No.598512 思うこと… ~ソードワールド・西部諸国シアター 投稿原稿22013-07-17 00:41:22 投稿 / 全3ページ 総閲覧数:1164 閲覧ユーザー数:1156 |
新規設定
・沈黙の実
形状:アーモンド大の青緑色の実
効果:皮をはぐと、半径1メートルの空間の音を、発している本人以外には聞こえなくする。表面は6ラウンド程度で乾いてしまいそうなると効果がなくなってしまう。所持者に外部からの音は聞こえる。
説明:ワイアット山脈の奥地に生える木のみで、チェルシーは狩りのここ一番の時に使うため、いつでも常備している
・ドラゴンマスター技能(一般技能)
説明:竜を操る技能である。
<<念話>> 知力
テレパシーを使って他者と交流する技能。しかし、竜以外の目標では修正を受ける。どんなに知力の低い竜でも意思の疎通が図れる。
<<乗竜>> 敏捷度
竜にうまく乗り、その上で何かをするために必要な技能。しがみつくだけならこの技能は必要ない。
登場人物
・ジール ハーフエルフ:男 18歳
リプレイ第二部登場のハーフ(ダーク)エルフ。第二部パーティと別れた日、竜使いのチェルシーに会う。発動体は指輪。
器:20 敏:21 知:20 筋:12 生:16 精:16 魔力:古代語(7)
ソーサラー4 シーフ3
・チェルシー 人間:男 11歳
アレクラストで唯一、竜と心を交わせる少年である。
器:12 敏:13 知:12 筋:6 生:10 精:11
レンジャー4 ドラゴンマスター4(一般)
・ジェノア 人間:男 29歳
3年前、チェルシーを部下にしようとし、その約束をして引き下がった。今回約束を履行させるために再びチェルシーの元に訪れた。
器:18 敏:17 知:19 筋:16 生:17 精:20 魔力:神聖語(8)
シーフ8 プリースト(ファラリス)5 セージ6
本編
ジールはリン・エルドリアとキドマン・ブリューワの墓前で黙祷を捧げている。「あんた達のおかげでうまくやっていけそうだ。僕に新しい人生をくれたあんた達への感謝はこのワイアット山脈より大きい・・・」やがて、ジールはここを離れ、村へと帰っていく。途中、緑色のグライディング・スレイヤーが茶色の道を向かってくる。ジールは身構えるが、そのままこの体長3メートルほどの蛇は彼をそばを通り過ぎていく。何事かと振り返ると、彼の目の前に竜の頭があった。彼はここで気絶してしまい、次に気づいたとき、小さな木の小屋に寝かされていた。「おどろかしてごめんっス。」そう話しかけてきた少年がチェルシーだった。彼らは2年前、こうして出会った。
ジールとチェルシーは気が合った。チェルシーはジールを「兄貴」とよんで慕い、ジールもこの初めてできた友人を好ましく思った。ジールはチェルシーにこの世の厳しさを教え、チェルシーはジールにこの世の美しさを理解させようとした。正反対の二人だが、ひねくれ者と、ジールのおかげでちょっと染まったが、純真な少年は互いに補い合って暮らしていた。ジールはいろいろなことを話した。冒険のこと、自分にかけられた呪いのこと、倒れたもの達のこと。チェルシーも狩りのことや竜のこと、ワイアット山脈奥地での発見などを話した。しかし平和は長くは続かない。
ある日、ジールはチェルシーとリン、キドマンの墓へ来ていた。その日は彼らの二回忌で、ジールは毎年するように黙祷を捧げた。そのとき声がする。「チェルシーだね、3年前の返事をもらいに来たよ。」ジールとチェルシーが振り返ると長髪の美しい男と、その後ろにこれも美しい金髪の少年が立っていた。あ然とするジールを余所に、チェルシーが言う。「ジェノアさんだったッスよね?」ジールが驚く。「あの・・・ジェノアか!!」すると男が言う。「これはこれは光栄だ。たぶんそのジェノアだよ。」チェルシーは3年前を思い出していた。彼への客はほとんど祖父が対応していたが、この男が来た後、祖父は「信じておるからの。」とただ一言言ったのだった。「私の部下にならないか?・・・とても名誉なことだろう?」ジェノアはそう言うと優雅にほほえんだ。チェルシーは悩んでいる。そこへジールが叫ぶ。「だめだチェルシー。奴は残虐な男だと聞いている。悪人なんだ。そんな男の部下になったら…」ジェノアはそれを遮り、「ほう。おまえはダークエルフのハーフか。いいぞ、非常にいい。私の部下にならないか?」彼の背後にいた少年の目が光った。「あ・・・。」ジールは承諾しそうになる。『チャーム』を使われたのだ。しかし、彼は持ち前の魔法抵抗力の強さでこれを退ける。「やめろ。僕に魔法は効かない。チェルシー、やはりこの男の言うことを聞いてはだめだ。」ジェノアが言う。「君たちは勘違いしている。私は暴力は嫌いだ。人間はそれでは支配できない。人を支配できるのは愛だ。」幸せそうな顔をした背後の少年をみて、チェルシーは「あの人、幸せそうッス」とつぶやく。それを効いたジールは彼を無理矢理ひっつかんで走り出す。
深い谷にかかる吊り橋まで逃げると、ジールはこれを落とした。追っ手は来ない。「だめっスよ兄貴。人を悪く言うなんて最低ッス。悲しいッスよ。憎しみから生まれるものはないっス。ちゃんと話は聞くべきッス。」まくし立てるチェルシーの頬をジールは殴ってしまう。「黙れ!何もおまえはわかっちゃいない。何が大切なのかよく考えろ!」そういうと、『クリエイト・イメージ』で橋を架けた。そこえジェノアがやってくる。橋を渡ろうとするところでチェルシーが叫ぶ。「来ちゃだめッス。その橋は幻っスよ!」が、一歩遅くジェノアは谷底へと落ちていく。「ひどいっス兄貴!見損なったッス」そう言うと、チェルシーは走り去ってしまう。
しばらくして、ジールはゆっくりとチェルシーの小屋へと帰った。小屋の前にはすでにチェルシーが帰っている。そしてなぜかたったまま中に入ろうとしない。ジールが近づくと、扉に紙が貼ってあった。『竜は預かっている。麓の村まで来い。』ジールがつぶやく。「こういう男なんだよ奴は・・・。」
ジェノアは盗賊だ、しかも凄腕の。橋からは落ちたが、谷底へ落ちたわけではなかった。ジールとチェルシーは村でジェノアに捕まる事になる。「おまえの竜は子供ながら強かった。部下が死んだよ・・・君たちには是非麾下に入ってもらわねば。」ジェノアの言に「代わりとしてか!」とジールは反駁するが、それを無視してジェノアは二人が拘束されている部屋を出て行ってしまう。
二人は部屋に閉じ込められはしたが、縛られてはしなかった。しかし扉には鍵がかかっていて、発動体の指輪も奪われてしまった。「くそ、ツールさえあればこんな扉!」ジールは錠を殴り続け、そのうち血が出て飛沫がチェルシーにかかる。「やめるっスよ兄貴!」「やめられるか!おまえが奴の部下になったら『オーロラ』も奴のものだ!アレクラストは奴の手に落ちるんだよ。それにおまえは…お前は僕の初めての友達だ。そんな悪事に手を染めさせるわけにはいかない。」チェルシーは髪に手をやると髪留めをとった。それは祖父からもらったもので、今は形見だった。ジールもそれは知っている。チェルシーはそれを壊すと、棒状の金属を取り出した。「チェルシー…」彼はうなずくとそれをジールに渡した。
程なくして鍵を開けると二人は話し合って次のことを決めた。まず『オーロラ』を探すこと、そしてチェルシーの安全が優先するということ。扉は二つあり、どちらかにジェノアがいてどちらかに『オーロラ』がいる。際に開けた扉の中ではジェノアが寝ていたため、あわてて扉を閉める。『オーロラ』の部屋では『オーロラ』が鎖といくつもの鍵で固定されていた。棒一本じゃどうにもならない。どうしても鍵が必要だった。しかしそれはきっとジェノアの部屋にあるのだろう。「おいらがいくッス」チェルシーは懐から沈黙の実を取り出すが、ジールは言う。「お前には心得がない。それにその髪も素早く動くのには支障があるだろう。僕がとってくる。」盗みを戒める呪いのことをチェルシーは言うが、ジールは無視してジェノアの部屋へと入った。鍵は机の上にあり一目で見つかった。ジールはそれをひっつかんで持ち去ろうとするが、そのとき呪いによる激痛が走る。悲鳴を上げるが音は完全に遮断されている。冷や汗が流れた。『兄貴!もう少しッス、はやくおいらに渡すッス』チェルシーの声がしたが、ジェノアは起きない。「念話か・・・」ジールが扉から出ると、しめるのもままならぬうちに、チェルシーが鍵を奪う。そして涙をこぼしてすすり泣いた。
『オーロラ』の鍵をすべて外した頃、部屋の中にジェノアが入ってくる。ジールはチェルシーを逃がそうとするが、チェルシーが渋って動かない。「早く行け!そしてもう戻ってくるな!そうしなきゃ絶交だ!」とのジールの叫びに、結局チェルシーは『オーロラ』に乗って去り、ジールはジェノアと対峙する。「何故そこまでする。」というジェノアの問いに「友達だ。代わりはいない。」と答える。ジェノアは「友情か…愛に比べれば脆いものだ。」といい、ある少年の話を始める。
10歳の少年は盗賊ギルドのギルドマスターの息子だったが、それがイヤで逃げたしたいと思っていた。そこにある戦士が現れた。彼はギルドに喧嘩を売って捕まったのだ。少年はその男と5ヶ月もの間会い続けた。彼は戦士と友達になったのだった。少年はその男とギルドを逃げ出す話し合いをよくしたものだった。その後二人で冒険者をしようとまで決めていた。が、3ヶ月も過ぎるころ、徐々に男はその案を渋るようになっていった、そして5ヶ月後「俺は友情より快楽をとってしまったんだ。許してくれ、約束は守れない。」そういって、男は少年の目の前で死んだ。後で効いたことだが、彼は麻薬を打たれていたそうだ。はじめは脅しか何かだったのだろうがそのうち麻薬なしではだめになっていた。少年は快楽が友情より強いことを幼心に悟った。もちろんギルドに反感は持ったが、力もなかったし逆にギルドを利用するつもりでおとなしくしていた。世界を支配すれば己は自由になれる。そしてその後、彼は自由を司る神ファラリスから啓示を受けた。
おおよそ善意的にまとめればそんな話だった。話が終わるころにはあたりはすっかり暗くなっていた。ジールは違うとつぶやく。友情が脆いのならなぜ、リンとキドマンは死んだのか。運か?それもある。だが、死の危険はわかっていたのだ。少なくともリンには…。ジールはもう一度違うとつぶやいた。「よりによって、私の愛に友情で立ち向かうとは…まあよい。お前を私のものにすればあの子も愛の偉大さを知るだろう。」ジールの背筋にぞっとしたものが走る。「時間はいくらでもある。」ジェノアがそういったとき、竜の甲高い鳴き声がする。それと共に念話が届く。『兄貴、死んじゃいやッス、絶交されてもいいっス。生きていて欲しいっス!』「早くも友情に裏切られたようだ。」ジェノアはそう言うが、ジールは寂しげに笑う。「わからないか…これが友情の強さだ。」直後、空に巨大な陰が現れた。「!!エンシェント・ドラゴン…。聖地の主、『アクシズ』か…。」ジェノアのつぶやきに、「『アクシズ』のすむ火口は野生の竜が多く、危険だそうだ。」とジールがチェルシーから聞いたことを言う。これを聞くと、ジェノアは目をそらし言う。「起きていた。見ていたんだよ…。お前が鍵を盗むのを。確かに友情は強い。だが愛は相手を殺すことができる。死んでもその快楽を得たいと思わせることができる。」ジールは首を振って答えた。「かつて友情のために死んだ人間。冒険者を二人知っている。」「冒険者は金で動く。金に命をかける。」ジェノアの言にジールは叫ぶ。「違う!報酬はなかった。彼らは一人の少女とその父と、その弟子のために命をかけた!愛は確かに強い。だが愛はお前の言う快楽じゃない。愛は相手を思うことだ。友情も同じ、相手を思うことだ。相手を思う愛や友情はどちらも強い。だから空虚なお前の愛では僕たちに勝てない。僕は…身をもってそれを知っている。」
『オーロラ』がジールをつかんで上空へと連れ去った。ジェノアはそれを見送る。ジールは思う。(巨大な竜が村に降りれないことはわかってるだろうに…。)そして、ただ友達がいることのうれしさに身を任せた。
一方残されたジェノアはつぶやく。「なかなかの気の強さだ。参考になったよ少年達。だがいつか必ず相手に…友情に裏切られる時が来る。必ずだ!人が二人いる限り避けては通れぬ。そのとき再び私はお前達のまえに現れよう。」
つぶやきの終わりと共にその美しい黒髪が闇に消えた。
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過去に、富士見書房のドラゴンマガジンで行われていたソードワールド・西部諸国シアターに投稿したプロット文章がルーズリーフで発掘されたので劣化喪失する前にデータ化しておこうと思います。
西部諸国シアター2「熱血爆風!プリンセス」の5分間シアターに山本弘先生が読みやすく簡潔にブラッシュアップしたものが載っていますので、探し回って読んでいただけると幸いです。「熱血爆風!プリンセス」が掲載された時、同じようなネタを水戸黄門をベースに作っててぐぬぬっとなりました。その残念さの勢いで書きました(苦笑
ここから西部諸国ワールドガイドを手に入れたので割と読み込んでます。入力するに当たり、なんでこんなに冗長かつ、プロットなのに半分お話みたいなもんかいてんだろう、新規設定もどうでもいいじゃん…山本先生の苦労がうかがえるな…と思ってしまいました。当時ははがき10枚以内で収めることというルールができてました。
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