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EXCITORS エキサイターズ エピソード001「少年・ミーツ・少女」 #004

2013-07-15 17:27:02 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:659   閲覧ユーザー数:632

EXCITORS エキサイターズ

エピソード001「少年・ミーツ・少女」 #004

TEXT/ILLUST by:尾岸 元(OXY_GEN)

LOGO by:Dr.N

 ……で。

「結局ついてくとかストーカーかよオレたち」

 力はセルフツッコミにも余念がなかった。

 雛の家は、それはそれは大きかった。まさに豪邸という言葉がぴったりと当てはまる。学校の校庭ほどもある広さの、美しい庭の向こうに、まるで宮殿のような建物がどっしりとそびえ立っていた。

「すげえ……」

 呆然とその威容を見つめる力たち3人。彼らは、雛が、自分たちとは違う世界に住んでいる人間であることを、思い知らされたような気がした。

 雛は、大理石造りの門柱に備え付けられた、インターホンのボタンを押した。少しして、小さなTV画面に、お手伝いさんらしき人物が映し出される。

「お嬢様、お帰りなさいませ」

「ただいま。お友達を連れてきたの。お家にお招きしてもいいでしょう?」

「はい! もちろんです! 門をお開けしますね!」

 数秒後、ガシャンという音と共に、門が自動的に開いていく。

「ほへー……」

「行きましょう」

 雛は力たち3人を伴って屋敷の方へ歩き出した。見事に刈り込まれた庭木が立ち並び、季節の花が咲き乱れる庭を横切るだけでも数分かかる。

 そして、たどり着いた屋敷の建物は、近くで見るとその大きさがさらに際立った。おそらくは力たちの学校の校舎とほぼ同じ大きさだろう。もはや全てのスケールが違う。

「何部屋あるんだろう……」

 力はつぶやいた。

 力たち3人は、大広間のような部屋に通された。豪華な家具や調度品が並んでいる。その中に、学生服とセーラー服の中学生が立ち尽くす図というのは、なんともちぐはぐなものだ。

 しばらくして、私服に着替えた雛が現れた。品のよいワンピースを着こなしている。

「お待たせしました」

「わあ……雛さん、ビーティフォー……」

 こころが思わずうっとりとした声を上げる。彼女もやはり女の子なのだ。

 と、雛に続いて、高級そうな背広を油断なく着込んだ、ウサギの男性が部屋に入ってきた。厳格そうな顔立ちだ。場の空気が張り詰める。

「彼らかね? お前を不良どもから助けたのは」

 よく響く低い声で、男性は雛に尋ねた。

「は、はい……」

 雛は消え入りそうな声で答える。

 男性は、今度は力たちに向き直った。

「娘を救っていただき、感謝する。私は花月園 善治郎[ぜんじろう]。雛の父親だ」

「花月園 善治郎!? ひょっとして、あの世界的大企業グループ、花月園グループのCEO!? 資産総額が小さな国のGDPをさえ超えるという、あの花月園グループの!?」

 幸之進がまたもや説明的セリフで驚く。

「え、えーと……どういたしまして」

 力とこころはぎこちなく頭を下げた。

「さて、私は仕事があるから失礼する。君たち、よければ雛と仲良くしてやってほしい」

「は、はい」

 善治郎はそのまま部屋を立ち去った。

 しばらく、沈黙が辺りを支配した。テーブルに載っている紅茶や菓子にも、誰も手を伸ばそうとしない。

 5分ほど、その沈黙は続いた。

「……あの……」

 口を開いたのは、雛だった。

「あなたたち……すごい力を持ってますよね……どうして?」

「あー、オレたちにもわかんねえんだ。気がついたら使えるようになってた」

 力がぽりぽりと頭をかきながら答える。

「理屈ではないよ。考えるな、感じるのだ」

 幸之進が往年のカンフースターの名言を引用する。

「ワットにしても、雛さんを助けられたんだからそれでグッドじゃない!」

 こころがにっこりと笑いながら言う。

 力たちが花月園邸を出ようとする時には、日が傾いていた。

「あの……とても楽しかったです。また……遊んでいただけますか……?」

 見送る雛の言葉に、力たちはうなずいた。

「今度はオレたちん家にも遊びに来いよ」

「おやぁ? それってプロポーズかな?」

「うっせーよノシン」

「See you again! また遊ぼうね!」

 大きな夕日がゆっくり沈んでいく。

 この日を境に、彼ら4人の運命は、大きく動いていくことになる。

 


 
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