No.591184

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 513

soranoさん

第513話

2013-06-25 22:19:57 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1142   閲覧ユーザー数:1066

~夕方・ウルスラ病院・屋上~

 

「”久しぶり”………でいいんですか?”ティナ”さん。」

屋上に到着したティオは真剣な表情でセシルを見つめて尋ね

「う~ん………”私”は一応”初めまして”になるかな?”私”は”ティナ・パリエ”ではなく、”セシル・パリエ・ノイエス”なのだから。」

尋ねられたセシルは考え込んだ後、目を閉じて集中し、エステルやプリネのように髪や瞳の色を変えて、目を開いてティオに微笑んだ。

「!!その髪と瞳の色はティナさんと同じ………!………エステルさん達のようにセシルさんも生まれ変わる前の方の髪や瞳を変えられるようになったんですか…………そう言えばさっき治癒魔術は最近使えるような事を言っていましたけど……もしかして”影の国”の件が終わってからですか?」

かつて”影の国”で出会ったリウイの側室の一人である人物――――ティナと同じ髪と瞳の色の姿を見たティオは驚いた後、真剣な表情で尋ねた。

「ええ。”過去の私”が”影の国”を脱出して現世に戻った瞬間、”今の私”の記憶から”過去の私”の記憶が全て甦ってね………その影響で治癒魔術も使えるようになったんだけど………フフ、あの時は驚いたわよ。まさか私が生まれ変わった人だったなんて………」

尋ねられたセシルは髪や瞳の色を元に戻して答えた後、苦笑した。

「………まあ、それは仕方ないかと。リタさんやナベリウスさんから転生の理(ことわり)を教えて貰っていなければ、普通は理解できない事ですし。………………あれ?そう言えばさっき”セシル・パリエ・ノイエス”って言ってましたけど………」

「ええ。リウイさんには第一側室にしてもらって、メンフィル皇家からは”パリエ”の名を頂いたの。………フフ、王族のシルフィさんや元からリウイさんの側室でいるペテレーネさん達を差し置いて、私が第一側室だなんて、恐れ多いのだけどね。」

「…………やっぱりティナさんの影響でリウイ陛下を好きになったんですか?”影の国”でもティナさん、生まれ変わった自分が自分の記憶を思い出した時、リウイ陛下の元へ行くような事を言ってましたし。」

苦笑しているセシルをティオは見つめながら尋ねた。

「フフ、いくらなんでもそれだけの理由で好きにならないわ。こう見えても以前は婚約者がいた身ですから。」

「…………………………ガイさんですか…………」

そして微笑みながら答えたセシルの言葉を聞いたティオは複雑そうな表情で呟いた。

「あら?ティオちゃん、ガイさんの事を知っているの?……………そういえば生前のガイさんが言っていたレミフェリアへ両親の元へ連れて行った女の子って………もしかしてティオちゃん?」

「………はい…………」

「そう………フフ、”縁”というのは不思議ね………もしかしたら”ガイ・バニングス”という人物の知り合い同士という共通点を持っていたから”影の国”に”過去の私”とティオちゃんも巻き込まれたかもしれないわね。」

「…………………」

微笑みながら言ったセシルの言葉を聞いたティオは複雑そうな表情で黙り込んだ。

「話を戻すわね?私があの人を……リウイさんを好きになった理由はね…………一言で言えば一目惚れね。」

「一目惚れ………ですか?」

「ええ……”過去の私”の記憶が戻った後休暇を使って、メンフィル大使館に行って名乗ったらリウイさん達の元に通してくれてね………その時に対面したのだけど………あの人を見た瞬間、心が鷲掴みされて………リウイさんと接してリウイさんの事を知れば、知るほど夢中に好きになって…………その後あの人に抱かれた時に思ったの………”幸せ”だって………それにね……抱いてくれた後、言ってくれたのよ。…………側室にならないかってね。」

ティオの言葉に頷いたセシルは懐かしそうな表情で答えた後、頬を赤らめて幸せそうな表情で答えた。

「その申し出を受けて、今に到る………という訳ですか。(人を前にして堂々と”抱かれた”なんて言葉を口にするなんて、大胆な人ですね………)ちなみにイリーナ皇妃はその事は………」

「勿論、イリーナさんも知っているし、祝福もしてくれたわ。………これも”過去の私”のお蔭ね。そうでないと正妃であるイリーナさんに認めて貰うのに苦労したでしょう?………イリーナさんはとても嫉妬深い方だし。」

「………まあ、あれはどう考えてもあんなに綺麗でスタイルが良くて、優しいイリーナ皇妃がいながら、次々と複数の女性達に手を出しているリウイ陛下が悪いと思いますが。”影の国”の時だって出会ったばかりのシルフィエッタ姫を短期間で惚れさせて自分の女にしちゃいましたし。…………………まあ、それはともかく………とりあえず、おめでとうございます。女タラシとはいえ、男性としての魅力を全て持っているあの人が相手なら超お買い得ですから、将来も安定している上、捨てられる事は有り得ない事が約束されていますしね。」

「フフ、ありがとう。」

静かな笑みを浮かべて言ったティオの言葉を聞いたセシルは微笑んだ。

「………あれ?でも、それならどうしてメンフィル大使館やメンフィル帝国の城に住まずにここで看護師をしているのですか?」

そしてある事に気付いたティオは疑問に思った事を尋ねた。

「ロイドが私達から巣立つ所を見るまでクロスベルを離れる気はないわ。一人前の大人になって、可愛いお嫁さんを迎えたその時があの子が私達――――私とガイさんから巣立つ時だもの。フフ、リウイさんにはその時が来るまで待っていてほしいという私の我儘を聞いて貰って、申し訳ないのだけどね………でも、これだけは譲れないわ。」

「そうだったんですか………………あ。それなら何故、”癒しの聖女”をウルスラ病院に呼んで、シズクさんの眼を治せないんですか?”癒しの聖女”はティナさん――――セシルさんにとって娘なのですから、その関係で呼べるのでは……?それに”パリエ”の名を貰っているという事は”癒しの聖女”もセシルさんの事、ご存知なのですよね?」

「ええ。勿論、私の事はティアも知っているわ………最も通信で話した事しかないから、直接会って話した事はないけどね。あの娘はとても忙しい娘だし………それにあの娘は多くの傷ついた人達を癒すために世界中を周っているし………母親の我儘で娘の仕事を邪魔するわけにはいかないでしょう?」

「…………なるほど。」

セシルの説明を聞いたティオが納得した様子で頷いたその時、ティオのエニグマが鳴りはじめ、その事に気付いたティオはエニグマの通信ボタンを押して耳に当てた。

「―――はい、特務支援課、ティオ・プラトーです。」

「ティオか?まだ、用事は終わらないのか?」

「ロイドさん。………いえ、今ちょうど終わった所なのですぐに向かいます。」

「そうか。俺達は今バス停で次のバスを待っているからできるだけ急いでこっちに向かってくれないか?」

「………了解です。すぐに向かいます。」

ロイドとの通信を終えたティオはエニグマの位置を元に戻した。

「………聞きたい事も聞けたので私はこれで失礼します。………これからもよろしくお願いします。」

「ええ。あ、もしよかったらロイドと恋人になることも考えてね?とっても可愛い男の子なんだから♪」

「…………一応、考えてはおきます………―――ラグタス。」

そしてセシルに微笑まれたティオは呆れた表情で溜息を吐いた後、ラグタスを召喚し

「ラグタス。手間を取らせて申し訳ないのですが、病院の外にあるバス停まで私を乗せて飛んで行ってもらえませんか?」

「わかった。」

「………それでは今日はこれで失礼します。」

「またね、ティオちゃん。」

ラグタスの肩に乗せてもらい、ティオを肩に乗せたラグタスはセシルに見送られながら飛行してバス停に向かった。

 

~ウルスラ病院・外~

 

「ティ、ティオ!?」

「おー、これはまた驚きの登場だな………」

上から降りて来た肩に乗せたラグタスに気付いたロイドは驚き、ランディは感心した様子でラグタスを見つめていた。

「………お待たせしました。ご苦労様です、ラグタス。」

ラグタスから降りたティオは自分の身体に戻し

「用事って結局何だったの?」

エリィはティオに尋ねた。

「………知り合いに挨拶をするのを忘れていまして。その人との話がはずんで、予定より遅くなりました。………すみません。」

「そういう事ならいいさ。………けど、知り合いって誰なんだ?俺とルファ姉みたいにここで働いている人の知り合いなのか?」

「ええ。機会があればロイドさんがセシルさんを紹介したみたいに私も紹介します。」

(ティオすけの知り合いもナースで美人でありますように………!)

「あのな………」

ティオの説明を聞き、必死の表情で小声で呟いたランディの言葉を聞いたロイドが呆れたその時、バスが近づいてバス停に停まり、ロイド達はバスに乗った。

 

~ウルスラ間道~

 

「………………」

「綺麗な夕焼けね………」

「はい………何だか目に痛いくらいです。」

バスの窓から外の景色をロイドとエリィ、ティオはそれぞれ見つめていた。

「は~、しかし導力車ってのはずいぶんと楽チンだよなぁ。支援課(ウチ)でも専用の車が使えりゃ良かったんだが。」

「まあ、無理だろうな。他の捜査課では車が使われているみたいだけど。」

ランディが呟いた言葉を聞いたロイドは溜息を吐いた後答え

「………確か捜査一課では、捜査員一人一人に専用車が用意されているはずです。」

「そ、そうなのか!?」

「それはさすがに優遇しすぎだと思うけど……」

「やれやれ………こういう時に日陰者は辛いねぇ。」

補足するように説明したティオの話を聞いたロイドは驚き、エリィとランディは疲れた表情で溜息を吐いた。

「………今後市外で活動する事を考えたら車は必要かもしれないわね………なんなら私が支援課に車を1台、用意してあげましょうか?」

一方ルファディエルは考え込んだ後ロイド達を見回して尋ね

「へっ………!?」

「おお、マジっすか!?さすがはルファディエル姐さん!」

「可能なら是非お願いしたい所ですね。」

「さ、さすがにそれはいくらルファディエルさんでも無理だと思うのですが………」

ルファディエルの話を聞いたロイドは驚き、ランディは驚いた後嬉しそうな表情をし、ティオは静かな表情で頷き、エリィは苦笑しながら言ったが

「あら、そんなの簡単よ。上層部の公にされたら困る情報はいくつか手に入れているから、その事を黙る事を交換条件に車を用意してもらうのもいいし、市民の為に駆け回っている支援課だけ他の捜査課と違って車を用意されていないという事実をマスコミに話したら、すぐに用意してくれると思うわよ?」

ルファディエルは笑顔でとんでもない事を答え、それを聞いたロイド達全員は冷や汗をたらし

「そ、そこまでしてまで車は欲しくありませんよ。」

(ルファディエル様らしい策だな………)

エリィは表情を引き攣らせながら答え、それを聞いていたメヒーシャは静かに目を伏せ

「………ルファディエルさんの恐ろしさを改めて思い知った瞬間ですね………」

(フッ………奴の恐ろしさの真髄はこんなものではないぞ………)

ティオは疲れた表情で溜息を吐き、ラグタスは口元に笑みを浮かべ

「何を言う!そこがルファディエル姐さんの素敵な所だろう!?」

ランディは真剣な表情でロイド達を見回して言い

「頼むからこれ以上胃が痛くなるような事は止めてくれ!………というかどうやって上層部の弱みを知ったんだよ………」

ロイドは疲れた表情で言った後、呆れた表情でルファディエルを見つめて呟いたその時

「あら、知りたい?」

ルファディエルは笑顔で尋ねて来た。

「い、いえ、結構です。」

「知ったら最後、わたし達も色々と戻れなくなる気がしますし………」

「いや~………そこはさすがに遠慮しまッス。それはルファディエル姐さんだけの特権だし………」

ルファディエルの笑顔から何か嫌な予感を感じ取り、冷や汗をかいたエリィ達はそれぞれ断り

「ハア…………今日の疲れが今全て、来たような気がする……………」

ロイドは疲れた表情で溜息を吐いた。そしてバスはクロスベル市に向かって行った。すると

「……………………」

東クロスベル街道でも現れた白い狼が草村から現れ、去って行くバスを見つめた後、どこかに去って行った。

 

その夜……………支援課に戻ったロイド達はその日の分の調書を纏め始めた。新たに判明した事実や証言、さらに不審点や現時点での推測をなどをわかりやすくまとめているうちに………いつの間にか日付が変わり、心身共に疲れきったロイド達はそれぞれの部屋に戻って休んだ…………

 

 

 

今回の話で驚いたと思いますがセシルは既にリウイの側室入りしている上、名前も微妙に変わっています!それとセシルのリウイの呼び方は「リウイさん」にしました。その方が新鮮な呼び方でしたので。そして話の最後ではまたもやルファ姉の恐ろしさの一端が出ました(大汗)………感想お待ちしております。


 
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