No.60665

魏ルートアフター 帰還の夜

kirikamiさん

http://www.tinami.com/view/60663 の続きです。小ネタぐらいの長さです。
こっちはほとんど加筆修正ありません。

呉の子どもたちの紹介は、何れ書ければいいなと思います。

2009-02-28 00:46:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:15616   閲覧ユーザー数:11728

 

俺が帰ってきたその日の夜のこと。

 

「一刀、お前本当に悪いことしたと思っているにょか?」

「お、思ってる思ってる」

「にゃら、なでなでしる」

「分かった!分かったから離れてくれ!さっきから華琳の視線が痛いから!」

 

皆俺が帰ってきたことを喜んでくれて宴会になっていたのだが、さっきから春蘭の絡み酒が酷い。

誰だよ、春蘭にこんなに飲ませたのは!もう原型とどめてないぞ、これ。

華琳も笑顔は見せているものの、青筋が立ってるのが見えるし。

 

「さすがに魏の種馬ね。もてもてじゃない」

 

声にとげがありますよ、華琳さん。怖いからその絶を見えないところにしまって下さい。

 

「そんなんじゃないって!春蘭が酔うと猫みたいになるのは華琳だって知ってるだろ!?」

「ええ、勿論。今までは私と秋蘭の前でしか猫になったことはないけれど、

いつの間に春蘭が酔ったときのことを知ったのかしら?」

 

やぶへびどころじゃなく龍が出た。華琳の青筋は目に見えて増えているし、笑顔も完全に引き攣っている。

 

「う~~、まだ華琳様との話は終わらにゃいのか?なでなでまりゃ?」

「春蘭もいい加減しっかりしろ!華琳が怒ってるのわかるだろ!」

「ふぇ、華琳様?華琳様にゃら、一刀が帰ってきたから今日は無礼講らって」

「無礼講にしても華琳を怒らせたらまずいだろ!?」

 

華琳の名前を出せばすぐに引くとおもったんだが、今日の春蘭は本格的に酔っているようだ。

 

 

 

 

 

「秋蘭、助けて!」

「可愛いな~、姉者は」

 

駄目だ、こっちも完全に酔っ払ってる。前は酔ってるかどうか見た目で判断付かなかったけど、

今日の秋蘭は目に見えて分かるぐらい酔ってる。どうしたっていうんだ、一体。

 

「……皆一刀が帰ってきて嬉しいのよ。それぐらい察しなさい、ばか」

 

急に優しい顔になった華琳の言葉。

 

「……そう言ってもらえると俺も嬉しいけど。華琳の機嫌が悪くなるのは勘弁してもらいたいな」

「あれだけ四方八方に手を出しておいてよくそんなことが言えるわね、魏の種馬。

まあ、今日ぐらいは許してあげるわ。ちゃんと皆の相手をなさい」

「その皆の中に、華琳も含まれてるのかな?」

「当然よ。私のことをないがしろにするつもりだったわけ?」

「滅相もありません。心から尽くさせていただきます」

「楽しみにしているわ……ほら、放っておいたから猫が虎になってるわよ?」

「げっ」

 

華琳に言われて春蘭を見ると、端っこでうずくまっていた。

 

「ふんだっ」

「春蘭、機嫌直してくれよ。ほら、なでなでしてあげるから」

「がるるるるっ!」

 

駄目だ、始末に終えない。とはいえこのままにしておくわけにもいかないし……ええい、やけだ!

 

「春蘭?こっち向いてくれないと、ずっとなでなで出来ないよ?」

「う~~」

「ほら、こっち向けって。俺が悪かったから、な?」

 

しぶしぶといった感じでこっちを向く春蘭を、すかさず抱きしめる。

 

「ふわっ!」

 

そして有無を言わさずキスをする。結局、前に秋蘭から教わった方法しか俺には思いつかなかった。

 

「ん……ぅ……ん、んんん……」

 

勿論、唇を重ねるだけで舌を入れたりはしない。それでも、効果は抜群なようで春蘭は動かなくなった。

全く、こんな猫がいたらたまったもんじゃないな。

 

 

 

 

 

そう思って口を離そうとすると、今度は春蘭が抱きついてきて離さない。

 

「んむっ!?」

 

しかも舌を入れてきた。

 

「むー!」

 

必死に抗議しようとするが、この状態で何か言える訳が無い。

離れようとしても、春蘭の力に俺が対抗できるはずも無い。

 

「一刀……それは私に見せ付けているのかしら?」

「むー!?」

 

そんなことは無いとジェスチャーで伝えるが、伝わっていたところで何の意味があるのだろう。

必死に春蘭を振りほどいて、華琳に弁解を……始められなかった。

 

「一刀?」

 

その迫力は、春蘭と稽古をしたときに感じたものが可愛く思えるほどだった。

こ、怖い。とてつもなく怖い。周りの皆、凪や流流のような猛者さえも震えているぐらいだ。

 

「貴方の血は何色なのかしら?」

 

その言い回し絶対この時代にないから!くそ、このままじゃ冗談抜きで殺されてしまうかもしれない。

やけくそになった俺は、華琳を抱きしめてそのままキスをする。

 

「んん!?んーー!!」

 

華琳が何か言っているようだが無視してそのまま舌を絡める。

 

「ん……」

 

何だ、春蘭と同じ方法が通じるんじゃないか。と思っていると、今度は華琳から舌を絡めてくる。

 

「くちゅ、ちゅ……んゅ、んぁ」

 

それはいいんだけど、華琳完全にスイッチ入っちゃってないか?

これ以上続けると俺が我慢できなくなりそうなので、口を離そうとすると、やっぱり抱きつかれた。

おいおいおい、本当に我慢できなくなっちゃうって!

 

「ふぅ……まったく、接吻で誤魔化そうなんて100年早いのよ」

「いや、しっかり誤魔化され……なんでもないです。絶を向けるのは勘弁してください」

「調子に乗らないことね……接吻なんかされたら、怒るわけにはいかないじゃないの」

「何か言った?」

「何も言ってないわよ。それよりも、貴方の後ろにいる不満げな子達は放っておいていいのかしら?」

「不満げ?」

 

華琳に言われて後ろを振り返ると、皆がそろって不機嫌な顔でこちらを見つめていた。

 

 

 

 

 

「一刀、姉者と華琳様だけ贔屓するのはずるいんじゃないか?」

「しゅ、秋蘭。別に贔屓したわけじゃなくて」

「贔屓したわけでないなら、何だというんですかー」

「風まで何を……」

「隊長。隊長が居ない間必死に頑張っていた私に、ご褒美があってもいいと思うのですが」

「凪、お前もか!?」

 

俺がおろおろしている間に、どんどん詰め寄ってくる面々。

 

「一刀、約束破った見返り、今ここでもらうで!」

「兄ちゃん、春蘭様と華琳様ばっかりずるい!」

「兄様、わたしも……」

 

皆に詰め寄られながらも、やっと帰ってきた実感が沸いてきて笑みがこぼれる。

 

「この状況で笑っていられるとは……さすがに大物ですね」

 

そんな稟の嫌味も聞き流して、皆にもみくちゃにされながら俺は笑っている。

本当に久しぶりに、心から笑っていた。

 

 

 

 

 

まあ、次の日はあまりの疲労感に笑うどころか、歩くことすら出来なくなったんだけど。

 

 
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