「まったく!黙ってついてくるなんて何を考えているの!?」
南陽へと向かう蓮華たち。
道のりの半分ほどまで来たところで、ついに小蓮は見つかってしまったのだった。
「シャオだって一刀に会いたかったの!」
「遊びに行くんじゃないのよ!?」
「だったらシャオも一緒に働く!それならいいでしょ!?」
「そういう問題じゃないのよ!帰りなさい!!」
「嫌!!」
激しい姉妹喧嘩に明命と亜莎は止めようにも止められずオロオロ。
そんな中、思春が蓮華と小蓮の間に割って入った。
「お二人とも、落ち着いて」
「邪魔しないで!思春!!」
「蓮華様。お怒りはもっともですが、ここから小蓮様だけを帰らせるのは、流石に無理でしょう」
「それは・・・・・・」
「一度南陽まで行きましょう。小蓮様をどうするかは、それまで保留とするのがよいかと・・・・・・」
「・・・・・・仕方ないわね」
はあ、とため息をつく蓮華。
結局、小蓮をそのまま連れて、一行は南陽へ向かうのだった・・・・・・
「え~~!一刀いないの~~!?」
「そうなんですよ~~」
目的地についた一行だったが、来てそうそう聞かされたのは一刀不在の報であった。
小蓮はありえないとばかりに声を上げ、明命も少なからず落胆の色を見せていた。
「本当は引継ぎが終わるまではいる予定だったんですけど、急用が出来てしまって」
「急用とは?」
蓮華の問いに、風はゆっくりと答える。
「ええ、それはですね~~・・・・・・」
「それは?」
「もうすぐ産まれるそうなんです」
「何が?」
「お兄さんの子供です」
・・・・・・
「「「「えええええええええええ!?」」」」
小蓮と思春を除く全員が驚きの声を上げた(思春も一瞬目を見開いていたので、驚いてはいたようだが)
「・・・相手は袁紹だよね?」
「はい」
「妊娠してるとは聞いてたけど・・・・・・」
小蓮はアゴに手を当てて面白くなさそうな表情をしていた。
「まあ、そういう事です。風も引継ぎが終わったら帰るので、早いとこ始めましょう」
「そ、そうだな・・・・・・」
風の爆弾発言に動揺しながらも務めを果たそうとする蓮華。
そんな中、
「・・・・・・」
小蓮は無言で何かを考えていた
一週間後、引継ぎも終わり、風もまた南陽を出る事となった。
「それでは、後はお願いしますね~~」
「ああ、了解した」
「じゃ、いってきま~~す♪」
「・・・・・・ああ」
・・・・・・小蓮も一緒に。
無論、蓮華たちは猛反対したのだが、
「シャオも、い・く・か・ら・ね」
ニコリと笑みを浮かべながら言った小蓮。
しかし、何ともいえない迫力を感じるその笑顔、そしてその身に立ち上る黒いオーラに気圧され、つい首を縦に振ってしまったのだった。
おそるべきは女の情念である。
「シャオの事を頼むわね、思春」
「はっ!お任せください」
結局、護衛兼お目付け役として思春を同行させる事を条件として、小蓮は風と共に一刀たちの所へ行く事となったのである。
「では、しゅっぱ~~つ・・・・・・ぐう・・・・・・」
いきなり眠り始める風。
「ふふ・・・ふふふ・・・・・・」
何か黒いオーラを放ちつつ、笑みを浮かべる小蓮。
「・・・・・・」
そんな小蓮を横目で見ながら冷や汗を垂らす思春。
こうしてまとまりの無い三人は
気持ち急ぎながら一刀たちの元へ向かうのであった・・・・・・
一方、既に帰り着いていた一刀はと言うと、
「うう・・・・・・」
とある部屋の前を行ったりきたりしていた。
「か、一刀さん。少し落ち着いて」
「そ、そうしたいのはやまやまなんだが・・・・・・」
斗詩の言葉に答えながらも、落ち着き無く行ったりきたりしている一刀。
そこには一刀を含め、猪々子、斗詩、卑弥呼、美羽、七乃と袁家の主要人物がほぼ揃っていた。
「ああ、男って何て無力なんだ・・・・・・こんな時に何も役に立てないなんて・・・・・・」
はぁ、とため息をつく一刀。
「こんなに弱々しいアニキ見るの、初めてだなあ・・・・・・」
「無理もない。自分の子供が生まれるかどうかの瀬戸際じゃからな」
猪々子の言葉に答えたのは卑弥呼。
そう、一刀たちが扉の前で待機している部屋の中では、現在麗羽が出産中だったのである。
「な、七乃。麗羽姉さまは大丈夫かのう?」
「・・・・・・今は待つしかありません」
美羽、七乃も珍しく沈痛な面持ちで待機していた。
扉の向こうから、ときおり呻き声や叫び声が聞こえてくる。
そして、そんな声が聞こえてくると、
「麗羽あああああ!!うああ!俺はどうすればあああ!!」
「ア、アニキ!お、おちつ!落ち着いてええええ!!」
情緒不安定になった一刀は猪々子の肩を掴み、ガックンガックン揺さぶっていた。
出産が始まった時からこんな事の繰り返しである。
「うう・・・・・・吐きそう。斗詩、袋持ってきて」
「う、うん・・・・・・」
「神様仏様イエス様!え~い!この際テスカポリトカでもニャルラトホテプでもルシファーでもマーラ様でも構わん!!どうか安産をををををををを!!!!」
「邪神に安産祈願してどうするんじゃ・・・・・・」
・・・・・・
出産が始まって何時間経っただろうか?
すでに日は落ちて、夜になっていた。
「くう・・・・・・くう・・・・・・」
美羽はすっかり寝入ってしまっていたが、それ以外の面々は全員起きていた。
「「「「「・・・・・・」」」」」
あれだけ大騒ぎしていた一刀も、今は無言で目を閉じ、壁にもたれかかっている。
もう信じて待つしかないと、悟りを開いたらしい。
皆、静かに待つ中・・・・・・
・・・・・・・・・・・ゃぁ
「・・・・・・!?」
一刀がカッと目を見開いた。
「い、今・・・・・・き、聞こえたか?」
他の面々を見渡す一刀。
彼女たちも一刀を見て、こくんと頷いた。
そんな時、部屋から女官が慌てて出てきて言った。
「お、おめでとうございます!元気な女の子ですよ!」
・・・・・・
「・・・・・・や」
「「「「「やったあああああああああああ!!!」」」」」
「ふえ!?」
みながバンザイしながら喜んでいる中、大声にびっくりして一人跳ね起きる美羽であった・・・・・・
「よ、良く頑張ったなあ・・・・・・」
あの後、産婆たちから会う時間を少しだけもらい、一刀は麗羽と子供の下へとやってきていた。
その目には涙が溜まっている。
「え、ええ・・・・・・でも、お産がここまで苦しいものだったなんて。正直侮ってましたわ・・・・・・」
憔悴した状態で一刀に言う麗羽。
「すまねえな。お前ばかり苦しい思いをさせて・・・・・・男って役に立たねえな」
頭をかきながらばつの悪い顔をする一刀。
しかし、そんな一刀に麗羽は首を横に振って言った。
「謝ることはありませんわ。この苦しみがあったから・・・・・・嬉しさも・・・・・・ひとしお・・・・・・ですし・・・・・・」
ちらりと、麗羽は自分の横にいる白い布でくるまれた我が子に視線を向けた。
麗羽に釣られるように一刀も生まれたばかりの我が子に視線を向ける。
二人の子供はすやすやと眠っていた。
「ところで、この子の名前なんですけど・・・・・・何かいい名前あります?」
「麗羽は何か考え付いたのか?」
「・・・・・・名前は袁譚にしようかと。でも、真名はこれだというのが無くて・・・・・・」
「・・・・・・俺は一つ。考えてたのがある。俺とお前の一文字を取って、一羽ってのはどうだ?」
「・・・・・・一羽。中々いい響きですわね」
「これでいいと思うか?」
「ええ、この子の名前は一羽にしましょう」
「うし!この子も気に入ってくれるといいんだが・・・・・・」
麗羽の横の我が子に慈愛の視線を向ける一刀。
「麗羽、ご苦労様。今日はもうゆっくり休みな」
「そう・・・・・・ですわね・・・・・・正直、疲れました・・・・・・」
よっぽど疲れていたのか、麗羽はそのまま寝息をたてはじめた。
それを見届けた一刀は、静かに部屋から退出した。
部屋から出て、扉を閉める直前
「・・・・・・ありがとう」
麗羽と、産まれて来た一羽に心の底から感謝の言葉を述べて・・・・・・
どうも、大変お久しぶりのアキナスです。
ついに産まれた一刀の第一子。
募集した中から決定したその名は一羽(かずは)となりました~~~~。
パチパチパチ!
名前募集に参加してくださった皆様、本当にありがとうございました。
またお願いするかもしれないので、その時はご協力お願いします。
では、次回に・・・・・・
「レインフラッシュ!!」
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まずは呉を出発した蓮華たちの話から・・・・・・