志の脳力もとい能力ではとてもじゃないが無理な話で…。

 つまり、絶賛無職中。一応スフィア・リアクターとして魔力を生産して≪アビス≫を起動させる役割を果たしているが、それだけで残りの家事から外での仕事に関してのレベルが周りの人間に比べて低すぎる。というよりも、周りが高すぎるだけなのだが…。

 タカシは気がついていないだろうが何気に世界観の時間のずれをガンレオンで『直している』という大業には気づいていない。その為、『養う』という言葉。それは今の高志にとってデスワードである。

 

 「駄目だよフェイト!こればかりはフェイトでも渡せないもん!お母さんとリニスをあげるから我慢しなさい!」

 

 「やだやだぁああああっ!」

 

 「…フェイトが壊れた」

 

 「…アリシア。…フェイト」

 

 「あわわわっ、エリオ君が鼻血で真っ赤に…」

 

 「しかたないですよ、プレシア。アリシアは小さい頃からベタベタだったじゃないですか。これを機に娘離れしてください」

 

 荒れている私を見てお姉ちゃんはプンスカと可愛らしく怒り、アルフは遠い目をしながら私を見る。お母さんは落ち込み、リニスがそれを慰めて、キャロが鼻血を噴いて倒れたエリオを介抱する姿が見えた。

 私とお姉ちゃんが言い争っている間にいつの間にかリインフォースとはやてがタカシの傍に移動していた。

 

 「な、なら。うちに来るか?喧嘩の元になるくらいなら私達の所にくれば、何かと融通できると思うぞ」

 

 「せやせや。八神の所に来るなら巨乳が四人に、ペッタンが一人。ムキムキが一人ついてくるで」

 

 「はやてぇえええええっ!」

 

 「主はやて?!」

 

 「はやてちゃん。私達はセットメニューじゃないんだけど…」

 

 「………高志。すまんが俺にそっちのケは無い」

 

 はやてとリインフォースの一言で一気に荒れる八神ファミリー。

 シグナムは発言に驚き、シャマルはずれたツッコミを行い、ペッタンな女の子がはやての発言に異議を申し立てる。

 ムキムキさんはノンケだそうだ。

 

 「だ、だったらうちに来なさい!私が帝王学と言うのを教えてあげるわよ!そしたらい、一緒に、バニングスの家を盛り上げていけばいいじゃない!そ、それまでは私が養ってあげるわ!で、でも一応これは貸しだからね!ちゃんと利子つけて返しなさいよ!」

 

 「あ、私の所に来ればメイドさんがつくよ~♪何なら私が高志君専用のメイドになってもいいよ♪何だったら一生。ね♪」

 

 アリサは素直になりきれて内にも本音も隠さずタカシを自分の家に勧誘し、すずかは優しくかつ、色っぽく誘惑していく。

 

 「なんでしたら私達のお手伝いをしてくれませんか?今、私と兄さんは執務官補佐としての仕事で嘱託魔導師を雇いたいのですが…。どうでしょうか、一緒にお仕事しませんか?」

 

 「…お手製のお豆腐も尽きますよ?」

 

 「……ごくりっ」

 

 タカシ?!今、葛藤したよね!ランスター兄妹のところに行こうとしたでしょ!

 確かにティーダさんのお豆腐は美味しいけど!

 

 「…ティアがいつになく積極的だ」

 

 「…ティガ。じゃなくて、ティーダさんの豆腐は渡しません」

 

 自分のコンビが静かにだけど熱心に誘う姿にスバルは驚き、ギンガは謎の対抗心を燃やしていた。

 

 「なのはママ。ユーノパパ。あの人が『傷だらけの獅子』なの?」

 

 「にゃはは。そうみたいだね。ああは見えても本当に強いんだよ」

 

 「ヴィヴィオは小さかったし、いつもは鋼鉄の鎧で戦っているからわからないだろうけど、ああ見えても強いのは確かだから…」

 

 駄目だよなのはにユーノ!ヴィヴィオにちゃんと教えてあげなきゃ!

 それに、『ああ見えて』って、それはちょっと言い過ぎなんじゃないかな。

 ああ見えても(←無自覚)私達を助けてくれた『傷だらけの獅子』なんだから!

 

 「みんなに散々に言われているけど。皆、高志君が自分の傍にいて欲しいんだねぇー」

 

 「そうだな。だけど…。参考に聞くが、どうすればこんな風に両極端な迫られ方をするんだ高志?」

 

 エイミィは呆れながらも笑顔を見せる。そしてその旦那のクロノはタカシに質問する。

 

 「…心当たりが多すぎる」

 

 タカシは頑張っているけど、派手な戦闘ではあまり目立った功績が残せてない。というか、スフィアの光で消された。

 日常生活では何かと不幸な目に会うタカシ。

 どうしてそうなったのかとクロノは興味があるようだ。

 

 「出来れば最初から頼む」

 

 「…ああ。俺がなんでこうなったのか。それはきっと」

 

 タカシはふと目を閉じ、一拍おいてからクロノにこう言った。

 

 

 

 

 

 「いきなりパチュンした俺は『傷だらけの獅子』に転生した」

 

 

 

 

 

 からだな。と、少し困ったようにタカシは笑って答えた。

 

 

 それから一年後。

 高志は新たな『尽きぬ水瓶』のスフィア・リアクターとなった覇王の末裔に出会い、更に一年後『偽りの黒羊』を持った冥王を名乗る少女と対峙する。

 それ以外にも幾多の困難が彼に襲い掛かってきた。

 復活したアサキムに。『尽きぬ水瓶』『偽りの黒羊』の新たなスフィア・リアクター達。

 だが、どんな時でも彼の傍には彼女がいた。世界の誰よりも彼が欲した女性が。彼を欲した女性がいた。

 だから、彼は立つ。何度倒されても、何度でも立ち上がった。

 自分一人だけだったら潰れていたその体と心を支えてくれる人達がいるから。

 

 「…行くぜ。アリシア!」

 

 (全力!)

 

 「全開!!」

 

 「マグナモオオオオオオオオオッドォ!!」

 (マグナモオオオオオオオオオッドォ!!)

 

 『傷だらけの獅子』は黄金の翼を背負い、空を駆ける。

 自分の力で救える誰かを救うために。

 自分と同じ寂しがり屋の覇王の孤独を少しでも和らげるために。

 目の前で苦しんでいる、助けてと叫びたくても叫べない冥王を助けるために。

 そして何より自分が惚れた女を守る為に。

 

 

 

 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!

 

 

 

 獅子の咆哮は今もどこかで鳴り響いている。

 


 
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