episode200 強行突破
その日の夜―――――
「どう、一夏君。白式の状態は?」
「あぁ。問題ない」
一夏は身に纏う新たな白式の状態を見て確認してユニコーンに伝える。
形状的に第一形態時の姿をしており、装甲量も若干増えているので肌の露出面積が少なくなっている。非固定ユニットに第二形態並みの大きさのウイングスラスターを搭載し、背中には第三形態時のバインダーを一部形状を変更して搭載しているが、雪牙は搭載していない。両腕には第三形態と同じく複合兵装ユニット『不知火』を内蔵式にしている。
更に白式には無かった紅椿の展開装甲を一部的ではあるが、両腕と両脚に搭載している。
「でも、何か不思議だよな。新しく作っているはずなのに、殆ど以前と全く同じで違和感が無いような・・・」
(そりゃ以前と全く同じだし?)
アルタートゥムで新規構造を取り入れているとは言えど、隼人の記憶の中にある白式を元にしているので、あの時と同じ白式とも言える。
「それに、こんな短期間でどうやってユニコーンは作ったんだ?」
「それは企業秘密って事で」
「そうか・・・」
一夏は特に怪しむ様子を見せなかった。
(本当は隼人君が作ったんだけど、それだと一夏君は少し使いづらいかもしれない)
あの一件もあるので、ユニコーンは新生白式を自分とバンシィによって作った事にしている。
(それより、アルタートゥムの存在を知られてはならないし)
近くでは箒とラウラがISを展開した後にGモードを展開して調整をし、輝春とマドカもISを展開して各部の点検をしている。
ツヴァイはリインフォースのサポートを行っている。
気持ちの整理が付いたのか、ようやく部屋から出てきたものも、やはりまだ不安定なところがある。
「どうですか、更識さん?」
「問題無いわ。ゴールドフレームの時より動きやすくなってる」
ユニコーンが聞くと、フォビドゥン・アクアを纏った楯無は身体を動かしていた。
(本当・・・隼人君の技術力は凄いわね。これほどの高度な技術の塊は見た事が無いわ)
各システムを確認してその凄さに感心する。
次に右手に『蒼雷旋』を展開して数回素振りをする。
(要は実戦で使ってみないと分からない。この『アクア・ウォール』に・・・『海滅槍アビス』・・・そして『グングニール』)
色々と気になる機能がたくさんあった。
(見た目以上に凄い機体になってそうね)
「しかし、予想外だったな」
ジェスタ・キャノンを纏うシノンはある人物に話し掛ける。
「まさかお前達から協力を申し入れるとはな」
「だが、お前達にとってはむしろ嬉しい誤算だろ?」
と、黒いISを纏うリアスが答える。
つい最近の事、捕虜となっていた戦闘機人四人が協力を申し入れてきたのだ。
もちろん最初は逃亡を図る為のものではないかと当初は受け入れるつもりはなかった。
しかし状況的に戦力増強は必須で、何より戦闘機人達の実力はお墨付き。断り難い申し入れだったので、ある条件の下で協力を受け入れた。
彼女達の機体は隼人が調整をしていた試作型のアストレイシリーズを使用させ、首には逃走及び裏切り防止の為のチョーカーを着用させている。これは以前マドカにも着けていた物と同じ物で、逃走及び裏切りが発覚したら発動し、電流が流れて身体を麻痺させ、ISの機能も全て停止するようになっている。
リアスにはアストレイ・シュヴァルツ。ノインにはアストレイ・グリューン。ウェンディにはアストレイ・ブラウ、ノーヴェにはアストレイ・ロートが与えられている。
「言っておくが、別にお前達の為に協力を申し入れたわけじゃないんだ」
と、ノーヴェがシノンに言葉を放つ。
「ドクターの真意を知りたいんだ。本当に私達を捨てたのかを」
「そうっすね。今の所協力する理由はそれっすね」
「・・・・」
「まぁ、私は向こう側に着く理由はラウラと戦うだけだった。連中が捨てたと言うのなら私はこっちに着くまでだ」
「リアス姉!だからまだ捨てられたって決まったわけじゃないだろ!」
「だが、お前はあの時のシスターの声が嘘を言っていると思うか?」
「だ、だって、あれはボイスレコーダーだろ!編集すりゃいくらだって―――――」
「そんな幼稚な手が私に通じると思うのか?」
「そ、それは・・・」
「私も甘く見られたものだな」
「・・・・」
「はいはい。話はそこまでそこまで!」
と、ウェンディが二人の間に入って話を止める。
「このまま話したって平行線のままだよ。当の本人達から聞けばいい話じゃん」
「・・・・」
「ウェンディの言う通りだな、ノーヴェ。今はこうする他に方法は無い」
「・・・分かったよ」
渋々とノーヴェは受け入れる。
「そろそろ時間だね」
「うん」
ユニコーンとバンシィはその場に居るメンバーの前に立つと、装甲を纏う。
戦力は全部で十三機と想定よりも若干増えてはいるが、少ない事に変わりは無い。
それにアーロン達の戦力を加えても不安要素は消えない。
(私達がやらなくちゃ。いつまでも隼人君ばかりに無茶をさせて頼ってばかりじゃいけない)
そうしてユニコーン達は一気に飛び出し、バインドの秘密前線基地へと向かう。
「行きましたね」
「あぁ」
IS学園の校舎屋上にて千冬と山田がユニコーン達を見送っていた。
「しかし、大丈夫なのでしょうか?捕虜の戦闘機人の子達が協力してくれるとは言っても、戦力があまりにも少ない事に変わりはありません」
「そうだな。だが、今はやれるだけの事をやるしかないのだ」
「・・・・」
「・・・こんな時に、神風が居ればどれだけ士気が高かった事だろうか・・・」
「そうですね」
二人はユニコーン達が飛んで行った方を見つめる。
(こんな時に戦えない私が悔しいな)
千冬は静かに奥歯を噛み締め、左手を握り締める。
―――――――――――――――――――
「全く。フェニックスゼロはいつまでマテリアルから鍵を取り出すのに時間を掛けてんだよ」
「そう苛立つな、マスターフェニックス」
と、苛立つマスターフェニックスをハルファスベーゼが宥める。
「フェニックスゼロも急いでいるのだ。もうすぐ鍵は取り出される」
「・・・・」
「そうすれば、例のあれが発動し、この世界は我々の物になる」
「それはそれでいいんだがよ、こんなに戦力を割いてもいいのか?」
マスターフェニックスが周囲を見回すと、レギナの数はかなり居るものも、これでも少ない方だという。
「ここの場所は誰にも知られて居ない。それに、鍵が手に入ればすぐに本拠地に戻るのだからな」
「とか言っていると、襲撃されるんじゃねぇのか?」
「まさか。戦力が少ないとは言えど、そう簡単に陥落するほどの戦力ではない。それに以前投入して残ったデストロイ二体が居るのだ」
「以前のダメージが残ったままだろ。本当に大丈夫なのか?」
「装甲に一部ダメージを負った状態だ。問題は無い上に、デストロイはGの力を持たぬ人間共など敵ではない」
「だと良いんだがな」
しかし、その直後に遠方よりビームが飛来し、レギナ一体を撃ち抜く。
「「っ!?」」
二体はとっさに臨戦態勢を取るも、直後にビームが二発も飛来してレギナを四体撃ち抜く。
「そんな事言ってるからもう来ちまったぞ!」
「知るか!」
――――――――――――――――――――
「見つけた。あれがそうか」
遠方より隼人は飛行しながら秘密前線基地を確認する。
秘密前線基地がある場所は以外にも近くにあり、日本南東の島々の中の小島の一つであり、かつてそこに旧日本軍の基地跡があり、そこの基地を改造して更に地下を掘って建造しているとのことだ。
「確かにファントムの言う通りだったが、少ないとは言えないだろあれは」
予想よりも敵が多いことに愚痴りながらも、右手に持つビームマグナムを前に向ける。
バンシィの装備は今までよりも重装備化しており、両腕にはビームガトリング四門を二門ずつ装備し、その上にアームドアーマーDEを搭載したシールドを二枚装備し、背中にはハイパーバズーカ、ビームガトリングを二門ずつ、バズーカの砲身にグレネードランチャーとグレネード、ミサイルポッドを搭載し、ビームガトリングの上に通常のシールドを搭載し、大型のプロペラントブースターを搭載していた。
全武装を搭載した『フルアーマーバンシィ』である。
(だが、敵がどれだけ居ろうが、やる事に変わりはない!)
隼人はスラスターとプロペラントブースター、両腕のアームドアーマーDEのブースターを噴射して一気に飛び出す。
「待っていろ、ヴィヴィオ!!」
――――――――――――――――――――
「黒獅子だと!?なぜやつがこの場所を!」
「だが、ここを攻めてくる以上、何者であっても排除するまでだ!」
ハルファスベーゼが右手を前に突き出して広げると、レギナ達が背中のバインダーライフルを前に向けてビームを一斉に放つ。
隼人はビームの雨を見た目によらず細かく素早く動いてかわし続けると、ビームマグナムを連続で三発放ってレギナを数体巻き込んで撃破する。
直後に数百体のレギナがバインダーライフルを放ちながら接近してくるも、両腕のビームガトリングとアームドアーマーDEを前に向け、更に背中のハイパーバズーカとビームガトリングを前に向ける。
「出し惜しみはしない!全弾持って行け!!」
直後にバンシィより全武装の一斉射撃で雨の如く弾幕が張られてレギナを次々と撃ち落していくと、その間に隼人は一気に飛び出す。
「っ!」
一体のレギナがビームファンを持って切り掛かって来るも、とっさに回避すると左腕のアームドアーマーDEのビームキャノンを放って撃ち抜く。
すぐに後ろを振り向いて両脚のグレネードを全て放ち、レギナ三体に直撃させて撃破する。
直後に空になったパーツを両脚よりパージし、両腕のビームガトリングを放ってレギナを次々と撃ち落す。
すると背後よりレギナがビームファンを手にして飛び掛かって来るも、プロペラントブースターを切り離して飛び出し、レギナがプロペラントブースターを切り裂くと大爆発を起こし、それに巻き込まれて誘爆する。
「お前ら雑魚に構っている暇は無い!!」
隼人は両腕を横に広げて、前方と左右に向けて全武装を一斉に放ちながらその場で回転し、周囲のレギナを大量に撃ち落す。
すぐにビームガトリングとハイパーバズーカをパージし、両腕のアームドアーマーDEの後部スラスターを展開して一気に飛び出す。
「っ!」
すると前方に人型形態に変形したデストロイ二体がこちらを向き、背中よりミサイルを放って来た。
隼人は両腕のアームドアーマーDEのビームキャノンと頭部バルカンを放ってミサイルを撃ち落して行く。
直後にデストロイが両手の指先よりビームを放つも、隼人はとっさにアームドアーマーDEを展開してフィールドを張ってビームを弾き、アームドアーマーXCのスタビライザーを中央から横に広げて左腕のアームドアーマーDE付きシールドを収納し、そこに右腕のアームドアーマーDE付きシールドを左手にしてアームドアーマーXCにマウントさせ、両腕にアームドアーマーBSとアームドアーマーVNを展開する。
「デストロイが二体、か」
デストロイを見て呟くも、すぐにバンシィ・ノルンの装甲が展開していって金色のサイコフレームが露出し、マスクが収納されてツインアイが露出すると頭部の角が獅子の鬣のように展開して背中のアームドアーマーDE付きシールドも展開してサイコフレームを露出させる。
しかしその瞬間デストロイ二体は胸部の三連ビーム砲を放ち、赤く太いビームが六本がバンシィ・ノルンを飲み込むが、サイコフィールドに阻まれて四方に拡散する。
「そんなもので―――――」
と、隼人が少し動いた瞬間、一体のデストロイの懐に入り、勢いよく左腕のアームドアーマーVNを突き出してデストロイの胴体を殴りつける。
「この俺を倒せると思うな!!」
デストロイは数歩後ろに下がるも、直後に左腕のビームトンファーを最大出力にして巨大なビーム刃を形成すると、勢いよく振り上げて巨大なデストロイを縦に真っ二つに切り裂くと、デストロイは左右に分かれて倒れ、木っ端微塵に大爆発する。
更に右腕のビームトンファーを展開して最大出力で巨大なビーム刃を形成し、その場で回転して巨大ビームサーベルで薙ぎ払って周囲のレギナを大量に切り裂いていく。
「っ・・・!」
しかしそれによって隼人は身体中に激痛が走って動きが鈍る。
(くそっ・・・!こんな時に・・・)
身体より激痛が走るも、隼人は何とか耐えて更に両腕のビームトンファーより出た巨大ビーム刃を振るってレギナを次々と消滅させていく。
「黒獅子!!」
と、左よりマスターフェニックスがバインダーソードを持って切り掛かって来る。
隼人は急上昇してマスターフェニックスの攻撃をかわすも、直後にハルファスベーゼがビームサイスを手にして切り掛かって来るも、隼人はアームドアーマーVNを振るってハルファスベーゼを殴り返す。
「っ!」
しかし右よりマスターフェニックスが接近してバインダーソードを振るってくるも、ビームトンファーを展開して攻撃を受け止める。
更にハルファスベーゼが再度接近してビームサイスを振り下ろすも、隼人は左腕のビームトンファーを展開して攻撃を受け止める。
「ぐぅ・・・!」
「よくこの場所を特定したな。だが―――――」
「たった一人で攻略できると思っていたのか!」
「・・・・」
二体に挟まれて押さえ込まれるも、隼人は何とか二体を押し返そうとするが、デストロイが胸部の三連ビーム砲を放とうとする。
とっさに隼人はサイコフィールドを圧縮して一気に解き放って衝撃波を放つと、二体を吹き飛ばし、直後にデストロイの胸部三連ビーム砲が放たれるも、一気に飛び上ってビームをかわす。
「っ・・・!」
激痛が更に身体を襲うも、隼人はそのまま勢いよくデストロイに向かって飛び出していくと、右腕のアームドアーマーBSを展開し、高密度に収束させたビームを照射してデストロイの左腕を撃ち抜く。
そのまま左腕のアームドアーマーVNを展開して獅子の牙を出すと、勢いよく飛び出すと横切る際に突き出してデストロイの頭を牙を食い込ませて掴み、そのまま頭部を引き抜く。
隼人はデストロイの背後に回り込むとアームドアーマーBSより高密度に収束させたビームを照射しながら横に振るってデストロイの胴体を真っ二つに切り裂くと、大爆発を起こす。
「っ!」
その爆風で隼人は吹き飛ばされるも、それを利用して飛び出し、島近くの海面へと落ちる。
「あの野郎!」
マスターフェニックスは隼人が落ちた海面を見る。
「たった一体で手負いとは言えどデストロイ二体にレギナを半数以上も撃破するとはな」
「なんて野郎だ。あれが破壊の王の力だって言うのかよ」
「だが、海の中にも戦力は配備している。どちらにしても基地に入ることは不可能だ」
直後に海面で間隔を空けて点滅する。
「だと良いんだがな。だが、なんであいつがこの場所を知って居やがったんだ?」
「私が知るか」
「っ!」
と、ハルファスベーゼはとっさに後ろを振り返る。
「どうした?」
「・・・どうやら、黒獅子だけではなかったようだな」
「なに?」
マスターフェニックスもハルファスベーゼの視線の先を向くと―――――
「・・・くそっ!完全にバレて居やがるじゃねぇか!」
「・・・・」
二体の視線の先には、ネェル・アーガマと共にこちらに向かうユニコーン達であった。
――――――――――――――――――――
「おうおう。派手にやるねぇ」
島の上空に、姿を消した状態でファントムがさっきの戦闘を見ていた。
(さすが破壊の王の魂を持っているだけはあるな。もしかしたら『無限皇帝』に匹敵するかもな)
ファントムは島を見る。
(あのマテリアル・・・いや、ヴィヴィオだったか。あいつはそれほどあの子が大事なのか。命に換えたとしても・・・守る、か)
ファントムは姿を現す。
(姿形は異なれど、時を越えて親子の再会、と言った所か)
ファントムは頭を俯かせると、バイザーが一瞬反射する。
(・・・親子、か。俺もそうなるはずだったのにな・・・・・・あの時がなければ・・・)
と、一瞬その場の空気が張り詰める。
(だが、もうすぐだ。もうすぐすれば、長い間待って準備をして来た計画を実行に移せる。俺から全てを奪った神々を滅ぼせれる)
ファントムは左側の翼を開くと、左手を開いて掌を表にすると、そこに一人の女性のホログラムが出現する。
「『シャル』・・・」
ファントムが見つめるその女性はどういうわけか―――――
―――――シャルロットと瓜二つの姿をしていた。
「・・・・」
シャルロット似の女性のホログラムを消すと翼を閉じて景色に溶け込むように姿を消す。
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トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!