「zzz……及川絞め殺すぞぉ…zz…」
バンッ!
「――いつまで寝てるのですかーーー!!」
「げふぉ!?」
夢心地な感覚から一気に現実に引き起こされる。
腹部に重みがあるのでそこを見ると……そこには怒った顔の義妹がいた。
「ああ……おはよう…音々音…」
「お前はいつまで寝てるのですか!早くしないと学校に遅れるのです!」
「えっマジ……って6時40分じゃん。7時から飯作れば大丈夫、大丈夫…」
「ご飯もですがねねの髪のセットもあるのです!さっさと起きるのです!」
「はいはい…分かった分かった…ふぁ…」
「はいも分かったも一回ずつでいいのです!」
と言って小さい体を大きく見せようとピョンピョンと跳び跳ねる。
正直可愛いので怖くないのだが。
おっと、自己紹介するの忘れてた。
俺は北郷一刀……聖フランチェスカ学園高等部の二年生で剣道部所属。
ンで、さっきのは聖フランチェスカ学園の小等部に通う俺の義理の妹の北郷音々音…通称ねね。
まあ、俺はそのまま呼ぶけどね。
「なあ、音々音。俺のTシャツ知らない?」
「知らないのですー。それよりまだ出来ないのですかーー…」
「皿に盛り付けてるところ……テーブル片付けとけよ~」
「言われなくてもやってるのです!」
俺は物心ついたころに母親が他界し、三年前…つまり中学二年生の時に父親は再婚した。
再婚相手の子供が音々音……当事小学二年生だった。
最初のイメージは大人しいって感じだったけど、一年たつと馴れたのかよく喋る娘だということがわかった。
俺が聖フランチェスカ学園に通うことになったら母さんは海外で仕事をするため家から出て、親父も単身赴任でしばらくは家に帰れないという状態に。
で、朝はこのように俺が朝食を作り、弁当を作り…んで音々音の髪をセットするというのが決まりなのだ。
「むぐむぐ……美味しいのです!」
「ありがとさん…っと口に米ついてるぞ」
「じ、自分で取るのです!余計なことをするななのです!」
「はいはい…ほら、座れって。髪セット出来ないだろ?」
美味しいと言ってくれてけっこう嬉しい。
最初の二人暮らしの朝食は……カオスだった。
目玉焼きを作ろうと思ったら身はぐちゃぐちゃで食べづらかった。
もっといえば、胡椒の入れすぎで喉が凄いことになったときに慌てて水の入ったコップを持って音々音にかけてしまった時もあった。
おかげで音々音に怒られたが唯一の救いが休日だった所だ。
それも今ではこの通りだ。
音々音のセットが終わり、俺達は登校することにした。
この時間なら歩いてでも十分間に合う。
夕飯は何にするか話していると、後ろから声をかけられた。
「……………おはよ、かずと…ねね」
「ん?ああ、恋か。おは「恋殿~!おはようございますなのです!」…始まった…」
この表情の読めない美少女は恋。
俺の同級生だ。
あ、言わなくても分かるけど音々音も美少女だから。
ここテストに出ますよ。
で、なんで音々音がこんなになついているかというと、俺と買い物をしてたときにはぐれて、音々音が不良にからまれてた時があった。
そのピンチを救ったのがこの恋だった。
以来、こうやってたまたま会うとこのようになるのである。
「恋殿~、今日はご機嫌いかがですか?」
「……………ん、お腹二分目」
「恋にとっちゃああの量は二分目なんだもんな…」
恋はスポーツ推薦でフランチェスカに入った。
その功績はかなりのもので、ありとあらゆるスポーツの助っ人をしてその部を優勝に導いている。
おかげで水泳部の思春や剣道部の先輩の春蘭先輩からライバル視されている。
そんでスポーツができる反動なのかかなりの大食いだ。
まあ、すごく可愛いからいいけどね。
「……………かずと、いいにおい」
「ん?ああ…弁当の香りか。よかったら今日の昼一緒に食べる?」
「……………ん(コクコク)」
あ、カワイイ…撫でよ……ってヤバ!
「おーまーえーはー……何をしているのですかーーー!!」
「いや、これは不可抗力で…」
「問答無用なのです!くらえ!ちんきゅ~…キィィィィック!」
「ぶへらッ!」
俺の顎にキックが決まる。
音々音は実を言うと特撮ものが好きで、今のも仮面ライダーのキックを参考にしたものだ。
仮面ライダーの三十分後の幼女向けのアニメも見るのだがこっちのほうが好きらしい。
若干変人と名高い星先輩とも意気投合したのもこれのおかげであろう。
ちなみになぜ『ちんきゅう』かと言うと、語呂がいいというらしい。
「へぅ!?だ、大丈夫ですか、一刀さん!?」
「またまともに食らったのね…」
「ああ、月に詠か…おはよう。大丈夫だよ、あれは愛情表現だから」
「愛情表現にしては過激すぎよ!?」
中等部の後輩の月と詠が話しかけてくる。
なんかふらふらするけどそこは男の子…頑張って立ち上がった。
が、何でか詠の胸を触ってしまった。
「な、な、な…!?」
「へぅ!?」
「あ、ごめ……ハッさっき!?」
こうして俺は二度目のキックを食らった。
朝から疲れるってどう言うこっちゃ。
そんなこんなで昼。
俺は及川の魔の手から逃げ延び、一緒に昼食を食べる予定の屋上へいった。
でもそこには誘った人数以上の数がいた。
「遅いのです!もう食べ始めているのですぞ!」
「全くだな…ほれ恋。これもいるか?」
「もきゅ…(コクコク)」
「ほわぁ~~~♪」
「先輩!失礼させていただいてます!」
「なの~」
「お、これむっちゃうまいやん!」
「でしょ~~♪シャオのお気に入りなんだからね!」
「………多くね?」
元々いるはずだった音々音と恋に変人と名高い星先輩。
うちのクラス委員長の愛紗に 空手部の凪、ファッション同好会の沙和、工学部の真桜の仲良し後輩トリオ。
さらには留学生の小蓮がいた。
「音々音……誰かに言った?」
「い、言ってないのですぞ!?廊下で一緒にお昼なんて言ってないのです!」
「…まあいいけどね?賑やかだし」
「ねぇねぇ一刀~…シャオにあーんってして?」
「ななななな何を言ってるのですか、小蓮!?」
「何って一刀はシャオのお婿さんなんだから当然でしょ?」
「こんな奴にお嫁さんなんて必要ないのです!一生どうてーでいいのです!」
「ぶっ!?ちょっと待て音々音…そんな言葉どこで…」
「お前のベットの裏に隠してあった…え、えっちな…本…なのです」
バレてたのか…これは別の場所にしなければ。
「なあに…一刀もそういうお年頃なのだ、仕方あるまい。ところでねね、その方が本にはどんなものが書いてあった?」
「せ、星先輩…それはプライバシーの侵害に…」
「とかいって凪ぃ~…興味あるやろ」
「沙和は知りたいの~!」
「真桜!?沙和!?わた、わたた、私は……」
「し、知らないのです!ねねは見てないのです」
「いやさっき見たっていってたし…」
音々音はトリオと小蓮に囲まれて困っている。
まあ、困ってる顔も可愛いけどね?
「変態と言うのだぞ、それは?」
「星先輩…心を読まないでください…」
「表情を読んだのだが?」
「どっちも同じっすよ…」
「ところで一刀、お主…ねねから何と呼ばれている?」
「?……ん~っと…お前…コイツ…とかですかね?」
「兄と呼ばれたことがないと?」
「そういえば…ないですね」
そうだった、初めて合った日からまともにお兄ちゃんって言われてない。
嫌われてる………ともいいきれないし、何でだろ。
そう思いながら、未だに現実に戻っていない愛紗を観察していると、どこからか走って来るおとがする。
あ、フラグ立ってた。
「ちんきゅーーーキィィィィック!」
「メメタァ!?」
「うわ!?って一刀!?またやられてたんですか?」
「うん、通算三回目…ガクッ…」
「はっはっは…なかなか面白いな。北郷『兄妹』は」
音々音は星先輩の言葉に少しムッとしながらも、再び昼食を食べていった。
ながったるい午後の授業を終え、俺は夕飯の買い出しをしながら帰宅する。
週に二回はこうやって部活を休んでいるのだ。
「ただいま~……っていないのか?」
いつもならここで音々音の声が聞こえるはずなんだけど……まだかえってないのかな?
俺は荷物を置きにリビングへ行くと……そこにはソファーで寝ている音々音がいた。
「なんだ…いたのか…」
俺は音々音の目の前に座り、頭を撫でる。
音々音はくすぐったそうに動いた。
ふふふ、と笑って夕飯の準備をしようとしたとき、
「……かず……にぃ……」
いままで言われたことのない呼び方をされた。
振り替えるとまだ寝ている音々音の姿があった。
「音々音…?」
返事は帰ってこない。
聞き間違いかどうかわからないが、さっき初めて兄と呼ばれた気がする
疑問に思いながらも俺は夕飯の支度に入った。
「今日はシチューなのですか!?」
「ああ、野菜が安かったからな」
「いただきますのです!」
夕飯の頃にはもう音々音は起きていた。
恐らく臭いで起きたのだろう。
もう少しで食べ終わりそうなときに、俺はさっきの疑問をぶつける。
「なあ…音々音…」
「なんですか?」
「夢の中でさ……俺のことかずにぃって呼んだ?」
「!?ッけほ!けほ!」
その言葉に驚いたのか音々音は咳き込んでしまった。
俺は水を音々音に飲ませてやると背中をさする。
「い、言ってないのです!?たぶんそれはおかずにとかそういう言葉なのです!」
「なんだ…てっきり呼ばれたかと…」
少し残念に思いながらも俺は最後の一口を食べ終える。
音々音も顔を少し赤くしながら一気にシチューを食べ終える。
まだ咳き込むのだろうか……まあ、本人は気にしてないから大丈夫か。
夕食後、音々音は風呂に早めに入り、部屋にこもった。
明日の宿題があるのだろうか……まあ体を壊さないようにしなければいいんだけど。
「ん………ぷはぁ………」
ねねはお風呂上がりに牛乳を一本飲むのが日課なのです。
早く大きくならないとかず兄ィが誰かと結婚してしまうのです。
それだけは阻止しないといけないのです。
ねねは机の上にある写真に目を向けました。
そこにはねねのお母さんとかず兄ィのお父さんが再婚した時のもので……ねねがかず兄ィと兄妹になった時のことが写ってるのです。
ねねは新しいお父さんとお兄ちゃんになる人がどんな人か少し心配でした。
会ってみるとお父さんはやさしい人だし、かず兄ィは……優しかったのです。
でも、ねねは不安でした。
学校で音々音という名前が原因でちょっと苛められていたのでかず兄ィもいじめるんじゃないかって。
でもかず兄ィは…
『君が…音々音ちゃん…だね?俺は一刀、よろしくね』
『ね、ねねと呼んでくだされ……音々音じゃあ…変なのですから…』
『えっ?ぜんぜん変じゃないよ?むしろ可愛いし』
『ふぇ?』
『それに音々音ちゃんの両親がつけたんでしょ?だったら胸を張ってなきゃ』
『で、でも……みんなにはねねと呼ばれて……』
『だったら俺が呼んであげるよ。いつか、音々音ちゃんが自信が持てるようになるまで。ずっと、ね?』
『…あ、あの……ありがとう…なのです』
『どういたしまして。それに俺は音々音ちゃんの名前好きだよ?』
『ぴぅ!?』
『ふふ…これからよろしくね?』
いっぱい…いっぱい誉めてくれたのです。
それがねねの初恋。
かず兄ィのことが大好きになったのです。
だからもっとかず兄ィとしゃべりたいと思って頑張ってきたのです。
でも……かず兄ィが好きでも、ねねたちは兄妹で……。
だからねねは考えたのです。
かず兄ィの好みのタイプがなんなのかを。
どうやったら、かず兄ィと結婚できるのかを。
その結果が……かず兄ィに責任を取ってもらうことなのです。
さっきもわざと寝たふりをして、わざとかず兄ィの名前を出して…わざと驚いたふりをしたのです。
でもかず兄ィは襲ってくれませんでした。
ねねに魅力がないからかもしれません…。
けど、それも今のうちなのです!
ねねはあっという間にボン!キュッ!ボン!になるのです!
ですので、その間はかず兄ィに近づく奴は例え恋殿だろうと近づけさせないのです!
それにちゃんとかず兄ィとは言わないのです。
言ってしまったら、妹としか思われなさそうで少し怖いのです
ねねは宿題を終らせて寝る準備をします。
クローゼットのなかに隠してあるかず兄ィのTシャツを出してベットにはいるのです。
「おやすみなさい……かず兄ィ…」
これを持って寝ると、かず兄ィと一緒にいると思えるのです。
おかげでかず兄ィと一緒に教会にいる夢を見ました。
いつかきっと………現実にしたいのです。
だからねねが一人の女の子として魅力的になるまで待っていてくださいね?未来の旦那さま。
To be contenued……?
あとがき
XXXです。
いやなんか…とっさに思い付いて書きましたけど……長いですね。
まあ駄文ですけど描きたいことかいたし、気に入って暮れたら嬉しいです。
恋姫式シリーズと仮面ライダー中心の長編もよろしくお願いいたします。
では最後に………陳宮カワイイよ、陳宮…わりとマジで。
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ありえないって言っても嫌いって言うわけじゃないです