No.597782

【恋姫二次創作】死神の毒  機略

恋姫夢想の二次創作です。

ダーク主人公なので好き嫌いが分かれると思います。

基本的には原作を進んでいきます。

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2013-07-15 00:46:44 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1200   閲覧ユーザー数:1127

 

~北郷side~

 

桃園で結盟した俺たちは、公孫賛の本拠地へと向かい、街の中でしばらく情報収集を行った。

 

……というのも。

 

相手は今の俺たちよりも遥かに上の立場にいる。

 

そこへ、桃香が友達だからってズカズカ行ったとしても、足下を見られるだけだ、と思ったからだ。

 

まず、相手が何をしようとしているのか。

 

そして、それに対して俺たちは何をどう提供できるのか。

 

それを見極めなければ、力を利用されるだけの、ただの便利屋で終わる可能性がある。

 

相手の欲するものを効果的に提供する。

 

そして結果を残して、自らの評判を高めていく。

 

……ってソウが言っていた。

 

鈴々は面倒臭ーいって連発してたけど、まだまだマイナー勢力の俺たちにとっては、ここが切所。

 

桃香の友達ではあるけど、藁にすがる思いで手伝ってもらおう。

 

「と、いうわけで」

 

酒屋で朝食を終え、くつろいでいる三人と、街を見に行っていたソウを呼んで、今後の活動方針を伝える。

 

「一通り情報を集めてみると、この辺りに巣くう盗賊の規模は、約五千人と云ったところだそうだ。」

 

まぁ、大半の情報はソウが集めてきてくれたんだけど……

 

「対する公孫賛軍は約三千人。……いくら相手は雑軍だからって、この差は結構大きなものだろう。」

 

公孫賛軍は確かに雑軍一人より公孫賛軍一人が強いが、その差は大きなものではない。

 

公孫賛軍には趙雲という武官がいるらしいけど、一人だけでは軍全体の強化は厳しい。

 

故に、五千の賊にも相当苦労するだろう。

 

「そこで、だ。最も重要になってくるのが、部隊を率いる隊長の質だと思うんだ。」

 

それを聞き愛紗が言う。

 

「確かに。公孫賛殿の兵といっても、大半は農民の二男や三男などですからね。兵の質はやや勝っているくらい、兵を率いる者の質こそが最重要でしょう。」

 

「そういうこと。……そこで。愛紗たちって兵を率いた経験ってある?」

 

「無いのだ!!」

 

鈴々は笑顔で元気よく返す。

 

「やっぱそうだよなぁ。」

 

「僕は以前、仕えていたところで少々だけですが、やったことがありますよ。しかも、愛紗殿や鈴々殿はその武勇により、上手く率いることができるでしょうねぇ。」

 

「うん。それは俺も思うし、確信は持ってるよ。」

 

何たって二人はあの関羽に張飛なんだ。

 

……なんで女の子になってるのかは、良く分からんけど。

 

「だけど、例え俺たちがそう信じていたとしても、現状では兵隊のいない、ただの腕自慢ってだけになっちまう。」

 

「うう……それはそうだよねぇ……。でも、じゃあどうすれば良いんだろ?」

 

すると鈴々がいい案があると、立ち上がって言う。

 

「簡単なのだ!!公孫賛のおねーちゃんのところへ行くときに、兵隊を連れて行けば良いのだ!!」

 

「でも、どうやって人を集めるつもりなんだ?」

 

愛紗が鈴々に疑問をぶつけるが、ソウが「それは簡単にできるでしょうね。」と言う。

 

「お金を使い、人を雇って兵隊のフリをしてもらいましょう。」

 

桃香はわかっていないように唸る。

 

「んーと……??」

 

「つまり、公孫賛さんの城に行くまで、兵隊っぽい格好をして付いてきてもらうってことだよね?そうすりゃ、門番とかから俺たちが兵を率いて訪ねてきたって、公孫賛に伝わるだろ?」

 

俺はソウの意見に付け足すと、愛紗は「あ……」と呟く。

 

「……なかなかソウさんも人が悪いですね。」

 

「仕方のないことですよ。兵隊のみなさんを雇うお金はありませんし、知恵を絞って自分を大きな存在に見せることは、今後も必要になってきますからねぇ。」

 

「確かに、ソウの言う通り、時にはそういうのも大切だからな。」

 

「ふふっ、そうですね。ソウさんの機略には素直に感服しました。」

 

三人で話していると桃香と鈴々は頬を膨らます。

 

「う~。三人でいったい何話してるのー!ご主人様、私にも教えてよー!」

 

「そうだそうだー!鈴々にも教えるのだー!」

 

「ちょ、分からないの二人とも?」

 

「ぜーんぜん」

 

「鈴々もー!」

 

本当にわかっていないようで桃香と鈴々は顔を見合わせて「「ねー」」と言っている。

 

「……はぁ。つまりね。街で半日だけ人を雇って城について来てもらえば、兵隊を率いてきたって誤解されて、うまく行けばそのまま部隊長に任命されるかもっていうお話。」

 

「…………………………あ!なるほどー!」

 

「なるほどーなのだー!!」

 

「分かってくれてありがとう。……って訳で、みんなの所持金を確認したいんだけど。」

 

「私たちのお金は愛紗ちゃんが全部管理してるの。愛紗ちゃん、どれぐらいあるの?」

 

愛紗は少しの間、黙る。

 

「……これだけです。」

 

「僕のほうも、先ほどの飯屋の分でもうスッカラカンですよ。」

 

「お金というか、硬貨というか。……ここまで貧乏だとは思わなかったなぁ。」

 

「まぁ……約一名、大飯喰らいが居ますからね。」

 

すると鈴々は申し訳なさそうにするが、すぐ反論する。

 

「うぐぅ。鈴々のせいなのか……だけど、それは仕方のないことなのだ!!」

 

「育ち盛りだもんね。仕方ないよ。」

 

「お姉ちゃんの言う通りなのだ♪」

 

「甘やかしてしまって、いやはや……面目ありません……」

 

「まぁ、仕方ないよ。でも……どうやってお金を調達しようかなぁ……」

 

売ってお金になりそうなものと言えば、俺の持ち物ぐらいか?

 

「うーん……」

 

ゴソゴソ……。

 

「あ……これなら結構良い値段で売れるかも。」

 

「何、そのほそっこいの。」

 

「ボールペンって云う筆記用具だよ。この世界って文字を書くとき墨を摺って、筆で書くんだよね?」

 

「それ以外に何かあるのですかね?」

 

「だよな。だけど俺の世界じゃ、こういうのを使って書くんだ。ほらこうやって―――」

 

俺はボールペンで木簡に、文字を書く。

 

「すっごーい!!文字が書けてる!!」

 

「これは……さすが天の世界。摩訶不思議なものがあるのですね。」

 

「ほぅ、面白いものですねぇ……」

 

「スゴイのだー。お兄ちゃん、それ鈴々にちょーだい!!」

 

「ダメダメ。これ一本しか持ってないんだから。」

 

手を伸ばしてボールペンを取ろうとする鈴々から逃げる。

 

「これを実演して売りに出せば、結構な値段で売れそうなんだけど、どうかな?」

 

鈴々以外の三人に意見を聞いてみる。

 

「はい。これほどのものならば、良い値段をつける公事家も居ることでしょう。」

 

「そうですねぇ、これならばなんとかなるかもしれませんね。」

 

愛紗とソウが言うと、桃香は立ち上がる。

 

「じゃあ私が売ってきてあげるー!!」

 

「いや、桃香殿が行けば足元を見られるでしょう。僕が売ってきましょう。」

 

「えー。……ぶーぶー。」

 

「ま、桃香って駆け引きが出来そうにないもんなぁ。」

 

真名だけ見ると女の子らしいけど、この子が本当にあの劉備だっていうのなら、駆け引きとかには不向きだろう。

 

……案外したたかだったって説もあるけど。

 

「なに?ご主人様、私の顔に何かついてるー?」

 

「いや、したたかっていうのも、それはそれで当たってるのかもなーと思って。」

 

「???」

 

「何でもないよ。……それじゃ、ソウ。売るのはソウにお任せする。頼んだよ?」

 

「了解ですね。」

 

薄ら笑ってボールペンを受け取ったソウは、小走りに外へと出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間後。

 

俺たちの前にずらりと並ぶ人の列。

 

「こりゃまた……結構集まったなぁ。」

 

「一刀殿から預かったぼぉるぺんが、破格の値段を叩きだしましたからねぇ。百人ほど集めることが出来ましたよ。」

 

「うんうん。それだけ居れば大丈夫だろう。」

 

「でも、せっかくのお金を全部使っちゃうなんて、やりすぎだと思うのだ。ちょっとぐらい残しておいても良かったんじゃないかなー?」

 

「そんなことないよ。ソウさんが全部使ったのは間違いじゃないと思う。」

 

「だな。ここで後のことを考えてお金を残すより、全部使っちゃって陣容を整えるほうが、今の俺たちには大切だ。」

 

百万言の言葉を費やすより、俺たちの後ろに控える百人の兵士(っぽい人たち)を見た方が、はったりの効きも違ってくるってものだ。

 

言葉よりも実力。

 

これは、どの世界でも基本だろう。

 

「あとは桃香のはったり次第って訳。……頼んだよ、桃香。」

 

「まっかせーなさーい!!」

 

えっへん!!と胸を張ってる桃香が、心強くもあり……まぁ結構不安でもあるんだけど。

 

「じゃ、行こうか。」

 

何とかなるさ――――。

 

そう自分に言い聞かせ、俺は皆と共に公孫賛のお城へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば一刀殿。」

 

「ん、どうしたの?」

 

「なんでも先ほど、街のはずれで人が六人ほど殺されていたそうですよ。一刀殿も気を付けてくださいねぇ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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