No.619175

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 外伝 第001話

皆さん、本日はちょっと外伝的なモノを作りました。

これはどういう風にして本編に繋がっていくのでしょうかww

ちなみに物語である銀行強盗については、ぶっちゃけ少し投げやり的に書きました。

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2013-09-13 22:38:06 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1109   閲覧ユーザー数:1035

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 外伝 第001話「もう一つの序章」

 

東京都千代田区霞ヶ関警視庁本部。

ここにとある一報が届く。

武装グループが人質30人を連れて(なつめ)銀行に立てこもった。

人質には取引で来ていた七瀬コーポレーション社長や、四菱(よつびし)グループの令嬢など、いずれも日本社会を支える会社の関係者ばかりが人質に取られる。

元居た社員は逃がされたようだ。

武装グループの要求は現金500億。

それが叶えられないのであれば、一時間毎に人質を一人ずつ殺すと言ってきている。

いずれも日本を支える業界の重要人物の関係者。

政界からも警視庁に向けて圧力をかけて来た。

しかし警視庁、ひいては日本政府としてはこの要求を叶える訳にもいかず、警視総監も、もし人質の誰かに少しでも被害が及ぶようであれば、今後の自分の立場も危うくなる。

そこで彼はある男を投入する。

刑事課・強行犯係所属、課長輝守(てるもり)正義(まさよし)

本来刑事課の課長が現場に出向き指揮を取る珍しい物であるが、彼はいつも率先して現場に向かい事を収める。

それに口数も少なく、なんと東大の法学部主席卒である彼。

何故警察の世界に入ってきたかも謎であり、入ったからには警察官僚のエリートコースを進む物だと誰もが思った。

だが彼はあえて現場の指揮に留まり今日(こんにち)に至り、他の課の者にはいつも変人扱いされているが、決して人望が無いわけではない。

その経歴を鼻にかけない彼の姿に、嫉妬を覚えるものは居なく、かえって好感を覚えられている。

経歴を鼻にかける者が多い警視庁の刑事に対し、所轄の刑事はいつも彼らに陰口を叩いているが、この正義に対してだけは好感を持っており、今の東京警察刑事の折り合いを保っているのも、彼の存在があるからと言っても過言ではないであろう。

その彼は今、襲撃のあった銀行の排気庫をホフクしていた。

銀行の屋上は武装グループに抑えられ、勿論出入り口も完全に抑えられている。

窓を叩き割り突入しようものなら、報復として人質も殺害される可能性もある。

ならばそれ以外の方法を選べばよい。

そこで彼は路地裏から出ている排気庫に目を付けた。

まさか武装グループもそんな所より人が入ってくるとも思わず、完全に無警戒。

ただしアルミで出来ているため、音には大変の注意を払わなければならない。

このビルは30階建てであり、人質は1階の中央フロアに集められているらしい。

彼は敵の警備が薄いトイレから出てきたが、そこが何回か判らない。

よく映画でスパイが活用しているウェットスーツの様な黒い服と暗視ゴーグルを脱ぎ捨て、トイレのゴミ箱に丸めて捨てると、ショートカットで整われたスーツ姿の男に変身。

髪の毛は少し白髪混じりで、顔には特に目立つ皺も無い。

いくつもの修羅場を潜り抜けてきたのか、なかなかの風格も醸し出していた。

彼の装備は長財布に携帯、それにハンカチと軽装備で武器は無さそうに見えるが、そうではない。

長財布には仕込みナイフがあり、ハンカチには眠りを誘う催眠薬をたっぷりと染み込ませている。

周りに警戒しながら廊下を歩いていると、会議室手前に武装グループの一人を発見。

そこでワザと音を鳴らして敵を誘う。

勿論敵はそれに気付き正義に近づいて銃を構える。

「ひ、ひぃぃ、撃たないで!!」

彼の顔は先程とは違い、引き締まっていた顔は崩れ、敵から見てもとても弱々しく無害な中年に見える。

「貴様、何処から入ってきた!?」

武装グループの一人は正義に銃を向けて威嚇をし、彼は弱弱しく両手を挙げる。

「な、何のことですか!?私は今までトイレに居ましたよ!!」

「何?我々がここを占拠して三時間経つ。そんなにトイレに篭もる奴が居る分けない!!」

「え、いや……そn「何だ!?」………」

正義はグループの一人から視線を逸らし、弱々しくぼそりと呟いた。

「………痔………でして――」

すると二人の間に何とも言えない空気が流れる。

「………あ、あぁ!!………あれは辛いよな。あれは判る」

何か共感する所があったのか、敵も納得するが、次の瞬間。敵が一瞬目を逸らした瞬間、彼は拘束されることになる。

一瞬の隙をついて、敵の持つAK47(アサルトライフル)の銃身を右手で軽く押して左に傾け、自分の体の軌道となる位置から逸らし、左手で素早く相手のAKにセーフティーを入れて軌道不可にさせる。

その動作と併用して、銃に反る様に水平に敵の咽下にチョップを放ち、怯んだ隙に相手の銃を落とし、敵に関節技を掻けながら自分は回りこんで、咽下に財布型仕込みナイフの刃を向けて尋問する。

「動くな。動けば貴様の咽を掻き切る」

ナイフの冷たい刃が武装犯の喉元に当てられ、耳元で囁かれる正義の言も冷たさを含んでいる。

「へっ、やれるものならやってみな。ここは法治国家日本だぜ。てめぇはどうせポリの関係者だろ。敵と言えど、殺せばそれなりに罰せられるだろう」

武装犯は正義の言を脅し文句と受け取ったのか、全く怯む様子を見せなかった。

「……そうか」

相手は警察関係者と思い甘くみた敵は、これはただの思い余裕綽々でニヤ付いているが、正義は一言呟くと敵の右肩にナイフを深々と差し込んだ。

それにより敵は勿論痛みで悲鳴を叫ぼうとしたが、敵の口は左手で塞がれた。

「悪いが、俺はお前達が抵抗しようとすれば殺害する権利も与えられている。だからお前がどうなろうと知ったことではない。死にたくなければ質問に答えるのだな」

敵は痛みと恐怖で涙を流しながら、首をカクカクと振る。

正義は「叫べば殺す」と脅し、左手をのけて尋問を続ける。

「いくつか質問をする。貴様らは一体何人いる?」

「ご、五十人だ。途中でヘリから合流した者も合せて五十人だ」

「お前達の配置と、人質は全て一階のフロアにいるのか?」

「屋上周辺の階に10人、一階に10人、それぞれの階に1か2人。人質は全て一階に集めたはずだ」

「そうか。お前の名前とコードネーム、そしてお前達の合言葉は?」

「え?「答えろ!」な、名前は井森修平、コードネームは睦月、合言葉は『は・ひ・ふ・へ・ほ』だ」

「ご苦労」

武装犯が用済みとなると、彼は催眠ハンカチで敵の意識を失わせ、先ほど居たトイレに連れて行き身包みを剥がして敵の武装服と武器を入手。

生憎敵はマスクをしており、体格も同じ170前後であるので、余程の事が無い限りばれる事は無いだろう。

始めに着ていた衣服で敵の手足と顔を縛ると、トイレ用具の中に押し込め鍵をかけた。

彼はエレベーターで最上階へ行き、警察が屋上から強行突破する空気が流れている一階より報告があったと誤報を流し、警備で出回っていた中央階の敵は最上階に集まり、次に彼は一階に向かい、最上階から救援要請と誤報を流し、一階の敵は半分上の階へと向かった。

これで一階にいる武装グループは5人となった。

まず彼は一人を共に裏の見回りに行こうと誘い出し、周りの敵の死角で排除。

戻ると「あいつはトイレ」と言って見張りを続け、帰りが遅い仲間を見に行くと称して、敵を一人連れて行きそこでまた排除。

残った三人を話があると呼び出して、敵が自分の近くに来たら、人質に当たらぬ様に頭を打ち抜く。

完全に警備が居なくなった入り口から人質を逃がし、後は警察機動隊の突入により、武装グループは一掃された。

 

「いやぁ輝守くん、助かったよ。君のおかげで私の首も繋がった」

正義に近づくデップリと太った男性は、日本の警察を取り仕切る警視総監であり、普段の事件では顔を見せないのだが、今回は事が事だけに自らが飛んできた。

万の一があれば自分の首も危うくなるからだ。

「……いえ、命令されたことをしたまでです」

「固いなぁ、それはそうと、君にいい話があるのだが。あの銀行に人質としていた四菱グループの令嬢が、君に一目惚れをしてね。彼の父親である四菱源三社長も君を大変気に入り、四菱グループから見合いの話が来ている。彼女は容姿もスタイルも頭も良い。どうだね、一度会ってみt「お断りします」」

総監の案を彼は有無も言わずに一蹴する。

「し、しかし、警察官僚としても、彼のグループとも関わり持ちたく思っているのだよ。そう簡単に断らず、せめて会って話をしてくれるだけでm「ならば私は警察を辞めます」……」

そう言われると、彼も口を紡いでしまった。

今の警察機関に於ける輝守は、下の者を束ねる為に無くてはならない存在。

ここで辞めてもらえば、下を押さえる留め具が無くなり、組織がぶれる事になる。

実は彼が警察に入ってから、見合いの話はいくつもあった。

しかし彼は全て断り、断られた側に険悪な印象を持たれ、怒った総監が彼を辞職へと追い込んだ。

だが彼を辞職させようものなら、下の者は総監に強く反発。

それにより一時期は総監自身が辞職に追い込まれそうになった故、彼を呼び戻し職場に復帰させた。

そこで総監は彼に見合いの話があるとき、全ての件を「断られる前提で提案して下さい」と言って引き受けている。

もしかすると輝守には男色の趣味があるのかと思い、そういう者達を近づけると、彼に「ふざけているのですか?」っと一蹴された。

どうやら、そういう趣味があるわけではないらしい。

「用は終わりですか?終わりであれば私の今日の勤務は終わりですので帰らせて頂きます」

そう言うと彼は部屋を出て行った。

彼は刑事課の自分の席に戻ると、帰り支度を整え始める。

そこでいつも部下に「飲みに行こう」と誘われるものも、彼は丁重に断りまっすぐ家に帰る。

この様な事が彼の入官以来、彼の仲間・部下は何十年も行っているが、彼は誘いに乗らず、たまに何かの間違いで飲みの席に参加しても、彼は老酒や日本酒をロックや水割りなども無くストレートで淡々と飲み続けるだけである。

しかも酔わない。

これが何十年も続いているのだ。

彼は自前の黒のベンツを飛ばすと、とある場所へと向かう。

三時間程走行すると、港のとある廃墟へとたどり着く。

そこには彼の乗ってきた物と同じような車が数台停まっており、中に入ると、黒いスーツに黒いグラサンをかけた体態のいい外人や、中は黄色や青のシャツを着て、スーツをだらしなく着たチンピラなどがそこ等じゅうに溜まっており、黒のコートに身を包んだ正義が中央を歩いていくと、周りは彼に視線を集める。

彼はいくつもの事件を解決し、テレビでは「警官の鏡」と言われるぐらい取り上げられている。

そんな彼が警察の敵であるマフィア?やヤクザ?の中を歩くのだ。

目立つに決まっている。

中央を歩いていくと、大きな円席があり、そこにはヨーロッパマフィアのドン・カルネ、西日本を牛耳る不御矩洲(ふぉっくす)会の頭・有坂直登、東日本の狩友里(かゆり)組の飯島百合子、中国マフィアのフェイ・チャンなどの裏世界の大物が一堂に会していた。

正義はその一つの席に座り、持ってきたトランクを机に置く。

「……皆さん、お集まり頂きご苦労様です。それでは早速取引と参りましょう」

彼がトランクを開けると、その中にはマリファナ、コカイン、アヘンなどと麻薬、覚醒剤がみっちりと種類ごとに詰まれていた。

「今回、警察の方で押収した薬は、新型も含めて20種類弱あります。皆さん、紙に欲しい量と種類を書き、私に渡してください」

するとそれぞれの席でペンの走らせる音が聞こえ、各部下の者経由で正義に渡す。

彼はそれぞれの書かれた紙を見る。

「判りました。さっそく用意出来るように計らいましょう。それでは情報を頂きましょうか」

円席に座っている各組頭は、それぞれのA4の封筒を取り出すと、先ほどと同じように部下経由で正義に渡す。

彼は封筒を開け、渡された封筒を一つ一つ開けて見て行く。

心なしか、数人額から汗が出ている様だ。

「……ミハイル」

そう呼ばれた男は体をビクッと震わせ返事をする。

「君が集めた情報はこれだけか?」

「す、済まない。今回はそれだけしか情報が集まらなかった」

彼はそうかと呟き、資料をカバンにしまう。

「それでは今回よりカルロス一派とルビナ社との契約を切らせて頂く」

そういうと数人の者が立ち上がり、正義に文句を言う。

「何故?答えは簡単。君達がミハイル傘下の者を妨害して、彼をこの取引から遠ざけようとしていたのは既に調べはついている。カルネからの証言だがね」

するとカルネはパチンと指を鳴らし、彼の部下が、拘束している二人組みの男を連れてきた。

「コレハキミタチノ部下ダロウ?洗イ浚イ喋ッテクレタヨ」

片言の日本語で話す彼に対し、カルロス達は一つ苦言をつくとジャケットの脇にしまった拳銃を取り出そうとした。

しかし正義が投擲したディナー用に並べられたナイフとフォークがそれぞれの頭に刺さり絶命した。

「ヒュ~。正義、ベッドの上と同じく、相変わらずの良い腕ね」

「ここにいるものに再度確認しておく。私が欲しいのは金ではなく情報だ。私が横流しをする代わりに、君達は情報を提供する。もし他の者の妨害をするようならば、またこの円席から消える事になる」

彼が発言している間に、それぞれの席にシェフが料理を提供していく。

「今日は日本の寿司を用意してみた。そこにある山葵(ワサビ)や醤油を付けて食べてみてくれ。それではディナーをごゆっくり」

そう言って円卓から離れようとした正義の裾を、一人の者が掴み彼の帰りを妨げる。

「ねぇ正義。面白い情報があるのだけれども聞きたくなぁい?」

引き留めた人物は狩友里(かゆり)組の飯島百合子である。

24に総長に就任し、6年の歳月をかけて東日本を牛耳ることに成功。

30になってもその美しき美貌は衰えることは知らず、今では十分に熟れた大人の風格が出ている。

「………またアレか?」

「そう。ベッドの中でね」

彼女は着物胸元を少しはだけさせ、着痩せしてしまった胸元を正義にだけ見せつけ誘惑する。

正義と彼女は恋人ではない。しかし何事にも動じず、はみ出し者には冷静冷徹の正義の何処かに潜んでいる熱いものに惹かれて、百合子は何かにつけて彼を誘惑している。

東日本に留まらず海外にも情報を持つ狩友里組の力を使う為に正義は彼女の申し出を断らず、こうして何かと用件があると、”そういった”行為に及んでいるのだ。

「生憎、今日はまた別の件がある。その件が終わり次第直ぐに連絡を寄越すから、それまで待ってろ」

「あらあら、連れないわね」

百合子は口を尖らせるが、正義はそう言い残して、建物を出て行き、携帯を取り出す。

どうやら先程の取引の件についての様だ。

そして携帯を閉じる。

取引の準備は終えた様だ。

正義は本庁刑事課課長の反面、こうして各裏界の大物に警察で押収した薬を横流ししている。

その見返りは、それぞれの国の隠された情報など幅広く、もはやケ○ディー暗殺の真相も彼は掴んでいた。

しかし彼が本当に捜し求めているのはそんなことではなく、ある男の居場所であった。

数十年前、突然姿を暗ました親友を探しているのだ。

二人は施設で育ち、互いに親も兄弟も居らず、頭のいい彼とは違い自分はいつも喧嘩ばかりしており、学校でも優等生と劣等生という立ち位置であった。

だが二人はいつも一緒に居り、特に二人を夢中にしたのはギターなどの楽器であった。

夜が来ればいつも街に繰り出し、二人でストリートライヴを毎日行っていた。

そして高校を卒業すれば、一緒にバンドを組もうと約束していた。

しかしその彼が突然行方不明になり、正義は街中を駆け回り可能な限りの情報を集めた。

だがいくら集めても彼の髪の毛の情報すら集まらない。

親友は優等生だった故、周りは誘拐・拉致されたとか殺されたなど言われ始める始末だが、正義はどうもそう思えなかった。

失踪したのは事実であるが、人一倍頭がキレ、暴れ坊である自分を学内で唯一、力で抑えることの出来る彼の事だ。

簡単に死ぬとは到底思えなかった。

もし仮に殺され、骨が灰にされていようとも、正義(カレ)はその灰すら集めようとしていた。

今情報が集められぬなら、情報が集められる環境に行けばいい。

そこでまず彼は知識を蓄え最高峰の大学に行くことを思いつく。

確かにいつも暴れまわってはいたが、元々勉強をすることは嫌いではなかった。

そして猛勉強の末彼は東京大学法学部に進み、卒業後は警政界へと身を置く。

法学部に進んでいるゆえ、政治家や弁護士の知り合いも多数おり顔も通じる。

警政界も裏の繋がりは案外あるものであったので、今彼は政界、警察、裏社会、弁護界の他多数に顔が利く。

しかしそれでも失踪した友人の情報は一つも集まって来ない。

黒いベンツを走らせながら、彼は呟く。

「お前は今何処にいる?」

そんな夜道の中、突然眩い光が彼の車を包み込んで、腕で光を塞いだ後には、彼の車はガードレールを飛び出し崖へと落ちていった。

 


 
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