No.582371

司馬日記外伝 仲達さんとポッキーゲーム?

hujisaiさん

para様リクエストの、仲達さんがポッキーゲームをやると…
です。たまにこう、すらすらっと書けてしまう事があるんですよね…(短いですが)
皆様のコメントやリクは電波を運んで来て下さいます、いつも有難う御座いますね。

2013-06-01 17:20:11 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:13495   閲覧ユーザー数:9111

心臓が爆発しそうだ。

 

私は今飲酒をしており酔っている時には平常時よりも心拍数は高い、しかし今は違う理由だ。

二つ隣でカシュカシュと脆い物が欠ける音、この音が私を緊張の極限に押しやるのだ。

 

「はい交代ねっ、次私私!」

「ちょっと葵、もう少し余韻に浸らせてよね」

「順番じゅんばーん。はい一刀様、んー♪」

子孝様を押しのけるように子廉様が一刀様の隣に座り、揚げ棒―――小麦粉に砂糖を混ぜて揚げた棒を咥えて心持ち顎を突き出すようにする。

すると一刀様が棒の反対側を咥え、二人で齧っていく。

ポリポリという音と共に見る見る棒は短くなり、二人の顔が近づき――――んむ、という音が聞こえたような気がする程度には、二人の唇が触れ合う。

その様子は正に、恋人達だった。

 

--------------

切欠は子丹御嬢様だった。子孝様に子廉様、公達様と飲むのだが来ないかと誘われ御相伴に預かる事にした。『蜀飲みに行ってる一刀様が後で顔を出すかもしれない』という言葉に惹かれたのも否定出来ない。

飲み始めてしばらく四方山話をしていると一刀様がお見えになった、蜀、呉と来て既にここで三軒目とのことで、『どっちもうわばみが居たので早々に退散した』という。

女ばかりでも詰まらなくはないが、ここの全員の公私ともに主人たる一刀様がいらっしゃればいやが上にも盛り上がる。

そこへ来て件の揚げ棒だ。子丹御嬢様が空の一皿を見て、あらもう無くなってしまいましたか、というとそれを咥えた一刀様がごめんこっちの皿の最後の一本俺食べちゃった、あっちの皿にはまだ少し残ってるから、と言われた。

しかし子丹御嬢様はにやりと笑うと『いえ…こちらを頂きますね!』と言うや否や一刀様に抱きついて反対の端からかりかりと噛んで行き、先程子廉様がやって見せたように接吻をした。

たっぷり一秒はかけてから唇を離し、御馳走様でしたと言いながらぺろりと唇を舐めると、残りのお三方が一斉に抜け駆けよ等と非難されたが、御嬢様はこちらの皿にはさっきの一刀様ので最後でしたので仕方がありませんでしたと言って涼しい顔だ。

私は唖然として見ているだけであったが、公達様がちょうどあと四本あるから一人一回づつね、いいですよね一刀様と言うと一刀様は苦笑いされながら御承諾なさったのが数分前。

以降、お三方が順番に先程の―――一刀様によると「ぽっきーげーむ」という天の国では恋仲の者同士がやる遊びだという―――を、実演されていった。

 

 

緊張のあまり、自分の呼吸がやけに大きく聞こえる。

今目の前で公達様が一刀様と唇を合わせ、更に舌で一刀様の唇をひと舐めして終えられた。

ついに私の番だ。

失礼します、と断って隣席に座らせて頂き、揚げ棒を取り出した。その瞬間。

 

震える私の指先から、揚げ棒がぽろりと滑り落ちる。

最後の一本だ。『これで今日はお開きね』と公達様が言っていた。追加は無い。

組み手練習でも出したことの無い迅さで左手を出し。

無事、揚げ棒を掴み。

 

 

 

 

 

ぱきぱきぱきぱきぱきっという音と共に、握り砕いてしまった。

 

 

 

静まり返ってしまった席で、『…私如きが烏滸がましかったです。申し訳ありません』と御挨拶して逃げるように帰った。涙も見られてしまっただろう。

不注意な自分が、取り乱して逃げ出した自分が情けない。御嬢様方も一刀様も御不快だっただろう。

 

 

 

 

コンコン、と自室の扉が叩かれる音で目を覚ました。

酔いと泣き疲れで少しうとうとしてしまっていたらしい。応える気が起こらずにいると扉が開かれ、

「伯達ですよ。大事な御客様がお見えなのですからもう少ししっかりなさい」

と言われた。夜も遅くとても接客する気分でもないので断って下さいと言おうと振り向くと、姉様の姿は既に無く、なんと一刀様が立たれていた。

慌てて席を立って涙の痕を袖で拭い、見苦しいところを御見せして申し訳ありません、このような夜分にどのような御用向きでしょうかと申し上げると、

「いや、仲達さんとだけ出来なかったから残念でさ。あの後ポッキー…あの揚げ棒が無いかお店に聞いたんだけどもう品切れで」

と仰った。有難う御座います、ですが私如きなどにお気遣い無くと申し上げるといや、と制され、

「それで、代わりにこれでどうかなぁ」

と掌を開かれると、そこには小さな飴玉が乗せられていた。

 

 

 

 

 

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すっかり飴の味など無くなってしまってようやく唇を離した時に、自分がとっくに止まれなくなっていることに気がついた。

馬鹿か。

はしたない。

理性ではそう思っているのに、不埒な考えに体と口が止まらない。

 

「や…やはり私は…一刀様の揚げ棒が、欲しいのです…」

とても御顔が見れず一刀様の胸に顔を埋めてそう呟いてしまうと、分かったよ、と優しく笑われて抱きかかえられた。

 

恥ずかしいやら嬉しいやらで、気が狂ってしまいそうだ。

一刀様。今夜はどうか、仲達の顔を見ないで下さい。

 

その御首を掻き抱いて口付けしたい衝動をこらえて、心の中でそう願う。


 
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