拠点パート
影華の場合
『私だって膝枕を』
私は今、子供達に読み書きを教えている。
元は諳様の仕事だったのだけど、街で子供達と遊んでいる私の姿を見たらしい諳様が「よろしくね」と言って、半ば強引に任されました。
そんな諳様は今、東屋で休んでおられます。それはもう気持ち良さそうに、深に膝枕をしてもらいながらです。この部屋から東屋は良く見えます。わざとなのでしょうか。
「黒纏先生ー」
……と、いけないけない。集中しないと。
改めて気を引き締め、子供達へと向き直る。
「それでは……まずは自分の書けるもの、書きたいものを書いてみてくださいね~」
「「「「「は~い」」」」」
子供達はちゃんと言うことを聞いてくれます。みんな偉いです。
「できた!」
「僕も!」
「みんな出来たかな~? じゃあ見て回りますね~」
『金』
『権力』
『独裁政治』
『(´・ω・`)』
どうしてこう……。私は顔が引き攣るのを抑えながら、子供達の書いた字を見て回っていきました。
最後のは何かの記号? ……でしょうか。突っ込んだら負けだと思うのですが……。
「え~っと、みんな字が上手だね~」
「でしょでしょー?」
「えへへ~」
「ヾ(*´∀`)ノ」
うん……最後の子はもう気にしないことにしましょう。そうです、そうしましょう。
外を見れば諳様に、中を見れば子供達に頭を悩まされる一日でした……。
--次の日。
今日は深と新兵の訓練を見ることになっています。
一日中、深と一緒です。はぁ~……いけない、少し惚けてしまいました。
深のことを考えると、胸の中心がなぜか熱くなります。本人に聞けるわけも無く、諳様に相談したことがあるのですが、そのときは「よくわからないわね~」とはぐらかされてしまいました。あの笑顔は絶対に何か知っていると思ったのですが……。そろそろ時間ですし、深を呼びにいきましょうか。
最近になって、深は龍笛と呼ばれる楽器を、暇さえあれば吹くようになりました。
以前聞いた哀しい旋律ではなく、気分が高揚するような旋律であったり、時には気を落ち着けるような音色を奏でることもあります。それを傍で聞くのが楽しみでもあるのですが。……この間の諳様のように、ひ、膝枕をしてもらいながら聞いてみたいなぁ…………。
「……華。……影華!」
「!? ……深……」
「どうしたのこんなところでぼーっとして」
ま、また私は惚けて……。それも深に見られて……恥ずかしいです。恥ずかしすぎて深の顔をまともに見れません。
「な、なんでもありませんよ! さ、さぁ、訓練の時間ですし、訓練場へと向かいましょう!」
「? あぁ……ってそんなに早く歩かなくても大丈夫だろー?」
「時間は有限なのです。ええ、急ぎましょう!」
戸惑う深の手を掴んでぐいぐいと引っ張っていきました。私にはこれが限界です……。
訓練を終え、帰宅してきました。
今は諳様に学問を教えていただく時間です。
諳様は私と深には別の問題を渡します。まずはそれぞれで考え、それから二人一緒に考え、自らの考えに対して穴や改善策を出し合い、それを諳様に報告するという方法を取っています。
まずは渡された問題に目を通しているところなの……ですが、どうしても横にいる深達が気になってしまいます。
諳様……深に近付きすぎです!
あぁ、もう、後ろから抱きついたぐらいで深も顔をだらしなくしないでください!
わ、私だってそれぐらい……で、でで、できますからね!
悶々としながらも渡された問題についての考察は終わり、今度は二人で互いの策に対して穴が無いか確認をしています。
わ、私だってできる私だってできる私だってできる……。
こちらに教本を見せるため投げ出されている右手を掴み、さらに身体を密着させました。
勝ち誇ったように諳様を向くと、諳様は「少し疲れたから」と言いながら、苦笑する深に膝枕をしてもらっていました。
なんでそこで深は断らないんですか!
「え、影華……どうしたんだ?」
「いえ、なんでもありません! 続きを進めましょう」
「あ、あぁ……」
決して私も膝枕をしてほしいわけではありません。諳様の軽率な行動とだらしのない深に憤っているのです。
もやもやしたものを抱えながら、今日の問題は解き終えました。
「なぁ影華。お前、今日ちょっと変じゃないか?」
「いえ、別にいつもと同じですが」
「う~ん……」
困った。絶対に怒ってる。でも、なんで怒ってるんだ?
怒り始めたのって……諳に問題を出されてから……か?
だとしたら……。
「…………膝枕……」
「っ!……」
今、確実に反応した……よな? まさか諳に嫉妬していた……とかか?
影華に限ってそんなことないと思うけど、少しカマ掛けてみるか。
「…………頭ナデナデ……」
「っ!……」
なんかあからさまに反応してるし……、てか顔赤!
「おい、影華。大丈夫か?」
「い、いえ、問題ありません」
「問題ありませんって、顔真っ赤だぞ……」
はぁ~。これ自分からやるって相当恥ずかしいんだが……。
「ちょっと、ごめんな」
俺は影華の肩を掴むと、俺の方へ仰向けになるように倒した。
「ししし、深!? 一体何を!?」
「何って……まぁ膝枕だな」
「ひひひ、膝枕!?」
「だって、諳が羨ましかったんだろ?
「そんなことはありません!」
「……本当にか? だったらやめるけど」
「………………ます」
「ん?」
「…………このままで、お願いします」
「……あぁ。ちょっとはそこで休め」
「はい……ありがとうございます、深」
彼女はこれだけ想ってくれている。俺もれに対して何か返せるようにしなきゃな……。
今はとにかく、一緒に休もう……。
「やっと素直になれたのね。あなた達はこれから二人だけの旅になるのだから……」
最後の声はあまりにも小さく、誰にも聞こえなかっただろう。
女は静かに少年の部屋の扉を閉じた。
【没ネタ(主に会話で進行)】
「うわっ、何してるんだよ諳」
「何って膝枕だけど?」
「だから、なんで膝枕してるんだよ!」
「私はこの間味わったここの気持ちよさが忘れられなくてね。減るものじゃないし、いいでしょ?」
「俺の神経が磨り減るって……しかもこんなところ影華に見つかったら……」
「気付いていないのかしら?」
「え?」
「ほら、あそこ。あの木の陰を御覧なさい」
「え~っと? ……ひっ」
なにあれ!? 怖いよ影華さん! なんで木の陰から片目だけだして、しかも鬼のような形相でこちらを睨んでらっしゃるんですか!?
あ……こっちきた。
「影華さん? え~っとですね、これはですね……なんといいますかその……」
影華は徐に諳を持ち上げると--そんなに力ありましたっけ? --東屋の椅子に座らせ、諳の代わりに膝枕を堪能していた。
「え、影華さん?」
「深は私のもの。だから、深の膝枕も私の……そうよね? 深」
「は、ハイ……」
なんか今の影華さん、顔は普段のそれなのにものすっごい怖い。
なんか腰に手を回して、断固として動く気配もないし……。
「影華……いい度胸ね」
……って諳さん!? 変な対抗心燃やさないで! これ以上油を注がないでって!
あーもう!
「二人とも大人しくしてろ!」
結局二人とも片方ずつの膝に乗せました。
今ではすやすやと眠ってるし……。
俺も寝る……か。
この日、東屋を通った侍女は珍妙な光景を見たと言う。
男の膝で幸せそうに眠る女が二人。
彼らの表情はみな優しげで、家族のようだったと。
諳さんの家に侍女はいない設定でしたね……。
あぁ、徐庶でも良かったのかと今更ながら思い至る作者なのでした。
【あとがき】
こんにちは(?)
九条です。
17時ってまだまだ明るいです……なので、こんにちは。
初の拠点パートいかがでしたでしょうか。
実は本編を書くときよりも悩みました。ネタとか放り込んでる暇がない(笑)
拠点でキャラ崩壊してしまうのも、なんだか分かるような気がします。
う~ん、今回は思ったように書けませんでした。
これも私の力不足です……申し訳ない。
その代わり影華ちゃんをツンデレ仕様にしときました。
ひとまずそれで勘弁してくださいorz
●今後の予定
孫呉のキャラは真恋姫の序盤に出てきたキャラだけ登場予定です。
本来なら各地に散らばっているはず……。
あ、でも孫堅が健在の時はまだ客将じゃないんでしたっけ……。
うん、予定は予定ですね! どこかシナリオが変わるかもしれません。明日に期待ってことで。
呉を出すにあたって真恋姫を再プレイ中です。
進行具合では明日の更新が遅くなるかもしれません……。最悪更新されないかも?
まぁ、気長にお待ちください。
没ネタに関してはもはや何も言うまい……。
それではまた次回もお楽しみに~
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争奪戦までには発展しませんでした。
諳さんの好感度がそこまで高くなかった……。
そういえば族ため20作品目でした……。
ちょうど拠点パートに入れたので、これがその記念ってことで一つ。