気がつけば見慣れた草原の見慣れた歪なオブジェの前に寝ていた。
「予想以上に早かったじゃないか、ボウヤ」
当然のように目の前にいるイデス。
服装がこの前とだいぶ違う。
黒いマントで体全体を覆っている。
「お前は一体誰なんだ、イデス!?
お前は、なぜ俺の中に封印されている!?」
ふっとイデスは軽く笑う。
次の瞬間、イデスは僕の懐にいた。
僕の首根っこをわしづかみにし片手で持ち上げる。
そして、思いっきり横に投げ飛ばした。
僕は、オブジェに叩きつけられると同時に、咳き込んだ。
無意識に握られた場所に指を当てる。
指を見ると出血していた。
「そうだな・・・。私が何者なのか知りたければ私と今ここで戦え、京。
勝てたら教えてやる。だが負けたらお前にはここで死んでもらうぞ。
ちなみに今ここで戦わなければ今後一切このことについては教えることはないからな。」
イデスは本気のようだ。
マントから少しだけ出た手から魔力を放出する。
その魔力は黒い剣のように形づくる。
・・・・僕はあれを知ってる。
触れたものを切り裂く魔力の剣・・・。
僕が、最も好んで使ったものだ。
獣の武器化が困難もしくはするべきではない場合使うスキル
魔力であるがゆえに実体が存在せずいかなる場所でもつかえるというもの。
ただし、ほとんど魔力をただ流しにするためあんなふうに大きく相手に見せるものではない。
まるで、僕に思い出させるために見せているようにしか思えない。
手に魔力をこめる。
魔力が手から激しく放出される。
あれの原理はウォーターカッターと似ている。
水を高圧力で放出することで切断を可能とするように
あれは魔力を放出している。
それを確認するとイデスは
「ふ・・・いいだろう・・・・・・・いくぞ!」
イデスの眼が真っ黒になる。
ありえないほどの魔力が体から放出しながら
イデスは何の迷いもなく切りかかってきた。
僕は、さっきのように集中力を上げる。
イデスの動きだけを捕らえる。
こちらに飛びながら向かってくるイデス。
ジジジと言う音を立てながら、お互いの魔力がぶつかり合う。
それをはじくとくるくると回りながらイデスは距離をとる。
瞬間、イデスのマントの先が刃となり
生き物のように襲い掛かってくる。
それを横にとび、僕はかわす。
・・・・が完全にはよけ切れていない。頬や肩を少し切られた。
「ほう、その程度で済んだか。」
クスクスと笑っている。
トンッと上に跳ぶ。
「ならこれでどうだ?えぇ?ボウヤ!!!!!!!」
先ほどのマントが何匹もの蝙蝠となる。
そのすべてがいくつもの黒い尖った物体へと変化する。
まずい・・・・あれは・・・・・
「いくぞ!!京!!!!」
全方位を囲んだそれが
雨のようにいっせいに降りだす。
これをよけるのは無理だ・・・・。
やばい・・・・・やばいやばいやばいやばい
「・・・・・おなかすいた。」
横から少女の声がする。
「んな!?」
イデスが驚いたように声を上げる。
だがすでに黒いものは目の前まで来ている。
「いただきます。」
一瞬の・・・・・・ことだった。
ほぼ全方位をかこんでいたそれがすべて消え去った。
「なぜ・・・なぜだ!!なぜ今目覚めた!?ケレア!?」
「なんでっておなかすいたからに決まってるじゃない。そんなくだらないこと聞かないでよ。」
そこには、いかにも眠そうなおかっぱ頭の子供がいた。
寝起きなのかパジャマを着ていた。
「っち・・・・仕方ない今の状態では分が悪い。また今度だ。そん時は容赦はせんからな。」
そういうとイデスは消えていった。
するとその子供はこちらを向いて
「ほぇ?なんだ京じゃない。」
寝ボケ眼をこすりながらこちらを見ている。
なぜあの物体が消えたのか。そしてなぜこのこが出てきてイデスがあんなに驚いたのか・・・。
結局、すべてが謎ままになった。
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7章にはいりま~