憂さ晴らしに妖精をからかっただけだった。
魔法の森のあたりをうろついていた妖精を捕まえ、憂さ晴らしに小突いたりしていた。
本当にからかっただけだった。
そのうち黄色い髪をした妖精は泣きじゃくり「チルノちゃん!!チルノちゃん助けて!!」と叫びだした。
泣き叫ぶ妖精を黙らせようとすると、この泣き叫んでる妖精と同じ十に満たない人間の子供の様な青い髪の妖精が凄い剣幕でやって来た。
「おい人間!!私の友達を離せ!!」青い髪の妖精はまさに烈火の如く怒っていた。
妖精を捕まえるのは簡単だ……簡単なはずだったこれまでは……私は背筋が凍るような感覚に襲われた……そしてこの青い髪の妖精に言い知れぬ恐怖を感じた……命の危険を。私は咄嗟に泣き叫ぶ妖精を腕で締め上げた。
開放するつもりだった、身の危険が及ばない所まで逃げたら、開放するつもりだった。
腕の中の妖精が次第にぐったりしてきた。青い髪の妖精からほんの僅か目を離しただけだった、一瞬だけぐったりしてきた腕の中の妖精を見ただけだった。再び青い髪の妖精を見たとき、そこには先ほどの烈火の如く怒る子供の妖精では無く、恐ろしく無表情な大人の妖精がいた。
青い髪の妖精がふーっと息を吹くと、ブリザードの様な雪とも氷ともつかない吹雪が襲ってきた。その吹雪を止めようと青い髪の妖精に飛びかかろうとした……足が動かない……体が徐々に凍っていく……視界が白く白くなりぼやけていく。
最後に見た光景は、黄色い髪の妖精を優しくあやす青い髪の妖精の姿だった。
後に四季映姫という地獄の閻魔様から聞いた。
私は凍らされて、見せしめの様に幾日も幾日も霧の湖の湖畔に晒されていたと。
ただ本当にからかっただけだった。
四季映姫様の基準では悪だったらしい。
今回のことだけでなくこれまでの罪状を読み上げられ、板の様な棒で叩かれた。何度も何度も叩かれた。その衝撃はとても重く、骨や肉など無いはずなのに体を襲う衝撃はとてもとても重かった。
地獄の妖怪に引っ立てられる時、四季映姫様は言った。
「お前を死に追いやった妖精の名は『チルノ』奴はただの妖精でない。『チルノ』は幻想郷の中で最も怒らせてはならない者の一人だ。お前はその『チルノ』を怒らせ、その結果お前はここにいる……安心するがいい『チルノ』を怒らせたのはお前だけでは無い。他の愚か者と一緒に永遠に悔い改めるが良い」言い終わると目を合わせる事無く次の者を呼んだ。
目の前に地獄の暗闇が広がる。ただからかっただけだった。憂さ晴らしにからかっただけだった。
もう後悔しても遅い。
暗闇から亡者の嘆きが聞こえる。
決して救われることの無い亡者の嘆きの声
あの声は私の声……
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氷の妖精チルノ