No.596072

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 551

soranoさん

第551話

2013-07-09 18:13:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:818   閲覧ユーザー数:775

~旧市街~

 

「フフ………なるほどね。旧市街の地形を利用した追いかけっこ(チェイスバトル)か………なかなか楽しめそうじゃない?」

「ハッ、いいじゃねえか!妨害アリ、何でもアリのケンカレースってわけだな!?」

「スピード、パワー、テクニック、それに駆け引き………一通りが必要になるわけですね。」

「へえ~、面白そうかも!」

「ハハ、だろ?」

自分の提案を聞いて賛成の様子のワジ達を見たランディは笑いながら4人を見回し

「だろって………ランディ、あのなぁ。」

「喧嘩にならないのはいいけど………結局、周りの人達に迷惑をかけるんじゃないかしら?」

エリィはロイドと共に呆れた後、周囲に集まっている人だかりを見回し

「まあ、その割には皆さん見物に集まってますけど。」

ティオは周囲の人物達の興味ありげな様子を見つめて言った。

「ま、いいんじゃない?なんかお祭りっぽくてさ。それで………本当に君達も参加するワケ?」

「………仕方ないだろ。ここまで関わっておいて知らん顔はどうかと思うし………」

そしてワジに尋ねられたロイドは溜息を吐いて答え

「やれやれ、真面目だねぇ。」

「ランディの提案だろ!?その代わり、完全に試合形式にしてルールから外れた事はしない事!決着が付いたら遺恨は残さず、それ以上は争わない事!」

ランディが呟いた言葉を聞いたロイドは突っ込んだ後、ワジ達を見回して言った。

「うーん、あたしたちはもちろん異存はないけど………」

「ハ、俺もそれでいいぜ。こうなったら遊撃士も警察もまとめて相手をしてやるよ………誰が一番か証明するためになぁ!」

ロイドの言葉にエステルとヴァルドは頷き

「あはは、それじゃあ正々堂々戦いましょう。それと、さっきはあたしの態度も悪かったかも。その、ゴメンなさい。」

「は………?」

エステルの言葉を聞いたヴァルドは呆けた。

(ま、また………)

(すげぇな、相変わらず………)

エステルの行動を見たロイドは苦笑し、ランディは感心し

「あはは!すごいねお姉さん!このタイミングで謝ったらレースの意味がないじゃん!?」

ワジは笑顔で笑った後、エステルに視線を向けた。

「でも、試合形式にするって時点で何かどうでもいいって言うか………お互い全力を尽くして楽しめればいいんじゃないの?」

「はあ、君って子は………」

「……ケッ、変な女だぜ。まあいい。赤毛、ルールを説明しろや。」

エステルの話を聞いたヨシュアは呆れ、ヴァルドは鼻を鳴らした後、ランディに説明を促した。

「誰が赤毛だ、誰が。―――さっきも言ったようにレースの基本は『追いかけっこ』だ。ワジ&ヴァルドの旧市街チーム。エステル&ヨシュアの遊撃士チーム。そしてロイド&俺の支援課チーム。この3チームで、旧市街を3周して一番早くゴールしたチームが勝者となる。―――ただし、各チームには毎週、3箇所のチェックポイントを押さえてもらう。チェックポイントは通りの奥にある路地。衝撃を与えると点灯する装置が置かれている。こいつを3箇所ぶっ叩かないと1週したとはみなされないわけだ。この地形を利用することで一方的に逃げる事は不可能になる。レース中は相手の妨害も可………つまり、よほど先行していない限り、相手から妨害を受ける事になるわけだ。それを迎撃するも、何とかかわすもチームごとの戦術的判断になるな。」

「ふーん……よく出来たルールじゃない。ちなみにトラップとかはアリなの?」

「アリ、としておこう。直接やり合うだけじゃなくて地形を活かした妨害なんかも可能になるってわけだな。」

「なるほど………」

「……………………」

ランディの説明を聞いたロイドは納得した様子で頷き、ヨシュアは驚きの表情でランディを見つめた。

「ヨシュア、どうしたの?」

「いや………大体ルールはわかりました。スタート順はどうするんですか?」

「コイントスでいいだろ。ロイド、ヴァルド、エステルちゃん。それぞれ1ミラ硬貨を出しな。」

「ああ………」

「ハッ………」

「ん、わかったわ。」

「それぞれ弾いて手の甲に。表か裏、揃わなかった方が1番手のスタートとしよう。」

「なるほど。」

「それじゃ、ほいっと。」

ランディに言われたロイドとエステル、ヴァルドはそれぞれコイントスをした。」

「表。」

「表よ。」

「裏―――ハッ、俺達が一番手か。」

「むっ………」

「ぬぬっ………」

「よし、そんじゃあワジにコイントスをしてもらおうか。」

「了解。」

ランディに促されたワジはコイントスをした。

「ロイド、エステルちゃん。表か裏かを選んでくれ。」

「えっと………」

ランディの話を聞いたエステルはロイドに視線を向け

「いいよ、先に選んで。」

「あはは………それじゃあ、表で。」

ロイドの答えを聞き、答えた。

「俺は裏だ。」

2人の答えを聞いたワジは掌を開いた。

「裏―――二番手はロイド達だね。」

「うう……ゴメン、ヨシュア。」

「はは、いいよ。今回のルールだったら最初の順番は重要じゃない。」

ワジの答えを聞き謝るエステルにヨシュアは苦笑しながら言った。

 

「―――えっと、それじゃあこれで一通り決まったのかしら?」

「ああ、そうだな。それじゃあレース前に各チーム作戦会議と行こう。一度レースが始まったらタイムとかは無しだからな。」

「あはは、そうね。」

「フフ、それじゃあヴァルド。仲良く打ち合わせしようか?」

「ハッ……気色悪ぃんだよ。」

そして3組のチームそれぞれ離れて作戦会議を始めた。

「さて………ロイド。気づいてるかもしれんがこのレース、俺達が一番不利だ。」

「まあね……ワジとヴァルドのチームは旧市街を知り尽くしている。一方エステルとヨシュアのチームはポテンシャルが半端なさそうだ。」

「そういうこった。俺達が勝つ可能性があるとすれば運と役割分担と的確な状況判断……俺は後衛に回るからお前は前衛に徹してくれ。」

「いいけど……足はランディの方が速いだろ?」

ランディの作戦を聞いたロイドは意外そうな表情で尋ねた。

「コンビの場合、速い方がフォローに回った方が連携が取りやすい。それに、防御に関していえばお前のトンファーは相当なもんだ。迎撃するにしても、かわすにしても的確な判断ができるだろう。」

「うーん、わかった。やってみるよ。どっちも手強そうだけど………参加するんなら勝ちに行こう!」

「ハハ、その意気だぜ。………そうだな。せっかくだからコンビネーションを使った戦技(クラフト)もこのあたりで試しておくか?」

「ええっ………いきなり大丈夫か?」

「なに、お互いのクセもだいたいわかってるだろうしな。ぶっつけ本番にはなるが―――」

こうしてチェイスバトルが始まり、3組のチームはそれぞれの位置についた。

 

「―――それじゃあ、号令は私が務めさせてもらうわね。最初の空砲で第一チームがスタート。5秒後の空砲で第二チームがスタート。更に5秒後、最後の空砲で第三チームがスタート。」

「………タイムのカウントはわたしが担当します。」

「では、我々は見物人が巻き込まれないよう配慮しよう。」

3組のチームがそれぞれの位置につくとエリィとティオ、アッバスが申し出た。

「フフ、舞台は整ったみたいだね。」

そしてワジが静かな笑みを浮かべて呟いたその時

「いいえ、真打ちがまだよ!」

グレイスがカメラマンを連れてロイド達に近づいてきた。

「グ、グレイスさん!?」

「確かクロスベルタイムズの………」

「やっほー、ボーイズ&ガールズ。何だか面白そうなことをやろうとしてるみたいじゃない?お姉さんも一枚かませなさいよね!」

「か、かませなさいって………」

「ハッ、何をしやがるつもりだ?」

「答えは―――これよ!」

ロイドとヴァルドに尋ねられたグレイスはマイクを取り出し、カメラマンはカメラを構えた!

「レースといえばやはり実況!カメラマンも連れて来たから思いっきり盛り上げてあげるわ!」

ロイド達に答えたグレイスはカメラマンと共に高い位置に移動して、ロイド達を見下ろした。

「なんだか本当にお祭り騒ぎになった気が………」

「あはは、いいじゃない。喧嘩より何倍も楽しいわよ♪」

「やれやれ………せいぜい期待しときますか。そんじゃあ、そろそろ始めよう。」

「フフ、そうだね。ヴァルド、用意はいいかい?」

「ハッ、いつでもいいぜ。」

そしてワジとヴァルドはスタートラインに移動し、それを見たエリィは導力銃を空に向け

「………それではカウントを始めます。”3(トライ)”………”2(ツヴァイ)”………”1(アイン)”………”0(ヌル)”!」

ティオのカウントが終わると同時に空砲を撃った!エリィが空砲を撃った瞬間、ワジとヴァルドは走り出した………!


 
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