No.593568 英雄伝説~光と闇の軌跡~ 526soranoさん 2013-07-02 11:39:41 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:856 閲覧ユーザー数:811 |
~グリムウッド法律事務所~
「―――失礼します。」
「おお、君達か。お疲れさま。頑張っているようだね。」
ロイドの声に気付いたイアンは書物の整理を止め、ロイド達に近づいて笑顔を見せた。
「はは………先生こそ。」
「相変わらずお忙しくしてらっしゃるみたいですね。」
「はは、もう慣れっこだよ。それはそうと………どうかしたのかね?何やら相談事があるような顔つきをしているが。」
「………驚きました。」
「はは、やっぱわかるもんスかね?」
イアンの言葉を聞いたティオは驚き、ランディは苦笑しながら尋ねた。
「まあ、そういった依頼人をそれこそ山ほど見ているからね。仕事も一区切り付いたところだし、相談くらいには乗れると思うよ。」
「先生………ありがとうございます。」
「それではお言葉に甘えさせていただきます。」
そしてロイド達はセティ達をイアンに紹介した後、事情を説明した。
「なるほど………アルカンシェルに脅迫状が。そして”銀”という差出人とルバーチェとの関係か………」
ロイド達の事情を聞いたイアンは考え込み
「何か………心当たりでも?」
イアンの様子を見たロイドは尋ねた。
「いや、あいにくそれらを結びつける情報は知らないが………”銀”という名前ならば心当たりがないわけではない。」
「え………!」
「本当ですか………?」
イアンの話を聞いたロイドは驚き、エリィは真剣な表情で尋ねた。
「ああ、同じ人物を指しているかどうかはわからないが………それでも構わないかね?」
「ええ、もちろんです!」
「今は少しでも手掛かりが欲しいところッスから。」
「ふむ………前に出張で共和国に行った時なんだが。奇妙な都市伝説を現地の人に聞かされてね。”銀(イン)”と呼ばれている伝説の凶手がいるらしいんだ。」
「銀(イン)………」
「いわゆる東方読みですね………」
「その”凶手”というのは……?」
イアンの話を聞いたロイドとエリィは表情を厳しくし、ティオは疑問に思った事を口にし
「確か刺客とか、暗殺者って意味だったはずだ。主に東の方で使われてる呼び方らしいが。」
「暗殺者………ですか。」
ランディが答え、ランディの話を聞いたエリナは目を細くした。
「ふむ、よく知っているね。まあ、優秀な傭兵のことを”猟兵(イェーガー)”と呼ぶのと似たような習わしなんだろう。」
「しかし………その都市伝説というのは?」
「ああ、どうやら本当に実在しているのかどうかわからないらしくてね。噂では、仮面と黒衣で身を包み決して素顔を見せないという。影のように現れ、影のように消え、狙った獲物は絶対に逃がさない………そんな亡霊のような存在として噂されているみたいだね。」
「亡霊………」
「ずいぶんと荒唐無稽な話だな………」
「なるほど………だから都市伝説ですか。ですが、その伝説の資格がどうしてイリアさんに脅迫状を?」
イアンの説明を聞いたロイドは呆け、ランディは目を細め、ティオは納得した様子で頷いた後尋ねた。
「………そうね。すぐには繋がらないけれど………もしかして………”黒月(ヘイユエ)”?」
一方エリィは考え込んだ後すぐにある事に気付いてロイドに視線を向け
「ああ………俺もそれは思った。」
視線を向けられたロイドは頷いた。
「ふむ………確かに”黒月”はカルバードの東方人街に一大勢力を構えている組織だ。伝説の凶手と何らかの関係があっても不思議ではないが………」
「なるほど………あの若頭が反応した理由が何となく見えて来たな。”ルバーチェ”と”黒月”は現在、この街で対立している………その”黒月”と”銀”ってのが結びついているとしたら………」
「ルバーチェと無関係でありながら彼らが強く意識している存在―――ロイドさんの推測を裏付ける事にはなりそうですね。」
イアンが考え込んでいる中、ランディとティオはそれぞれ考えた事を言った。
「ふむ………興味深いな。しかし―――その”銀(イン)”がどうしてアルカンシェルの大スター、イリア・プラティエを脅すのかね?」
「それは………確かにそうですね。」
「イリアさんとルバーチェの会長が酒の席でトラブルを起こした件………それが関係している話の可能性は?」
そしてイアンに尋ねられたロイドは考え込みながら頷き、セティは自分の推測を言ったが
「ううん………どうやら大した話ではなかったみたいだし………ルバーチェの対立相手が彼女を脅す理由にはならないわ。」
エリィは首を横に振って答えた後、真剣な表情で言った。
「だな………となると、脅迫状の”銀”ってのは全くの別人って考えた方がいいのかね?」
「いや………これだけ符号が揃っているんだ。全く関係がないと切り捨てるのは早計だろう。―――なあ、みんな。さっきの今で何だけど………一度、”黒月(ヘイユエ)”も訪ねてみないか?」
そしてランディの話を聞いたロイドは答えた後、意外な提案をした。
「ええっ!?」
「おいおい……またしてもいきなりだな。」
「考えてもみてくれ。あの”ルバーチェ”に警戒されているほどの勢力だ。そんな相手がこの街に進出して裏社会の覇権を奪おうとしている………場合によっては、ルバーチェより危険な組織かもしれない。」
驚いているエリィ達にロイドは説明し
「それは………」
「……なるほど。これを機会に確かめるわけですね。」
「けど、いきなり訪ねても大丈夫かな~?さっきのルバーチェと違って相手の事が全然わからないし。」
ロイドの話を聞いたエリィは考え込み、ティオは納得した様子で頷き、シャマーラは首を傾げていた。
「ふむ………”黒月貿易公司”の支社長だが実はこの前、会ったばかりでね。」
するとその時イアンが意外な事を口にし
「え……!?」
「本当ですか……!?」
イアンの言葉を聞いたロイドとエリィは仲間達と共に驚いた。
「クロスベルでの商取引について法的に問題ないか監査を依頼してきたんだ。違法なところは無かったから結局、引き受ける事になったが………その時に、その支社長と会ったんだ。」
「そ、そうだったんですか……」
「……その……どういった人物でしたか?」
「ふむ……一言で言うと『キレ者』だね。まだ若いのに、飄々とした言動で相手を絡め取っていくというか……とにかく一筋縄ではいかない頭脳の持ち主だと感じさせられたよ。」
「頭脳派、ですか。」
「なかなか厄介そうな相手だな。そんなキレ者にわざわざ面会を申し込むのか?いっそここはルファディエル姐さんに任せてみたらどうだ?同じ頭脳派同士、対抗できるかもしれねぇし。」
イアンの話を聞いたティオは呟き、ランディは疲れた表情で溜息を吐いた後提案し
「いや……難しいかもしれないからと言って、ルファ姉を頼りにするのは間違っているよ。それにせっかくの口実もある事だしね。どうかな?」
ランディの提案を聞いたロイドは首を横に振った後、仲間達に尋ねた。
「ハッ……面白そうじゃねぇか。」
「わたしも……少し興味があります。」
「私も”ルバーチェ”についてはある程度は知識があるけど”黒月”はほとんど知らないから……確かにいい機会かもしれないわ。」
「決まりだな。……っと、そうだ。先生、ちなみに確認しておきたいのですけど、”ラギール商会”に”銀”に関する心当たりはありませんか?」
ランディやティオ、エリィの様子を見たロイドはイアンに尋ね
「”ラギール商会”で”銀”に関する事か…………う~む、さすがにそれはありえないとは思うが……」
尋ねられたイアンは考え込み
(ま、まさか……)
(………エリザベッタさんの事……でしょうね。)
(あはは~………あの人の髪の色って、見事な銀色だもんね……)
話を聞いていたセティ、エリナ、シャマーラはそれぞれ冷や汗をかいていた。
「何か心当たりがあるのですか?」
一方セティ達の様子に気付いていないエリィはイアンに尋ねた。
「ああ。……実は”ラギール商会”の店長にもクロスベルでの商取引について法的に問題ないか監査を依頼してきてね……そちらも違法なところは無かったから、引き受けたんだが……その時にいた売り子の髪の色が見事な銀髪だったんだよ。」
「!それは………」
「……どうやら”ラギール商会”も訪ねる必要がありそうですね……」
そしてイアンの話を聞いたロイドは表情を厳しくし、ティオは真剣な表情で呟いた。
「ちなみに”ラギール商会”の方の支店長にも会ったんスか?」
「ああ。……話にあった通りの組織の支店長とはとても思えない人物だったよ、”彼女”は。」
「”彼女”……?」
「ひょっとして女性の方なんですか?」
イアンの説明を聞いたロイドは不思議そうな表情をし、エリィは意外そうな表情で尋ねた。
「ああ。………あくまで私が感じた事になるが……彼女を一言で表すなら”良い人”としか感じられなかったな。」
「……とても裏組織の支店長とは思えない印象ですね……」
「………―――イアン先生、お話ありがとうございました。これで何とか捜査を続けることが出来そうです。」
「そうか……ふふ、そうしていると少しガイ君の事を思い出すな。」
「……あ……」
「相手は一応、真っ当な貿易会社と一般の店舗を装ってはいる。その意味で、訪ねるだけであればそこまで危険はないだろうが……だが、彼らの本体は巨大な勢力を誇る犯罪組織と未だ全貌が見えない謎の組織だ。くれぐれも気を付けたまえ。」
「はい……!」
「ご忠告、感謝します。」
その後法律事務所を後にしたロイド達は最初に”ラギール商会”を訪ねる為に歓楽街にある”ラギール商会”の店舗に向かった………
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第526話