薄暗い室内、入口を開ければ右手には一面タイルが貼られたお風呂場で歪な洗面器具が立ち並ぶ。
左手に見えるは、白く高級感の漂うシーツが被さってあるセミロングなベット。
ここは、池袋某所にある『ファッション・ヘルス、メロンキャンディー』
色欲渦巻く夜の大人の垢を剥ぎ落とす――そんな場所。
しかも、ここで働く女の子達は全て・・・処女である。
初心な彼女達が試行錯誤させながら、大人の垢を落とす、それがこの店でのコンセプト。
勿論――未成年(18歳以下)や学生(高校生、大学生)は働けない。
この店の独特な斬新な営業スタイルは、業界初であり特許取得済みである。
「恋詠ちゃん、お部屋15号室ね。初勤務だと思うけど頑張ってね」
およそ男とは思えぬ言動な店長から彼女は送り出される。
部屋は全部で20部屋完備されている。
1時間――大2枚半(25000円)それが彼女達の1時間の値段だ。
プレイ内容は、一般的に恋人が彼氏に用いる愛撫。
余り下劣な淫語は得意では無いが――言うならば『毛の拳銃』や『菊』を手を使わず綺麗にする行為。
そんな基本プレーが終わると身体を清める為に風呂場を活用する。
一切本番行為は禁じられてる――しかし、客の要望に多額のお金が積まれればルール何ぞ捻じ曲げれる。
『処女遊び』と大人達は称し裏メニューとして密かに繰り広げられてる。
そして――この噺は、そんな儚げな夜の女達の惨事な物語。
「お疲れ様でした。リエちゃん」
「はい、ありがとさん」
私は、ピンク色をした受付にて大6枚(60000円)を店長から受け取る。
これが私が5時間働いて稼ぐ金額だ、通常のコンビニのアルバイトだと何日働くのやら。
女に生まれて恵まれたと初めて思う、だが女は賞味期限があるなんて男が言ってた時代があるらしい。
―― しかし、それは時代遅れな奴の考えだ ――
今は西暦で言うところの2110年。
様々な情景も変わり政治形態も変わった、ALA麻薬指定されてた法律も無くなり人類は進化の闊歩を止めやしない。
現在、ALA使用者は―― Amlito(覚醒者)と呼ばれるように統一された。
昔のように社会的差別も無くなり、寧ろAmlitoになることを推奨されている。
成れない人間は、Mores(旧人類)と呼ばれ蔑まれてる。
そんな時代に風俗業界にMoresなんて一人もいない。
全てAmlitoであり、外見の年齢なんぞ信用されない時代に成り果ててる。
――だが、だからこそ。
大人達は若い外見に金を積む。
私は実年齢だと32歳で、普通だと『人妻淫乱祭り』や『女教師即尺デリバリー』にしか需要が無いだろう。
だけど見た目の私は、16歳と少女で処女だ。
時代に助けられたとでも恩義を誰に感じるでも無く、私は働く『彼氏』の為に。
「今日も来てくれました。姫様に感謝で壮大なお礼を言いましょう」
金髪スーツの男が、シャンパン片手に立ち上がり同じような男達の集団に指示を仰ぐ。
――アリガットサーン。
それパーリラパリラパーリラパリラ――フゥフゥ。
「やってくれました、昨日も今日も明日も。カリスマナンバー1『トシヤ』君は凄い凄い、正に救世主。この荒んだ時代で世界を掴む男」
――うぉおおお ――うぉおおお
鳴り響く大音量のBGMの中、彼らの自己満足なシャンパンコールが開始される。
勿論嬉しいのだけども、私はお酒は静かに『トシヤ』と呑みたいのであってコールを見に来ている訳では無い。
ここは、ホストクラブ《ロザリオ》。一般的なホストクラブと内装は変わらない、安っぽい酒瓶を色水入れて照明で光らせ高級に魅せて演出している。
箱も狭く、キャストもレベルが低い――お店は最低ランク、ただ――『トシヤ』だけが世界一格好良い。
刈り上げ短髪で金髪な俺様キャラな彼に、私は何千万貢いでるだろうか。
毎日来ている私の好意を彼は受け止めてくれる。
「ふぅー疲れた。リエ、ありがとう――お前が頑張ってくれてるから俺も頑張れるんだ」
「うん、トシヤ凄く輝いてたよ。もう直ぐバースデーだから私も今準備してるの」
「おう、楽しみにしてるぜ。あっ今日さ、お前の『枝』紹介してくれるんだったよな」
そうだ今日、トシヤは珍しく私にメールでお願いをしてきたんだ。
「今日どうしても後輩に枝を付けないといけないんだ」
可愛らしいハートマークを3つも付けてくれた、しかも連れて来たら店外デートが出来るのだ。
枝というのが、簡単にいうと『友達紹介』みたいなもの。
お店の顧客を増やす時、彼らは枝を上手い具合にお店のキャストに振り分けるのだ。
お店としてもホスト全員が売上あった方が良いし、幹のホストは負担が減る。
どちらにしてもお客には、専門用語は通常使用しないのだが私は、トシヤにとって特別全てを曝け出してくれる。
「分かってるよ、もう直ぐ来るはず」
「そうか、ありがとな」
「別に良いよ、トシヤを支えるのは私の役目だからさ」
ホス狂いと言われようが、私は悪くない。
――自分の金で遊んでいるのだ、男がキャバクラ嬢で豪遊するのと同じようにしてるだけだ。
誰も私を――非難出来ない、されたくない――。
不意にホストクラブ《ロザリオ》の門が開かれる、鳴り響く鈴の音が素早く下っ端ホストの出迎えを促す。
「ようこそ!! 安らぎの屋敷――ロザリオへ」
綺麗なお辞儀で統一された動き、非現実の世界を彩るには完璧な挨拶だ。
「あの・・・、友達が先に来てるんですが?」
「はい、お名前をお聞きしても宜しいですかな」
内勤のおじさんが、彼女に問う。そして名前を聞いて私の友達だと察し要領良く席まで案内してくれた。
「コヨミちゃん~こっちこっち」
「リエちゃん、今仕事終わったんだ」
「そっか、疲れたよね。何飲む?」
「ん~。私カクテル系しか飲めないんだ、カシスウーロンでいいわ」
コヨミは、後ろに控えているホストに伝えるとお手拭きで手を綺麗にする。
彼女は同じ仕事場の同僚で、最近勤務しだしたばかりの新人風俗嬢だ。
見た目は18歳に見えるが、実年齢は多分私より上だろう凄く大人っぽい発言をしてるからだ。
「それで今日は、私に何のようですか先輩」
「止めてよ先輩なんて、私達そんな実年齢変わらないでしょう」
「ん・・・そうだね。リエちゃん見た目16歳だしどっちかっていうと妹みたい」
「ちょっそれは、それで嫌だな」
そんな会話をしつつも、ホストクラブを楽しむ私達次第に時間も過ぎいつの間にか閉店時間になってしまう。
「お客様、もうそろそろ閉店の時間でございます」
「ん? もうそんな時間なの」
店長に軽く会釈してトシヤとの待ち合わせで、コヨミと談笑する。
するとコヨミが不安そうな顔をしながら悩みを相談して来た。
「私、最近体が可笑しいんだよね」
「えっ病気か何か?」
「そうじゃ無いんだけどさ」
「もしかして、コヨミちゃん。裏メニューしちゃったの」
「今日だけだよ、今日だけ」
「でもコヨミちゃん、昨日も言ってたみたいじゃん」
「えっ? マジ? 私あんまりメモとらないから覚えが無いんだ」
「メモとらないといけないよ」
Amlitoにとってメモは記憶と同義語なのだ。
私達の仕事で裏メニューをされると、物凄く稼げるが、それ相応のリスクを背負わないといけない。
十分に注意しないと、子供が出来てしまう。
そして、お店は自業自得とのことで何もしてくれない。
中絶するにもお金がかかり、躰を傷つけてしまう――だからこそ、いつ何回したのかメモが必要な訳だ。
「お待たせ、リエ待たせたな。ごめんごめん」
「どうも初指名ありがとね、コヨミちゃん」
話の途中で彼らが来た。
空には太陽が昇って彼らの顔を照らしだす、この瞬間が私は一番嫌いだった。
―― 夜での王子は、朝になるとオヤジになる。肌あれたやせ細ったオヤジに。
化粧誤魔化せるのは、夜まで朝になると光で全てが大っぴらにされる。
それでも、私は《トシヤ》が好きだった。
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生誕祭
それからホス狂いな私の人生は、苦痛に塗れた日々だった。
あの後、トシヤとの子供が妊娠してると気づいた私は彼に報告した。
すると、音信不通になり店には出禁にされた。
私はそれ以上彼を追わなかった、何故ならホストってこんなもんだと分かっていたからである。
職場の方は噂でコヨミちゃんの裏メニュー中店が摘発されて潰れたらしい。
私の住む世界が、一瞬の間に壊れる様は至極滑稽だった。
――ただ、一つだけ生きてて良かったと感じることがあった。
トシヤとの子供の出産である、何となく中絶しないでいる内に『産みたい』と願望が湧いてきたのだ。
そして、彼に名前を付ける。
――私が、桐島 涼子だから――私の名前を取って。
桐島 涼。凄くクールな名前だなと思った、そして私は彼をこの世に生むと同時に逝く。
~世界を変える、そんな男になる気がする~
桐島 涼。
これでALA売人の書き込みは終わる。
そして最後に彼は予言している――人類の未来を。
249.名前 漆黒の翼(闇) class:少佐 投稿日2115.4.25 6:32 ID uragiti221
さて俺は、少佐になった。
俺は満足した、最後にあと一つ暴露をしよう。
明日 2115.4.26 日本は内乱勃発して内乱時代へと突入するだろう。
二つの人種が互の正義の名のもとに、時代が動き出す。
ラグナロクは、近い。
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さてと、最後になります。
ALAシリーズ。
応援してくれた皆(いたかな)ありがとうございます。
閲覧数が大体平均50くらい、来てたので嬉しかったです。
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