No.616687

リリカルなのはSFIA

たかBさん

第四十三話 晴れた想い

2013-09-07 00:07:18 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:3767   閲覧ユーザー数:3469

 第四十三話 晴れた想い

 

 

 

 フェイト視点

 

 「なん、なんなの!なんなのあいつはぁあああああ!!」

 

 私に迫ってくる機械兵。その機械兵が持つ武器が私に振り降ろされる直前、私とその武器の間に割り込んできた『傷だらけの獅子』であるタカシが全てを破壊していった。

 その機械で包まれた鎧ごとその手に持った巨大なレンチを叩き付けて壊す。機械手甲で、拳で壊す。

 斧や剣で貫かれてもその動きは止まることはない。

 貫かれるたびにその部分その部分に魔力を集中展開して弾き飛ばす。そのたびに黄色い装甲から血が噴き出す。

 

 「…あ、うああ」

 

 クアットロが目の前で壊され続けている叫んでいる。同様に私も目の前の光景が信じられなかった。

 防御を捨てて攻撃だけに集中している。

 剣で刺され、レンチで叩き壊す。斧で叩き斬られようと殴り壊す。

 

 「なんなのあの化け物はぁあああああっっ!」

 

 突く。壊す。斬る。壊す。叩き付けられる。壊す。薙ぐ。壊す。突く。壊す。斬る。壊す。叩き付けられる。壊す。薙ぐ。壊す。突く。壊す。斬る。壊す。叩き付けられる。壊す。薙ぐ。壊す。壊す。壊す。

 

 「がぁああああああああああああああっ!!」

 

 

 

 壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す!!

 

 

 

 剣が深々と突き刺さり、斧で腕がへし折れる。装甲が剥ぎ取られても…。

 タカシは止まらない。

 

 「ひ、あ、来るなっ、来るなぁあああああ!!」

 

 タカシを押しつぶそうと襲い掛かる機械兵の物量に押されてこの場に飛び込んできた勢いは消えたものの、タカシはその物量を押しつぶしながら機械兵を潰しながらヴィヴィオとクアットロに向かって進む。

 その様子にクアットロは恐怖し、私もあまりの魔力の大きさに動けないでいた。

 今のガンレオンはまるで殺気を放っているアサキムを髣髴させるほどの魔力を持っていたから…。

 

 ドオオオオオンッ!!

 

 一閃。

 目の前で山積みになったかのように機械兵が力一杯に振るわれたレンチで吹き飛ぶ。

 その機械兵の山の中から現れたのは装甲の所々に出来たひび割れ。そこから噴き出している赤い液体を噴きださせたガンレオンの姿。

 

 一歩。

 タカシが歩く。

 

 「…ひぃ」

 

 その様子にクアットロが怯える。

 そして、更に一歩踏み出そうとした瞬間。

 

 バシャン。

 

 まるで水風船が割れた音を鳴らせて、ガンレオンが強制解除した。

 凶悪なガンレオンの姿はそこには無く、その中身が零れた出したかのように危篤状態のタカシが横たわっていた。

 

 「………え?」

 

 最後の一機の機械兵を砕かれたクアットロは自分に襲い掛かろうとしたガンレオンの姿が消えた瞬間、呆気にとられていた。

 彼女の後ろではカプセルの中に入れられた聖王オリヴィエのクローンを、壁の穴から機械的なアームが触手のように出ては、Dエクストラクター搭載の鎧を着々と纏わせていた。

 

 「…っ!バルディッシュ!」

 

 私は最後のカートリッジを使い、身体能力を強化。

 一気にクアットロに詰め寄り一閃!

 そして、ヴィヴィオを玉座に縛り付けているコードを引き裂き、彼女を抱きしめながら倒れているタカシの元に降り立つ。

 

 「…がっ。ふ、…ふふふ。所詮『白歴史』に抗えなかった事、か」

 

 「フェイトさん!お兄ちゃんが!助けて!はやく!」

 

 クアットロは何か自嘲めいた事を呟きながらその場に倒れる。

 そしてヴィヴィオがタカシの体をゆすりながら私に彼を助けてと叫ぶ。

 

 「うん。すぐにここを離れないといけない…?!」

 

 私はタカシとヴィヴィオ。そして、クアットロを捕縛して脱出しようとしたが、体に力が入らない。

 

 「フェイトさん?!」

 

 「…う、く」

 

 オーバードライブの後に、カートリッジシステムの使用。こんな無茶ばかりをしていたから体にガタが来ていた。だけど、

 

 「…こんな事で、泣き言なんて言っていられない」

 

 私は目の前に倒れているタカシを見る。

 明らかに重症。それを見ただけでわかってしまう。

 彼はまた無茶をして倒れたんだ。しかも、治癒能力があるのにあの分厚い装甲の下にあった彼の体はボロボロだった。その状況下でもヴィヴィオを。そして、私達を助けるために。

 …だから、私は。

 

 「…ねえ、ヴィヴィオ。一人で歩けるかな?」

 

 倒れたタカシを肩に担ぎながら、バルディッシュを杖のようにして立ち上がる。

 今の私じゃ、タカシを支えながら他の管理局員との合流地点まで歩いていくことしか出来ない。

 

 「うん!」

 

 「そっか。ヴィヴィオは強いね」

 

 「うん!フェイトさんもお兄ちゃんもヴィヴィオの為に頑張ってくれたもん!だから頑張って歩く!」

 

 残念だけど、今の私じゃクアットロを捕縛することは出来ない。二人を連れてこの場を離れることしか出来ない。

 今、クアットロは意識があるもののダメージが残っているだろうから動けないだろう。

 

 「…ねえ、ヴィヴィオ」

 

 私は私とは反対側のタカシの腕を持っている(手を繋いでいる?)ヴィヴィオをに話しかける。

 今のヴィヴィオはまるで十年前にタカシと激しい戦闘を終えた後の私やお姉ちゃんの姿に重なって見えた。

 そんなヴィヴィオだから私はつい言葉を投げかけた。

 あの時から私は自分がタカシに対するもやもやとした気持ちが分からなかった。だけど、自分に素直で正直なヴィヴィオなら答えてくれそうだから…。

 

 「なに?」

 

 どうして、タカシが私を娘扱いしようとするのを嫌がったかという、もやもや感を。

 

 「…タカシの事、好き?」

 

 すると、ヴィヴィオは先程まで辛い目に会っていたのにもかかわらず、見ていて幸せになりそうな笑顔で答えてくれた。

 

 「うん!ヴィヴィオはお兄ちゃんの事、大好き!」

 

 

 

 …ごめんね。お姉ちゃん。

 私もやっぱりこの人の事が好きだったみたいだ。

 

 

 アリサ視点。

 

 「貫けぇええええ!ゲイボルク!」

 

 私は立方体じみた『聖王のゆりかご』の動力炉じみたクリスタルを破壊しようと試みていたけど、フレイム・アイズがここに来るまでに相手をしていた青と白の機械兵での連戦。

 そして、クリスタル破壊しようとして無理を言わせ過ぎた所為でとうとう自壊してしまった。

 クリスタルを防衛する機械兵は数を減らすどころか増える一方で、もう駄目かと思った瞬間にはやてと銀の槍を持った壮年の男が機械兵を薙ぎ払いながらやって来た。

 そして、今。男の人が持っていた槍の攻撃でクリスタルが破壊された。

 

 「ごめんな!アリサちゃん!少し遅れた!」

 

 「…少しじゃないわよバカ。フレイム・アイズが完全に壊れちゃったじゃない」

 

 私はクリスタルが破壊されたのを見送ったかのように完全に砕け散ったフレイム・アイズに一言「守ってくれてありがとう」と言うと、ひび割れをおこしていたフレイム・アイズのコアに当たる部分も粉々に砕け散った。

 

 「フェイトちゃんの方も今、エリオとシグナムが助けに行っている。後はここから離れてなのはちゃんとアリシアちゃんの砲撃でこの『聖王のゆりかご』を爆破すれば私達の勝や!」

 

 アルカンシェル搭載の時空航行船で攻撃すればいいと思ったが今、『聖王のゆりかご』は首都グラナガンに近すぎるせいでアルカンシェルは撃てない。

 だからこそ、エースオブエースであるなのはとゼクシス最強の砲撃能力を持つアリシアで吹き飛ばす予定だ。バトルフロンティアの再砲撃が可能になるまではまだ時間がかかる。最悪、グラナガンの近くにある森林に墜落させることになるがはやての魔力でならそこで起きた火災も抑えきれるだろう。

 さて、残る問題は…。

 

 「…私達。ゼクシスの処遇よね」

 

 追われている身である私達は疲労困憊。

 管理局のご腐れ上部が、私達をひっとらえてDエクストラクターの回収をしていいように使おうとするだろう。

 下手したら、この『聖王のゆりかご』騒動をゼクシスになすりつけるかも…。

 

 「それはない。今頃、レジアスがその腐れ上部を自爆覚悟でつるし上げているだろうからな」

 

 「…は?」

 

 「シグナムとかいう騎士とエリオとかいう少年に活を入れられたレジアスが自身が持っている証拠を持って管理局本部の前でそのコピー用紙をばら撒いて胡坐をかいて居座っている。隣には今頃ヴィータとか言う騎士がいるだろう」

 

 この男の名前はゼストと言うらしい。

 なのはが来る前までは管理局のエースを務めていたらしい。が、今はどうでもいい。脱出が先だ。

 

 「…へんなテンションになっていないでしょうね?」

 

 「変とは?」

 

 ゼストの様子を見るとレジアスのテンションは大丈夫なようだ。

 これで後顧の憂い無しね。

 

 「ほんじゃ、今から逃げるで?」

 

 「任せるわ」

 

 「…わかった」

 

 私は今はやてに背負われながら移動する。

 フレイム・アイズが壊れた今の私は一般人並になる。リニスさんから体術を学んでいるが素手でガジェットを倒すわけにもいかない。

 あとは帰るだけだし。と、考えていた時。

 

 『主はやてお逃げください!この『聖王のゆりかご』がまもなく転移します!』

 

 中に浮かび上がった小さなモニターからシグナムからの通信を聞いてはやてとゼストは慌てだす。

 転移先が深海だったり、宇宙空間だったら大変なことになる。機械のガジェット達は行動できるが私達は人間だ。空気の無い所に転移された瞬間私達は死ぬ。

 いわゆる『いしのなかにいる』という状況だ。

 

 『フェイトさんとヴィヴィオ!高志さんを保護しましたがフェイトさんがいう戦闘機人が一人いません!』

 

 新たなもインターが浮かび上がると、そこに映し出されたエリオが背中に二人の戦闘機人を背負った状態で状況を説明する。

 て、タカシを保護ってあいつ寝ていたんじゃ!

 

 『…捨て置け!各員!今はこの『聖王のゆりかご』から脱出するぞ!』

 

 『でも!カプセルの中にいる人達は!』

 

 『我々が死んでしまっては助けきれる物も助けられない!ここは退け!』

 

 シグナムはすぐにでも他の局員にも撤退を指示する。

 それを聞いてはやてとゼストは顔を見合わせてすぐに来た道を引き返す。

 動力炉と管制室ともいえる玉座を破壊された『聖王のゆりかご』はゆっくりと墜落していくだけだ。

 そして数分のうちに『聖王のゆりかご』が転移用の魔方陣を展開して転移していく寸前に私達は脱出することに成功した。

 多くの聖王のクローンと一人の戦闘機人を中に残したまま。

 

 「あれだけ壊したし、転移の際に計測した魔力量からそんな遠くには転移してない!みんな周囲を警戒しろ!」

 

 はやてから連絡を受けたクロノが周囲にいた管理局員に転移されるだろう予想範囲内を警戒していると、最悪の情報がなだれ込んできた。

 

 「『聖王のゆりかご』らしき反応を感知!転移先は……首都グラナガン上空!墜落まであと十分!」

 

 最悪の状況。だけど、希望はまだある。

 

 「リニス!リインフォース!アースラをグラナガンに向けて緊急発進!最悪このアースラをバトルフロンティアごとぶつけて自爆してでも『聖王のゆりかご』を破壊するわよ」

 

 情報系統が混乱している管理局の次元航行船は転移にも時間もかかる。だけど、このアースラはプレシアさんが改造に改造を重ねた船だ。五分もあれば転移できる。

 それに、グラナガンにはあの二人。いや、三人がいる。

 

 

 なのは視点。

 

 「へんな魔力を感じて来てみればあれ(・・)を壊せだなんてね。しかも粉々に」

 

 「まったくだ。せっかく直ったアイゼンもリハビリ無しであれだけの物を壊すとなるとなぁ…」

 

 私の言葉にヴィータちゃんが愚痴を言う。先程仕上がったグラーフアイゼンをリインがデバイスから受け取りヴィータちゃんに渡してレジアス中将をティアナに引き渡してからしばらくすると転移してくる『聖王のゆりかご』を壊せという連絡を受けたのだから。

 

 「エースオブエースと鉄槌の騎士の言う台詞には聞こえないですぅ」

 

 ため息交じりにリインまでもぼやく。

 

 「んにゃろ~、生意気な口をききやがってぇえー」

 

 「ぶにゃ~、いたいれふぅー」

 

 そんなリインの両頬をヴィータちゃんが引っ張る。

 今はちっちゃい状態だから相当いたいのだろう。

 

 「まあまあ。じゃれ合うのはそこまでにして私が最初にブラスターモードでエクセリオンスマッシャーを撃ったあと、ヴィータちゃんが私の開けた風穴に突貫しながら『聖王のゆりかご』を真っ二つに砕く」

 

 「その後、私が片方を更に砕いてリインがその破片を砕く。なのははもう一回ブラスターモードでもう片方を砕くでいいんだな?」

 

 私はコクンと頷く。だけど、ヴィータちゃん本当にいいの?

 場合によってはヴィータちゃんが一番危ないんだよ?

 

 「安心しろ。何年お前と肩並べていると思うんだ。それに狙いを定めていないお前の砲撃なんかに当たるか」

 

 私の砲撃のすぐそばを飛ばないといけないヴィータちゃんはそんな不安を笑うかのように私の頭をグラーフアイゼンで小突く。

 

 「私はどちらかと言えばお前の方が不安だな。ブラスターモードってたしか高志のマグナモードを似せて作ったんだよな。あいつはそれをついさっき、使ってまたぶっ倒れたらしいぞ」

 

 「大丈夫です!最初のブラスターは私とユニゾンして私も請け負いますから!」

 

 リインが右手をビシッと立てて、胸を張って言うとヴィータちゃんはそれを意地悪な顔をしてからかう。

 

 「…余計に不安だな」

 

 「ヴィータちゃん!」

 

 涙目になってぽかすかパンチを入れるリインをどこ吹く風とそっぽを向くヴィータちゃん。

 

 「にゃはは…。それじゃあ、二人とも時間みたいだよ」

 

 辺りが急に暗くなる。いや、急に巨大な影に隠されたからそう感じたのだろう。

 

 「なのは。リイン。やるぞ」

 

 「はいです!ユニゾンイン!」

 

 私の中にリインが入り込む。するとまるでカートリッジを使用したかのように魔力が強化された気分になる。

 

 「レイジングハート…」

 

 「アイゼン…」

 

 私達は自分の相棒に指示を出す。

 

 「「全力全開(カートリッジフルドライブ)!」」

 

 絶対に『聖王のゆりかご』を堕とさせはしない!

 

 

 ???視点。

 

 さて、これで役者はそろったね。

 いや~、ここまで来るのにドキドキしちゃったよ。

 結構な綱渡りだったなぁ。失敗する可能性の方が多かったけど…。

 それがたまらない。

 この緊張感!達成感!

 だけど、まだだ。まだなんだよな。

 今頃、エースオブエースと守護騎士が成功したらこっちは失敗なんだよ。

 だけど、失敗してもらってもこちらの失敗。

 半分成功。半分失敗。じゃないと僕がこれまで積み重ねてきた『尽きぬ水瓶』を復活さることは出来ない。

 ああ。…ああああああ!

 失敗したらその時の損失感を考えただけでゾクゾクするよ!

 この世界は最高だ!

 

 特にプレシア・テスタロッサ!

 彼女には本当に感謝をしてもしきれない!

 

 さあ、始めようじゃないかこれが、いや、これからが最後のステージだ!

 機動六課!ゼクシス!

 この次元世界全てかけて最後のギャンブルだ!

 

 


 
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