No.604136

~少年が望んだ世界と力~

第三十五話 遭遇

2013-08-02 16:37:30 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3664   閲覧ユーザー数:3524

三人称Side

11月3日 午後9:49

海鳴市 市街地

 

ウ~~、カンカンカン

 

夜の道を2台の消防車がサイレンと鐘を鳴らしながら走っている。

 

ウーウーウーウーウー

 

その消防車の後方50mに運転席部がグレー色の1台のトレーラーがサイレンを鳴らしながら消防車の後を追うように走っている。

 

トレーラー内

健悟Side

 

<---2丁目のマンション火災、消防車の数が足りず今だ鎮火していません。応援はまだですか?>

 

<現在3台を向わせています。あと10分程でそちらに到着予定です>

 

<了解>

 

今俺が乗っているトレーラー、10月の上旬に完成したGトレーラーの後継車両「GトレーラーMk-Ⅱ 2号車」内でオールドライドで姿を変え、消防無線を聴きながらG5を装着していく。

ちなみにこの消防無線は盗聴ではない。

この車両に消防無線を聴けるようにしてあるだけだ。

 

「オートフィット機能作動」

 

プシュー

 

机に置いているアポロンがコンピューターを操作してオートフィット機能を作動させ、G5が俺の身体に合わせて調整される。

調整が済むと不具合がないかチェックする。

 

「装着確認」

 

問題がないことを確かめると直ぐにGトレーラーMk-Ⅱの中央に移動して立ち止まる。

 

「G5及びバトルチェイサー、武装プランは『R』を選択。Rプラン装備開始」

 

左右の壁、天井が開いてアームが出現し、G5の全身に赤色の装甲が装備され、目の前にあるガードチェイサーの後継車であるG5専用バイク「バトルチェイサー」には車体の一部にG5と同じ赤い装甲が付けられ、後部上に大型のコンテナ、両側に同じ長さではあるが口径がことなる銃が1丁ずつとバズーカが右側が取り付けられた。

災害救助用のプラン、プランナンバー18「レスキュープラン」が装備され、マスク内に赤く表示されているG5の図が搭載されているAIによるシステムチェックが済んだ箇所が次々と緑に変わり、全体のチェックが終わると「COMPLETE」の文字が表示される。

 

「G5及びバトルチェイサー、『レスキュープラン』スタンバイ完了」

 

システムチェックが完了し、装備の準備が整ったことをアポロンに告げられ、俺はレスキュープラン装備のバトルチェイサー「バトルチェイサー レスキュー」の起動キーを兼ねた左グリップ「バトルアクセラー」を取り、バトルチェイサー レスキュー(以降 バトルチェイサー R)に跨り、バトルアクセラーを差し込んで暗証番号を入力し、エンジンを始動させる。

 

「ハッチオープン」

 

ヴィー、ヴィー、ヴィー

 

バトルチェイサー Rのエンジンを始動させるとアポロンがコンピューターを操作して後ろのトレーラーのハッチを開き、上の左右の壁にある黄色の回転塔が回ると警報がなり、マシンタラップを下ろし、俺を乗せたバトルチェイサー Rが移動、出動準備が整う。

 

「21:51、G5Rプラン、レスキューミッション開始」

 

「了解。野田健悟、仮面ライダーG5 レスキュープラン、出動する!」

 

「バトルチェイサー レスキュー、離脱します」

 

バトルチェイサーRの前輪の拘束が解除されるとマシンタラップを伝って、後ろ向きで2号車から降ろされる。

 

ファンファンファンファンファンファン

 

道路に降りるとアクセルを解放してサイレンを鳴らしスピードを上げ、2号車を追い越し、50メートル先を走っている消防車に追いつくとそのまま追い越して火災現場に急行する。

 

 

午後9:56

火災現場

現場に到着すると12階建てのマンションから赤い炎が燃え上がり、黒煙がもくもくと舞い上がっていた。

燃える炎を消そうと消防隊員達が消火活動を懸命に行い、近辺には大勢の野次馬とそれを押さえる警察官達もいる。

サイレンの音を聞いたせいなのかその野次馬と警察官の目線が一斉に俺に向けられる。

視線を気にすることなくバトルチェイサーRから降りるとバトルチェイサーRに装備されていた大型コンテナを背中に装備するとコンテナ両側に折り畳まれていたフレキシブルジョイントアームが両腰まで伸び、バトルチェイサー Rから銃を取る。

コンテナの両側のアームに装備し、右手にバズーカを持ち、野次馬達に向って歩き出す。

 

「ちょ、ちょっとそこの人!なんて格好してるんだ!危ないから下って!」

 

野次馬の中から1人の警察官が俺を止めようと近づいてくる。

 

「ふっ!」

 

警察官が近づいてくると俺は走り出し、警察官の前で跳躍する。

空中で前方一回転をしながら警察官と野次馬達を跳び越え着地、燃えるマンション向って歩き出す。

 

「なっ!?」

 

「おいなんだあれ?」

 

「特撮マニア?」

 

「すっげぇジャンプしたぞ」

 

俺の姿と跳躍力に警察官と野次馬達が驚き、G5は集音性が高いため野次馬達の色々な声を拾い、それが聴こえてくる。

 

「君!危ないぞ!」

 

「アポロン」

 

『R03、アクティブ』

 

消火活動をしている消防士の1人が近づいている俺に気づき、注意を呼びかけるが俺は気にすることなく間もなく到着する2号車にいるアポロンに通信を入れ、向こうでアポロンが今右手に持っているバズーカ「R03 消火バズーカ」(以降 R03)をアクティブにしてくれる。

マスク内のモニターの左隅に「ウェポンリスト」、その中から消火バズーカのデータが表示され、消火バズーカの「LOCK」の文字が反転し「ACTIVE」に変わる。

 

「サーチモード、作動」

 

R03のアクティブを確認すると俺は立ち止まり、マスク内でサーチモードを起動させマンションの隅々までサーチして残っている人が居ないか探す。

 

ピピピッ

 

センサーが人を捉えると発見した際に鳴る音を鳴らし、直ぐにチェックすると9階に人が1人だけ残っていた。

念のために他の階も再サーチするが誰も残っていない。

 

「生存者を確認。最短ルート・・・・・確認!」

 

「あ、ちょ、ちょっと!」

 

要救助者の位置と最短ルートを確認した俺は燃えるマンションに向って駆け出し、消防隊の人が止めようと声を掛けてきたが気にすることなく正面の入口から内部に突入する。

中に入るとそこは既に炎の海、G5が無ければとっくに焼け死んでいそうな程の炎が目の前で燃えている。

その炎の海に向けてR03を向けトリガーを引き、カートリッジに装填されている「消火ロケット弾」を2発発射する。

放った消火ロケット弾が炎の中に入ると特殊消火剤が撒かれ、炎を消し、先へと進む。

非常階段を使ってR03で消火しながら9階まで上がり、要救助者のいる部屋に近づくと前の方で先に入っていたレスキュー隊が炎によって通路が塞がれ先に進めずにいた。

 

「駄目だ!他のルートを見つけないと。・・・!?」

 

「な、なんだあんた?!」

 

「下がってて下さい」

 

突如現れた俺に気付いたレスキュー隊員達が驚いている中、ここに辿り着く際にR03の弾を使い切ったのでバズーカをコンテナの中央部にマウントし、コンテナの左側アームに装備された銃「R01 放水ライフル」(以降 R01)と右側アームに装備された銃「R02 多目的ガンランチャー」(以降 R02)をレスキュー隊に向ける。

 

「早く」

 

「わ、分かった・・・」

 

流石に銃を向けられたレスキュー隊は言う通りに俺の後ろに下がってくれる。

正直これは脅しになっているが今は気にしない。

 

『R01、R02、アクティブ』

 

レスキュー隊が俺の後ろに下がった直後、マスクに付いたカメラで状況を見ていたアポロンがR01と多R02をアクティブに変え、R03の様にマスク内のモニターにウェポンリストとR01とR02のデータが表示され、R01とR02の「LOCK」の文字が反転し「ACTIVE」に変わる。

2丁の銃がアクティブになるとR02の後ろにR01の銃口を入れ、2丁の銃を連結させた。

2丁を連結させるとマスク内右下に連結させた銃のデータが出され、「CONNECT」の文字が表示される。

 

『Rランチャー、アクティブ』

 

2丁の銃を1つにした広範囲消火モード「Rランチャー」を完成させるとアポロンがRランチャーをアクティブに、そして再びデータが表示され「LOCK」が「ACTIVE」になる。

連結させたRランチャーを激しく燃えている通路に向けて構える。

 

「はっ!」

 

トリガーを引くと銃口からの背中のコンテナ上部内に貯水されていた大量の水を圧縮した水が放たれ、その反動で後ろに少し後退するが通路の炎をあっという間に鎮火させた。

 

「おお」

 

「凄い・・・」

 

Rランチャーの威力を見たレスキュー隊員達が驚きの声を漏らす。

Rランチャーの連結を外し、R01とR02に戻して、コンテナ両側にマウントして要救助者の部屋に向って走り出す。

目的の部屋の前に到着し部屋のドアを開けようとドアノブを回すが鍵が掛かっていて開かない。

 

「ちっ!」

 

開かないことに舌打ちをし、右腕を胸の前に出す。

 

『R04、アクティブ』

 

俺が右腕を出すとアポロンが上腕部の上部に収納されている「R04 超振動カッター」(以降 R04)をアクティブにするとこれまで同様にウェポンリストとデータが表示され「LOCK」から「ACTIVE」に変わるとR04がスライドして出現、刀身が振るえ出しR04を構える。

 

「ぜりゃぁぁぁっ!」

 

R04で扉をX字に切り裂き、炎が舞う内部に突入、コンテナに残っている僅かな水で消火しながら廊下からリビングに入ると若い女性が倒れていた。

 

「大丈夫ですか!?しっかり!」

 

倒れている女性に近づき、G5のセンサーを使ってバイタルをチェックする。

煙を吸ってしまったせいか気を失っていてバイタル数値も僅かに低い。

バイタルを確認した俺は背中のコンテナを床に下ろし、コンテナ下部の左側後部から救助者用の酸素マスクを取りだし、女性に装着させる。

 

「っしょっと」

 

女性に装着後、再びコンテナを背中に装備して気を失っている女性を抱き抱え、玄関に向かい、外に出る。

 

「あ、あんた!」

 

部屋から外に出るとようやくさっきのレスキュー隊員達が到着した。

 

「もう他に取り残された人は居ません。すぐに脱出を」

 

「なんでそんなことが」

 

「既に調べたからです。急いで」

 

「どうします隊長?」

 

突入前に調べたのでもう人が残っていないことを告げるが俺の言葉を今一つ信用しきれず、隊員の1人がレスキュー隊の隊長に尋ねた。、

 

「・・・彼を信じよう。脱出するぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

俺の言葉を信じてくれたレスキュー隊の隊長が指示を出すと隊員達は指示に従い、脱出しようとする。

 

「では俺はお先に失礼します。ふっ!」

 

レスキュー隊隊長の脱出指示を聞いた俺は女性を左腕で抱き抱え、右腕を天井に向けて伸ばす。

腕を伸ばすと右手首下に搭載されている「R07 ワイヤーガン」からワイヤーが発射され、先端が天井に突き刺さり、先端部が開く。

マスク内で「CAPTURE」の文字が表示されると俺は女性を抱き抱えたまま9階から飛び降りる。

ワイヤーのストップとリリーズを駆使しながらレスキュー隊が行う降下と同じやり方で地上に着地、着地後天井に突き刺さり開いていた先端部を閉ざして天井から抜き、ワイヤーを手首に戻し、近くにいた消防隊に近づく。

 

「すいませんがストレッチャーを」

 

「え?あ、ああ!ストレッチャーを早く!」

 

俺が消防隊の人にストレッチャーを頼むと唖然としていた消防隊の人が少し戸惑いながら救急隊にストレッチャーを頼み、救急隊がストレッチャーを押して駆け寄ってくる。

 

「煙を吸って気を失っており、バイタルが少し下がっています」

 

「分かりました!」

 

女性から酸素マスクを外し、押してきてくれたストレッチャーに女性を寝かせ、救急隊に女性の状況を教える。

それを聞いた救急隊は直ぐに返事を返して救急車へと向かい、乗り込む。

 

ピーポーピーポー

 

救助した女性を乗せた救急車がサイレンを鳴らして走り出し、それを見届けた俺はまだ燃えているマンションを見る。

 

「さてっと。そろそろ仕上げといくか」

 

そういった俺は両足を開き、両腕を腰の高さまで持っていくと追加装甲の表面を開き、中から大量のマイクロミサイルが姿を現す。

 

「アポロン」

 

『R08、アクティブ』

 

アポロンに通信を入れるとアポロンはこれまで通りの作業を行う。

 

「ちょ、ちょっとあんた!何しようと!」

 

「発射」

 

マイクロミサイルがアクティブになり、消防隊の1人が止めようとした時、マイクロミサイルを一斉に放つ。

放たれたマイクロミサイルが炎の中に入り着弾すると爆発は起こらず、代わりに白い煙のような物が散布され逆に炎が鎮火する。

無論先程放ったマイクロミサイルはただのミサイルではなく、消火活動を目的とした特殊ミサイル「R08 消火マイクロミサイル」だ。

マイクロミサイルで炎の勢いが強い箇所のみ鎮火し、最後の仕上げを行うためにさっきとは逆にR01を前に、R02を後ろに連結させる。

 

「『Rライフル』、スタンバイ完了」

 

『Rライフル、アクティブ』

 

R!とR2を連結させたもう1つの形態、長距離高水圧放水銃モード「Rライフル」にするとアポロンがRライフルをアクティブにし、モニターに「ACTIVE」が表示される。

Rライフルがアクティブになると俺はホースを持っている消防隊の人に近づく。

 

「ちょっとお借りします」

 

「あ、何を?!」

 

消防隊の人が持っていたホースを奪い取ると一度ホースの放水を止め、Rライフルの後部、R2の後ろにホースを接続しRライフル内で放水を行う。

Rライフル内に放水が行われるとマスク内にRライフル内での水の圧縮率が表示される。

しかしホース一本からでは注水が遅い。

 

「すいません。もう一本お借りします」

 

「え?あ!」

 

注水率を上げるため、別の消防隊の人に近づき、こちらからもホースを奪いってホースの放水を止め、今度はRライフルのR1の後部右側にあるホース接続用の蓋を開けてホースを接続、注水を始める。

2本のホースによってRライフルへの注水率と圧縮率が早くなる。

 

「スタンド展開」

 

水の圧縮率が80%になると両足の脹脛の装甲が開き、中に収納されていたスタンドがアスファルトに勢い良く突き刺さる。

 

「いくぜ!」

 

圧縮率が100%に達するとRライフルのトリガーを引く。

銃口から高圧縮された水が放たれ、あまりの勢いに身体が後ろに飛ばされそうになるがスタンドのお蔭でなんとか踏ん張る。

最上階である12階に放水し、そこが鎮火すると今度その下の階の11階を放水、その次は10階、9階と階を下げて炎を鎮火していく。

予め消火マイクロミサイルで粗方消火していたので直ぐに鎮火することが出来た。

 

「鎮火確認、スタンド解除」

 

鎮火を確認すると脹脛のスタンドを収納、Rライフルからホースを外す。

Rライフルの連結を解除しR1、R2に戻しコンテナにマウントして外したホースを持って消防隊に近づく。

 

「ありがとうございました」

 

「あ、ああ」

 

勝手に借りたお礼を言ってホースを差し出すと消防隊の人は少し戸惑いながらホースを受け取る。

ホースを返却し役目を終えた俺は帰還するためにバトルチェイサーRに向って歩き出す。

無論バトルチェイサーRに向うためには野次馬達を避けなければならないが俺が歩いていくと野次馬達は自分達から道を明けてくれた。

バトルチェイサーRに辿り着くとR03、R01、R02、背中のコンテナをバトルチェイサーR後部に接続、バトルチェイサーRに跨りエンジンを始動させる。

 

「あ、ちょっと!あんた一体!」

 

野次馬を掻き分けてきた警察官が俺に声を掛けるが気にすることなく走り去る。

 

GトレーラーMk-Ⅱ2号車内

現場から走り去った直後、2号車に回収され、Rプランを外した後、G5を脱ぐ。

 

「ふぅっ」

 

G5を脱いだ俺はG5用のライダースーツのままオペレーション用の椅子に座り、スポーツドリンクを飲む。

 

「レスキュープラン、データと訓練通りの働きをしましたね」

 

「ああ。耐熱性もバッチリだし、装甲は熱が籠らないから救助者をそのまま担げるし、救助活動が楽だったよ」

 

「今回は7つしか使えませんでしたが、あの規模では仕方ありませんね」

 

「こう言っちゃなんだが他の装備を実戦で使うとなるとコンビナートとかの工場地帯や地震とかの大規模災害じゃないとフルスペックで活動出来ないだろうな。ま、そうならないことは祈るが」

 

「しかし、もし仮にきた場合に備えてテストは行い続ける」

 

「その通りだ。(キィィィィン)---っ!!」

 

アポロンと今回のG5 Rプランの活動結果に満足し、今後も念のためにテストが必要という話していると耳鳴りが聴こえてきた。

 

「やれやれ。またミラーモンスターか。アポロン、停めてくれ」

 

「ラージャ」

 

耳鳴りを聞いた俺はアポロンに指示を出し、2号車を停止させる。

 

「本日はどうしますか?」

 

「今日はコイツを使う」

 

そういいながら「ナイトのカードデッキ」をアポロンに見せる。

 

「ラージャ。ご武運を、マスター」

 

「おう」

 

コンテナのハッチが開き、2号車から降りた俺は辺りを見渡す。

目の前には大きなビルが建っていて右を見るとその近くを買い物袋を持った1人の女性が歩いていた。

 

(キィィィィン)

 

また耳鳴りが聴こえたのはちょうどそのビルの方からだった。

街灯の僅かな明かりを頼りに目を凝らし、1階のガラスをよくみるとミラーモンスターが見えた。

ミラーモンスターが見ているのはガラスに映っている女性、つまり女性を捕らえる気だ。

女性を見ていたミラーモンスターが走り出すと俺も女性に向って全速力で走り出す。

 

「危ない!」

 

「え?きゃっ!」

 

俺が女性に向って跳びつくと女性は俺の方を向き、小さい悲鳴を出し、女性を抱きしめた状態で共に地面に倒れる。

その直後、女性が立っていた場所をミラーモンスターが通り過ぎた。

 

「大丈夫ですか?!」

 

「は、はい・・・」

 

俺は直ぐに女性から離れて身体を起こし、跳びついた女性に声を掛けながらモンスターの方を向き、後ろから女性が返事を返す。

女性を襲ってきたのはイモリ型モンスター「ゲルニュート」。

また面倒なやつが来たな。

 

「な、何ですかあれは!?」

 

「グルルッ」

 

俺の後ろでゲルニュートを見た女性は驚き、ゲルニュートが小さく唸りながらゆっくりと近づいてくる。

 

「くっ!」

 

近づいてくるゲルニュートに正面から抱きつき、動きを止める。

 

「逃げて下さい!」

 

「で、でも!」

 

「早く!」

 

「・・・・・」

 

ゲルニュートに狙われていた女性に逃げるように言うと女性は一瞬戸惑った。

俺が叫ぶとようやく女性は立ち上がり、買い物袋を拾って逃げる。

 

「ギイッ!」

 

「ぐあっ!」

 

「ギイイ」

 

女性が逃げると俺は投げ飛ばされ、地面を転がる。

俺を投げ飛ばしたゲルニュートはミラーワールドに逃げていった。

 

「逃がすかよ!」

 

ゲルニュートが逃げると直ぐに起き上がって鏡の前に立ち、ナイトのカードデッキを取り出して鏡に翳す。

鏡にVバックルが出現すると腰に装着された。

 

「変身!」

 

ナイトの装着者である「秋山蓮」の変身ポーズを取り、Vバックルにデッキを装填、「仮面ライダーナイト」に変身する。

 

「ふっ!」

 

ナイトに変身した俺はミラーワールドに入り、ゲルニュートを追いかける。

 

ミラーワールド内

 

「はああああっ!」

 

ミラーワールドに入り、直ぐにゲルニュートを見つけた俺はダークバイザーで斬りかかる。

しかし斬ろうとした時にゲルニュートは跳びあがって避ける。

 

「このっ!」

 

着地したところを狙ってダークバイザーを振るうがまた跳んで避けられた。

ゲルニュートがビルの壁、街灯、木と様々な物に跳び移るため狙いが定まらず、近づけない。

 

「くっそ!チョロチョロと動き回りやがって!」

 

『TRICK VENT』

 

何度攻撃しても避けられるためデッキからカードを引き抜き、ダークバイザーにベントイン、トリックベントを発動させて数を増やす。

 

「「「はっ!」」」

 

3人に増えた俺はダークバイザーを構え、それぞれ別々の方向に散る。

 

「ふっ!」

 

最初に俺がダークバイザーを振るうとガルニュートは木に向って跳躍する。

 

「はっ!」

 

ゲルニュートが木に着地すると今度は2人目の俺がゲルニュートの居る木の高さまで跳び、ダークバイザーを振るうが再びゲルニュートが跳躍、今度はビルの壁を目指している。

 

「もらった!」

 

ビルの壁を目指して跳ぶゲルニュートの前に3人目の俺が跳んでゲルニュートとビルの間に入るとダークバイザーでゲルニュートに斬りかかった。

 

「ギイ?!ギッ!」

 

俺が斬ろうとした時、ゲルニュートは手の平から粘液を発射。

放たれた粘液は街灯に付き、張り付いた粘液を引っ張り、街灯の方に飛んで行きダークバイザーを回避した。

 

「何!?」

 

ダークバイザーが空を斬り、想定外のことに驚きながら3人目の俺は地面に着地した。

ミラーモンスターのくせに中々やる。

攻撃を避けたゲルニュートは背中から巨大な十字手裏剣を取り、街灯の上から俺達に向けて投げてきた。

 

「「「うわあああッ!」」」

 

ゲルニュートの巨大十字手裏剣が3人の俺の胸に当たり、俺達は火花を散らしながら後ろに飛ばされ地面を転がり、巨大十字手裏剣はブーメランのようにゲルニュートの元に戻っていく。

 

「いつつっ。あのやろう!」

 

「それなら・・・」

 

「これでどうよ?」

 

3人目の俺攻撃を受けて苛立ち、2人目の俺がゲルニュートを見て、首を俺の方に向け、俺はカードを引き抜き、ダークバイザーにベントインする。

 

『NASTY VENT』

 

「キイイイイッ!」

 

「ギッ!ギイイイッ!」

 

ナスティーベントを発動させるとダークウイングが現れソニックブレイカーを放ち、ゲルニュートが両手で耳を塞ぎ苦しむ。

 

「うっし!」

 

それを見た俺は直ぐにカードを引き、ダークバイザーに入れる。

 

『FINAL VENT』

 

「キイイイイッ!」

 

「はぁぁあああっ。はっ!」

 

ファイナルベントを発動させるとウイングランサーが自動で装備され、俺は走り出し、ダークウイングが合体してウイングウォールとなり、空に跳び上がる。

 

「はああああああああっ!」

 

空中で自分の身体をウイングウォールでドリル状に包み、ゲルニュートに向って落下していく。

 

「ギッ!ギイイイイイイイイッ!!」

 

ナイトの必殺技「飛翔斬」を受け、貫かれたゲルニュートは爆発を起こして消滅、爆発の中から光の玉が宙に浮かぶ。

 

「キイイイイッ!」

 

その光の玉をダークウイングが取り込むとそのまま何処かに消えてしまう。

 

「ふーむ。最初っからナスティ-ベント使っておけばよかったな」

 

「かもしなれないな」

 

「だな」

 

ふと思ったことを口にすると2人の俺が同意すると2人は消えて、俺1人だけが残り、ミラーワールドを後にする。

 

現実世界

 

「やれやれだな」

 

ミラーワールドから帰還すると変身を解こうとVバックルに手を掛ける。

 

「!」

 

カードデッキを引き抜こうとした時、上から風を切る音と何者かが近づいてくる気配を感じ上を見上げる。

 

「はああっ!」

 

「!?」

 

上を見上げると人ご俺に向って落ちてくると同時に何かが振り下ろされ、すぐに横に跳び避ける。

俺が避けると地面が破壊された音が聴こえ、前転した後起き上がり、今さっき俺がいた場所を向き、襲ってきた人物を見る。

 

「ほお、私の気配に気付いて避けたか」

 

俺を襲ってきたのはロストロギア「闇の書」の守護騎士「ヴォルゲンリッター」の将でリーダー各、「烈火の将 剣の騎士シグナムだった。

 

「奇妙な姿をしているな。貴様、魔導師か?」

 

「・・・」

 

シグナムに問われるが俺は答えない。

正直にいうとこんな早い段階で遭遇するとは予想外だったため少し戸惑っている。

 

「答える気はなしか。ならば・・・」

 

その言葉の後、シグナムは急速で接近しレヴァンティンを振り下ろす。

 

「!」

 

振り下ろされるレヴァンティンをダークバイザーで受け止める。

 

「初見で私の剣を防ぐとは、大した反射神経だな」

 

「くっ!」

 

「むっ!」

 

俺の反射神経の高さにシグナムは関心している。

未だに戸惑っているが今はこの場を乗り切ることに専念するために頭を切り替え、ダークバイザーでレヴァンティンを払い除け、シグナムが後退するとカードデッキからカ-ドを引き抜き、ダークバイザーにベントインする。

 

『SWORD VENT』

 

ソードベントでウイングランサーが召喚され両手で持って構える。

 

「ほぉ、剣の次は槍か」

 

「ふっ!」

 

ウイングランサーを構えると俺は駆け出してシグナムに接近、ウイングランサーを右、左に振るうがシグナムは僅かな動きで避ける。

 

「はあっ!」

 

ウイングランサーを振り上げ、思いっきり振り下ろすとシグナムは空中に上がる。

空中に上がったシグナムはレヴァンティンを構え直すと急降下して接近し、右、左、右斜め上、左斜め上と様々な角度から連続で斬りかかってくる。

地面からでなく宙に浮いているためか動きが早い。

連続で迫るレヴァンティンをウイングランサーで全て弾く。

 

「このぉっ!」

 

8度目ぐらいの攻撃を弾いた時に再びウイングランサーを左から右に振るうがシグナムは跳び、俺の頭上を越える。

シグナムが頭上を越えると右側から後ろを振り返り、ウイングランサーを上げる。

振り返った直後、俺を飛び越え、振り返って振り下ろすレヴァンティンをウイングランサーで受け止める。

 

「ふむ。悪くない腕だな。・・・だが!」

 

「ぐっ!」

 

鍔迫り合っているとシグナムは俺の腹を前蹴りで蹴る。

俺が後ろに下がるとシグナムは上に上がっていく。

 

「貴様の剣と槍には迷いがある。それでは私には勝てん。レヴァンティン」

 

『Explosion!』

 

レヴァンティンから1発の弾丸が排出され、刀身に炎に包まれ、俺に向って落下しながらレヴァンティンを振り上げる。

 

「!」

 

それを見た俺はカードデッキからカードを引き抜き、ダークバイザーに入れる。

 

「紫電!」

 

『GUARD VENT』

 

「一閃ッ!」

 

シグナムが振り下ろそうとする直前に俺の背中にウイングウォールが装備される。

 

「ふっ!」

 

レヴァンティンを振り下ろした直後、ウイングウォールを掴んで前に出し、間一髪防いだ。

 

「ぐあっ!」

 

紫電一閃を防ぐことは出来たが衝撃で後ろに飛ばされ、地面を転がる。

 

「まさか私の技を防ぐとは。面白い」

 

シグナムほ笑みを浮かべ、レヴァンティンを構える。

正直状況はあまりよくない。

シグナムが空を飛べるというのもあるがさっきのゲルニュートとの戦いでほとんどカードを使ってしまっている。

残ってるのはアドベントのカードと『あのカード』のみ。

 

(あのカードを使うのは気が引けるが仕方がない)

 

そう思いながら俺は立ち上がり、ウイングランサーを投げ捨て、ダークバイザーを逆手に持ち、カードデッキから1枚のカードを引き抜き、ゆっくりと裏面を表面に裏返してシグナムに見せる。

 

ビュゥゥゥゥゥ・・・

 

カード引き抜いた直後、風が吹き出し、穏やかだった風が段々勢いを増していく。

 

「何だ、この風は?」

 

パリンッ

 

突然の風にシグナムが周りを見渡していると俺の左手に持ったダークバイザーを胸の高さまで持って行くとダークバイザーの翼が開き、鏡が割れるような音の後、ダークバイザーが盾形召喚機「翼召剣ダークバイザーツバイ」へと変化して左腕に装着され、「SURVIVE 疾風」のカードをダークバイザーツバイの上部装填口に入れる。

 

『SURVIVE』

 

エコーの掛かった音声の後、ダークバイザーツバイから素早く剣を引き抜くと短かった剣が長くなり、俺はナイトの最強形態「仮面ライダーナイト サバイブ」にフォームチェンジした。

 

「!?変わった?」

 

突然のフォームチェンジにシグナムが驚き、その間に俺は黒から青色になったカードデッキからカードを引き抜き、ベントインする。

 

『TRICK VENT』

 

サバイブになったことでデッキがリセットされ、再びトリックベントでシャドーイリュージョンを発動させ、3人に増える。

 

「「「はっ!」」」

 

3人の俺は先程ダークバイザーツバイから抜いた剣「ダークブレード」を構え、3人同時にシグナムに向って駆け出す。

 

「幻影か?小賢しい真似を」

 

『Schlange form』

 

「ふっ!」

 

「はっ!」

 

「ぜあっ!」

 

俺と2人目がダークブレードで弾き、3人目がダークバイザーツバイで防ぐ。

 

「!?幻影ではない!?」

 

シグナムは3人の内2人は幻影だと思っていたようで3人全員がレヴァンティンを防いだことに驚き、目を大きく見開く。

 

「はっ!」

 

シグナムが驚いている隙に2人目の俺が走り出し、ダークブレードで右、左と連続で斬りかかるがシグナムは後ろに下がり、身体を捻りってダークブレードをかわし、右斜め上から斬りかかるとレヴァンティンで受け止める。

 

「だああああっ!」

 

2人目の俺と鍔迫り合っているシグナムに俺は向って行き、左斜め上からダークブレードを振るう。

 

「っ!!はっ!」

 

「くっ!」

 

「っ!せああっ」

 

「ぐああっ!」

 

俺がダークブレードを振るうとシグナムは2人目の俺のダークブレードを押し返し離れさせると左手で左腰のレヴァンティンの鞘を抜き取り、俺のダークブレードを防ぎ、レヴァンティンを右から振るい俺を斬る。

斬られた俺は火花を散らし、地面を転がる。

 

「はあああっ!」

 

俺が着られると今度は3人目の俺がシグナムの右側から向って行き右斜め上からダークブレードを振るう。

 

「ちっ!」

 

シグナムは軽く舌打ちをするとレヴァンティンを左斜め下から振るい、振り下ろされるダークブレードを弾く。

 

「はああっ!」

 

レヴァンティンを振った勢いを利用して一回転するともう一度3人目の俺に右からレヴァンティンを振るう。

 

「っと!」

 

「っ!!」

 

ダークバイザーツバイで受け止める。

 

「ふんっ!」

 

「ぐうっ!」

 

ダークバイザーツバイでレヴァンティンを押し返し、シグナムが後ろに跳び後退する。

後退したシグナムに2人目の俺が走って接近し、右斜め下から掬い上げるようにダークブレードを振るう。

 

「ちュ!」

 

下から迫るダークブレードをシグナムは後ろに跳び、空中に退避した。

 

「まだ終わってねぇぞ!」

 

「何!?」

 

シグナムに向って跳躍した俺はダークブレードを左から横に振るう。

レヴァンティンで受け止めようとするシグナムだが俺のダークブレードがレヴァンティンを弾き返し、空中にいるのが限界になり落ちなった時、左脚でシグナムの右脇腹にミドルキックを入れる。

 

「ぐっ!」

 

蹴られたシグナムは苦痛の表情で顔を歪め、シグナムに蹴りを入れて落下した俺は地面に着地、他の2人が俺に集まり、空中にいるシグナムを見上げる。

 

「・・・・・ふっ。まさかここまでやるとは」

 

右脇腹を押えながらシグナムは笑い、レヴァンティンを構え、俺達もダークブレードを構える。

 

「む?」

 

ダークブレードを構えた時、自分と分身は身体の異変に気付く。

俺達の手や肩、胸の部分から粒子のような物が出始めていた。

 

(タイムリミットか)

 

タイムリミットが近づいてきたことに気付き、これ以上の戦闘は厳しいと判断し、デッキからカードを引き抜き、ダークバイザーツバイにベントインする。

 

『BLAST VENT』

 

「キイイイイイッ!」

 

パリンッ

 

「ブラストベント」を発動させるとダークウイングが現れ、ダークバイザーが変わった時のように鏡が割れたような音の後、ダークウイングが「疾風の翼 ダークレイダー」に変わり、両翼にあるホイールが大きくなり、そこから突風をシグナムに向けて放つ。

 

「ぐっ!な、なんだこれは!」

 

ダークレイダーの突風でシグナムが怯むと俺はその隙に2号車に向って走り出す。

2号車に近づくとコンテナ後部ハッチが開き、急いで乗り込む。

 

「アポロン、出せ!」

 

「ラージャ!」

 

乗り込んでアポロンに指示を出すとハッチが閉じ、ほんの数秒外で急発進によって2号車のタイヤが空回りする音が聞こえた後、2号車は猛スピードで走り出す。

 

 

シグナムSide

突如強力な風が吹き、視界を奪われ、風が止んで目を開くと先程の騎士のような格好の奴は姿はなかった。

 

「・・・・・逃げたか」

 

辺りを見渡しても姿が見当たらない。

そして路上に停車していた車両も消えている。

突風で視界が遮られていた際、車両の走り出す音を聴いた、恐らくあれで逃げたのだろう。

 

「それにしても妙な格好をしていたな。それにあのカード、あれで数や姿を変えていたようだが。《シグナム》・・・ん?」

 

《シグナム、聴こえる?》

 

「あぁ」

 

私があの騎士のような格好をした者を思い出していると念話が届く。

 

《それでどうだったの?》

 

「私が来た時にはお前が言っていたような怪物や。助けてくれたという男の姿はなかった」

 

《そんな・・・》

 

レヴァンティンを鞘に仕舞いながら、この場に来た時の状況を教えるとショックを受けたようで戸惑った声を出している。

 

「その代わりに妙な格好をした相手がいた」

 

《妙な格好をした?まさか管理局?!》

 

「その可能性もあるが、無いとも言える」

 

《どうして?》

 

「そいつは魔力を使ってこなかった。まぁ魔力を使わない新たな装備なのかもしれないが」

 

《怪我は?》

 

「傷はない。だが、それなりのダメージはもらった。かなりの腕だった」

 

出血等の大きな怪我はないが痛みがまだ残っている最後に蹴られた腹を摩りながら答える。

 

《怪我がないならよかった。ごめんなさいね》

 

「いや、構わない。それよりもお前を助けたという男、無事だといいな」

 

《・・・えぇ》

 

「・・・では私は帰るぞ」

 

《え、えぇ。気をつけてね》

 

「あぁ」

 

念話を終え、帰宅しようとした時に私は目の前の場所を見てさっきまでの戦いを思い出す。

 

「・・・何故あいつはあの場で退いたんだ?」

 

あの時、状況は私の方が押されていた。

なのに相手は自分から退いていった。

それが不思議だが・・・・・。

 

「・・・・・ふっ」

 

不思議に思っていたが私は不意に僅かに笑う。

この世界で、あれ程の兵に会えるとは、・・・・・胸が熱くなる。

 

「また戦いたいものだな」

 

そう呟き、私は家へと帰る。

・・・次は勝つことを胸に抱いて。

 

 

GトレーラーMk-Ⅱ 2号車 車内

現場から急いで離れる2号車の中でVバックルからカードデッキを引き抜き、変身が解除され分身達が消えた。

 

「はぁはぁはぁ、くっ!」

 

変身を解くと息を切らしながら、さっきから痛む左脇腹の状況を見るためにG5用のライダースーツを上半身だけ脱ぐ。

ライダースーツを脱いで確認すると左脇腹には痣が出来ていた。

恐らくシグナムの紫電一閃が当たったのだろう。

 

「ちっくしょぉ」

 

「大丈夫ですかマスター?」

 

「ああ。大丈夫だ。だが、流石シグナムだな。完璧に防いだつもりだったが」

 

そういいながら2号車に置いてある医療キットを取り、オペレーション用の机に置く。

 

「しかし、まさかシグナム様に遭遇するとは想定外でした」

 

「全くだ。12月まで出会うことはないと思っていたが・・・考えが甘かったようだ。・・・いつつっ」

 

確かに想定外だったが予測出来ない事態ではなかった。

そんなことも考えられなかったことに少し恥ずかしく思いながら痣の部分を治療する。

 

「にしても、『迷いがある』・・・か」

 

治療を行いながら戦闘中に言われたシグナムの言葉が蘇る。

 

「流石シグナムだな。完璧に読まれてたよ」

 

「仕方がありませんよマスター。今回はフェニックスではないのですから」

 

仕方がないか。

確かにフェニックスとナイト、というより通常のライダーシステムとの違いは非殺傷設定があるかないか。

これだけで戦い方はかなり変わる。

正直かなりやりづらかった、

 

「それよりもマスター。明日のご予定を変更なさいますか?」

 

アポロンが話題を変え、明日の予定について尋ねてくる。

 

「いや、大丈夫だ。予定通りにテストを実施する。どのプランのテストだ?」

 

「プランナンバー8。空中及び空間高機動戦闘用の『ハイマニューバープラン』です」

 

「高機動か。楽しそうだ。テストまでの時間は?」

 

「明朝にテスト飛行を行いますのでテストまであと約5時間程です」

 

「了解だ。それまで休むとしよう。・・・・・」

 

G5の武装プランのテストまで時間に余裕があるためにゆっくり休もうと思った時、ふとあることを思い出し、考える。

 

「どうしましたマスター?」

 

「いや、ちょっとさっき助けた女性が気になってなぁ」

 

「気になる。・・・・・ですか?」

 

「というかどっか見たことあるような髪の色と声をしてたんだよなぁ」

 

「お知り合いの方だったのですか?」

 

「さぁな」

 

女性が俺の方を振り向いた時に顔見たような気がするが一瞬でしかも暗かったためよく見えなかった。

考えても思い出せそうにないので考えるのを止めた。

 

 

11月4日 午前5:00

海鳴市 沿岸部

1号車 車内

まだ人々が眠り、東の空がほんの僅かに明るくなってきている時間に「GトレーラーMk-Ⅱ 1号車」に乗って沿岸部に来ている俺は今、1号車の中でオールドライドで姿を変え、G5を装着している。

 

「よし」

 

「では始めます。マスター」

 

「おう。頼む」

 

「ラージャ。G5、高機動特化プラン『ハイマニューバープラン』装備開始」

 

アポロンがコンピューターを操作すると2号車のRプランの時と同じ様に左右壁、天井が開き、そこから装備を持ったアームが出てくる。

G5の装甲の上からRプランと異なる白い装甲が装着され、脚部や肩にはスラスターが内蔵されている。

装甲が装備されると仕上げとして両腰部に推進ユニット、背中に2つのスラスターユニット、両外側にウイングバインダーが付いているメインスラスターユニットが接続させる。

 

「ハイマニューバープランの装備完了。各システムチェック・・・・・オールグリーン」

 

アポロンの言う通り、マスク内のモニターでもG5を含め今回テストする空中及び空間高機動戦闘用プラン、プランナンバー8「ハイマニューバープラン」にはデータを見る限り異常は見られない。

 

「出撃準備完了。今のところ全て正常ですマスター」

 

「よし。このまま予定通りテストを続行する」

 

「ラージャ。ではフェイズ2、飛行テストに移行します」

 

「了解だ」

 

フェイズ1が無事に終了し、続いて飛行テストのフェイズ2に移行するために1号車の1番奥に行き、白線で四角に囲まれた場所に到着、後ろを振り返る。

 

「G5、リフトアップ」

 

ガコンッ

 

ヴィー、ヴィー、ヴィー

 

アポロンがそういうと俺が立っている白線で四角に囲まれた床「エレベーター」がゆっくりと天井に向って上がっていき、コンテナ内で赤い回転塔が回り、警報を鳴らす。

上がっていくとと天井の一部がエレベーターと同じ広さで開く。

俺の頭が外に出ると1号車のコンテナの屋根の凸部分が少し浮き上がるとそのままゆっくりと起き上がる。

角度が90度まで起き上がると今度はそのまま倒れていく。

そして180度に到達するとコンテナの外にまで伸びている凸部分だった屋根とコンテナの後部のドアとの間に隙間が空き、凸部分だった屋根が少し後退し、後部のドアとの隙間をなくし、外に伸びている先端が更5m程外に向って伸びる。

エレベーターがコンテナの上に到達すると誘導灯が照らされ、1号車の屋根の上に飛行装備発進用の「カタパルトデッキ」が展開された。

 

『カタパルトデッキ展開完了。G5、カタパルトへ』

 

カタパルトの準備が整うと右足を前に出し、カタパルトに右足を載せると右足が固定され、続いて左足を前に出し、カタパルトに載せると左足も固定される。

 

「G5、カタパルトへの接続完了」

 

『接続を確認。カタパルト以上なし、進路クリア。射出タイミングをG5に譲渡します』

 

「了解」

 

射出タイミングを譲渡されると膝を曲げ、態勢を低くして発進態勢に入る。

俺の後ろにバリケードが展開されると腰の推進ユニットの出力を徐々に上げる。

 

ォォォォォォオオオオオオっ

 

「仮面ライダーG5、野田健悟、出撃する!」

 

ピ、ピ、ピ、ピィィ

 

推進ユニットのスラスターの音が段々大きくなっていき、出力が目標に達すると機体名と名前を叫び、カタパルトの右側に備え付けてるシグナルが鳴り、サインが「ABORT」から「LAUNCH」に変わる。

音声に反応したカタパルトが始動、カタパルトの急加速によるGが掛かり、一気にカタパルトデッキの最先端に到達するとカタパルトから足が離れ、射出されると同時に背中のメインスラスターとその両側にあるフレキシブル・スラスターを噴射、そしてフレキシブル・スラスターの両外側についているウイングバインダーを展開し大空に向ってバレルロールをしながら上昇する。

地上から100mまで上昇すると上昇を止め、一時停止をした直後、メインとフレキシブル・スラスター、推進ユニットを勢い良く噴射、沖合いに向って一気に加速する。

沖合いの目標ポイントに到達すると俺は上に急上昇を開始する。

マスク内では表示されている速度と高度の数値がぐんぐん上がっていく。

高度の数値が地上から1.5kmに到達すると上昇を停止、全てのスラスターの噴射をカットする。

スラスターの噴射がなくなったことで空中待機を維持出来なくなり重力に引かれ、頭から真っ逆さまに落下していく。

先程のように速度の数値は上がっていくが高度は逆にどんどん下がる。

 

ピーピーピー

 

高度が段々落ちてくるとG5のAIが危険のアラートを鳴らすがまだスラスターを噴射しない。

だんだん海面が近づき、高度数値が遂に100を切る。

 

「・・・・・」

 

高度数値が50に入ると俺はフレキシブル・スラスターと推進ユニット、ウイングバインダーを使って足を下に向かせ全スラスターを全開する。

海面まで残り20cmというギリギリの所でG5は停止し、スラスターの噴射によって海面に水柱が昇る。

停止後、すぐにメイン、フレキシブル・スラスター、推進ユニットを使い勢い良く前進、海面ギリギリを左右に揺れながら進み、25m程超低空飛行を行って再び上昇し、今度は200m地点で巡航航行を行う。

 

「いい感じだ」

 

『マスター、ハイマニューバーはいかがですか?』

 

「悪くない。操作も加速性も申し分ない。今のところは設計通りだ」

 

『それはよかったです』

 

「そっちはどうだアポロン?」

 

『観測データを見る限り推進ユニット、スラスター、各システムに以上なしです』

 

「ステルス性は?」

 

『そちらも完璧です。熱源センサーには流石に引っ掛かりますがレーダーには反応一切なし。念のため航空自衛隊、陸上自衛隊、海上自衛隊、海上保安庁、アメリカ軍、各空港の航空レーダーを確認していますがマスターを捉えておらず、出撃命令も出ていません。通常のレーダーでマスターを唯一捉えているのはビーコン信号を登録しているこちらのレーダーのみです』

 

「よーし、完璧だな」

 

アポロンの奴、自衛隊、海保、米軍、空港にハッキングしてるのかよ。

精々バレなきゃいいが。

 

「ならこのままテストミッションを継続する」

 

ハッキングのことは一先ず頭の片隅に置いといて、Hプランの飛行テストを続行する。

 

 

 

 

『マスター、そろそろ帰還なされたほうが いいです』

 

「ん?もうか?」

 

アポロンから通信を受け、空中で一時停止してマスク内モニターで現在の時刻を確認し、飛行時間を割り出す。

 

「飛行時間は約1時間半ってとこか。まぁフルスピードや急上昇、急降下を繰り返せば推進剤の減りが早いのは当然か。通常の飛行時間はまた改めて計測するか」

 

『マスター!』

 

飛行時間を割り出した後、推進剤の残りをチェックするとかなりの量が減っており、補給して続けたとしても今の時間では学校に遅刻してしまうので通常飛行時間は後日計測することにし、1号車に帰還しようとした時、アポロンからさっきと違い少し慌てた声で通信をしてきた。

 

「どうした?」

 

『マスターに向って急速で接近する魔力反応を捕捉!敵数1、方位221、角度64、距離1300。テストに集中しすぎて発見が遅れてしまいました。申し訳ありません』

 

「!・・・・・こっちのセンサーでも捕らえた。敵は誰か分かるか?」

 

『少々お待ちを』

 

ピーピーピー

 

アポロンから報告を受け、直ぐにセンサー類を確認すると確かに接近する反応があった。

相手が誰かをアポロンに調べるように指示を出し、アポロンが調べ始めるが接近警報が鳴る。

 

「来たか。アポロン、もういい。直接確認する!」

 

調べるよりも自分で確かめた方が早いと思った俺はアポロンに照合を止めさせ、報告を受けた方向を向く。

 

「でぇぇりゃあああっ!!」

 

「!!」

 

報告を受けた方向を向くと雄叫びを上げながら人が近づき、拳を振るってきた。

俺はすぐにスラスターを噴射して上に回避し、上から攻撃してきた人物を見る。

 

「はぁ、またかよ」

 

『また厄介な方をお会いしましたねマスター』

 

「ああ、昨日に続いて今日もとはな」

 

上から攻撃してきた人物、昨日のシグナムと同じ「ヴァルゲンリッター」の守護騎士、「盾の守護獣 ザフィーラ」を見下ろし、溜め息を吐きながらアポロンに同意する。

 

「奇妙な姿だな。管理局の者か?」

 

「・・・」

 

ザフィーラに問われるが俺は答えない。

だって戦いは避けれそうにないもん。

 

「答えぬか。まあいい。貴様の魔力、頂く!」

 

「ふっ」

 

向ってくるザフィーラを左肩のザブスラスターを噴射して左に回避する。

 

「!!・・・ぜぇあああっ!」

 

攻撃を避けるとザフィーラはこちらを振り返り再び接近、右左交互に拳で殴りかかってくる。

その攻撃も各サブスラスターを使って僅かな動きで次々と回避していく。

このままザフィーラの体力を消耗させ、撤退させらればいい。

 

ビー、ビー

 

「!?」

 

「ぜあああっ!」

 

突然の警報に一瞬気を取られるとザフィーラの右脚が迫る。

 

「くっ!」

 

咄嗟に左腕を出し、右脚をガードした。

 

「はあああっ!」

 

右脚を引くと今度は左腕を振るい、俺も右腕を振るって、ザフィーラと拳をぶつけ合う。

 

バチッ、バチッ

 

ビービービービー

 

「!!」

 

拳をぶつけ合うと右腕から電流が流れる音が聞こえ、マスク内では右腕の部分が赤く表示され警報が激しく鳴る。

危険を感じた俺はザフィーラから急いで離れ、背を向けて撤退する。

 

「逃がさん!」

 

無論逃げる俺を見逃すはずもなくザフィーラは俺を追いかけてくる。

 

「こいつぁ不味いな」

 

追いかけられながら俺は愚痴を漏らす。

さっきまでの飛行テストのせいで推進剤の残りが少ない。

今なった警報もそれを知らせる物だった。

このまま使い続ければ8分、節約のために最低限推力落としても最大飛行可能時間は残り10分が限界だ。

一応射撃兵装はあるがそれは頭部のバルカン砲のみ、しかも今回はテストだったため弾を装填してない。

仮に装填してあったとしても模擬弾でなく実弾だったらどのみち撃てないけどな。

高機動で逃げるという選択肢もあるがそれはそれで気に入らない。

ならばあれを実戦させるか。

 

「アポロン、待機中の2号車をポイントW32に移動、スカイユニットと武装プランナンバー16の準備!いけるな!?」

 

『テストも完了してますし問題ありませんが、よろしいのですかマスター?態々敵と同じ土俵に立つなど』

 

「構わない。その方が燃える!」

 

『ラージャ。5分程持ち堪えてください。まあ可能でしょうけど』

 

「ふっ。確かにこの高機動なら逃げるのは簡単だ。でも速めに頼む」

 

『ラージャ』

 

アポロンに準備を指示出し通信を終えると少しだけ速度を上げる。

 

「逃がさん。鋼の軛!」

 

逃げようとする俺にザフィーラは鋼の軛を発動させ、海面から無数の柱が俺の前方に現れ、進路を塞ぐ。

 

「おっと!」

 

それを見た多俺は身体を空に向って仰向けにし、背中と足の裏のスラスターを全開にし急減速、ある程度速度落ちると身体と背中のフレキシブル・スラスター+ウイングバインダーの角度を調整、仰向けの状態で後ろに一回転して身体を元の位置に戻し、反転して鋼の軛に背を向け、ザフィーラの方を向く。

再び背中、足裏のスラスターに加え、腰の推進ユニットも全開しザフィーラに向っていく。

 

「ぐうっ!」

 

さっきまで進んでいた方向とは逆の方向に無理やり進もうとしているため前と後ろから圧が一気に掛かる。

 

「!!うおおおおおおっ!」

 

俺の逃げ道を塞いだザフィーラだが急減速と反転を行い、続いて急加速で向って来る俺を見て目を大きく開くが直ぐに表情を変え、向って来る俺に右の拳を振るってくる。

振るわれる拳を腰の推進ユニットの右側を上に、左側を下に角度を変え、身体を捻って左にバレルロールをして拳をかわす。

ザフィーラの拳をかわすと身体を捻り、各所のサブスラスターを使って急速反転、飛行ユニットと推進ユニットを全開にし、再びGを身体に受けながらザフィーラに後ろから接近する。

 

「ぬっ!」

 

「でいっ!」

 

「があっ!!」

 

ザフィーラが後ろを振り返ると推進ユニットを前に出し、推進ユニットと足のバーニアを使って減速、少しだけ勢いを落としてザフィーラの腹を右足で蹴り、後ろに蹴り飛ばす。

 

『マスター、準備完了です』

 

「了解!」

 

ザフィーラを蹴り飛ばした直後、アポロンから準備が整ったことを告げられ、身体の向きを変えて指示ポイントに向って飛翔する。

 

 

2分後、指示したポイント付近上空である物を探す。

 

「あそこか」

 

上空で沿岸沿いの道に止められたGトレーラーMk-Ⅱ2号車を確認すると高度を下げて近づき、俺が近づくとGトレーラーMk-Ⅱ2号車のコンテナハッチが開き、ガイドビーコンが点滅する。

 

「これじゃザフィーラに位置が気付かれるな。2号車、ガイドビーコンオフ。やられるぞ」

 

敵に早期発見されることを警戒し2号車にガイドビーコンをオフにするよう指示を送るとガイドビーコンが消えた。

 

「進入角、問題なし!」

 

速度、進入角度を確認、調整しながら各部スラスターを使って2号車に着艦する。

着艦後すぐに奥に移動する。

 

「G5、武装プラン変更!プランナンバー17、近接格闘戦用プラン『クイックプラン』!」

 

奥に移動後後ろを振り返り、音声で指示を出すとアームが出現、今装備されているHプランを次々と外し、新たにHプランとは別の追加装甲が胸、肩、肘、腕、股関節、膝、足に付けられ、特に腕と足は装甲が追加されたことで通常よりも少し太くなっている。

近接格闘戦闘用のプラン、プランナンバー17「クイックプラン」が装備され、マスク内に赤く表示されているG5の図がAIによるシステムチェックが済んだ箇所が次々と緑に変わり、全体のチェックが終わると「COMPLETE」の文字が表示される。

 

「換装完了。続いて空戦用ユニット『スカイユニット』!」

 

Qプランの装備を終え、次に装備をコールするとユニオンフラッグ、AEUイナクトを基に開発したフライトユニット「スカイユニット」が背中に装備されていく。

 

「スカイユニットの装備完了。システムチェック、全システムオールグリーン。G5、リフトアップ!」

 

スカイユニットの接続を確認すると1号車と同じ様にエレベーターが上がり、赤い回転塔が回り、警報がなる。

外に出ると2号車のコンテナの屋根にカタパルトデッキが展開された。

 

「カタパルトクリア」

 

カタパルトの準備が整うと右足を前に出し、カタパルトに右足を載せると右足が固定され、続いて左足を前に出し、カタパルトに載せると左足も固定される。

 

「カタパルト接続!」

 

両足が固定されたことを確認し、膝を曲げ、態勢を低くして発進態勢に入る。

後ろにバリケードが展開されスカイユニットのスラスター出力を徐々に上げる。

 

ォォォォォォオオオオオオオッ

 

「進路クリア。仮面ライダーG5、野田健悟、出撃する!」

 

ピ、ピ、ピ、ピィィ

 

スラスターの音が段々大きくなっていき、出力が目標に達すると機体名と名前を叫び、カタパルトのシグナルが鳴り、サインがLAUNCHになりカタパルトから射出され発進、スカイユニットのスラスターを噴射し、再び大空に飛び立つ。

上昇後、センサーの索敵範囲を広げ、直ぐにザフィーラを捕捉し、スラスターを全開にして向う。

やがてザフィーラを視界に捉えるとスラスター全開のままザフィーラに向って行く。

 

「はぁぁあああっ!!」

 

「!?」

 

右腕を引き、猛スピードで殴りかかるがザフィーラは上に回避、避けられた俺は反転して上にいるザフィーラを見上げる。

 

「武装を変えてきたか」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

ザフィーラの言葉に頷き、互いに睨み合う。

 

「「・・・・・!」」

 

数十秒睨み合い、互いに目を見開いた時、互いに向っていく。

 

「うおおおおおおっ!」

 

「ぜぇぇあああああっ!」

 

最初に仕掛けてきたのはザフィーラ、右と左で交互に拳で殴ってくる。

ザフィーラの交互に殴ってくる拳を両腕でガードしてダメージを防ぐ。

その攻撃が10を超えた辺りでザフィーラが左腕を引き、右腕を前に出した時、俺は左腕を大きく振ってザフィーラの右腕を弾き、前に進み懐に入り込む。

懐に入った俺はザフィーラの顎狙って右アッパーを出す。

・・・が、ザフィーラは左腕で俺の右アッパーを防ぎ、攻撃を防がれたことで隙が生まれ、俺の腹に右腕でボディーブローを入れる。

 

「ガハッ!・・・くっ!」

 

「ぬっ!」

 

ボディーブローを喰らい腹に痛みと息苦しさが襲ってくる。

近接格闘戦用の強化装甲なのにこうなるとは。

それらを堪えながら右脚を上げ、ザフィーラの腹に前蹴りを入れ、離れさせる。

 

「ゴホッ!ゴホッ!・・・・・!」

 

「ぬおおおおっ!」

 

俺が咳き込んでいると前蹴りで飛ばしたザフィーラが近づき俺の頭部を狙って右脚でハイキックを出す。

迫るハイキックに対し、俺も右脚でハイキックを出し、相殺する。

ザフィーラのハイキックを防ぎ、右脚を下げ、俺は左腕でザフィーラに殴りかかる

俺の左腕をザフィーラは身体を捻って左に避けて後ろに回り込む。

回り込んだザフィーラが左腕で殴りかかるが右から反転して右拳で裏拳を出し、ザフィーラの左腕を弾く。

裏拳を出した勢いを利用しザフィーラの右脇腹を狙って左脚でミドルキックを出すが当たる寸前のところで後ろに後退されて避けられる。

ザフィーラは後退するとすぐに右腕を引き、俺に向ってくる。

蹴りを避けられた俺は一回転してすぐに右腕を引き、スラスターを噴射してザフィーラに突っ込む。

互いの距離が縮まると互いに右腕を前に突き出し、互いの右拳をぶつけ合う。

拳がぶつかると衝撃波が発生して身体を揺らし、スパークが起こる。

 

「ぐううううっ!」

 

「ぬううううっ!」

 

拳をぶつけ合うと互いに後ろに飛び、距離を取る。

今のところパワーも防御力も機動性もほぼ同じ、何かで勝らないとこの戦いに決着は着かないな。

ならばあの手段を使おう。

 

「アポロン、スカイユニット、まだストック十分にあるよな?」

 

『イエス、十分にありますのでリミッターを解除し使用してある程度壊しても問題ありません』

 

「よし!スカイユニット、リミッター解除」

 

アポロンにスカイユニットのストックの確認を取り、ストックを訊いただけでスカイユニットのリミッターを解除してしようすることを悟られたことに俺は少し笑ってしまう。

音声でスカイユニットのリミッター解除を告げるとマスク内のモニターの右隅にG5とスカイユニットの図が表示され、スカイユニットの図が拡大されると緑で表示され「LIMIT」の文字が赤の「LIMIT RELEASE」に文字が変わる。

リミッターが外されるとスラスターを噴射してザフィーラに向う。

 

「ぐぅぅぅぅうううう!!」

 

Hプランの様な高機動用の追加装甲を装備してないため身体に掛かりGがキツイがこれでスピードはこっちが上だ。

 

「!?」

 

突っ込んでくる俺をザフィーラは左に回避する。

 

「速度が上がった。・・・!」

 

ザフィーラに避けられた俺は上に急上昇し、上からザフィーラの後ろを取るように移動し、ザフィーラに向って急降下する。

 

「うらぁっ!」

 

「ぐぬっ!」

 

俺の接近に気付いたザフィーラが振り返り、上を見上げる。

ザフィーラに急接近した俺は右脚でザフィーラの胸を狙って蹴りを放つ。

ザフィーラは両腕を交差させ俺の蹴りを防御する。

リミッターを外したスカイユニットの推進力と急降下による落下速度が加わり、俺の蹴りを防いだザフィーラは衝撃で俺の蹴りを防いだまま高度が落ちていく。

 

「うらうらうらうらうらうらぁぁぁッ!」

 

「ぬぅぅぅっ!」

 

ザフィーラが墜ちいていく中、俺は右脚でザフィーラを連続で蹴る。

俺の連続蹴りをザフィーラは引き続き交差させた両腕で防御する。

 

「ぜぇぇぇええりゃあああッ!」

 

「っと!」

 

ザフィーラが雄叫びを上げながら両腕を前に出すとその勢いで蹴りを弾かれ、後ろに飛ばされる。

俺を飛ばすとザフィーラが近づき、右腕を引く。

ザフィーラが向って来ると飛ばされた俺は身体をザフィーラの方に向け、スラスターを使い後ろに飛ばされるのを止め、更に噴射させ向って来るザフィーラに再度向う。

 

「「うおおおおおおっ!!」」

 

互いに叫びながら向って行き、距離が縮まり、同時に右腕、左腕を前に出す。

 

「ぐッ!」

 

「ぬぅっ!」

 

俺の左拳がザフィーラの右頬、ザフィーラの右拳がG5のマスクの左頬に当たる。

拳が頬に当たると殴られた衝撃で互いに少し後ろに下がる。

こっちはマスク越しに殴られたのに頭がすげえグラグラ揺さぶられる。

これがマスク無しの状態で殴られていたら危なかったな。

 

「っ!インパクトモード!」

 

殴られて頭が少しクラクラするのを我慢して叫ぶ。

俺の声に反応し両腕の上腕部に装備されていた上下の装甲が前に伸び、拳を覆うように1つになりボクシングのグローブのような形「インパクトモード」になる。

両腕がインパクトモードに変形すると右腕を腰の位置で構え、スカイユニットのスラスターを噴射してザフィーラに突っ込んでいく。

 

「くらえッ!」

 

ザフィーラの腹に俺の右ボディーブローが入る。

 

ドンッ!

 

「ぐっ!がっ!」

 

俺の腕から僅かな爆発音が聞こえた後、ザフィーラの表情が苦痛で歪む。

攻撃が決まると俺は拳を引いて後退、ザフィーラと距離を取る。

 

「な、なんだ。・・・今・・・のは・・・!」

 

苦痛の表情を浮かべながらもザフィーラは俺を睨み、腹を左手で押さえながら今の攻撃について考えている。

ザフィーラが睨んでいる中、俺はザフィーラから目を離さずに右腕を横に伸ばす。

 

プシュー

 

腕を伸ばすと上腕部から装甲の一部が開き、中から熱が音を立てて放熱され、上腕の装甲がスライドし中からある物が排出されると再び装甲がスライドし閉ざされる。

上腕から排出されたのは空になった3発の薬莢だ。

 

「!?」

 

薬莢が排出されたのを見たザフィーラが目を大きく見開く。

 

「カートリッジシステム!」

 

ザフィーラが驚いた声で呟いた。

しかし正確にはカートリッジシステムとは違う。

今の攻撃したこの上腕部のボクサーモードは以前、時の庭園で召喚したPTのアルトアイゼンに搭載されているリボルビング・ステークのデータを流用した物だ。

上部に2ヶ所、下部に2ヶ所の計4ケ所に爆発力の高い4発の特殊弾丸が内蔵され、目標に命中した際に内部の弾丸が爆発、その爆発で上腕が前に進み二段階攻撃を行う。

つまり腕そのものがリボルビング・ステークのようなパイルバンカーとなっており零距離から更に敵にダメージを与えるQプランの一撃必殺技、正直名前は考えたなかったけど「マグナムインパクト」と命名しよう。

薬莢の排出後、内部に残っている弾丸がオートでリロードされると左腕を引き、右腕を前に出してザフィーラにファイティングポーズの構えを取る。

 

「くっ。・・・・・っ」

 

俺が構えるとザフィーラも構えようとするがダメージが大きいためか腹を押さえ、それでも構えを取る。

そろそろ頃合だろう。

 

「・・・・・退け」

 

「何?」

 

「これ以上の戦闘は無意味だ。今ここで退けば見逃す」

 

ザフィーラがかなりダメージを受けているというのもあるがリミッターを解除したスカイユニットの活動限界が近づいてきている。

互いのためにも出来ればここで退いて欲しいが・・・。

 

「・・・・・分かった」

 

返事を返したザフィーラが俺から離れていく。

油断した隙に攻撃されないように俺はザフィーラを見続ける。

距離を取ったザフィーラは俺に背を向け、そのまま飛び去っていった。

 

「はぁはぁはぁ」

 

『マスター、大丈夫ですか?』

 

「なんとか。つうか」

 

アポロンからの通信に答えながらバチバチと音を立て、僅かながら煙を出している右腕を見る。

 

「武装プランの損傷、結構酷いっぽいぞ?」

 

『強度は十分あったと思うのですが』

 

俺もそう思った。

Oプランの開発テストはMF達と行ったので格闘戦における装甲強度はMF達の本気中の本気程のパワーでなければ損傷しない等の強度のはずだったのだが。

 

「兎に角帰還する。俺達も撤退だ」

 

『ラージャ』

 

 

GトレーラーMk-Ⅱ1号車 車内

 

「とんだ災難だな」

 

ザフィーラとの戦闘後、1号車に帰還。

1号車のコンテナ内に設置してあるコーヒーメーカーからマグカップにコーヒーを入れ、マグカップをオペレーション用の机に置き、マグカップの左に置いてあったタブレット端末を手にする。

タブレット端末でG5のデータを見て、色々いじりながらアポロンに愚痴を零す。

 

「シグナム様に続いてザフィーラ様とも交戦するとは想定外でしたね」

 

「想定外にも程がある。おかげでこっちの装備も無傷じゃないし」

 

そういいながら今度は1号車に置かれているコンピューターに映っているHプラン、Qプラン、スカイユニットの図の損傷箇所が表示されているモニターを見る。

 

「Hプランは両腕部の装甲交換、今回はテストを前提にしてましたので限界値ギリギリまで使えるよう調整してなかったため各スラスターユニットに負荷が掛かっていますね。それでもオーバーホールをしないで済んだのは不幸中の幸いでしたし限界値ギリギリのデータも取ることが出来ました。Qプランの方はシステムは異常なし、こちらは各部の装甲と内部の損傷の激しい部品の交換で4、5時間で済みますがスカイユニットに関してはバラしてオーバーホールする必要があります」

 

「ふむ」

 

損傷に関してはほぼ想定内、武装プランの修復もすぐに終わる。

その報告を聞いた俺はあることを考える。

 

「なあアポロン、Qプランのことなんだが」

 

「今このまま直してもまた同じことになる。・・・ですか?」

 

「おう。考えることは同じか」

 

アポロンも俺と同じ考えをしていたのを知って俺はニヤける。

 

「そのようですね。ですがどのようにして強度を上げるかが問題です。これ以上装甲を厚くすれば重量が増え、補助システムがあっても動きが低下します」

 

「それについてはもう考えてある」

 

アポロンがQプランの改修案を考えると既に想いついていた俺はキーボードを操作してコンピューターにある機体のデータを表示する。

 

「成る程。この機体のあのシステムですか」

 

「出来るか?」

 

「3号車のあれが出来て、これが出来ないのはおかしいと思いませんか?」

 

「思う」

 

実は最初から出来るという返事が返ってくるのを分かっててあえて問いかけた。

アポロンの言う通り、ほぼ完成している3台目の車両「GトレーラーMk-Ⅱ 3号車」に搭載し、現在調整中のあれが造れて、これが造れないのは正直おかしすぎる。

 

「とは言ってもこれを組み込むとなると上腕部は一から作り直すしかありませんね」

 

「どれぐらいかかる?」

 

「ご安心を。1ヶ月以内で完成させます」

 

「任せるぞ」

 

「ラージャ。・・・ところでマスターもプラグラムの方はお願いしますよ?」

 

「りょ~かい」

 

アポロンに返事を返した俺はタブレット端末を机に置き、オペレーション用の椅子に座る。

マグカップを取ってコーヒーを飲み、口の中に苦味が広がる。

 

「・・・・・」

 

コーヒーを一口飲むと俺は少し固まる。

普段は基本ブラックで飲むのだか今は何故か砂糖とミルクが欲しくなった。

そう思った俺はマグカップを置き、砂糖とミルクを取るために椅子から立ち上がった。

 

 

 

後書き

 

ARXー7アーバレスト「やってぜ。俺は・・・ついに書いた」

 

健悟「7月の投稿には間に合わなかったがな」

 

アポロン「ええ」

 

ARXー7アーバレスト「今回はオリジナル要素をふんだんに入れたから纏めるのに時間が掛かった」

 

健悟「その点は評価してやろう。だが7月には間に合わせて欲しかったな」

 

アポロン「読者の皆様がお待ちでしたよ」

 

ARXー7アーバレスト「ごめんなさい」

 

健悟「さて、それはさておき。今回は色々凄いな」

 

アポロン「今回の話では前回登場したオリジナルライダー『仮面ライダーG5』の武装プラン3つとその専用バイクとサポート車両が登場しましたね」

 

ARXー7アーバレスト「各武装プランの装備は主にガンダム系の武装を使い、他にはAS、バルキリー、戦術機、PTからも武装を流用してます。Gトレーラーのカタパルトデッキは地球連邦軍の戦艦『アルビオン』のカタパルトデッキを流用しました」

 

健悟「そして今回で守護騎士2名が登場して戦闘、ついにA's編の開始だな」

 

ARXー7アーバレスト「そうだね」

 

アポロン「ところでシグナム様の相手を何故ナイトに?」

 

ARXー7アーバレスト「えーっと前にPIXIVでシグナムとナイトの戦いが見たいってリクエストがあったような気がしたからと剣同士だから丁度いいと思って」

 

アポロン「そうですか」

 

健悟「本当にバトルシーンは力入ってるよな」

 

ARXー7アーバレスト「何度でも言おう。好きだから。さてそろそろ次回予告しようか」

 

アポロン「BGMスタート」

 

BGM『最強の証~キング・オブ・ハート』

 

健悟「あ、Gガンダムだ」

 

ARXー7アーバレスト「それじゃあいつも通りよろしく!」

 

健悟「分かってるよ。んんっ!・・・皆さんお待ちかね!想定外の出来事がありながらも更に戦力を強化していく健悟。月日は流れ12月!学校の帰りにすずかと図書館に行き車椅子に乗った少女と出会う。そしてその夜ついに守護騎士となのはのファイトが開始されます!助けるために健悟も戦うが苦戦をする。そんな時、健悟となのはが約束を交わした少女が再び現れる!次回!~少年が望んだ世界と力~『第三十六話 A`s始動!夜天の主との出会いと守護騎士との戦い!』に、レディィィィッ!ゴォォォッ! 」

 

ARXー7アーバレスト 「はいOK!」

 

アポロン「最近はノリが良くなってきてますねマスター」

 

健悟「まぁな。ところで次回のサブタイトル、なんか長くないか?」

 

ARXー7アーバレスト 「十五話に比べたらまだマシだよ。次回はいよいよA`s編に本格突入!次回もお楽しみに!!レディィィィッ!ゴォォォッ!」

 

 


 
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