No.588355 英雄伝説~光と闇の軌跡~ 492soranoさん 2013-06-17 09:34:08 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1044 閲覧ユーザー数:990 |
自室を出たロイドはまず、ランディの部屋に向かい、扉をノックした。
~夜・特務支援課~
「………ん、誰だ?」
「ロイドだけど、ちょっといいかな?」
「おお、いいぞ。遠慮なく入ってくれよ。」
「それじゃ、お邪魔するよ。」
ランディの返事を聞いたロイドはランディの部屋に入った。
「あ………」
ロイドが部屋に入ると、荷解きを終え、ソファーに座っているランディと、傍に浮いているエルンストがいた。
「あんたは………そういえばあんたがルファディエルとギレゼルを従えている奴だったな………」
「ようこそ、俺様の城へ。お前さんの方も荷ほどきは終わったのか?」
ロイドに気づいたエルンストは興味深そうな様子でロイドを見つめ、ランディはロイドに尋ねた。
「い、いや………まだだけど………――――どうやらランディはもう結論が出てるみたいだな?」
「ああ、配属を辞退するって話か。ま、デスクワークは少なそうだし気楽そうなのも性に合っている。職場と住む場所が一緒なのもラクで良さそうだしこのまま厄介になるつもりだぜ。」
「そうか………」
「お前の方はさすがに迷ってるみたいだな?せっかく取った捜査官の資格を無駄にしたくないってところか。」
自分の答えを聞いて頷いたロイドの様子を見たランディは尋ねた。
「はは………それもあるけどね。それ以上に、目指している目標から遠ざかっていきそうな気がして………」
「目指している目標………?」
「いや、まあ………大したことじゃないんだ。そういえば………ランディはどういう経緯でここに配属されたんだ?俺たちより年上だけど………警察学校は出てないんだよな?」
そして尋ねられたロイドは苦笑しながら答えた後、尋ね返した。
「ああ、その通りだが。うーん、俺がここに配属された経緯ねぇ………――――本当に聞きたい?」
ロイドに尋ねられたランディは頷いた後、真剣な表情で尋ね
「あ、ああ。差し支えなければだけど。」
尋ねられたロイドは戸惑いながら頷いた。
「そこまで言うなら仕方ねぇ。実はな――――」
ロイドの答えを聞いたランディは答えようとしたが
「簡単に言えば警備隊をクビになったんだよ。」
「へっ!?」
「あのな………せっかく話そうとした所、勝手に話すなよな………」
エルンストが先に答え、答えを聞いたロイドは驚き、ランディは疲れた表情で溜息を吐いた後、気を取り直して説明を再開した。
「いや~、前の職場で複数手を出したのがバレてさ。あやうくクビになりかけた所をオッサンに拾ってもらったんだよ。これも女神達のお導きってところかねぇ。」
「ん?………………」
「………えっと………ランディの前の職場って?どうやら警備隊のようだったけど………クロスベルの?」
ランディの説明を聞いたエルンストは首を傾げた後黙ってランディを見つめ、ロイドは表情を引き攣らせた後気を取り直して尋ねた。
「ああ、クロスベル警備隊さ。両帝国方面にベルガード門ってあるだろ?あっちの方に詰めていたんだ。」
「なるほど………道理であんなハルバードを自由自在に振り回せるわけだ。」
「ま、国境付近の詰所あたりじゃ訓練とパトロールくらいしかやることが無かったからなぁ。その点、クロスベル市勤務なら歓楽街とかにも行きたい放題だ。いや~、マジで警備隊を辞めて正解だったぜ♪」
「はは………まあ、気持ちはわかるけど。」
「おっと、気が合うじゃない。………いやさ、実は何軒か色っぽい姉ちゃんたちがいる店を見つけているんだよ。正式にお仲間になったら一緒に遊びに繰り出そうぜ。お嬢は固そうだし、お子様もお呼びじゃないし、男同士の付き合いってやつだ。」
ロイドと話をしていたランディは口元に笑みを浮かべてロイドに言った。
「おいおい………傍に女性がいるのにそんな事よくいえるな………」
一方ランディの言葉を聞いたロイドは呆れた様子でエルンストに視線を向けた後ランディに視線を向き直って言った。
「傍にいる女性って……まさかエルンストの事か?ハハ、コイツとはそんな関係じゃねえし、むしろコイツはそういう事を進める方だぜ?」
ロイドの言葉を聞いたランディは意外そうな表情で答えた後苦笑しながら答え
「ああ。女の味を知っておかないと一人前の男になれないよ?………そういえばあんた、ルファディエルを従えていたね。………という事は奴とヤッたのかい?」
ランディの言葉にエルンストは頷いた後、口元に笑みを浮かべてロイドを見つめた。
「へっ…………やるって、一体何を………?」
「あん?そんなことも知らないのかい。それは―――――」
エルンストに見つめられたロイドが呆けた表情になり、ロイドの言葉を聞いたエルンストが呆れた後答えようとしたその時
「………この子に変な事を教えないでちょうだい、エルンスト。」
ルファディエルがロイドの傍に現れ、エルンストを睨んだ。
「お!あの時の美人の天使さんの一人じゃないッスか!」
「クク……………あたいは普通の事を教えようとしただけだよ。………それよりあんたにちょっと聞きたい事があってね。さっきの人間達とランディたちの話を聞いていて気づいたが………あんた、あたいと違って数年前からこの世界にいたようだね?」
ルファディエルに気づいたランディは嬉しそうな表情をし、エルンストは口元に笑みを浮かべた後、ルファディエルに視線を向けた。
「………私からも貴女に聞きたい事があるわ。…………私がいた世界では私達に敗れて死んだはずの貴女がこうして目の前にいるという事はギレゼルと同じ、並行世界の貴女だと私は推測しているけど………」
視線を向けられたルファディエルは静かな表情で答えた後エルンストを睨み
「へっ!?」
「並行世界?何の話だ??」
「ふーん、あたいがねぇ………どういう事だい?」
ルファディエルの話を聞いたロイドは驚き、ランディは首を傾げ、エルンストは興味ありげな様子でルファディエルに尋ねた。そしてルファディエルは自分の事情やギレゼルの事情を説明した。
「……なるほどねぇ………だったらあんたの推測通りあたいはあんたの世界の”あたい”じゃないさ。話を聞いていて気づいたがあたいは多分、そのロイドとかいう人間に従うギレゼルと同じ世界の”あたい”だよ。」
「何が何だか、サッパリわかんねぇだが………」
「ハハ、俺も半分も理解できていないよ………」
事情を聞き終えたエルンストは頷き、ランディは疲れた表情で溜息を吐き、ロイドは苦笑していた。
「クク………あたいからもあんたに聞きたい事がある。あんたの世界のあたいを殺したのは誰だい?」
一方エルンストは不敵な笑みを浮かべてルファディエルを見つめ
「………………激闘の末、貴女を討ち取ったのはラグタス将軍よ。」
見つめられたルファディエルは考え込んだ後、静かな表情で答えた。
「………クク………ハハ………あっはははは!そうかい!奴にあたいが殺されたのかい!それはさぞかし、満足な死だったろうね!そんな死を迎えられたあんたの世界のあたいが羨ましいよ!」
ルファディエルの話を聞いたエルンストは大声で笑った後、不敵な笑みを浮かべた。
「はあ??」
「………異なる世界とはいえ、自分が殺された事に何も思わないのか?」
エルンストの様子を見たランディは首を傾げ、ロイドは驚きの表情で尋ねた。
「クク………あたいを討ったのがラグタス以外だったら話は別だったが奴なら満足さ。奴を殺していいのはあたいだけで、その逆もそうさ。」
「………世界が違っても、やはり貴女は貴女ね…………先程の戦いのラグタス将軍との会話から予測すると、どうやらあのラグタス将軍は貴女の世界のラグタス将軍のようね………貴女もギレゼル達のように私達を逃がすためにその身を犠牲にしたのかしら?」
不敵な笑みを浮かべて語るエルンストを呆れた様子で見つめたルファディエルは真剣な表情で尋ねた。
「ああ。ラグタスが残ると言い出したからね。だったら、あたいが共に残るのが当然の流れだろう?」
「…………そう、ラグタス将軍も………興味深い話が聞けたわ………一応礼を言っておくわ。」
エルンストの話を聞いたルファディエルは考え込んだ後静かに呟き、ロイドの身体に戻った。
「クク、面白い話が聞けたね………ロイドとか言ったね。感謝するよ。あんたがルファディエルを従えているお蔭で面白い話が聞けたからね。」
「………さっきから気になっていたけど俺はルファ姉やギレゼルには力を貸してもらっているだけだ。決して主従の関係じゃない。………それとギレゼルと話す事はないのか?ギレゼルの口ぶりだと知り合い同士のようだし……」
「ハッ!別に奴に用はないさ。あたい達悪魔の軍勢はラグタス達と違って、それぞれが独自に動いていたからね。」
(我輩も同じ答えだぜ、ロイド。)
「……そ、そうか。」
エルンストとギレゼルの話を聞いたロイドは戸惑いながら頷いた。
「ま、エルンストやあの綺麗な天使のお姉さんの事は別にして、正式にお仲間になった暁には一緒に遊びに繰り出そうぜ。」
「はは、考えとくよ。」
その後ランディの言葉に頷いたロイドはランディの部屋を出て、エリィの部屋に向かい、ドアをノックした。
「………どなたですか?」
「えっと………ロイドだけど。今、ちょっといいかな?」
「あ、うん、別にいいわよ。鍵は開いているから入ってきて。」
「それじゃ………お邪魔します。」
エリィの返事を聞いたロイドは部屋に入った。
「……………………」
ロイドが部屋に入ると、荷解きを終えた様子のエリィとメヒーシャがいた。
「ふふっ………何とか片付けが終わって良かったわ。そこに座ってくれる?今、紅茶でも淹れるから。」
「いや、お構いなく。しかしエリィも………もう結論は出ているみたいだな?」
「ああ、配属を辞退する話ね。少し迷ったんだけど………ここで頑張ることに決めたわ。」
「そうか………」
「………あなたの方はさすがに迷っているみたいね。でも、無理もないと思うわ。この特務支援課だけど………正直、無理がありすぎるもの。」
「無理がある?」
エリィの話を聞いたロイドは驚いた後尋ねた。
「話を聞く限り、色んなしがらみや打算によって出来た部署でしょう?組織としての合理性に欠けるし、目的も今一つはっきりしていない。これで成果が上がらなければ予算の都合で、本当に無くなる可能性が高いんじゃないかしら?」
「………まあ、普通に考えればそうだよな。でも、そこまでわかってどうしてエリィは残るんだ?何か理由でもあるのか?」
「そうね………色々な歪みを観察するには割と良さそうな場所だから、かな。」
「へっ………」
エリィの説明を聞いたロイドは呆け
「ふふっ、なんちゃって。多分私は、ずっと警察に勤め続けることはないと思うの。そういう意味では、ここが出世コースから外れてもあんまり関係がないから。」
エリィは微笑んだ後、表情を戻して答えた。
「そうなのか………確かエリィは、警察学校には行ってなかったんだよな?どういう経緯で警察に?」
「うーん………ありていに言うと社会勉強ね。ちなみに入る時の試験は筆記と射撃だったんだけど………どちらも満点だったから断りきれなかったみたいね。」
「な、なんか聞けば聞くほど俺の場合とは違うような………」
エリィの話を聞いたロイドは冷や汗をかいた後引き攣った笑みを浮かべた。
「あら、あなただって新人で捜査官資格を取ったのは珍しいんじゃないかしら?やっぱり事情があるんでしょう?」
「………それは…………」
エリィに尋ねられたロイドは答えようとしたが
「ふふっ………ここから先は、正式な同僚になってからの方がよさそうね。」
「ああ………そうだな。悪い、気を遣わせたみたいだ。」
エリィに制され答える事を中断した。
「いえいえ。でも、私個人の意見で言えばあなたが居てくれた方が嬉しいかな。」
「えっ………」
「まあ、お互い新米だからまだまだな所もあったけど………今日だって、慣れない状況でもリーダーとして頑張ってくれたし。指示も的確だったから私も安心してサポートできたもの。それにあの時魔獣に囲まれた時の判断は見事だったわ。」
「はは………そういってくれると助かるよ。でもあの判断ができたのはルファ姉のお蔭だよ。」
「ルファ姉………あの女性の天使の方ね。メヒーシャ、確か貴女、あの天使の方に用があるって言ってたわよね?」
「………ああ。ロイドと言ったな。ルファディエル様を呼んでくれないか。」
「わかった。―――ルファ姉!」
エリィに促されたメヒーシャの言葉に頷いたロイドはルファディエルを召喚した。
「………久しぶりね、メヒーシャ。」
「ハッ!まさかルファディエル様達もこの世界にいるとは思いませんでした。……私とギレゼルがあの場に残った後、ルファディエル様達は無事、脱出できたのでしょうか?」
ルファディエルに話しかけられたメヒーシャは敬礼をして答えた後尋ねた。
「………残念ながら今の私は貴女が知る”私”ではないから答えられないわ。」
「?一体それはどういう事ですか………?」
そしてルファディエルは不思議そうな表情をしているメヒーシャに事情を説明した。
「並行世界がまさか存在していたなんて………」
事情を聞いていたエリィは驚き
「……悪魔達を駆逐した世界のルファディエル様………ですか。それもあの人間達と私やラグタス将軍達が協力して、魔王セルベルグを滅するとは………正直、信じられない思いです。」
メヒーシャは静かに答えた後、戸惑った様子でルファディエルを見つめた。
「フフ………私の世界の貴女は秀哉の守護天使になって、悪魔達との戦いを終えると秀哉の世界で秀哉と共に生きているわ………」
一方ルファディエルは微笑みながら話をし
「なっ!?私が仙崎秀哉の”守護天使”に!?」
話を聞いたメヒーシャは信じられない表情をした。
「ええ。それに私がこの世界に飛ばされる半年前には私の世界の貴女は秀哉と結婚式を挙げて、秀哉の子も身籠っていたわよ。フフ、貴女と秀哉の子はどんな子になって、貴女はどんな母親になっているのかしらね?」
「な、な、な………!」
「まあ………フフ、天使と人間が結ばれるなんて、素敵な話ですね。」
そして微笑みながら話すルファディエルの話を聞いたメヒーシャは驚きの表情で口をパクパクさせ、エリィは微笑みながらルファディエルを見つめた。
(一体何を考えて、人間の”守護天使”になった挙句、人間と結ばれたのだ!?同じ存在とはいえ、全く理解できん………!)
一方メヒーシャは心の中で異なる世界の自分の行動に信じられない思いになっていた。
「それにしてもあれだけ人間を嫌っていた貴女が人間と契約をするなんてね………秀哉達と共闘した事で、貴女も私の世界の貴女のように心境が変化したのかしら?」
「…………確かにあの戦いやエリィに瀕死の所を救われた事もあり、思う所はあります………ですが、人間全てを信用した訳ではありません。」
ルファディエルに尋ねられたメヒーシャは静かに答え
「………そう。でも、少なくとも今の貴女は秀哉達と出会う前の貴女より成長しているわ…………それがわかっただけでも私は嬉しいわ。………エリィと言ったわね?メヒーシャの面倒を見てくれて、ありがとう。」
「…………………」
「いえ、私もメヒーシャにお世話になっていますからお互い様です。」
ルファディエルに微笑まれ、複雑そうな表情で黙り込み、エリィは微笑みながら頷いた。
「かかかっ!我輩も是非見たかったぜ。秀哉にメロメロなメヒーシャちゃんが♪」
するとその時、ギレゼルが笑いながら現れ
「貴様………!ルファディエル様!何故、奴と行動を共にしているのですか!?」
メヒーシャはギレゼルを睨んだ後、ルファディエルに視線を変えた。
「……私だって正直ギレゼルと行動したくなかったんだけど、ロイドと契約してしまったから仕方なく共にしているのよ………」
そしてメヒーシャの言葉にルファディエルは溜息を吐いて答え
「何ですって………!?………人間!すぐに奴と手を切れ!この悪魔と共にいてもロクな事にならないぞ!」
ルファディエルの話を聞いたメヒーシャはロイドを睨んで忠告したが
「ま、まあまあ………確かにギレゼルに色々と困らせられる事もあるけど………意外と義理がたいし、他人に危害を与えるような奴じゃないから、そんなに邪険にすることはないと思うよ?」
ロイドは苦笑した後メヒーシャをなだめようとし
「我輩、こう見えて恩を感じる珍しい悪魔だからな。そっちの娘にメヒーシャちゃんが尽くしているように、我輩もロイドに尽くしているって訳よ!これからは同じ尽くす者同士仲良くしようぜ?かかかっ!」
ギレゼルは陽気な様子でメヒーシャを笑いながら見つめた。
「フン!悪魔が恩を感じるとは笑わせてくれる!………もしよからぬ事を考えたその時、我が斧槍の錆にしてくれる!その事を忘れるな!」
そしてメヒーシャは鼻を鳴らした後ギレゼルを睨み
「その時は私も貴方を滅するつもりだから、覚悟しておきなさい。」
メヒーシャに続くようにルファディエルもギレゼルを睨み
「かかかっ!心配しなくても我輩、ロイドがどんな面白い人生を歩むのかに興味があるから、他の事を考えるつもりはないぜ♪」
睨まれたギレゼルは陽気な様子で答え
「………勝手に人の人生を面白いと決めつけるのはやめてくれ………」
ロイドは疲れた表情で溜息を吐いた。
「フフ………色々と大変そうね。」
一連の流れを見守っていたエリィは微笑みながらロイドは見つめ
「………まあ、それなりの時間を共にいるから慣れているから大丈夫だよ。」
見つめられたロイドは溜息を吐いて答えた。
「さてと――――俺達はこれで失礼するよ。ルファ姉、ギレゼル。」
「ええ。」
「あいよ。」
そしてロイドはルファディエルとギレゼルを自分の身体に戻らせ
「おやすみ、エリィ。」
「おやすみなさい、ロイド。」
エリィの部屋から退出し、ティオの部屋に向かった。ティオの部屋に向かい、ドアをノックしたが返事は返って来なかったのでティオの部屋に入るのは止め、一端外に出る為に一階に降りるとそこには何かの導力装置の周囲を動き回って何かをしているティオがいた。
「ティオ………何やってるんだ?」
「………ロイドさん。見ての通り、端末のチェックをしていました。」
「端末って………それのことか?」
ティオの話を聞いたロイドは組立中の導力装置に視線を向けて尋ねた。
「ZCFのカペルシステムを財団で改良した汎用端末です。警察本部から導力ネットワークを通じて情報を受け取ることが可能です。」
「へ………?ちょ、ちょっと待て。いきなり訳がわかんないぞ。」
「………そうですね。ロイドさんは『導力ネットワーク計画』についてどこまでご存知ですか?」
「『導力ネットワーク計画』…………雑誌の記事でたまに見るけどちゃんと理解はしていないな。確かエプスタイン財団が提唱してるとか何とか………」
「元は、エプスタイン財団とツァイス中央工房(ZCF)が共同してスタートさせたプロジェクトです。今では、主に財団によって進められていますが………その大規模な試験運用が現在、このクロスベル市で進められているんです。まあ、これもその一環ですね。」
「よ、よくわからないけど………結局のところ、どういう事をする計画なんだ?」
「ふう…………」
ロイドの疑問を聞いたティオは溜息を吐いた後ロイドに振り向いて答えた。
「要するに、旧来の通信器を発展させた技術ということです。単に会話のやり取りをするだけでなく演算能力を持った端末同士を結んで効率的な情報ネットワークを構築する。わかりやすく言うとそんな所です。」
「全然わかりやすくないんだが………えっと、要するに警察内部の連絡や指揮系統を効率化する装置ってところか?」
「………まあ、この端末については間違いではないです。わたしの専門ではありませんが端末の操作くらいはできますし。今後のことを考えると一応、チェックしておこうかと。」
「そ、そうか………その様子だと、ティオは配属を辞退するなんて考えてもいないみたいだな?」
ティオの説明を聞いたロイドは頷いた後考え込み、尋ねた。
「え…………」
「いや、そもそも………俺がティオくらいの歳はまだ遊びたい盛りだったよな。財団から出向したって話だけど、その、無理やり働かされてるとかそういうわけじゃないんだよな?」
「…………………」
ロイドの疑問を聞いたティオは呆けて黙り込み
「え………!?まさか、本当にそうなのか!?どんな事情があってもそんなの我慢したら駄目だぞ!?その、俺でよかったらいくらでも力を貸すから――――」
ティオの様子を見たロイドは驚いた後真剣な表情になって話し始めたが
「あの、落ち着いてください。………別に強制されて働いているんじゃありません。それどころか………今回の出向は、むしろわたしが我侭を言わせてもらった結果です。」
「え………」
ティオが制して説明し始めた。
「わたしはわたしでここに居る理由がある………つまりそういうことです。ロイドさんは人の心配をする前に自分の心配をするべきでは………?」
「あ、ああ………はは、そうだな。ティオの言う通りだった。ごめんな。差し出がましいことを言って。」
「いえ………ただ、あんまりお人好しなのは捜査官としてどうかと。遊撃士と違って、人を疑うこともしなくてはいけない仕事ですよね?」
「うぐっ………痛いところを突いてくるなぁ。うーん、やっぱり俺ってまだまだ甘ちゃんなのかな………警察学校の訓練やルファ姉の教えで徹底的に自分を鍛えたつもりだったけど………でも、確かにそれだけじゃ捜査官は務まらないだろうし………」
そしてティオに突っ込まれたロイドは呻いた後複雑そうな表情で考え込んだ。
「…………………」
一方ティオは考え込んで呟いているロイドの様子を黙って見つめていた。
「ティオ………?」
ティオの様子に気づいたロイドは尋ね
「………少し疑問に思っていましたけど………ルファディエルさん………でしたか。ロイドさんは彼女に対して、同じ異種族と契約している私達とは違って、特別な接し方をしているんですね。」
尋ねられたティオは尋ね返した。
「え?あ、ああ………ルファ姉とは数年前からだけど本当の家族のように接して一緒に暮らしているからな………俺にとってはかけがえのない大切な姉さんだよ。」
(フフ、私にとっても貴方は大切な弟よ、ロイド。)
(クッ………ルファディエルばかり贔屓してズルいぞ、ロイド!我輩、その内嫉妬するぞ♪)
ティオの疑問を聞いたロイドは頷いた後微笑みを浮かべて答え、ロイドの答えを聞いたルファディエルは微笑み、ギレゼルは悔しがった後口元に笑みを浮かべた。
「………”家族”……ですか…………」
「ティオ?どうしたんだい?」
「………いえ。それよりラグタスが彼女に話があるとの事で、申し訳ありませんが、ルファディエルさんをこの場に呼んでもらってもいいですか?――――ラグタス。」
「了解。――――ルファ姉。」
そしてティオとロイドはそれぞれラグタスとルファディエルを召喚した。
「……久しいな、ルファディエル。お前もこの世界に飛ばされていたとはな………」
「………はい。それも並行世界の将軍がこちらに来ているとは、私も予想していませんでした。」
「………何だと?」
ルファディエルの話を聞いたラグタスは眉を顰め、ルファディエルはラグタスに事情を説明した。
「………そうか。お前は我が知るルファディエルではないのか………しかし話を聞いていて気づいたが我等の運命を左右するのはあの仙崎秀哉達だったとはな………もしかすれば、我の世界のお前も悪魔達との因縁を断ち切る為に仙崎秀哉を味方に取り込もうと、奴らを支配下に置く為に戦いを挑んだのかもしれんな。」
「………かもしれませんね。それにしても………天使や悪魔の軍勢と対等以上に戦い続けるとは………フフ、秀哉には私の予想以上の”英雄”の資質があったようですね………」
「そしてメヒーシャは仙崎秀哉の”守護天使”になり、奴と結ばれた………か。フ………つくづく我の知るメヒーシャとはかけ離れているな………」
ルファディエルとラグタス、2人はそれぞれ口元に笑みを浮かべた後
「お前にとってはエルンストと共に戦う事に抵抗があるかもしれんが………こうなるのも運命だったかもしれん。互いの守るべき者達の為に共に戦うぞ。お前の知恵……再び頼りにさせてもらう。」
「フフ、既にギレゼルがいますから今更ですし………この特務支援課に残り、将軍達と共に戦うのはロイド次第です。私の方こそ、将軍の力………頼りにさせて頂きます。」
互いの顔を見て話をした後、それぞれの契約している者達の身体に戻った。
「どうやら話は済んだようですね………………端末のチェックは一通り終わりました。明日、導力ケーブルの接続工事があるようなので今日は早めに休みます。」
「そうか………おやすみ。ゆっくり休んでくれよ。」
「はい。それでは――――おやすみなさい。」
そしてロイドの言葉に頷いたティオは自室に戻って行った。
「………3人共ちゃんと自分のやるべき事を考えているみたいだな。迷っているのは俺だけか…………………………」
ティオを見送ったロイドは考え込んだが
「………だめだ。なんだか煮詰まってきた。少し外に出て風に当たるか………」
溜息を吐いた後考え込む事を止めた。
その後ロイドは外に出た…………
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第492話