普通の人間と違う能力を持っている一族は結構存在している。そういっても別に厨2病っぽい活動をしているなんて一握りで、後は大体普通に企業を起こして経営したり、一般企業で働いてることが多い。
そりゃそうだ、人と違うということは、それを受け入れられる人間と排除する人間に分かれるってこと・・・つまりは、普通の人間に紛れて生きなければ排除される可能性も上がるのだ。
・・・排除されてでも、そういった能力を積極的に使う一族もいる。
“病呼びの頭無(かたなし)一族”
特定の相手を病魔に侵してしまう能力を持っている一族であり、現在ではその能力を駆使して製薬会社を営んでいる・・・もちろん、非合法なこともいくらかしているようだが。
そんな頭無一族の現当主である枸橘(からたち)は女性でありながらも他の当主候補を蹴り落して当主の座に就いた女性だ。
・・・そんな彼女の息子である日向(ひゅうが)は現在、ばりっばりの不良である。
「あ“ぁ”!?てめぇら喧嘩売ってんのか!?」
喧嘩っ早く、グレて手が付けられない不良であり、頭無一族も手を焼いている問題児だ。そんな彼の目の色は彼岸花に良く似た色で・・・どこかの誰かを彷彿とさせるようなものだった。
「当主!またご子息がっ・・・」
「あら、そう」
「・・・ご興味がなさそうですが・・・」
「当主の座に就くために作った子供だもの。特に興味ないわ」
「・・・」
枸橘の発言に仕えている青年は苦虫を噛み潰したかのような表情になったが、すぐに彼女から視線を逸らす。
彼女は特段、気にした様子も無いようだ・・・が、彼女たちがいる部屋の外で何やら激しい物音が聞こえてきた。
「てめぇここにいたのか!!」
襖を蹴っ飛ばして、一人の青年が鉄バット片手に乗り込んだ。
「あら、日向じゃない」
「・・・相変わらずスカした顔しやがって・・・!」
「そうね」
「今日こそてめぇをボコってやんよ!」
「怖いわね、私は貴方の母親よ?」
威嚇する日向に対して、枸橘は落ち着いたかのように正座したまま緑茶を啜っている。まるで彼の威嚇全てを子供の我儘のように聞き流しているのだ・・・さすがに秘書である青年も「当主!」と諌めるが彼女は気にしたそぶりも無い。
「本当、貴方の喧嘩っ早いところは父親(さつきやみ)に似たのかしら。嫌な悪癖が遺伝したのね」
「あの男の名前を出すんじゃねぇよ!うざってぇ!」
「折角“あの”無悪一族の当主をうまく騙して作った子なのに・・・どうして駄々をこねるのかしら。素直に無悪一族を乗っ取って欲しいのに」
「・・・ってめぇ・・・!」
「あらぁ、何かしら?」
「・・・いい加減にしてください!!」
青年が一触触発状態の母子を怒鳴りつけた。かなりの大声だったらしく、二人とも耳を抑えながらも青年をうっとおしそうに睨み付ける。
「はぁっ・・・はぁっ・・・あんたら!!喧嘩するなら外でやれ!屋敷の中でしないでください!!」
青年はそう言って、外を指差した。
「・・・」
「・・・」
「おいババァ、表出ろ」
「あらあら可愛い反抗期ね、お母さんが相手しないと寂しいの?」
「言ってろ、その口塞いでやんよ」
「母親に対しての口のきき方、治してあげるわ」
2人は睨みあったまま、素直に外に出て行った。
残された青年は大きくため息を吐きながら、その場に座り込んで胃痛に耐えるのだった・・・
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