その男はデカかった。
体躯がでかい、上にも横にも。巨躯である。
それに応じて、彼が着ている鎧も相応にでかい。それで彼の大きさに拍車がかかる。
武器がでかい。
剣。明らかに人が両手で使うにも不釣り合いなほどでかい剣。
そして盾。その巨躯をほとんど隠してしまうほどにでかい盾。しかも金属製である。
剣と盾。この二つが一人の元にあるという事は、それぞれを片手で扱うということが推測される。
明らかに常人の膂力ではない。
そして声がでかい。
野太く、大きい。聞くだけで、底から震えるような声。
彼が叫べば、地が胎動するが如く震えあがるだろう声。
そして彼は、そのでかい声で「いびき」をかいていた。
胡坐をかき、彼は寝ているのである。
「おい、お主」
彼はその大きい声を惜しみなく使い、いびきをかいていた。
「起きぬか!」
自分のいびきで起きてはしまわないかという音量で、彼はいびきをかいていた。
「厳顔様、ここは私にお任せください」
地に浮く砂が、微かに振動するのを見て取れる音量で、彼はいびきをかいていた。
「はああああああああああああああああああああ!!」
「ヌオッ!?」
襲い掛かる大鉄塊を、男は座ったままだが、とっさにそのでかい盾で防いだ。
轟音である。銅鑼を打ち鳴らしても聞くことがないような轟音だった。
「なっ!?」
「誰だ?・・・ガル・ヴィンランド・・・ではないな」
男は大鉄塊を弾き返した。そしてゆっくりと立ち上がる。その姿だけでもまさしく威容だった。
「あやつのは、こんなものではあるまい」
彼は大剣を肩に担いだ。鎧とかち合う音が、怖いくらいに重い。
「しかし今の一撃を出したのがこんな小娘とは。やるではないかオヌシ」
彼は笑った。豪快の一言に尽きる笑い方だ。
釣られてしまうほど気持ちのいい笑い方である。
「当てるつもりはなかった」
「分かっておる。ワシが過剰に反応しただけだ」
男が起きたことで、小娘と呼ばれた女性は武器を降ろした。しかし、その小娘の頭部に拳という武器が振り下ろされたのはすぐのことだった。
「この馬鹿者が! 寝ている相手に武器を振り下ろすとは、貴様はそれでも武人か!」
その小娘が口を開けば、またすぐに拳が振り下ろされた。
「失礼した、殿方よ。まずは自己紹介をしよう。儂の名は厳顔。この小娘は魏延。改めて非礼を詫びる」
「ほう、聞かぬ名だな。東の者か? まあよい。我が名はビヨール。オーラントの双剣の一」
かくして、王の双剣ビヨールは異国の戦乱に巻き込まれることになる。
あとがきなるもの
デモンズソウルに真名の存在があったらきっと知られただけで存在とか意志を奪われるとかなんだろうなーっていうフロム脳。二郎刀です。
クロスそんな好きじゃないけど書いてしまいました。
きっとビヨールとガル・ヴィンランドは接点がないだろうけどこの話ではあったっていう設定で行きました。
他にもいろいろな妄想がががが。自分に合う軍馬がなくて愚痴を言うビヨールとか。結局馬が潰れて仕方なく自分の脚で進むビヨールとか。「どこから来たのだ?」「北から」とか。
その内の一つ。
ちょっと戦闘とかさせてみたかった。
一閃ではなく、剛断である。
全ての一撃は必殺の威力。
人の身では、不釣り合いなほどの大剣が薙がれる。
構えられた盾など意味は無く、また介されない。
振り払われた後は、まるで引き千切られたように身体が両断されているのである。
一振りで三人は斬り飛んだ。
すでに残るは五人。一人で踏み込んできたと思ったら、すでにこうなっていた。
「我が名はビヨール。オーラントの双剣の一。降伏せい賊共め。命だけは取らんでやる。逃げれば殺すぞ」
ビヨールは大声で言い放ち、柱の一本を叩き斬った。
最初は全員で襲い掛かったはずだった。
それが、たった一人に物量戦で負けたのである。
賊の武器が地に落ちる。
しかし一人が走り出した。
「馬鹿者め」
弩が放たれ、すぐさま背に突き刺さった。
「他に逃げたい者はいるか」
そう言いながらビヨールは片手で軽々と弩を引いた。
本来ならば、弩は引くのに相当な力を用いる。
両手で引いたり、地につけ足で踏んで引く方法もある位である。
それもまた、ビヨールの膂力の賜物だった。
中途半端に終わりますがこんな感じ。
~~はいるか!? って聞くと、ここにいるぞ! って言いたくなりますね。
勢いで書いたけど俺程度の発想で面白いと思ってくれる人はいるのだろうか。後で冷静になっちゃうとつまんなくね? って思ってしまいます。まあ独りよがりにぼちぼちやって行きますが。
さて今回の話はどうでしたでしょうか? 少しでも楽しんで頂けたのなら幸いです。
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やばい。
デモンズのビヨールが恋姫世界に召喚されて無双する話とか見てみたい。
とか思ってたらこんな話が出来ていたんだぜ。
あ、ありのまま(ry
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