No.59211

真・恋姫†無双 魏END 外伝第3章 前編

南風さん

勢いで書き続けて第3章、しかも前編となってしましました。作品投稿が遅くなった事といい、申し訳ありません。また応援メッセージやコメントをくださった方々に感謝しています。これからも感想をどんどん待っています。いつもどうり、キャラ崩壊や誤字・脱字がみられると思いますが、よろしくお願いします。

2009-02-20 12:41:06 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:22634   閲覧ユーザー数:14898

真・恋姫†無双 魏END 外伝第3章 前編

~永遠など何処にもなく~

 

 

 

「姉者・・・・・。」

 

 

 

誰もが驚いた。

 

華琳を最も愛し、

 

華琳に忠義を尽くし、

 

華琳の側近中の側近、

 

自他共に認める魏の中柱。

 

そこにいる誰もがはじめて目の当たりにした、

 

夏候元譲・・・春蘭が華琳に反した瞬間を・・・・・。

 

 

 

「その意味が、どういうことかわからない夏候元譲ではないわね?」

「はい。」

「では、城に戻ってからその頸頂くとしましょう。」

華琳と春蘭の会話は、まるで茶会の一時のように穏やかに進む。

「お待ちください華琳様!!」

「あら、どうしたの?秋蘭。」

普段、秋蘭は表情を感情を表には出さない。

しかし今回は、戸惑いと驚きを出せずにはいられなかった。

「姉者、考えを改めてくれ!!」

「どうしてだ?」

「今ならまだ華琳様もお許しに―――「無理ね。」―――っ!!」

「秋蘭。春蘭は、我が命令に背いたの。罪には罰が必要、それくらい分かるでしょ?」

「ですが!!」

「黙りなさい!!二度、同じ事を言うつもりはなくてよ?」

「・・・・・・。」

 

ギリッ!! 歯を食いしばり、口からはわずかに血が滲む。

(私は・・・・私は・・・・・・こんなにも無力なのか・・・・・・)

拳を握り、体を震わせ、秋蘭は己の無力さに頭を垂れる。

(・・・・・・一刀。)

 

「華琳様。」

「何かしら春蘭。今さら釈明を聞く気はないわよ。」

「華琳様は、忘れたのですか?」

「えぇ。」

「北郷の思いもですか?」

「そうね。」

 

 

「ならば、この頸を渡すわけにはいきません。」

「なんですって?」

「我が身、我が命は華琳様に捧げました。しかし、今の華琳様には渡しません。」

「答えになってないのだけれども。」

 

「あやつは、武の腕もなく・・・・・知略は、まぁそこそこでした。それでも、北郷・・・・・一刀は、誰よりも優しく違う強さがありました。華琳様とは違う人をひきつける何かを持っていました。」

春蘭は、言葉を繋いでいった。自分の思う限りを華琳に伝えるために。

「だから、私は一刀を認めました。華琳様、秋蘭の次に・・・・・。それを忘れるなど私にはできません!!ならば、一刀が戻ってくるまで、あやつを思いこれからを過ごしていきたいのです!!」

全てを出し切った春蘭の目には大粒の涙が溢れんばかりになっていた。

 

 

(まったくこの子は本当に素直じゃないんだから)

華琳の口元が僅かに緩む。

誰もその事には気付かなかった。

 

 

「あはははははは、惇ちゃんえぇなぁ~女の子しとるやん!!」

霞が突拍子もなく笑い声をあげ、春蘭の首に腕をまわす。

「こ、こらっ霞、は・・・離れろ。」

「いやや~も~ん。離れへんよ。だって春蘭は大切なことを気付かせてくれた。」

笑顔が真面目な表情にかわり、春蘭も抗うのをやめる。

「うちが一刀のこと好きやってこと。一刀が天の国に逝って、もう戻ってこないと言われた。その事に頭に血が上ってしまっんやな。裏切られたと思ってしもうてん。けど、春蘭はその言葉を信じんかった。一刀の事を信じたんやって。」

「せやから、うちも一刀の事を信じる。一刀のこと好きやから。一刀が、どんな風に天に逝ったかは知らんけど、絶対戻ってくる。」

「一刀はうちを女の子って言ってくれた。好きって言ってくれた。雰囲気や女の喜びを教えてくれた。それに約束したんや、戦いが終わったら2人で旅に行こうなぁって。だから、一刀は戻ってくる!!うちが惚れた男は、約束を破るような男じゃない!!」

 

 

「そーですねー。お兄さんはそういう人ではないですねー。」

次に口を開いたのは風だった。

「ですが、風達にこんな思いをさせたので、戻ってきたら罰をあたえなくてはいけませんね。」

「まったく、女を泣かすなんてぇ男の風上にもおけないやつだ。」

うっすらと涙を瞳に溜めながら風が霞と春蘭のもとに歩み寄っていく。だが、顔には笑みを浮かべていた。

「せやな、いいこといった!!」

「まったくだ。あやつには罰が必要だ!」

寄ってきた風とホウケイの頬をつつく霞。

本来の自分を取り戻し、何かを誓うように拳を握る春蘭。

「いえいえ、華琳様も先ほどおっしゃいましたしねー。」

「くすぐったいぜぇ、霞の姉さん。」

 

 

「それでは、戻って来た時の罰はどうしましょうか稟ちゃん?」

「な!?なぜ私に話を振るんですか?」

突然の事に声が裏返る。

「それを風に聞くのですか?稟ちゃんは素直ではないのです。」

ニヤッとした顔でこちらを見つめてくる風に稟は溜息を吐く。

「まったく私達の主は華琳様なのですが・・・・・・ですが、罰ですか・・・・・・本来なら斬首か火やぶりが妥当な罰ですが、それでは本当に一刀殿が死んでしまいますからね。ここは、食事や買物など一人一日、一刀殿を好きにするというのはどうでしょう?」

頬を赤らめ、照れ隠しにクイッと眼鏡をあげる。

「おぉ、名案ですね稟ちゃん。お兄さんの事もよく考えてます。」

その発言に稟の頬はさらに赤くなる。

風は知っていた、華琳の発言を聞いた後、稟が必死に堪えていたのを。

(フフッ・・・・・本当に稟ちゃんは素直ではないのです。)

「風、何か言いたそうな顔をしていますが?」

「ぐぅ~」

「寝るな!」

「おぉ?」

その瞬間、風と稟の間に笑顔がこぼれる。

霞と春蘭も声を出して笑う。

 

 

「その話、私も噛ませてもらおう。」

「おぉ、えぇでぇ。秋蘭もまざり~。」

秋蘭は初め驚いていた。姉の言動にも、次の霞の言動にも。

だが、それは初めだけで今は嬉しかった。その喜びがどこから出てくるのか秋蘭自身わからない。だが、只々自身の行動がおかしかった。姉を止めた自分、自身の無力さを嘆いた自分、それがとても愚かで笑えた。そして何より今の現状に満足し、華琳に対して反している自分が。しかし胸の中には喜び嬉しさがいっぱいだった。

「うむ。しかし、一日というのは短い気がするが。」

「それは私達だけならいざ知らず、あとまだ六人もいますからね。」

「それはそうか。」

「ですねー」

秋蘭・稟・風はわずかに笑みを浮かべながら見つめていた。

霞は満面の笑顔でおいでおいでと手を振り、春蘭は頬を赤らめながら。

 

 

見つめている先には三羽烏、季衣、琉々、桂花がいた。

三羽烏は共に俯いたまま。季衣、琉々は涙で顔がぐしゃぐしゃだった。

桂花はいつもどうりと言っていいのか、ムスッとしている。

 

 

「兄ちゃんは、本当に戻ってくるの?」

そう質問を投げかけたのは季衣。

春蘭達はその質問に沈黙してしまう。秋蘭を除いて。

 

秋蘭は季衣と琉々に向かって歩き出し、前に立つ。

そして二人の頭を撫でた。

「すまんが、それはわからん。」

 

「「・・・・・・。」」

 

「だが、お前達が兄と呼んだ男は、霞が言ったとおり約束をやぶったりする薄情な男だったか?」

「ち、違います。」

「兄ちゃんは、いつも優しくしてくました。」

今度は二人の肩に手を置き、秋蘭は腰をおとし二人の顔を見つめる。

「うむ。いつ戻ってくるとは言えないが、皆で戻ってくるのを信じて待ってようではないか。北郷のことを信じてな?」

二人は頷くと、秋蘭の肩に顔をうずめて、

「「・・・・・あ、わあああぁぁぁぁぁ・・・・・・」」

大声で泣き出した。

二人は我慢していた、本当は最初から大声で泣きたかった。それが出来なかったのは、華琳の前であること、そして兄と呼んでいた北郷一刀に霞と同じで裏切られたと思っていたからだった。

 

「北郷のやつ、季衣と琉々をこんなにも泣かせて、戻ってきたら剣の錆にしてくれる!!」

「気持ちはわかるけど、そんなんしたらせっかく罰を考えた意味がなくなってしまうやん。」

「まったくです。切るならその後にしてください。」

「そうか!そうすればいいのだな!」

「姉者、そんなことしたらまた季衣と琉々が泣いてしまうぞ。」

「「春蘭様ぁ~~~。」」

「す、すまん。」

 

 

「ではでは、桂花ちゃんはいいとして、あとはあなた達ですけど?」

今度は風が三羽烏の前に立つ。

「ちょっと待って、私はいいってどういうことよ?」

「そのままの意味ですよ。」

「なんやぁ~桂花もはようこっち来ればええやん。」

「フン!だ、誰が行くもんですか!」

桂花はそっぽを向いてしまう。

「まったく素直ではないですね。」

「まったくだ。」

「だが姉者も稟も人の事は言えんぞ。」

「っう」

「そ、そんなことは無いですよ。」

「そういう秋蘭もなぁ~。」

「フフッ、それもそうか。」

 

 

「で、どうしますか?」

「私達は、隊長に身も心も捧げました。命をかける覚悟はもうできています。」

「うん。」

「せやな。」

凪の発言をきっかけに真桜と沙和も頷く。

「ではでは、これで皆さんの了承を得ましたのでー。」

「これで決まりやな。」

「うむ。」

「ん?なんのことだ?」

「きっかけをつくったあなたがそれでどうするんですか?」

 

いつもの春蘭に誰もが溜息をもらす。

 

「ちょっと、私はいれないでよね!?」

そっぽ向いていた桂花が慌てて口を挟む。

「仕方がない、私が変わりにやろう。」

「仕方ないですねー。」

「まったく、本当は発案者がやってもらわないといけないのですが。」

「そういうな、姉者はもう頑張った。」

「?????」

 

「シカト!?」

 

「まぁまぁ桂花様、ここは穏便に~。」

「そうなのー。」

「暫くの間、お静かに。」

そう言うと、桂花を囲み真桜が口を凪と沙和が腕を足を抑える。

 

「○×△○□!?」

 

 

 

 

 

「華琳様。」

「何かしら?」

「今まで、黙って見届けてくれて感謝いたします。」

「何のことかしらね。」

「我らの気持ちも姉者と変わりません。」

「そう・・・・・・つまり?」

 

 

 

「我らも北郷一刀を忘れることはできません。戻ってくると信じて、あやつの思いとともにこれからを過ごしていきたいと思います。」

 

 

 

第3章 前編 完

 


 
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