~引き続き一刀side~
「全軍停止!!これより我が軍は鶴翼の陣を敷く!!各員粛々と移動せよ!!」
本陣からの伝令が、命令を伝えながら前線に向かって駆け去って行った。
「いよいよですね。」
「ああ。兵隊さんたちの指揮は愛紗、鈴々、ソウ。宜しく頼むな。」
「合点なのだ!!」
「任されましたぁ。」
「桃香様はご主人様と共に。」
「うん。三人とも気をつけてね。」
「御意。では!!」
ペコッと俺たちにお辞儀をした愛紗が、
「聞けぃ!!劉備隊の兵どもよ!!
敵は組織化もされていない雑兵どもだ!!
気負うな!!
さりとて慢心するな!!
公孫賛殿の下、共に戦い、勝利を味わおうではないか!!」
「応っ!!」
「今より、戦訓を授ける!!心して聞けぃ!!」
「応っ!!」
「兵隊の皆は三人一組になるのだ!!一人の敵に三人で当たれば必勝なのだ!!」
「一人は敵と対峙し、防御をしてください。一人は防御している横から攻撃をするのです。そして、最後の一人が周囲を警戒するのです。
決して、敵に情けをかけてはいけませんよ!!甘い考えの者ほど先に死にますからねぇ。」
「皆、一生懸命戦い!勝ち!平和な暮らしを取り戻すのだ!!」
「「「「「おおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」
「しっかり、自分の隊の将の命令を聞けよ!!全軍、戦闘態勢を取れ!!」
愛紗の号令と共に兵士たちが抜刀する。
それと同時に、
「盗賊たちが突出してきました!!」
緊迫した面持ちの伝令が、本陣に向かって疾走していく。
「いよいよ戦いなのだ!!みんな鈴々に続けーーーーっ!!」
「関羽隊、我らも行くぞ!!」
「僕の隊のみなさん。死ぬのは家族に見守られながら、ですよ!!」
「応っ!!」
「「「全軍、突撃ぃぃーーーーーーーーーーーーっ!!」」」
賊軍5000
[陣形 無陣形]
公孫賛軍3000
[陣形 鶴翼の陣]
~ソウside~
僕たちの部隊は、賊軍へと突撃をする。
先頭がぶつかるまでもう少しでしょう。
今ここで僕たちの実力を示さねば、白蓮殿に見限られますからねぇ。
相手はこちらより兵は多いですが、作戦もなく、ただただ攻めてくるだけ。
鍛えられた公孫賛軍の敵ではないでしょうし、こちらの将の方が優秀ですから。
先手必勝、主導権を奪い、一気に倒しましょうかねぇ。
「敵は高が盗賊、僕らの初陣にしては少々物足りないですかね?」
後ろの方から女性の声が聞こえます。
「油断しちゃ駄目だよ~!!三人とも~!!」
するとやや前からも、
「油断はしないけど盗賊なんて指先ひとつで終わりなのだ!!」
「あべしっ!!」
何でしょうか、敵の盗賊もノリノリですねぇ。
「ええい野郎ども!!あの女どもを捕まえて、夜に楽しませて貰おうぜ!!ただし、男と幼女は殺せーー!!」
「ふざけんなーー!!幼女も捕まえろーー!!」
「あの男の子も捕まえてちょうだーーい!!」
「「「「「やってやるぞーーーーーーーー!!」」」」」
今度は一致団結しましたね。
まぁ、いいです。
さっさと殺りますか。
「今ですねぇ。皆、迎撃に切り替えて敵をいなし、隙を突くのですよ!!」
「「「「「おおーーーーーーーっ!!」」」」」
僕の隊の人は一旦止まり、突っ込んでくる敵を的確に仕留めていく。
他の隊も闇雲に突っ込むより、いなしながら隙を突く。
「うわぁっ!?」
「なんだこいつらぁ、三対一なんて卑怯だ!!」
「今助けるっ!?ぐぁっ!!」
三対一をしっかり守っているようで被害を最小限にしつつ、敵を殺していく。
「三人が乱れた者は少し下がり、また三人で敵を討ちなさいねぇ。」
「「「「「おおーーーーーーーーっ!!」」」」」
兵たちは一歩も引かず、三人を崩された者も、また前線に戻ってくる。
「隊長首貰ったっ!?んがぁっ!!」
「まだまだ、甘いですねぇ!!」
僕はマントの中から連弩を取り出し、僕の首を取ろうとした者の額に撃ち込む。
ちなみに、鎌は騙す相手の前では出しませんよ。
連弩はこのように突然来た時の予備です。
使いづらいので普段は使いませんがね。
「さぁ、今こそ突撃ですよ!!相手に一泡吹かせてやりなさい!!」
「「「「「おおーーーーーーーーーっ!!」」」」」
兵たちは次々と賊を倒す。
「ん?あの方が将ですか……ふむ。」
あの目、間違いなさそうですね。
これは良い収穫ですねぇ。
~更に一刀side~
「よし、敵は総崩れだ!!今こそ我らの力を見せつけるとき!!」
「みんな、鈴々に続くのだ!!」
周囲の兵を勇ましく励ました二人が、戦線を崩壊させた盗賊団に敢然と立ち向かっていく。
それに呼応するかのように、中央と右翼の軍も突撃を開始する。
大地を揺るがす怒涛の足音。
その響きは腹の奥底まで響き伝わってくる。
「スゴイな……」
雄壮だけど……でもどこか戦慄にも似た感情を覚えてしまう。
「ご主人様、まだ怖いの?」
「えっ!?」
俺の顔を覗き込んだ桃香が、心配そうな表情で俺の手を握る。
「ご主人様が、何か辛い思いをしてるんじゃないかって、そんな気がして……」
「……顔に出てた?」
「ううん。出てはいないけど。……でもね、辛そうだなって思ったの。」
「……そっか。」
桃香の勘の鋭さに舌を巻く思いをしながら、俺は思っていたことを口にする。
「目の前で戦いが起こって、そして人が死んでいく……そういうのを見ると、やっぱり辛いよ。」
「優しいんだね、ご主人様……」
「そういうんじゃない。多分……慣れてないだけなんだろうけど……」
決して敗者に同情している訳じゃない。
無限の優しさなんて持っていない。
何せ、さっきまで戦っていた敵は、暴力を武器に力無き人たちを蹂躙してきた奴らだ。
だけど……それでも人間なんだ。
やっていたことの報いとはいえ、無惨に殺されていく人間を目の当たりにすれば、冷静なんかいられない。
胃の腑の辺りに感じる強烈な不快感。
ともすれば胃液が逆流しそうなほどの不愉快さに、俺はきつく眉を顰める。
「辛そうだね……。だけどね、ご主人様。そういったもの全てを受け止めなければ、人を助けることは出来ないよ?」
「……そうだよな。」
全ての人を助けるなんてことできっこない。
なら、自分の周囲に居る。
周囲に居てくれる人間を守るために、自分たちの敵と対峙するしかない。
敵、味方。
それは一方的な見方でしか無いけれど、人はその一方的な見方でしか生きていけないんだから。
「……もう大丈夫。」
俺の手を握っていてくれた桃香に微笑みを返し、俺はしっかりと前を向いた。
こうして――――。
愛紗や鈴々やソウ、そして星たちの活躍もあって、公孫賛軍は完全なる勝利を手に入れた。
意気揚々と引き上げる兵たちの中、俺たちは白蓮たちと合流する。
「完全なる勝利、だったな。いやぁ、良かった良かった~。」
「やったね、白蓮ちゃん♪よっ、さすがっ!」
「いやいや。桃香たちの力あってこそだよ。ありがとう。」
「えへへ、そういって貰えると嬉しいな♪」
お気楽な様子で会話している二人を尻目に、
「しかし……伯珪殿。最近、何やらおかしな雰囲気を感じないか?」
星が空を睨みながら問い掛ける。
「おかしな雰囲気……?どうだろう。私は特に感じたことは無いけど。」
「白蓮ちゃん、のんびりしてるねぇ~。」
「むむっ。……確かにのんびりしているかもしれないが、桃香に言われるのは無性に腹が立つ……」
「あ、ひどぉい!私は白蓮ちゃんみたいに、のんびりなんかしてないもんね!」
「そう思っているのはお姉ちゃんだけなのだ!」
くっくっ、と喉を鳴らして笑う鈴々に、
「ぶー。鈴々ちゃんまでそんなこと言うの?みんなひどーい!!」
プンスカと頬を膨らませて抗議する桃香と、更に馬鹿にする鈴々は、キャイキャイと騒ぐ。
と、その様子を微笑みと共に見つめていた愛紗が、
「しかし、星の言うことも尤も。最近、特に匪賊共の動きが活発化しているようにも感じます。」
至極マジメな顔でポツリと呟いた。
「お主もそう思うのか……」
「ああ。ここしばらく、匪賊は増加の一方だ。その者共が村を襲い、人を殺し、財貨を奪う。……地方ではすでに飢饉の予兆すら出ている。」
「収穫した作物も奪われたりするんだから、当然飢饉も起こっちゃうのだ……」
「うむ。それと共に、国境周辺で五胡の影もちらついているという。……何かが起ころうとしている。そう思えるな。」
「大きな動乱に繋がるかもしれん、か……」
「多分……いや、きっとそうなるだろうね。」
「ご主人様もそうお考えで?」
「うん。匪賊ってヤツだけじゃない。いつか、暴政に対しての爆発が起こると思う。」
俺が知っている三国志と、この世界が同じなら、きっとそうなる。
「その動乱の渦の中で、俺たちはどうやって立って行くのか。……それが問題だと思うよ。」
「そう……ですね。」
小さく呟きながら、愛紗は遠い未来を見据えるように天空を見上げる。
視界一杯に広がる蒼い蒼い空。
だが俺たちには……大陸を覆う暗雲が、初陣を飾った俺たちの前に不気味にその身を横たえている―――。
そんな気がしてならなかった。
「あ、あんた。本当におらを助けてくれるのか?」
「えぇ、そうですよ。あなたにはその瞳の奥に秘められた力を感じましたからねぇ。」
装は先ほどの盗賊軍の頭と共に行動していた。
「ほら、これを持って南蛮まで行きなさい。そこに居る南蛮大王にこれを渡せば、我が国に来ることが出来ますよ。」
装は盗賊に木簡を渡す。
「本当に、その国ならおらの望むものが手に入るのか?」
「本当ですとも。金から容姿、権力から命まで全てを得ることが出来ます。喜んでいいですよ。我が国には死者をも蘇らす力がありますからねぇ。」
盗賊は木簡を抱え込み、涙を流す。
「これで、息子を…嫁を…幸せにしてやれる。まさに天国みたいな場所だ。」
「天国ですか……ケケッ、まぁある意味正解ですねぇ。」
「あぁ、ありがとう。ありがとう。」
「あっ、あと我が国に居る、偉い立場で水晶玉を持っている黒髪の女性に『もうすぐ、始められる。』と伝えておいてください。」
「分かった。必ず伝える。」
「ケケッ、では行ってらっしゃい。希望を叶えてきてくださいねぇ。」
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恋姫夢想の二次創作です。
ダーク主人公なので好き嫌いが分かれると思います。
基本的には原作を進んでいきます。
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