東京都台東区浅草にある七階立てのコンクリートビル。そこの三階には『よろずや東方流星』というあやしい事務所がある。また、よろずや東方流星のよろずやは漢字で万屋と書き、何事にも一通り通じた人を指し、関西ではどんな仕事をもする何でも屋という稼業を意味する。つまり、この事務所は何でも屋というわけだ。
事務所の出入り口であるドアから一人の女性が入ってきた。ドアの先には広いオフィスがあり中央には机とソファが置かれ、壁には大量の本や書類、ファイルなどを収納した棚、窓際には社長などが座っていそうな木製の机(の上に三頭身の人形)と高い背もたれの黒い椅子。反対側には奥の部屋に通じるドアがあるがなぜか不気味な雰囲気を出していた。
「いらっしゃい。ようこそよろずや東方流星へ」
窓際に置かれた椅子がグルリと周り、座っていた青年が挨拶する。年齢は二十歳前後であろう。腰まで届く茶色気味の黒い長髪を鈴つきのリボンでとめ、白いコートを着ていた。
ちなみに今の季節は秋である。
「て、あんたか。どうせ今回も料金はらわないだろう」
「ふふ、いいじゃないの。あなたは女から料金とらないでしょう」
女性は口元を押さえて笑いながらソファに座る。雪のように白い肌に額には赤い模様があり、どこか占い師のような連想する薄水色の服装に紫に布を肩にかけていた。
「んで、今回はどんな用件で着たんだ?」
「もちろん依頼よ♪」
お茶などは出していないのに、どこから出したのか机には煎餅が置かれ、女性は緑茶を飲んでいた。
「おい、どこから出したんだその茶菓子? 俺にもお茶」
「ふつう客人からお茶をだす? はいお茶」
そう言って、しぶしぶ青年に緑茶が入った湯飲みを渡す。どこから出したのかは野暮である。
「ケケケ、オイ、俺ニモ、茶クレ」
カタゴトでしゃべる女の声が部屋に響く。この部屋には青年と女性の二人しかいない。女性は窓際の机に上に置かれた人形の前にお茶と煎餅を置く。エメラルドグリーの髪にアンテナ?のような耳、背中にはコウモリのような羽が生えており、子悪魔を思わせる少女の人形であった。
「はい、どうぞ」
「サンキュウ」
人形は目の前に置かれた湯飲み持ち、お茶を飲む。
「イイ茶ダナ」
「そうでしょう。なんせ高級の玉茶よ。煎餅も高級品でけっこう奮発しちゃたんだから」
「そのせいで財布がピンチに」と中身がないがま口の財布を逆さまにふり、目くじらに涙をためる女性。青年は「へ~」と頷いてお茶を飲み干す。人形は興味がないので聞いておらず、煎餅をバリバリと噛み砕いて食べていた。
「…あなたたち、目の前に泣いている少女がいるのに、慰めの言葉をかけてくれないの? それ、買ったの私のなのに」
「別に。あんたが出してくれたんだろう。それにあんたから今まで報酬貰ってないし」
「ソレニ、少女テ、年ジャナイダロウ。見タ目三十路ノババァダシ」
「ヒドイ!!」
自分はピチピチの十八歳と講義するも青年と人形にバッサリ切り捨てられ落ち込む。
数分後には復活した。
「それで、話をはじめるけど、今回はどんな依頼だ?」
「今回はある世界と少女たちを救ってほしいのよ。あと、此処には帰れないわ。これは最後の依頼でもあるの」
「……了解。チャチャゼロ。今回はフル装備でいくぞ。持てる分だけ持ってけ。残りはアイツに頼んでおくから」
「ケケケケ、了解ダゼ、御主人。久々ニ楽シメソウダ」
人形――チャチャゼロはそう言って机の引き出しから大振りのナイフを取り出す。引き出しの中は刃物類で一杯であった。ナイフをチラつかせる姿は殺人人形という言葉に似合う。ナイフを点検し終えると握ってたナイフは消え、引き出しから次のナイフを取り出して点検し、また、ナイフは消え、次の刃物を取り出してはこれの繰り返し。
一方、青年は向かいのドアを開けて奥の部屋に行き、道具と武器、あと着替えを二メートル弱の長方形の棺にせっせとつめていた。次々と荷物を入れるが明らかに棺に収納できる質量を超えている。
ただの棺桶ではなさそうだ。魔道具の類であろう。
「ちょっとまちなさい。まだ、どうやって救うのかあなた知っているの? それにどうやって行くつもり?」
女性は慌てて青年に聞く。
「いや知らない。ま~、いつもどうりにやればいいだろう。あと、どうやって行くかは野暮だろ」
「ハァ~、まったくあなたって人は。いつものことだけど。」
ため息するも、彼の性格にもう慣れたためあきらめて説明する。
「まず初めに闇の書とその主の護衛よ。その後は、…情報が少ないからあなたに任せるわ。あと、行きはいつもと同じ」
女性はぶつぶつと小さい声で呪文を唱えると、彼女の目の前の床に青く光る魔方陣が現れた。魔方陣は柱のように青い光を放つ。青年の荷造りもちょうど終えたとろであった。
「よし、準備完了。チャチャゼロ、そっちはどうだ」
「オウ、コッチモ、オーケーダ御主人」
チャチャゼロの背中の羽より下の腰に二本のナイフがバッテンの形でホルダー収めている。チャチャゼロは空中を浮かびながら青年の頭に乗っかる。青年は棺を背負う。棺桶は皮製のベルトで巻かれており、背中に背負えるようになっている。
「んで、場所は」
「地球よ。別世界のね。」
「了解~」
軽く返事した青年は魔方陣の上に立つ。
「ねぇ、ほんとにいいの? もう此処には帰れなくなるのよ」
「別にいいさ、家族…じっちゃんは俺の好きにすればいいて言ってくれたしな。妹は別だけど」
妹のことを思い出したのか顔を青くする青年。あのときの妹の行動はトラウマになっている。
「それに、俺にはこいつもいるしな」
そう言って頭に乗っているチャチャゼロを撫でる。チャチャゼロは「ケケケケケ」と笑う。
「そう。わかったわ。じゃぁ、今までの報酬としてコレあげるわ」
女性は青年に深紅のガラスで出来た十字架のネックレスを差し出す。
「これは?」
「これはねデバイスといって、今から行く世界はコレがあるの世界よ。詳しいことはこの子から聞いてね♪」
「この子? すこしは説明してもいいじゃないか?」
「面倒い」
「オイ!」
青年は女性につっこむが、
「オーイ、漫才シテルトコ悪イケド、ソロソロ転送サレルゾ」
チャチャゼロの言うとおり魔方陣はより輝きだし、光は自分と主人を包もうとする。
「残りの荷物は私と彼らで送っておくし、それまでたのむわよ」
「あぁ、まかしとけ」
青年は自分の胸を叩いて答える。
「あっ、あと、選別としていいこと教えてあげる」
「? なんだ?」
魔方陣の光は青年たちの姿が見えないくらい輝く中、女性は告げた。
「あなたが探してた彼女たちと親友、世界、そして義妹に会えるわよ」
「!!! おい! どういうことだよ、管路ぅぅ!!――」
青年が女性の名を叫ぶが、魔方陣の光が白く輝き部屋を飲み込む。
光が収まると部屋には魔方陣は消え、青年と人形の姿がなく。管路という女性しかいないかった。
「行ったわね…」
管路は誰もいなくなった部屋でつぶやく。
「私は外史の管理者であり、星読みの占い師、管路」
歩き、青年が座って椅子に座り背もたれにもたれかかる。
「どんな未来も読めて、どんな運命見通せる可憐なスーパー美少女」
美少女じゃないでsy「ギロッ」すいませんでしたー!?(作者土下座)
「だけど、あなたが関わった世界は未来を変えるから読めにくい……けど」
椅子を回し、窓の外を見る。
「あなたは物語をハッピーエンドで終わらすことができる。なんせ世界に愛され、生きるものたちに愛され、天に愛された存在」
雲ひとつない青空を見上げた。
「だから、たすける。未来を導く。他人のため力を振るう。そして、手を差し出す。愛してくれたものたちのために」
誰もいない部屋で独り言をつぶやきながら空を見つめる。
「だから信じてるわ。あなたを、いえ、あなたと友たちを。たとえ何千年の因果に縛られた世界であっても、彼女たちを救ってくると」
彼らの無事を祈る。
「頼みましたよ天の御使い。北郷 一刀」
部屋には管路の姿なく、部屋は先ほどまで人がいなかったように静かであった。しかし、机には彼らが飲んでいたお茶と煎餅の袋があり、お茶は湯気が出ているので彼らがいた証拠であった。
後日、事務所に遊びに来た実妹が空っぽになった部屋を見て叫んだことを言うまでもない。
それでは
クロスオーバー二次小説
『リリカル東方恋姫』
始まります
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皆さんはじめまして。
はじめてTINAMIで二次小説を投稿させていただくゴーレム参式です。
この小説は作者の妄想と自己満足でできています。
こんなキャラじゃない!(怒)と不愉快と思えたらすぐに『戻る』を押してください。
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