No.617301

病みつき六課 お世話をする1日(朝)

rikubさん

これは、彼を巡る物語
――― 自分の行動を邪魔されて、他人の 行動を邪魔する
――― これは、そんな物語
『人間を愛すること は必然だ』

2013-09-08 16:01:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:7199   閲覧ユーザー数:6921

リインさんの看病を初めて何時間かたったところで、俺は今日、何も口にしていないことに気付いた。

 

「リインさん、朝食は食べましたか?」

 

「食欲ないてすぅ」

 

力なく言うリインさん。

 

「何か食べないと駄目ですよ

「お粥でも作ってくるんで、待っててくださいね」

そう言って俺は部屋から出て食堂に向かった。

 

 

 

 

 

――――――

 

この時間なら食堂には人はいない。

 

俺はそう思っていたんだが――――

 

そんな俺の予想を覆すように彼女が食堂にいて――――

 

彼女は何かを作っていて――――

 

「おはよう」

 

彼女――――はやてさんは俺の気配に気付いたのか、こちらを向き首を傾げながら言う。

 

「おはようございます、はやてさん

朝食を作ってるんですか?」

 

六課の食堂は時間限定でフリーになっており、今はその時間でもある。

 

……まぁ、利用する人は殆どいないんだけど

 

「私は食べたんやけど、リインが食べてないかと思ってな

せっかくだし、お粥でも作ろうかと思ったんや

君はどうしたん?」

 

はやてさんはリインさんのことを心配してるらしい。

 

……家族を心配しない人なんかいないか

 

「俺も同じです

リインさんの朝食を作るついでに自分の分も作ろうかと思ってたぐらいですね」

 

「だったら、君の分も私が作ろうか」

 

はやてさんが笑みを浮かべながら俺に言う。

 

「そんな、悪いですよ」

 

「1人分作るのも2人分作るのも変わらんよ

それにな、君のために私が作りたいと思ってるんや

――君のためだけに」

 

はやてさんが俺を見つめる。

 

――――濁った瞳で

 

――――俺を見据える

 

……断るわけにもいかないか

 

「お願いします」

 

俺が言うとはやてさんは嬉しそうに笑いながら俺の分を追加で作りはじめた。

 

 

 

 

――――――

 

はやてさんが料理を作り終わり、リインさんの様子を見たいと言ったため一緒に俺の部屋へと向かった。

 

「ごめんな、リインも私も君に我が儘ばかり言って」

 

「大丈夫ですよ

それに、朝の仕事を休ませてほしいって我が儘を聞いてくれたじゃないですか」

 

「ふーん、そうなんだ」

 

俺の言葉に返事をしたのははやてさんではなく――――

 

「あなたが私以外の人に我が儘言うなんて――

ショックだなー」

 

俺が振り返ると、彼女――――フェイトさんは言った。

 

「フェイトちゃん、仕事はどうしたの?」

 

はやてさんが一歩前に出てフェイトさんに言う。

 

「少し休憩してるの

休憩がてら、彼の様子でも見ようと思ってね

そしたら、食堂で2人が話してるのを見つけてね、そのまま跡を追ってたの」

 

フェイトさんがゆっくりと近づいてくる。

 

「あかんで、フェイトちゃん

そんなストーカーみたいなこと――

彼だって嫌がるんちゃうかなぁ?」

 

「彼が嫌がるはずない!!」

 

フェイトさんは叩きつけるように叫ぶ。

 

「はやてに彼の何がわかるの!!

彼からすれば私と居られる時間を潰されたんだから、そっちのほうが嫌がってるよ!!」

 

「フェイトちゃんこそ彼の何を知ってるん?

彼は病人のリインの看病をしたいがためにフェイトちゃんとの仕事を休んだんやで?

フェイトちゃんよりもリインのことが彼は大事にしてるんだよ」

 

はやてさんの言葉を聞くと、フェイトさんははやてさんを一瞬睨むと背を向け、そのまま歩きだした。

 

「ほら、早く行かないとお粥が冷めちゃうし行こか」

はやてさんは何事も無かったかのように俺の部屋に向かって歩きだした。

 

……フェイトさんには後で何か言っておこう

 

そんなことを考えながら俺も自分の部屋に向かって歩きだすため後ろを向く。

 

すると、はやてさんの顔が真前にあった。

 

驚きの余り何も出来ずに見ていたら、はやてさんが口を開く。

 

「今、フェイトちゃんのこと考えてたやろ

私と二人でいるのに何で他人のこと考えてるん?

私と2人でいるときぐらいは私のことだけ考えてよ

何時も大目にみてるんだから――」

 

それだけ言うとはやてさんは背を向け、今度こそ俺の部屋に向かって歩きだした。

 

俺はそんなはやてさんについていくように歩きだす。

 

……何で考えてたことわかったんだろ

 

 

 

 

 

―――――

 

「美味しかったですぅ」

 

俺の部屋につきリインさんと共にはやてさんが作ってくれた朝食を食べ終えた。

 

途中リインさんが『口移ししてくれなきゃ食べません!』等言っていたが、はやてさんが何とかしてくれたためその話は割合しよう。

 

リインさんはベッドの上で横になっていて、俺とはやてさんはソファーに座っている。

 

「ごちそうさま、美味しかったです」

 

「ふふっ、お粗末さま」

 

はやてさんは嬉しそうに笑いながら俺とリインさんを見る。

 

「どうかしたんですか、はやてちゃん」

リインさんがはやてさんに言う。

 

「いやな、こうやってるとまるで家族みたいやなーって思ってな」

 

「家族ですか?」

 

俺が首を傾げながら言う。

 

「せや、君がお父さんで私がお母さんそしてリインが子供や」

 

俺が父親……

 

それも、はやてさんみたいな美人と

 

「いっそのこと、本当に結婚する?」

 

はやてさんは楽しそうな笑みを浮かべながら俺に言う。

 

「そ、そんな!? 俺みたいな奴がはやてさんみたいな美人の方と結婚なんて……」

 

自分でもわかるぐらい顔を赤くしながら言うとはやてさんは立ち上がる。

 

「冗談や」

 

それだけ言うと俺の部屋から出ていく。

 

扉が閉まる前にはやてさんはこちらを向くと言う。

 

「私は告白するよりもされたいしな」

 

それだけ言うと扉が閉まる。

 

……え?

 

「はやてちゃん大胆ですね?」

 

リインさんが黙っていた俺の代わりに言う。

 

「リインも告白するよりもされたいですぅ」

 

楽しそうに笑いながらリインさんは言う。

 

 

――――はやてさんの問題(?)発言を最後に

 

――――俺の朝は終わった


 
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