No.589752

IS〈インフィニット・ストラトス〉〜G-soul〜

ブレイキング・ラブ

2013-06-21 20:21:46 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:771   閲覧ユーザー数:730

目の前に現れた新たな亡国機業メンバー、日向さん。

 

身に纏うISの名前は《セイレーン》。丸みを帯びた形状の装甲と手に持った三つ又の槍、トライデントが特徴的だ。

 

「Gメモリー! セレクトモード!」

 

だけど、警戒するべきはその機体の搭載された特殊武装。楯無さんのミステリアス・レイディと同じナノマシンを含んだ水にはビームも実弾も届かない。

 

「セレクト! アレガルス!」

だけど俺は実弾てんこ盛りのアレガルスを発動し、ミサイルを数発発射。

 

「無駄よ! そんな攻撃は!」

 

ミサイルは日向さんが操る水と激突した。

 

「あぁ。届かせようなんて思っちゃいない」

 

俺の言葉のあとに爆発が起きて煙が広がる。

 

(いつかは楯無さんに看破されたけど…!)

 

アレガルスを解除。ノーマルモードになったG-soulのビームソードを両手に構える。

 

(今度はーーーーー!)

 

決めてやる! そう思った瞬間だった。

 

「たあぁぁぁぁぁっ!!」

 

「なにっ!?」

 

煙幕をブチ抜いて日向さんが突進して来やがった。螺旋する水とビームソードが交差して火花が散る。

 

「まさか突っ込んでくるとは…!」

 

「言ったでしょ? そんな攻撃は届かないって!!」

 

「くっ……!」

 

水とビームのぶつかり合いが数秒続く。トライデントの先端の水はバシャバシャと音を立てながら四方八方に散らばって地面に落ちていく。

 

(…?)

 

おかしい。変だ。

 

「ぼーっとしない!」

 

槍がまた襲いかかってくる。

 

「くそっ!」

 

ビームソードを振り下ろして迫るトライデントを止める。 水がまた飛び散って、今度はG-soulの装甲を濡らした。

 

『濡らした』。それだけだ。

 

「…………!」

 

なるほど! そういうことか!

 

俺はバルカンを撃って日向さんを引き剥がし、距離を取った。

 

「あら? もうバテちゃったの?」

 

余裕そうにトライデントを肩に預けて笑いかけてくる日向さんに負けないくらいの笑みを浮かべた。

 

「日向さんこそ、そんな余裕でいられんのも今の内だぜ?」

 

俺はビームソードの切っ先を日向さんに向けた。

 

「アンタとの今までの戦闘でちょっと不可解な事がある。そのナノマシン…完全か?」

 

「…どういうことかしら?」

 

日向さんの問いかけに答えるようにシールドに付いた水滴を払う。

 

「確かにナノマシン技術はすごい。賞賛できる。だけどロシアの技術を真似たっつーなら、どうしてそれ以上の攻撃をしないんだ? 追撃なんて簡単なもんだろう?」

 

「……………」

 

「それとも、動かせない、か?」

 

思った通りだ。日向さんは少し表情を曇らせる。

 

「やっぱりな。そのナノマシンは欠陥品。よその国の技術を真似た紛い物だ。一度強い衝撃を受ければナノマシンは機能を失って、ただの水になる」

 

多分あのトライデントの三つの先端に巻き付いている水も、ぶつかり合うたびに新しい水が入れ替わり立ち替わりになるんだ。

 

「仕掛けが分かれば怖くは無いぜ。ナノマシンがスッカラカンになるまで攻撃してやる!!」

 

ビームソードのグリップを握り直したら、日向さんはゆっくりと拍手した。

 

「すごいわ。これだけ短時間によく見抜いたわね」

 

「…伊達にIS研究者やってないんでな」

 

「なるほど…でも、これは予想できた!?」

 

セイレーンの腰の装甲から水が爆発するように溢れ出した。どうやらあの装甲の中に水が蓄えられてるみたいだ。

 

「今から、誰も見たことが無いショーを見せてあげるわ」

 

そう言う日向さんの周りを生き物のように水がうごめく。それは体を作り、尾ビレ、背ビレ、胸ビレを作り上げ、海洋生物の姿になった。

 

「イルカ…?」

 

街の出す光を反射させるその姿はそう言う以外言い表せない。

 

「行きなさい!」

 

日向さんがトライデントを振ると、水で出来たイルカは俺に向けて突進して来た。だけど動きが直線的で簡単に予測できる。

 

「ハッ! 何をしてくるかと思えば、見掛け倒しだな!」

 

「どうかしら…?」

 

またトライデントが振るわれた。

 

「!」

 

「誰も、一頭だけなんて言ってないわよ?」

 

一頭だけだったはずのイルカが二頭になった。

 

「まだまだ!」

 

トライデントが再度虚空を切ると、今度は二頭が四頭になった。

 

「分身!?」

 

「一つ言っておくと、その四頭とも、爆弾よ?」

 

「…っ! G-spirit!!」

 

ビームウイングを羽ばたかせて四頭のイルカから離れると、イルカたちは迷わず俺を追いかけて来た。

 

(追尾までしてきやがるか…!!)

 

「ナメるなよ!」

 

ビームブラスターの引き金を引いて大出力ビームを発射する。 ピンク色の光がイルカにぶち当たるがイルカは一度形を歪めるだけで直ぐに元に戻った。

 

「水に戻らない!?」

 

「確かに私のセイレーンのナノマシンは脆弱よ! でも密度を高めれば!!」

 

「しまっーーー!」

 

振り向いた時にはトライデントを振り上げた日向さんが後ろにいた。

 

「はあっ!!」

 

 

ドッ!!

 

 

「ぐああっ!」

 

トライデントが肩の装甲を捉えて大きく体勢が崩れる。

 

「ダメ押しに!」

 

 

ドォンッ!!

 

 

「うあああっ!!!」

 

俺に一番近いイルカが爆発した。

 

絶対防御が働いたから身体は無事だけど全身に激痛が駆け抜けた。

 

「あと三頭いるわよ…?」

 

「…!?」

 

吹っ飛んだ瞬間、残り三頭のイルカが全て俺に突っ込んできた。

 

イルカ一頭でこの威力なら、三頭同時に喰らったら…!!

 

「なにチンタラやってんだ!」

 

「ぐえっ!?」

 

上から伸びてきた手に首を掴まれて思いっきり引き上げられた。

 

三頭のイルカがG-spiritの脚部装甲の爪先部分のすぐ下でぶつかって一頭の大きなイルカになった。

 

「あら? てっきり何処かに雲隠れしたと思ってたけど…」

 

「お、オータム!?」

 

「この程度のヤツに押されてんじゃねぇよこのバカガキが」

 

ものっそい罵倒されたけど、俺を助けたのはオータムだった。

 

オータムは日向さんを見ると、口元に笑みを浮かべた。

 

「よぉ、誰かと思ったら懐かしい顔じゃねぇか」

 

「なに? お前日向さんの知り合いか?」

 

「なんでお前がここにいる」

 

シカトか。おい、シカトか。

 

「日本で楽しい仕事があったんだけど、こういう非日常もたまには欲しくてね」

 

そばに寄り添う水のイルカに触れながら答えた日向さんにオータムは毒づいた。

 

「お前も知らないわけじゃないだろうが」

 

「えぇ。でも、非日常は欲しいけど、余計な危険はノーサンキューなのよ」

 

「フン…そんな考えだからスコールに負けたんだよ。お前は」

 

その一言に日向さんは不愉快そうに眉を下げた。

 

「そんな口がきけるのは今のうちよ!」

 

イルカが俺たち目がけて飛んできた。

 

「彼女の裏切りが知られた以上、ヤツらは私に頼らざるを得ないのよ!」

 

「確かにそうだろうな。でもよぉ、そんなもんはもう意味を持たねぇんだよ!」

 

アルバ・アラクネの右手の手の平から何か小さな円筒形の白い塊が発射された。

 

「おいガキ」

 

「な、なんだよ」

 

「ぼちぼちサツどもが来る。とっとと終わらせてババァんとこに戻るぞ」

 

「んな簡単に言ってーーーーー」

 

 

バシュッ!!

 

 

オータムが撃った白い塊が小さく煙を吹いて網のように広がった。

 

「うっ!?」

 

日向さんは網に飲み込まれて身動きができなくなった。

 

「う、動けない…!?」

 

「ババァ特製のバインディングネットだ。推進制御系に機能不全を起こすんだぜ」

 

オータムの背中のウェポンアームが蠢き始める。

 

「なら爆発で!!」

 

「無駄だってんだよ!」

 

「ぐえぇっ!?」

 

オータムが俺の首を掴んで日向さんに、イルカに突っ込んで行く。

 

「苦しい苦しい! オータム!!」

 

「喚くんじゃねぇ! っせーな!」

 

俺の抗議を無視してオータムはどんどんイルカと距離を縮めていく。

 

(爆発が…!)

 

耐えるために固く目をつむる。だけどいくら待っても爆発は起こらなかった。

 

「だろうなぁ。あの小せぇやつであの威力だ。あんな大きいのが爆発すりゃあお前も無事じゃすまねぇよなぁ…!」

 

「こんな網に!!」

 

セイレーンの腰からまた水が出てきた。水が小さなカッターのようになって網を切り裂いていく。

 

「ガキ、歯ぁ食いしばってな」

 

「え?」

 

聞き返した時にはオータムは俺を『投げる』モーションを取っていた。

 

「おらあっ!!」

 

「えぇぇぇ!?」

 

ぶん投げられた俺は一瞬どうしてこんなことをされたのか分からなかった。だけど網を切っている途中の目を丸くした日向さんと目があったところですぐに理解出来た。

 

「うおおおおおおっ!!」

 

身体を捻ってそのまま突っ込む。

 

 

ザンッ!!

 

 

ビームウイングがセイレーンのシールドバリアを削り取った。

 

「ぐっ!!」

 

日向さんの数メートル後ろに来たところで止まる。

 

「…っ! よくも…!!」

 

体勢を立て直した時には、オータムはすでに日向さんの前でウェポンアームを開いていた。

 

「遅ぇよ。私の射程だ。もうお前は逃げらんねぇ」

 

 

ドドドドドドッ!!

 

 

「うぐぅぅっ!!」

 

ウェポンアームがセイレーンのシールドバリアを捉える。そしてオータム自身の装甲に包まれた両腕もシールドバリアに突き刺さる。

 

「さぁ、バラバラに吹き飛びな」

 

 

ババババババババババッ!!

 

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

凄まじい熱がセイレーンにぶつけられてシールドバリアを消していく。ウェポンアームがシールドバリアを握り潰すように徐々に日向さん自身に近づいていく。

 

無人機事件で俺たちが散り散りになって、俺とマドカが3体の無人機を相手に戦っていた時に見た攻撃。《グラインド・パニッシャー》っつったか。無人機を簡単に破壊した攻撃だ。普通の人に耐えられるはずがない。

 

……耐えられるはずが、ない。

 

「…やめろぉっ!!」

 

俺はオータムに横から体当たりして無理矢理日向さんから引き剥がした。

 

「なっ!? て、てめぇガキ!」

 

「もうやめろ! 日向さんが死んじまう!!」

 

「ザけてんじゃねぇ! 邪魔すんな!」

 

「日向さんはスコールの居場所を知ってるんだよ!!」

 

「…!?」

 

オータムはやっとウェポンアームからスチームを吹かせた。

 

「おわぶっ」

 

ちょっと浴びちまったぜ。

 

「ガキ、今、こいつがスコールの居場所を知ってるっつったな?」

 

「あ、あぁ」

 

頷くとオータムはウェポンアームの先端から出る銃口を全て日向さんに向けた。

 

「おいオータム!?」

 

「さっさと言え。さっきの野郎は妙なUSB渡してそんだけだ。はっきりした答えを聞こうか」

 

「………………」

 

ボロボロにされた装甲から煙を吹く日向さんは空中に浮かんだまま何も言わない。

 

「なんとか言えコラ!」

 

「……………」

 

いつオータムが痺れを切らすかハラハラしてるとふとあることに気づいた。

 

「イルカが!?」

 

振り返った瞬間、それはイルカが空中でサマーソルトをした瞬間だった。

 

目の前で水滴が爆発を起こして俺とオータムの周囲が真っ白になる。

 

「のわっ!?」

 

「チッ!!」

 

オータムがデタラメにエネルギー弾を撃って煙を千切る。

 

風に乗って流された煙が消えた時には日向さんはどこにもいなかった。

 

「逃げられた…」

 

「…! ガキがぁぁぁ!!」

 

「うわあっ!?」

 

いきなりカタールで切りかかられた。

 

「てめぇが邪魔しなけりゃあスコールの居場所がわかったのになにしてくれてんだ!!」

 

ヤバイヤバイヤバイ! 完全に殺しに来てる!!

 

「落ち着けって! まだそう遠くに行ったわけじゃーーーーー」

 

「夜の街で見つかるかよ! 今頃地上に降りてトンズラさ!!」

 

カタールを止めたオータムは今度はウェポンアームを広げて来た。

 

「やっぱりババァの見当違いだったみたいだな。こんな使えないやつに頼もうってのがそもそも間違ってんだよ」

 

「なんだとぉ!?」

 

人のこと散々っぱら罵りやがって! 流石に怒ったぜ!

 

「お前こそなんなんだよ! こっちは頼んでもねぇのに横から出て来やがって!」

 

「あぁ!? なんだやんのか!?」

 

「上等だ! やってやんよ!!」

 

 

『いぃぃかげんにせんかぁぁぁぁっ!!!!』

 

 

耳元で声が爆発した。

 

「いっ!?」

 

「ったぁ!?」

 

『呼びかけても無視しおってからに! 心配する身にもならんか!』

 

「ち、チヨリちゃん…」

 

うわぁ、声だけで怒ってんのがわかるぜ…

 

「ケッ、ババァに心配される筋合いなんてねぇよ」

 

『そんなことはいい。さっさと戻って来い!』

 

「わーってるよ。耳元で騒ぐなやかましい」

 

オータムが背を向けて移動を始めた。

 

「ま、待てよ」

 

俺もオータムを追いかけて夜空を進む。

 

「ガキ、いつまでそんな目立つモン背中に背負ってんだよ。さっさとそれ消せ」

 

オータムはこっちを見ないで肩に近いウェポンアームを一本動かしてきた。どうやら目立つモンとはビームウイングのことらしい。

 

「今やろうとしてたっつーの」

 

「…心底イラつくガキだ」

 

聞こえてんだぞ、それ。

 

 

 

「まったく…通信にはしっかり応答せんか」

 

「ごめんってば。そんな怒んなよ」

 

プンスカ怒るチヨリちゃんの横を歩きながら平謝りに謝る。

 

ちなみにだけど警備員の服は少し心が痛んだけど近くの川にポイさせてもらった。

 

「……………」

 

少し後ろを歩くオータムはすげー不機嫌そうだ。

 

ランプを点灯したパトカーが車道を駆け抜けていく。

 

「やれやれ…目立たないように言ったはずじゃが……なぁオータムよ」

 

「いつまでもネチネチ言ってんじゃねぇよ。シワができんぞ」

 

「出来んわそんなもの」

 

チヨリちゃんは口を尖らせてオータムに反論した。

 

「…………できたくてもな……」

 

「ん? なんか言ったかチヨリちゃん?」

 

車の走る音で聞こえなかったぜ。

 

「いやなにも?」

 

「そうか…ところで俺たち何処に向かってんの?」

 

「秘密基地じゃ。戻るんじゃよ」

 

「ならなんで行きと同じ道じゃないんだ?」

 

「面倒なやつらに出くわさないようにな」

 

「なるほど…」

 

面倒なやつらって言うと、俺とチヨリちゃんを追いかけて来たあの車のやつらだろうな。

 

「お前ホントバカガキだな」

 

「あ?」

 

「よさんか二人とも。もう入り口じゃ」

 

「入り口じゃって…壁じゃん」

 

「瑛斗、島でのことを忘れたかのか?」

 

「え…あ!」

 

ピンと来たぜ。アレか。アレなんだなチヨリちゃん。

 

「よっと」

 

チヨリちゃんが壁に手をつくと、ガコンと音がして壁が回転扉のように開いて内側を晒した。

 

「おら、さっさと行けよ」

 

「言われなくても行くっつの」

 

壁のはどうやら秘密基地の反対側にあったらしく、数メートル先に俺たちが建物から出た扉があった。

 

「どうやら勘付かれてはいないようじゃな」

 

階段を登り部屋に戻ると出る前と変わらない少し散らかった部屋があった。

 

「さてと、オータムが手に入れたこれの解析をするかの」

 

チヨリちゃんは手にUSBメモリを握っていた。

 

「それが例のオータムが渡されたってやつか」

 

「まぁの」

 

「そういやぁ、そのUSBって亡国機業の幹部からもらったんだよな? 」

 

「確かこの棚に…お、あったあった」

 

小さな棚からペンライトのようななにかを取り出してUSBにあてがう。

 

「なにしてんの?」

 

「変な仕掛けが無いか確かめとるんじゃよ。爆弾だったらたまったもんじゃないからの」

 

「そんな探知機まであるんだな」

 

「…よし! 特に異状は無い。発信機もついとらんただのUSBのようじゃ」

 

「中身が問題だけどな」

 

「そうじゃな。鬼が出るか蛇が出るか」

 

そんなことを言いながらチヨリちゃんはノートパソコンにUSBを接続した。

 

「データをインストール…」

 

キーボードの操作をするとUSBに一つだけ動画ファイルがあった。

 

「開くぞ」

 

俺は頷いて、オータムは無言で腕を組んだまま画面を見る。

 

 

再生ボタンを、押した。

 

 

パソコンの画面に映し出されたのは地下室のようなところで椅子に座って拘束されたスコールだった。ボロボロの状態でISスーツを身につけている。

 

スポットライトのような明かりに照らされる金色の髪は力なく垂れていた。

 

「スコール!」

 

オータムが声をあげる。だけど画面の中のスコールに変化は無い。

 

『…無様だなぁ、スコール』

 

男の声がした。映像には出ていないけど多分ビデオのそばにいる。

 

『妙な気を起こさず、組織に従っていれば良かったものを』

 

『……………』

 

『殺さないのはなぜか分かるか? お前にはいろいろと喋ってもらわなければならないからだ』

 

『………』

 

『今、ビデオでこの状況を録画している。この映像も私のコレクションにしてやろう』

 

話し方と言動でだいたい理解出来た。こいつは下衆だ。

 

『……………』

 

『…フン。黙っていても無駄だぞ。必ず吐かせてやる。この自白剤でな』

 

声のあとに画面に新たに人が現れた。顔はモザイク加工されてるけど多分さっきから話している男だろう。

 

手に持った注射器がスコールの右腕に刺さり、中の液体が注がれる。

 

『………!』

 

スコールの体が一度ビクンと痙攣した。

 

『あ…ああ……』

 

くぐもった声が聞こえて、男がフレームアウトした。

 

『さて……そうだな、まずはお前の仲間のことから聞こうか。オータムは何処にいる』

 

『……おー……たむ……』

 

『そうだ。裏切り者は消さなければならないからな』

 

『おーたむ……おー…たむ……ふふふ…』

 

スコールが震え出した。

 

『…おーたむ! オータム! オータムオータムおーたむオータム! はははは! あはアハハ! あハははハは!!』

 

突然顔を上げたスコールはまるで何かに取り憑かれたみたいに大声で笑い出した。

 

『馬鹿ねぇ! オータムなんか探して何になるって言うのかしら!? アハハははハハ!』

 

『どういうことだ?』

 

『オータムは…! あははは! オータムはただの都合のいい駒!』

 

『駒?』

 

『私のことを慕ってるみたいだけど、私からしたらただの道具! ただの駒! 言う通りに動いてくれる便利な駒なのよ! アハははは!』

 

『…そうか。では次のーーーーー』

 

『だからオータムなんか探ったって無駄よ! あの子なんにも知らないんですもの!! あはははは! アハハ!! あははハハはハ!!』

 

『おい…』

 

『あはははハハはは!! あははハハ! あははははアハハはは!! あはははははははハハハハハハハあははははははははハハはハハハハはははは!!』

 

『…チッ。調合を間違えたか。興醒めだな』

 

男が大笑いするスコールに舌打ちして、ビデオの映像が一瞬乱れてから再生は終了した。

 

 

 

「……………」

 

「……………」

 

沈黙が部屋の中を漂う。正直、どうしていいかわからない。

 

「……………」

 

後ろにオータムがいるはずだ。スコールに『駒』と言われたオータムが。

 

「オータム…」

 

躊躇いながらも振り返った。

 

「………………!!」

 

そこには目に涙を浮かべて、口元を震わせた悲愴な表情があった。

 

「嘘…だ」

 

絞り出すような掠れた声がこぼれた。

 

「こんなの…ありえねぇよ……スコールが…私のこと………ババァ!!」

 

オータムはチヨリちゃんの胸ぐらをつかんだ。

 

「チヨリちゃん!?」

 

「ババァ…! 今のは、今のはどういうことなんだよ…!!」

 

「お前も見たじゃろうが。自白剤でスコールがトんだんじゃよ」

 

「んなのは分かってんだよ…私が言いたいのは!」

 

「オータム、スコールは自白剤を投与されて自分で言ったんじゃ。恐らく今の言葉に偽りはない」

 

「そんな…!?」

 

オータムが手から力を抜いて、チヨリちゃんを放す。

 

「危ねっ!」

 

咄嗟にチヨリちゃんを抱いて落下を阻止。

 

「ありがとうじゃ」

 

「あぁ…それより……」

 

俺はオータムを見た。震える手で髪をクシャクシャにして、焦点の定まらない目を泳がせている。

 

「私は…駒……道具…スコールの……!!」

 

ついさっきまでのオータムは消えて、ただ茫然自失になった女の人がいた。

 

「オータム…しっかりしろよ…」

 

あまりにも心配になって声をかけたが、反応はない。

 

「そんな…そんなこと……」

 

フラフラとおぼつかない足取りで歩き出したオータムは自分の部屋の中へ消えた。

 

「なんてこった…やっぱりスコールはスコールなんだな」

 

「……………」

 

「どうするんだチヨリちゃん。あれじゃ下手すりゃオータムは再起不能だぜ?」

 

「ここ程度でへこたれるほどヤワなやつではない…と言いたいところじゃが…難しいかもしれんな」

 

扉を見やるチヨリちゃんの表情は複雑そうだった。

 

(人の事散々バカにしたバチ…っつーにはでか過ぎる、か)

 

無言の空間に、パソコンの小さな駆動音だけが響いていた。

 

 

瑛「インフィニット・ストラトス〜G-soul〜ラジオ!」

 

一「略して!」

 

瑛&一「「ラジオISG!」」

 

瑛「読者のみなさんこんばどやぁー!」

 

一「こんばどやぁ」

 

瑛「なぁーんかいろいろと慌ただしい回だったぜ。亡国機業が絡むとろくな事があったもんじゃねぇや」

 

一「それにしても巻紙さんとスコールさん大丈夫なのか? 二人ともラストで大変な事になってたけど」

 

瑛「どうなることやらだぜまったく。だけどこっちはいつも通りの平常運行だ」

 

一「それじゃあ質問行くか。カイザムさんからの質問! 瑛斗に質問です。よくイギリスの飯はマズいと言いますが、実際イギリスへ行ってイギリス料理を食べた感想はどうでしょうか?」

 

瑛「セシリアが聞いたら怒りそうな質問だな」

 

一「どうなんだ? カフェにいたんだろ?」

 

瑛「そうだな。チヨリちゃんと一緒にいたんだ俺。折角だから本場のフィッシュ&チップスも食べてみたぜ」

 

一「どうだった?」

 

瑛「うん、まぁ美味かったぞ」

 

一「…なんでそんな微妙な感じなんだ?」

 

瑛「いやさ、イギリス出身のセシリアの料理のおかげでさ、『イギリス+料理』にちょっとこう…防衛本能が働いてあんまり乗り気じゃなかったんだよ」

 

一「確かに…セシリアの料理はなんというか……忘れられないよな。いろんな意味で」

 

瑛「そしたらさ、チヨリちゃんが勝手にフィッシュ&チップス注文しちゃって。本人曰く『イギリスに来たら食べてみたかったんじゃ。お前も食え』って」

 

一「それで、食べたと」

 

瑛「あぁ。こんな事言うのもアレだけど思ったより全然美味かったんだこれが。普通に食べれた」

 

一「それはよかった。やっぱりイギリスでも美味い料理は美味いんだな」

 

瑛「そういうことだな。よし! 今日はこれくらいにするか。それじゃあエンディング!」

 

流れ始める本家ISのエンディング

 

瑛「今日はそこで知り合った双子に歌ってもらったぞ」

 

一「おんなじ髪型で違うのは目つきだけか。つり目の子がちょっとアワアワしてるな」

 

瑛「垂れ目のおっとりしてそうな方の子に頼んでみたらオッケーしてくれたぜ。なんでもファイトが終わるのを待っているそうな」

 

一「ファイト? なんの?」

 

瑛「さぁ? おっと、もう時間みたいだ。それじゃあ!」

 

一「みなさん!」

 

瑛&一「「さようならー!!」」

 

???「ほらー、もっと声出さなきゃ」

 

???「わ、わかってるわよ!」

 

???「お前たち、ここにいたのか」

 

???「あ、レオン様」

 

???「えぇ!? れれれレオン様!?」

 

???「ファイトは終わった。行くぞ。風が俺を新たなファイターに導いている」

 

???「はーい」

 

???「ま、待ってくださーい!」

 

一「なんか、新しいのが来て、一緒に行っちゃったぞ。双子」

 

瑛「まぁ、風が導いてるんならしょうがないよ」


 
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