~~???視点~~
「……ん…………」
「……ココ………どこ?」
最初に
見知らぬ部屋の見知らぬベッドに寝かされとった
「……確か
自分の一番新しい記憶を振り返る。
…うん、確かに
「(それから…知らん人が
……そうや、そこで感じたんや。命の危険を。
そして
「(そこから先の記憶があらへん。
思い出そうとするけど思い出せない。家は?自分の力に巻き込まれたあの不審者は?
「(……どうでもええか。
コンコン
…と、不意に部屋の扉がノックされる。
その後、部屋に入って来たのは白衣を着た女性。首からは聴診器をぶら下げている。
…お医者さん?
「あら?起きてたのね。おはよう……というよりもお昼前だからこんにちは、かな?」
ニッコリと微笑んで言うお医者さん。お医者さんがおるっちゅう事は
「お嬢ちゃんは昨日、ここの病院に運ばれたんだけど、運ばれて来る前の事覚えてる?」
「……………………」(フルフル)
お医者さんの問いに
「そう……まあその事に関しては貴女に聞きたい事があるっていう子が来てるからその子に聞いてくれる?」
「
誰やろ?
そう思いながらもお医者さんに問診され、それに淡々と答える。
「……はい、これで問診はおしまい」
「じゃあ、さっき言った君に会って聞きたい事があるっていう子に連絡してここに来て貰うからね」
「……はい」
そう言って部屋を出るお医者さん。
再び1人になった
そんな風景をただボーっと眺めて少し時間が経つと
コンコン
と、さっきお医者さんが来た時と同じ様に扉をノックする音が聞こえた。
お医者さんが言ってた人が来たんやろなぁ。
続いて扉が開き、部屋に入って来たのはさっきのお医者さんみたいな大人の人と違って私より少し年上の男の人やった。右手にはビニール袋が握られている。
何だかやけに疲れとる様子やけど何かあったんかなぁ?
これが
~~???視点終了~~
俺は保護した女の子に昨日の一件で事情聴取するために部屋を訪れようとしたが先に彼女を診てくれた医者の先生の元へ行く。そして先生に
『彼女に少し問診しないといけないから私が呼びに来るまで待っててくれる?』
と言われた。
俺は先生の指示に従い、『じゃあ先にお昼済ませて来ます。終わったら連絡下さい』と言って先生が頷いたのを確認してから俺は病院内の食堂に向かう。
食堂は病院の最上階にあるため、エレベーターを使う必要がある。
「(エレベーターのある場所まで戻るのはちょいと面倒だなぁ)」
女の子が入院した病室は病院の奥の方にあるためエレベーターのあるホールまで戻るのには少しばかり歩かなければならない。
で、来た道を戻る様に俺はホールに向かっているのだが
「や、止めてくれ!!」
「ん?」
とある病室の前を通りかかった時、部屋の中から誰かが叫ぶように声を上げた。病室の扉は少し隙間が開いている。
何だろう?
何か嫌な感じがした俺は失礼だと思いながらも僅かに開いている扉の隙間から中を覗く。
そこには抱えている赤ちゃんの首筋に刃物を当てている男と、男の護衛をしてるっぽい黒服の男が3人。
患者が使用するベッドには若い女性、その側には若い男性が必死の形相を浮かべていた。おそらくさっき大声を上げたのはこの人だ。
「(うーん…)」
これ、どう考えても『若い男性と女性=赤ちゃんの両親』で『男と黒服の連中=悪人』って図式だよな?
「フフフ…残念だが貴様の言う事は聞けんなぁ。お前が告発したせいで私は会社を追い出され、今では指名手配犯になってしまったのだからな」
「それは貴方の自業自得じゃないか!!会社の経費を横領してた貴方の!!」
「やかましい!!貴様が黙っておれば私はこんな目に遭わずに済んだのだ!!これまで得た地位や権力といった私にとって何物にも勝る大切なモノを一瞬で失うきっかけとなった貴様を許せるものか!!」
男の方は憤怒の表情を浮かべて若い男性に反論する。完全に逆恨みじゃねえか。
「だから私は貴様に対し復讐してやると誓った!!貴様の大切なモノを奪って絶望させてから殺してやるとな!!貴様の嫁が近々子を産む時期であろう事は調べがついていた!幸せの絶頂に至っている貴様を殺すには最高の機会だろう?」
今度は『ニヤァ』と邪悪な笑みを浮かべ、刃物を更に赤ちゃんに押し当てる。
「ぐっ!」
「貴様の嫁の実家は代々武術をやっている家系らしいが出産直後はろくに動けまい」
「止めて下さい!!その子には何の関係もありません!!」
男性が唇を噛み締め、女性はベッドの上から叫ぶ。
…これ以上黙って覗いてる必要も無いな。俺は
この場にいる誰もが俺の姿を視認出来ない状況で俺は男の目の前に立ち、思いきり股間を蹴り上げた。こんな赤ちゃんを人質にする様な外道に遠慮する必要は無い。
「っ!!?~~~~~~~~~~~~っっっっっ!!!!!!」
声にならない悲鳴を上げる男。赤ちゃんと手に持っている刃物を空中に放り投げ、両手で自分の股間を押さえる。
空中に放り出された赤ちゃんを俺は優しく受け止め、
「「お、お館様!!」」
「な、何だお前は!!?」
股間を押さえて蹲る男に慌てふためく黒服の男達。
俺はバインドで4人を縛ってから名乗る。
「時空管理局の長谷川勇紀陸曹だ。お前達を人質強要罪、殺人未遂の現行犯で逮捕する」
「なっ!?」
「か、管理局だと!?」
「~~~~~~~~~~~~っっっっっ!!!!!!」
驚く黒服達と未だに股間の痛みに悩まされているであろう男をよそに、俺は病院内の警備員に連絡を取り身柄を引き渡す。
警備員達が男達を連行していくその様を見届け、俺は赤ちゃんを奥さんの方に返す。赤ちゃんは今の騒ぎの中ずっと『すぅ…すぅ…』と静かに寝息を立てて眠っていた。
「この子は無事です。どうぞ」
「あ、ありがとう!!クリス、僕達の子は無事だよ!!」
「よかった。本当に…ありがとうございます!本当にありがとうございます!!」
赤ちゃんに怪我を負わす事無く救い出した事に感謝される俺。
「いえ、自分はこの病院に来ていたのは局員としての仕事があったからで、この病室の前を通たのも偶然ですから」
ホントただの偶然だ。
けど、赤ちゃんを救って貰えた両親側からすれば偶然とかは関係無いのだろう。涙を流してひたすら俺に頭を下げ感謝の意を示している。
感謝されるのは嬉しいけど、俺は早く腹ごしらえしたいので2人には申し訳ないがこの場を去るため『まだ仕事を終えていないので、これで失礼します』と、強引に会話を切り上げた。
「そうですね。時間を取らせて申し訳ありません。ほらリオ、貴女を救ってくれたお兄ちゃんにお礼を言いなさい」
「あー、あー」
いつの間に目覚めていたのか赤ちゃんは目をパチリと開けていた。小さな瞳には俺の顔が映っている。
赤ちゃんを一撫でしてから俺は軽く頭を下げ、病室を後にする。
病室を出た際、部屋のプレートに明示されていた患者の名前が目に映る。
『クリス・ウェズリー』
クリス・ウェズリーさんか。
可愛い赤ちゃんも産まれた事だし、末永く幸せな家庭を送ってもらいたいな。
俺は再び歩き始め、十数歩歩いてからピタリと足を止めた。病室内で男が言っていた言葉やさっきまでの会話を唐突に思い返す。
「(『代々武術をやっている家系』……赤ちゃんの名前が『リオ』……苗字が『ウェズリー』……)」
……何だろうね。このキーワードに該当する原作キャラが1人思い当たるんだが……。
「(同姓同名……だよな?)」
そう確信出来る自信が無かった俺だった………。
食堂に行く時間を大幅に取られた俺。このままだと先生の問診の方が先に終わる可能性が高い。あまり待たせる事になるといけないので目的地を変更し、食堂ではなく売店で何か買って済ませる事にした。
売店は1階にある小児科の近くにあった筈。
エレベーターで1階まで降りて売店に向かう途中、
「んん~?」
1人の女の子がフラフラとおぼつかない足取りで歩く後ろ姿が見えた。見た感じ、俺より年下で昨日助けた女の子と同年代ぐらいか?
「(危なっかしいなぁ)」
ていうか親か誰か付き人はいないのか?
見た所周囲にそれらしき人の姿は見えず、医者や看護師さんがいる訳でも無い。他の人は気付いたとしても見て見ぬフリだ。
「(誰でもいいから少しは気にしてやれよな…)」
その子はどうやら俺と同じで売店に向かう様だ。
『どうせ目的地は同じなら』と俺はその子の方に近寄る。
ただ丁度売店から出て来た3人組の客の内の1人に、ドンっとぶつかる。
「いてっ!?」
ぶつかったのはいかにも20代のチンピラっぽい男。他の2人も似た様なモンか。
「おいコラ!!テメエ何タケちゃんにぶつかってんだよ!!」
「も、申し訳ありません…」
「ゴメンで済んだら管理局はいらねえんだよ!!」
「ううっ、痛ぇ、痛ぇよ」
「見ろ!!タケちゃん今テメエとぶつかったせいで怪我しちまったじゃねえか!!」
「膝を押さえて……タケちゃん歩けなくて蹲ってるじゃねえか!!責任とって医療費だせよ!!」
「なっ!?た、確かにぶつかった私に非はありますが、それぐらいで歩けなくなる訳無いではありませんか!?」
「普通の奴等と同じにすんじゃねえよ!!タケちゃんはカルシウムが摂れない体質なんだよ!!」
どんな体質だよ…。
しかし女の子を庇ったりする人はいない。あくまで『自分は関係無いから』と言わんばかりに視線を逸らす。
当人達の口論はどんどん激しさを増していき
「このクソガキがぁ!!!」
男が振り上げた手を女の子に向かって振り下ろした所で俺は割って入る。
「そこまでにしときなよ」
パシイッ
「何いっ!!?」
男の拳を軽々と受け止め、そのまま掴んで離さないでおく。
「何だこのガキ!!」
「その女の子がぶつかったぐらいで膝を痛めるなんて事ないだろ」
「はあっ!!?何を根拠にそんな事言ってんだよ!!」
「「そうだそうだ!!!」」
いや、根拠も何も…
「そっちの人、もう立ってるじゃん」
「「「あ………」」」
蹲っていた奴も立って俺に抗議していた。
……コイツ等はアホだな。
「い、痛えぇぇっっ!!!」
再び膝を押さえて蹲るフリをする。
「い、今のはアレだ!!幻だ!!」
「そ、そうだ!!タケちゃんはずっと蹲ってたぞ!!」
必死に言い訳するチンピラ風の男達。アホくさ。
「はいはい、自演乙自演乙」
「自演だと!!?決めつけてんじゃねえええ!!!!」
別の男も俺に殴りかかろうとしてくる。短気な奴は嫌だねぇ。
とりあえずバインドで拘束する。
「なっ!?魔法だと!!?」
「少しはコチラの話を聞く耳を持ってくれんかね?」
そう言ってディスプレイを表示し、局員だと証明する。
「「「か、管理局員!!?」」」
「そう言う事。で、3人共ここは大人しく引き下がってくれるかな?素直に従うならこのまま見逃すけど、もしまだこの子にグダグダ言う様なら俺を殴ろうとした公務執行妨害、この子を殴ろうとした暴行未遂が君等に進呈される事になるんだよね」
「「「うっ……」」」
その言葉に顔を青褪める3人。そしてすぐに
「分かった。引き下がってやるよ」
1人が俺の要求を呑んだ事で他の2人も渋々ながら納得し、一応揉め事は解決した。
流石にこんな事で捕まるのは嫌だろうしな。
そのままゾロゾロと歩いて行くのを見送ってから今度は女の子の方に向き直る。
「大丈夫だった?」
「……………………」
???何かどっかで見た事ある様な子だな?誰かに似てる様な…。
…まあ、いいか。いずれ思い出すだろう。それよりも今は目の前の子の事だ。
なんかポーっとしてるんだけど俺の声聞こえてるのか?
「あの、聞いてる?」
「ハッ!!す、すみません。ご迷惑をお掛けして」
突如起動した女の子が頭を下げて口を開くが
「あ………」
頭を下げた時にそのまま俺の方に向かって倒れてきた。
「おっと」
慌てて倒れない様に抱き留めるが
「(ん~?)」
よく見るとその子は顔が赤く上気しており、『ハア…ハア…』と呼吸も若干荒い。
「ちょっとゴメンね」
「あ……」
女の子の額に手を当てると、かなり熱かった。
「ちょ!?君結構熱あるけどそんな状態で歩いてたの!?」
道理でフラフラしてた訳だ。
「も、問題ありませんわ。ただの風邪ですから」
いや、ただの風邪だとしても高熱だよ。
「誰か付き添いの人はいないの?」
「付き添いはいますわ。けど今は用を足しに行っていますので…」
あ、トイレに行ってるから離れてるのか。
「君は売店に行こうとしてたみたいだけど?」
「少し…喉が渇いたもので飲み物を買おうと思いまして」
だから売店に向かってたのか。
「分かった。俺が代わりに買ってきてやるから大人しくあそこの椅子で座ってな」
「え!?そんな、申し訳ありませんわ。見ず知らずの方にそこまでして頂く訳には…」
「気にしない気にしない。それよりも自分の身をまずは第一に考えなって」
「ですが…」
女の子の方は遠慮ばかりするので多少強引にだけど彼女を抱き上げる。
背面から腕を回して胴体を支えると共に、膝の下に差し入れた腕で足を支える抱き方……所謂『お姫様抱っこ』です。
「あ、ああああの!!!?////////」
「文句や抗議は受け付けません。そこの長椅子まで運ぶだけだから」
女の子を長椅子まで運び、そっと優しく下ろして横たえさせる。
それからすぐに踵を引き返して売店で昼食用のおにぎりとおかずを少々、後は飲み物を買って勘定を済ませ、さっきの子の所に戻る。
今度は大人しく横になった状態で身体を休めていた。
「はい、水だけどいいよね」
「ええ、済みません」
水の入ったペットボトルのフタを開けてあげると彼女は上半身を起こし、ゆっくりと水を飲み始める。
「………ふぅ」
少し飲んだ所で一息つく。
「そうだ…これも買っておいたんだ」
ゴソゴソとビニール袋から取り出したのは『熱さ〇シート』。……何でミッドに売ってるのかは突っ込んだら負けの様な気がする。
「それは?」
「熱を抑える湿布薬。これ貼っておけば少しはマシになるだろうから」
聞けば今は医者に診て貰うまで順番待ちしてるらしい。その間、高熱をひいたまま待っているのは結構辛いだろうと思ったから昼食と一緒に買ってあげた。
ハンカチで汗を拭き、シートに付いてる透明フィルムをはがして彼女のおでこに貼り付ける。
「ん……////」
「どうかな?」
「え、ええ。ひんやりして気持ち良いですわ//」
流石は熱さ〇シート。効果は抜群だな。
「お嬢様!!」
そこへ1人の男の子が声を上げ、こちらに近付いてくる。どうやらこの子の言っていた付き人みたいだな。
「(…子供じゃん)」
てっきり大人の人かと思ってた。歳はこの子以上、俺未満って感じだ。
けど付き人の子が来たなら俺がいなくても大丈夫だな。
俺は腰を上げ、食べ物が入ったビニール袋を持つ。
「あ、あの!どちらへ?」
「元々ここには用事があってね。そろそろ行かないといけないから」
「そ、そうですか…お礼をしたかったのですが」
「いいよいいよ。それより、自分の身体を労わって早く元気になりなよ。お大事に」
「ま、待って下さい!貴方のお名前は?」
「ん?ああ、名乗って無かったっけ。時空管理局救助隊所属の長谷川勇紀だよ」
「長谷川勇紀…様……////」
いや、『様』って……。
それより顔赤いよ。熱出てるんだから無理しなさんなって。
と、のんびりしてる余裕は無いんだった。
「ありがとうございました。私の名はヴィクトーリア、ヴィクトーリア・ダールグリュンですわ////」
「ヴィクトーリアちゃんだね。よろ…し……く……」
自己紹介されて俺は言葉を途切れさせてしまう。そして思い出す。
「(……成る程。誰かに似てると感じた訳だ)」
原作時よりも幼いからすぐに分からなかったが、今なら確かに本人だと頷ける。
「(こんなトコで『なのはViVid』に出て来たキャラと遭遇するとは…)」
世界ってのは広い様で狭いんだねぇ。
ていう事はあの近寄ってくる少年は執事のエドガーか。
「(じゃあ、まさかとは思うけど俺が保護した子ももしかして…)」
あの子も何処となく『なのはViVid』の登場キャラに心当たりがある。
「(…とりあえず名前を聞いてみないと、な)」
俺はヴィクトーリアにもう一度『お大事に』と声を掛けた後、エレベーターホールに向かって歩き出す。
まさかSts原作始まるよりも前にViVidキャラ達に遭遇するなんてなぁ(1人はまだ赤ちゃんだったけど)………。
~~ヴィクトーリア視点~~
「はぅ……////」
私は今し方、去っていった彼…長谷川勇紀様の背中が見えなくなってもずっとその方向を見つめていた。
「お嬢様!」
そんな私に執事のエドガーが声を掛けてくる。
「済みません、お待たせしてしまって」
「いえ、気にしなくても良いのよエドガー」
「はい……ところでお嬢様、そのおでこに貼り付けているのは?それに先程誰か一緒にいらっしゃった様ですが…」
「実はね…」
私は先程起こった揉め事の事を詳しく話す。
「そんな事が…申し訳ありませんお嬢様。肝心な時にお役に立てず」
「私もあの程度の連中、いつものコンディションなら軽くあしらえたんでしょうけど」
何とも間が悪かったモノですわ。『雷帝』の血を(ほんのほんの少しだけ)引くダールグリュン家の者としては情けない。
「しかしお嬢様の事を助けてくれ、私がいない間にお嬢様の面倒を見てくれた長谷川勇紀様…でしたね?その方には何かお礼をしなければなりませんね」
「そ、そうですわね…////」
あの方も何か用があったのにわざわざ私を助けるために時間を割いてくれて…。
今回の件でご迷惑をお掛けしましたし、何かお詫びをしなくてはダールグリュン家の沽券に係わりますものね。
「ダールグリュンさん、ダールグリュンさーん」
私の苗字を呼ぶ声が小児科の受付から聞こえてきました。
「どうやらお嬢様の順番が回ってきたようですよ」
「今行きますわ」
私は最後にあの方が歩いて行った方向をもう一度だけチラッと見た後、小児科の方へ歩いて行きました。
長谷川様と会ってから更に熱が上がった様な気がしますけど…
「(何故か悪い気がしませんわね。風邪が悪化したのかもしれませんのに…)////」
そんな事を考え、『早く風邪を治さないと』と私は思い診察を受けに行くのでした………。
~~ヴィクトーリア視点終了~~
あー、やっと戻って来れた。
時間にしてはそんなに経って無い筈なのに何故かやたらと長い間、別の場所にいた気がする。
俺が目的の女の子が入院してる病室の前まで戻ってきたら丁度、先生が部屋から出て来るところだった。
「あれ?もう食べてきたの?」
「いえ…少し食堂に行く余裕が出来なかったモノですから売店で買ってきました。後で食べようかと思って」
そう言ってビニール袋を見せる。
「そう…コチラも今問診が終わったところだから。これから彼女に何か聞くのでしょう?」
「はい。ところで先生、彼女の容態とかはどうなんでしょうか?」
俺は先生に聞く。
既に女の子は意識を取り戻しているらしく、先生は自分なりに問診して感じた結果を教えてくれた。それと彼女が倒れたであろう原因も。
『大きな病気とかは患ってなかった』と昨日の精密検査の結果で出たらしいし、明日にでも退院出来るとの事。
聞くだけ聞いて先生と別れてから俺は病室の扉をノックして扉を開ける。
ガチャッ
「失礼しまーす」
部屋の中は当然ながらティーダ一等空尉が入院してた病室と全く同じ造りである。
病室にあるベッドの上に上半身だけを起こし、コチラを見ている女の子。
何つーか…
「(何であんな目をしてるんだろう?)」
その子の瞳からは光が失われ『生きよう』とする意志が感じられない。
「あの…
「あっ、うん。君に聞きたい事があるからね。俺は時空管理局の長谷川勇紀って言います」
「
やっぱりか。
原作でインターミドルの世界チャンピオンだったな確か。
黒くて長い髪の毛をツインテールにして何故かミッドの住人なのに関西弁で喋る子。
両親のどっちかが関西人なのかな?
いや、今そんな事は関係無いか。
「それで君に聞きたい事は昨日、屋敷で君と1人の男が倒れていた事なんだけど…あの男を倒したのは君なのか?」
「……多分そうです」
俺の問いに静かに答えるジークリンデ。
「うーん…その時の事教えて貰える?」
「……
「犯人を部屋ごと吹き飛ばしたと?」
「…部屋が壊れたんはもっと前の事です。
淡々と語るジークリンデ。
つまり彼女は自分が今回倒したのは違法魔導師だけでその直後に意識を失ったらしい。それから少しして俺が屋敷内で見た状況になっていたみたいだ。
「…医者の先生に聞いたけど、君が倒れた原因はここ最近ロクに食べ物を食べてなかったから空腹のせいだって言われた。しかも1日2日程度じゃないらしいけど何日ぐらい食べてないのか聞いても良いか?」
「……覚えてません」
覚えてないぐらい断食してたのかこの子!?
「ハア~…ちゃんと食べないと栄養失調で死ぬぞ?何で食べないのかは知らないけど君の両親は何も言わないのか?」
「……両親はいません。
………え?
今この子は何て言った?
突然のジークリンデのカミングアウトに言葉を失ってしまう俺。
が、少し時間を置いて再び言葉を発する。
「りょ、両親が君を捨てたって!?何故!?」
「それは
エレミアの神髄?何それ?
「《ジークリンデちゃんの身に危険が迫ると反射的に自動で発動する力の事だよ。これが発動すると強大で圧倒的な力を得る反面、本人の意志とは無関係に破壊の限りを尽くそうとするんだよ。この状態の前では全ての命の価値を持たないに等しいみたい》」
ダイダロスがその『エレミアの神髄』とやらについて説明してくれる。
何つー傍迷惑な力だ。てかそんなの俺知らないんだけど?
「《ユウ君、原作知識持ってるでしょ?》」
持ってるけどマジで知らんぞ。俺が見落としてたのか?それっていつの話なんだ?
「《memory;44話『神髄』で語られてるよ。単行本だと9巻だね。ジークリンデちゃんとアインハルトちゃんの試合の最中にその旨が載ってる》」
あー……。
そりゃ知らん訳だ。
俺が前世で死んだ時に発売されてた最新の単行本は7巻だった。そのジークリンデVSアインハルト戦どころかリオVS
リオと番長…どっちが勝ったのかねぇ?
「《ユウ君普段から原作が更新された情報確認しないから…》」
「《いやいや!これは仕方ないっしょ。まだStsすら始まってないのにViVidキャラに出会う事自体が予想外過ぎたし》」
さっきも産まれたばかりのリオとヴィクトーリアに遭遇したのだって全くもって予想外なんだぜ。
ダイダロスとそんな会話を念話でしながら俺はジークリンデの言葉に耳を傾ける。
「元々
「継承?つまり君は前世の記憶とかを持ってるって事?」
ViVidのアインハルトみたいに俺達転生者とは違って純粋な記憶の持ち越しなのか?
「…はい。けど個人としての記憶やのーて
「500年…」
その言葉には驚きを禁じ得なかった。
しかも最低って事はそれよりも更に昔の記憶、経験を内包している可能性もあるという事。
「そんな積み重ねられてきた記憶、経験と共に圧倒的な力を持ったご先祖様のギフト。それがエレミアの神髄で今から2週間ほど前、
きっかけは彼女が自室で1人遊んでいた時、見知らぬ男がやってきて彼女を人質に取り、多額の現金を要求してきたとの事。
喉元に包丁を突き付けられ、身の危険を感じた時、その力は解放されたという。
直後、その圧倒的な力に蹂躙された男と無残にも破壊されていく部屋。
両親や屋敷の使用人達はジークリンデを止める術を持たず、ただ呆然と眺める事しか出来なかったとか。
彼女が止まったのは力を振るい始めてから5分程の僅かな時間であったらしいが、その結果があの部屋の惨状だった。
その間に彼女は知ってしまった…というより頭の中に流れ込んできたらしい。『エレミアの神髄』に関する知識、記憶、経験といった情報が。
「…その男はどうしたんだ?」
「…転移の魔法使うて逃げました。相当の重傷を負わせたんですが」
その言葉を聞いて思い当たる人物が1人浮かぶ。
2週間程前にディアーチェが逮捕したという男がいた。
ソイツは突然転移で現れたらしい。全身に相当の怪我を負って。
急いで病院に搬送されて事無きを得たらしいがその男の身元なんかを調べている最中、指名手配されている凶悪犯だと判明し、昨日違法魔導師が運ばれた病院と同じ場所に搬送された。
「(あの凶悪犯が重傷を負っていた理由はそういう事だったのか)」
「その後、
「っ!!」
「正直、両親が言うた言葉をすぐに理解出来ませんでした。けど
その時、両親や使用人達のジークリンデを見る目は『怯え』や『拒絶』の色が混じっていたという。
正直、信じられなかった。これが魔法文化の無い世界なら突然振るわれた力に怯えるのも分かるがここはミッドチルダ…魔法文化のある管理世界だ。魔法とかあるのが当たり前の様な世界なんだから。
「それからすぐに両親も使用人達も皆屋敷を捨てて出て行きました。取り残されたのは
俯いたジークリンデの声は震えている。
「それからはもう生きたいという意志も無くなったんです。今まで優しかった両親に捨てられ、皆に怯えられ……」
遂には涙をポロポロと零すジークリンデ。
ここ最近ジークリンデのお父さんやお祖父さんを含め、しばらくはエレミアの神髄を発現させた継承者がおらず、ジークリンデの家にもエレミアに関する資料がほとんど無かったため、エレミアの神髄というのがどの様なモノなのか誰も知らなかったという。
「何でこんな力が
「もういい!もういいよ!!」
これ以上話をさせてもこの子を苦しませるだけだ。
俺はギュッと抱きしめて彼女の背中をポンポンと叩く。
「お父さん……お母さん……う、うわああああああっっっっ!!!」
大声を上げて泣き出すジークリンデ。
しばらく病室内には彼女の泣き声だけが木霊していた………。
「お見苦しい姿を見せてすいませんでした//」
「少しは気分が晴れた?」
「そう…ですね。思いきり泣けたおかげで少しは」
あれからそれなりに時間が経って泣き止んだジークリンデ。
いつの間にかその瞳には光が多少戻っていた。
「なら良かった。それで、君はこれからどうするんだ?」
もしこの病院を退院したら行くアテはあるんだろうか?
「…誰もいないトコで生涯を終えようかと」
「いや、流石にそんなの俺は認めんぞ」
そんな自殺予告されてOKなんて出せるか。
「でも
「ならウチに来いよ」
「え!?」
目をパチクリさせて驚いた表情を浮かべるジークリンデ。
「ウチなら部屋も十分に余ってるし3食ちゃんとつくから。服は買えばいい訳だし衣食住の心配無くなるぞ」
「…………お言葉は有り難いですけど
「エレミアの神髄の事?なら何とか出来ると思うし」
「出来るんですか!?」
聞き返してくるジークリンデに頷く俺。
そのエレミアの神髄ってレアスキルみたいな物じゃないのか?なら俺が側にいる時は
「(那美さんみたいな退魔師にリスティさん、フィリスさんの様な能力者ならあるいは…)」
他にも忍さんに能力を抑制出来る様な道具でも作って貰ったりとか海鳴には頼りになりそうな人がいっぱいいるし。
「後はジークリンデちゃんがエレミアの力に振り回されない様に鍛えてあげるのも1つの手段だね」
「
「中にいるのが『化け物』だって分かってるんだ。なら『ソレを手懐ける』っていう対策の取り方もある。まだ試してもいないのに『絶対に手に負えない』って断定するのは早いだろ?」
「それはそうですけど…」
「まあ、エレミアの神髄に関しては俺に任せて。後はジークリンデちゃん次第だ」
「……ホンマに、ホンマに
「勿論!家にいる俺の家族にもちゃんと説明するし俺は君を『家族』として迎えたいと思ってるよ」
ていうか今回は拒否らせねぇ。実の家族に見捨てられたこの子を放っておくなんて事俺には出来ないし。
結構考え込んでいる末にジークリンデが出した答えは
「じゃあ……お願いします」
「うん!よろしく!」
俺について来る事を決めたジークリンデだった………。
その日は家に帰り、シュテル達に『家族が増えるから』と言い、ジークリンデの身に起きた事を説明した。
最初こそやや反対気味のシュテル、レヴィ、ディアーチェ、ユーリだったが話し終える頃には一転し、満場一致でジークリンデを『家族』として迎え入れる事に賛成してくれた。メガーヌさんは口を挟まなかったしルーテシアは既に寝ていた。
で、次の日。
「少しの間ですけどお世話になりました」
「いえいえ、貴女の身体に何の異常も無くてよかったわ。それに貴女が何か抱えていた問題も彼が解決してくれたみたいだしね」
病院前でジークリンデは自分を診てくれた先生に頭を深く下げ、お礼を言っていた。
俺はその様子を少し離れた所から眺めている。
「また病院でお世話になる時は先生指名させて貰いますから」
「コラコラ、病院の世話になんてならないのが本当は一番なんだからね。無茶はしない様に」
「はーい。ほな先生、またいつか」
「元気でね」
手を振って別れの挨拶を済ませ俺の元へ寄ってくるジークリンデ。
「もういいのか?」
「バッチリや」
「そっか。じゃあ行くぞジークリンデ」
「ちょい待って!」
歩き出そうとしたら呼び止められた。
何だ?忘れ物か?
「あんな…今日から
両手の人差し指をつき合わせ、頬を若干赤くしながら上目使いで頼むジークリンデが可愛らしい。
「…じゃあ改めて。行くぞ
彼女の要望通りに呼んでやるとパアッと満開の笑顔を浮かべるジークリ……ジーク。
「うん!今日からよろしくや、
「よろしく…………兄さん?」
「え?アカンかった?今日から家族になるんやし
「別に駄目じゃないぞ。いきなり呼ばれたからビックリしただけ。俺の事はジークの好きに呼んでくれていいから」
そう言うとホッと胸を撫で下ろすジーク。
そして俺達は病院を後にする。
「兄さんの家って何処にあるん?」
「管理外世界の地球っていうところだ。ジークの家に比べたら小さいけどな」
「家の大きさなんて気にしてへんよ。けど管理外世界かぁ。楽しみやわー♪」
はしゃいでいるジークの姿が微笑ましい。
俺に対する喋り方も昨日と違って砕けたモノになっていて俺としても心を開いてくれていると実感出来て嬉しいし。
こうして彼女は今日から『ジークリンデ・E・長谷川』と名を改めて、俺達長谷川家の新たな家族の一員となるのだった………。
~~あとがき~~
前回の話(第八十二話)でほとんどの方が気付かれたとおり、勇紀が保護した女の子は『ジークリンデ・エレミア』です。
そして今回の話通り、彼女を長谷川家に加えるのは以前から決めていた事です。
この事に気付かれた俊様、大正解です。
それとジークは今後他作品の技を覚えさせて魔改造するのとブラコン化する予定ですので紅天の書架様の予想も大正解です。
それとリオ、ヴィクトーリアもちょい出演。これは
1位=ジーク
2位=ヴィクトーリア
3位=リオ
といった風に『リリなの』全シリーズの中で自分が好きなキャラトップ3ですので(全員ViVidキャラですが)。
ジークを迎え入れる展開がちょっと強引というかご都合っぽい感じですが今回の展開を執筆した事に自分は決して後悔していないです。
あと、『リオのお母さんの名前』『ジークが両親に捨てられた』というのは完全に自分のオリジナル設定です。
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神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。