ギア 第5話 「少年の決意と答え」
ベッドに横たわってからずっと俺はリィンのことを考えていた。
「何であんなひどいことを言うのかな・・・。」
あいつ・・・、あんなに苦労してたんだな。冷静になって自己分析をしてみると、俺はただ単に現実から目を逸らして逃げていただけなのかもしれない。逃げた結果、俺の代わりにリィンが辛い目にあってしまった。
”ダークエルフと関わってはならない”
あの掟がリィンを苦しめたんだ。・・・そう思うと自ずと心の内は決まっていた。
「リィンをあの掟という鎖から解き放つ。」
明日、リィンに伝えよう。それが俺に出来るあいつへの罪滅ぼしの一歩だ。
すっきりしない朝だった。昨日決心したはずなのに、何故かココロが重い。
「やっぱり、責任感じてんのかな、俺。」
無意識的にもやはり、リィンに辛い思いをさせたという事実にココロが重くなる。
「悩んでても仕方が無い。そろそろ、アルの店に行くか・・・。」
迷いやその他の感情を振り払うようにして、俺は宿を出た。
俺がアルの店に着いた時には、既にリィンが来ていた。なにやら、二人で話し合っている。なにやら楽しそうだったので俺は声が聞こえる位置に移動して入るタイミングをうかがおうと思った。
「え!ルインってここでも独りだったんですか?」
「あぁ。いまでこそ行動してくれてるけどな。来た時のあいつはとにかく一匹狼だったよ。」
・・・おい、俺の話かよ。今思い返してみても、アルの言うとおりだった。俺は周りの人間全てが俺に危害を加えるものだとアノ当時思っていた。だから、どうしても独りにならざるをえなかった。感情の無かった俺に再び感情を与えてくれたのはアルなのだが、未だに苦手意識はある。
「他にはどんな話が?」
「あぁ、あとはな・・・」
俺はしばらく、アルが俺の過去をリィンに話すのを聴いていた。・・・のだが、
「で、今のあいつなんだがな。どうやら気にな」
「おい、何はなそうとしてやがんだこのぼったくり屋」
話がおかしな方向へとむかおうとしていたので、俺は止めに入った。
「・・・本人が来たんじゃあ、この話はここまでだ。」
「むぅ・・・。」
こら、そこであからさまに不満げな顔をするな、リィン。
「金はいつもの所に請求しておいてくれ。」
「分かった。」
「行くぞ、リィン。」
「うん。」
まだ不満そうな幼馴染を連れて俺は町へと繰り出した。
町をあらかた案内し終えた後、昼飯を食べに、昨日の店に入っていた。また昨日と同じように俺は話をし始める。
「なぁ、リィン。」
「何?」
「俺さ、決めたよ。アノ村に戻る。お前に協力する。」
「・・・ありがと。」
「でもな、問題を解決した後、お前はどうするんだ?返答しだいでは、行かない。」
ちょっと、意地が悪い気がするが、これも、道を見失わないように気遣いたいがためだ。リィンは曇った表情を最初浮かべたが、直ぐに笑顔で、
「私、アノ村を出て、ここに来るよ。」
最初から俺はこの答えを期待していたかもしれない。安堵するのが自分でも分かる。
「そうか。・・・俺は、ずっと逃げてた。」
何故今、話し始めようと思ったのかは分からない。気付けば俺は独白を始めていた。
「あの村から。そして、お前から。でもな、やっぱり違うんだ。逃げては何も始まらない。向き合ってこそ初めて理解が出来る。俺はな、リィン。アノ村の掟を壊したいんだ。今度は逆にお前に頼みたい。俺に協力してくれ。」
「水臭いよ、ルイン。当たり前じゃない。」
さっきよりも、晴れやかな顔でリィンは答えた。
「じゃあ、善は急げだな。」
「そうだね。」
俺たちは、昼飯を済ませたその足で、町を出た。
小さなことでもいい。少しずつ前へと進んでいこう。
俺は、リィンと道を駆けながら、そう思った。
終わりませんよ?wはい、こんな感じで第5話を御送りしました。これにてとりあえず、序章は終わります。次回はいよいよ第1章です。物語の流れはここで作られます。ギアをめぐるものがたりはまだまだ始まったばかり。ルインに待ち受ける試練とは!?
そして、二人はエルフの掟を変える事が出来るのか?
次回第6話「精霊の住む里」
来週あげれると、いいなぁ・・・。
ではまた!
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どうも、皆さん、こんにちは。ニルです。なんだかんだありましたが、第5話書き上げました。まだまだ文書の表現力に不安定さがありますが、そこは気にしない方向で。コメントもらえるとうれしいなぁ。