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真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史動乱編ノ四十一


 お待たせしました!

 前回、朱里より皆に対して宣戦布告が

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2013-05-23 21:28:13 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:5161   閲覧ユーザー数:4071

 

 おかしい…。

 

 最近、皆の俺に対する態度がおかしいとしか言いようの無いような状況が

 

 続いていた。

 

 何やら俺の事をチラチラと見てるような気がして振り返ると、途端に眼を

 

 逸らしたり、気になって聞いてみても何だか要領を得ないような返答ばか

 

 りで、何だかよく分からない状況であった。

 

 どうしても気になって朱里に聞いてみてもとばけた返事が返ってくるばか

 

 りで結局何も分からないままであった。

 

「丁奉さん、何か知らないか?」

 

 最終的に他に聞く人もいないので、丁奉さんを夕食に誘って、城下にある

 

 個室型の食堂で聞いてみる事にした。

 

「…北郷様も大変ですね。確かに私は知っているのですけど…」

 

「知ってる!?教えてくれ!」

 

「私の口からはちょっと…本来ならあなたがご自分で気付かなくてはならな

 

 いお話ですし」

 

「そうなのか?」

 

「…皆さんも大変だ。おそらく朱里さんもそれを心得ているからこそあんな

 

 事を言ったのかもしれませんけど」

 

 丁奉さんはそう言ったきり何も言わなくなった。結局この日分かったのは

 

 何やら朱里が俺に関する事で皆に宣言したらしいとの事だけであった。

 

 しかし、一体何なのだろう?誰か教えて!←(自覚無し)

 

 

 

 そして次の日、何時ものように朱里に起こされて朝食を摂り、仕事をして

 

 いた時。

 

「兄ちゃ~~~~~~ん!」

 

 勢い良く扉が開いたかと思うと、そのままの勢いで飛び込んでくる一つの

 

 影があった。

 

「うおっ!?…っととと!こら、季衣!人の部屋に入る時はまず軽く扉を外

 

 から叩いて確認してから入れって言ってるだろう」

 

「…ごめんなさい」

 

「…もう、季衣ったら勝手に一人で行っちゃうんだから。何時もごめんなさ

 

 い、兄様」

 

 続いて入って来た流琉がそう言って頭を下げる。

 

 一応言っておくと、最初に入って来たのは許楮…季衣である。今は流琉が

 

 預かる形で此処に滞在している。当然、奉仕労働の刑に服している状況な

 

 ので、現在も無給での生活である。

 

 しかし無給ではあるものの、何だかんだと流琉がご飯を作ってあげていた

 

 り、街の人達からも可愛がられていて時々お菓子や饅頭をもらってたりと

 

 此処での生活を満喫しているようである。

 

(一応、真名は預かり済である)

 

「…何一人で流琉はいい子ぶってるんだよ…そもそも何時も兄ちゃんの所へ

 

 押しかけさせようとしているのはそっちの…」

 

「わあ!わあ!!わあーーーーーっ!!」

 

 季衣が何か言いかけようとしたその時に流琉は大声でそれを遮る。

 

「ん?どうした、いきなりそんな大声出して?」

 

「な、何でもないんです。そ、そうだ!!兄様、新しいお菓子が出来たんで

 

 一緒にどうですか?」

 

 へぇ…新しいお菓子か…ちょっと気になるな。何だかごまかされたような

 

 気もするが。

 

「よし、仕事も区切りがついてるし、ご相伴に預かろうかな」

 

「はい、それじゃこちらへ」

 

 

 

 俺達は流琉の部屋へと来ていた…そういえば、流琉の部屋は初めてだな。

 

「どうしました、兄様?」

 

「いや、女の子の部屋って久々に入ったもので…」

 

「朱里さんの部屋にもですか?」

 

「うん、朱里は何時も『私の部屋にはご主人様が見たら呪われる物が沢山あ

 

 るので入ったらダメでしゅ!』とか言って入らせてくれた事は無いんだ」

 

 …まあ、おそらくBL本ばっかりなんだろうけど。

 

「そうなんだ…ふふ、そうなんだ♪」

 

 そして何か流琉は急に上機嫌になっていた。

 

「さあ、兄様。これが新しく作ったお菓子です。味は季衣のお墨付きですよ」

 

 そこに出て来たのは…。

 

「ドーナツ?」

 

「はい、朱里さんに作り方を教えてもらって自分なりに改良してみたんです」

 

「兄ちゃん、これ本当に美味しいんだよ!!」

 

 季衣はまるで自分が作ったかのように威張っていた。

 

「ほう…それじゃ、いただきます」

 

 俺はドーナツを一つ取り、一口食べる。

 

「おおっ…本当にうまいな、これ」

 

 俺がそう言うと、流琉はとても嬉しそうな顔をする。

 

「ありがとうございます!良ければこっちもどうぞ」

 

 そう言って次に流琉が出してきたのは、あんドーナツであった。

 

 それもまた美味であったのは言うまでも無い。

 

 

 

「「ごちそうさまでした!」」

 

「はい、おそまつさまでした」

 

 それから程無くして俺と季衣はドーナツを全て平らげる。

 

「あっ、季衣。そろそろ次の奉仕労働の時間」

 

「えっ、もうそんな時間?それじゃ、いってきます!!」

 

 季衣はそう言うと一目散に駆け出していった。

 

「どうやら季衣はちゃんとやっているようだな」

 

「はい、最近じゃ街の人にも頼りにされてるみたいで。この間、陛下に報告に

 

 行ったら『そうか、なら許楮の事をそろそろ許してやっても良いのかの…こ

 

 れからはそんなに厳重に監視せんでも良いぞ』とか仰られましたよ」

 

 ふむ…最初は大丈夫かと心配だったが、これなら問題無いな。俺からもそれ

 

 となく陛下に言っておこう。

 

「でも、流琉は行かなくても良いのか?一応、監視する立場だろ?」

 

「最近はもう街の人が季衣があれをやったとかこれをしてくれたとか全部教え

 

 てくれるのであまり私の出番は無いんです。さっきも言った通り、陛下から

 

 も緩めで良いって言われましたし」

 

「とは言っても、街の人達に任せっきりも良くないしね。流琉もちゃんと任務

 

 を果たすようにね」

 

「はい!…でも」

 

「でも?」

 

「今は兄様と一緒にいてもいいですよね?」

 

 流琉はおずおずと上目遣いにそう聞いてくる…うっ、可愛すぎる。

 

「ま、まあ、少し位なら」

 

 俺がそう言うと流琉は満面の笑みを浮かべていた。

 

 

 

「季衣ちゃん、今度はこっち頼むわ!」

 

「は~い!」

 

 その頃、季衣は家の解体作業をしていた。

 

 普通なら大の大人が何十人がかりでするような力仕事を一人で軽くやってし

 

 まう為、今や季衣は街の人達に重宝がられていた。

 

 ・・・・・・・

 

「ふう、これで終わりかな?」

 

「ありがとう、季衣ちゃん。ほれ、少しだけどお礼だ」

 

 作業を頼んだ家の主はそう言って袋一杯に入った饅頭を季衣へ差し出す。

 

「えっ、こんなにもらって良いの?」

 

「ああ、これ位で済むなら安いもんさ」

 

「ありがとう!」

 

 そしてもらった饅頭を頬張りながら帰っていると、

 

「今お帰りですか、季衣ちゃん?」

 

「あっ、朱里…さん。うん、そうだよ」

 

 そこへ通りがかった朱里に声をかけられる。

 

「ふふ、別に無理してさん付けにしなくても良いですからね。ところで…流琉

 

 ちゃんは今日は一緒ではないのですか?」

 

「流琉は兄ちゃんと一緒にいるよ!」

 

 それを聞いた朱里の顔色が変わる。

 

「えっ…それって」

 

 そのまま朱里は慌てた様子で城へと戻っていった。

 

「あれっ…ボク、何か悪い事言ったのかな?」

 

 季衣は饅頭を頬張りながら首をかしげていたのであった。

 

 

 

「ご主人様!」

 

 朱里は城へ帰ると一目散に一刀の部屋に入るが、そこには誰もいなかった。

 

「此処にはいない。まさか…」

 

 続いて流琉の部屋に向かうが、

 

「此処でもない…それじゃ何処へ?」

 

「朱里?こないな所で何してんの?」

 

 そこへ通りがかった霞がそう問いかける。

 

「霞さん…ご主人様を見ませんでした?」

 

「一刀なら食堂で流琉と一緒に何かしとったけど…もしかして、心配なんk…」

 

 霞がそう言いかける前に朱里は食堂へと向かっていってしまった。

 

「まったく…朱里も自分であないな事言っといて…。でも、あの様子やったら

 

 別に朱里が考えてるような事にはならんと思うけどなぁ」

 

 霞のその呟きを朱里が聞く事は無かったのであった。

 

 ・・・・・・・

 

 そして朱里が食堂に着くと、中から大勢の話し声が聞こえてきたので中に入

 

 ってみると、

 

「あっ、朱里ちゃん。ちょうど良かった、皆で流琉ちゃんの作ったお菓子を食

 

 べていたんだよ」

 

 朱里の姿を見た雛里がそう話しかけてくる。

 

「お菓子…あっ、ドーナツ…」

 

 朱里が眼を向けると、食卓の上にはたくさんの種類のドーナツが置かれていた。

 

 

 

「あっ、朱里さん。どうです?朱里さんに教わってからいろいろ作ってみたん

 

 ですよ」

 

 流琉に勧められるまま、朱里はドーナツを一つ食べる。

 

「はわっ…美味しいです」

 

「本当ですか!?やったーーー!兄様、朱里さんが褒めてくださいました!」

 

「そりゃ、流琉が丹精込めて作ったドーナツがまずいはずはないだろう」

 

 朱里に褒められた流琉は満面の笑みで喜び、それを一刀はこれまた嬉しそう

 

 に見ていた。

 

 ・・・・・・・

 

「朱里さん、大丈夫ですか?お体に障るのであれば別に手伝わなくても…片付

 

 け位、一人で出来ますし」

 

 他の皆はドーナツを平らげた後自室へと帰っていったが、朱里は流琉の手

 

 伝いをしていた。

 

「大丈夫です。たまには体を動かした方が良いって言われてますし…それに」

 

「それに?」

 

「流琉ちゃんに一言謝りたくて…」

 

「何をです?…私、別に何も…」

 

「季衣ちゃんから流琉ちゃんがご主人様と一緒にいるって聞いた時、私はてっ

 

 きり…」

 

 朱里がそこまで言うと流琉も何を言いたいのかを察したらしく、顔を赤面さ

 

 せたまま少し黙ってしまったが、ポツリと洩らす。

 

「そういう考えが無かったわけでは無かったのですけど…その、いきなりそう

 

 いうってどうかなって…ちょっと思ってしまったんです。だから他の皆も呼

 

 ぼうって兄様に私から言ったんです。でも…私も兄様の子が欲しいと思って

 

 いますしね。今日はしませんでしたけど、いずれは…」

 

 流琉はそう言って朱里に向かって微笑んでいた。

 

 

 

 その日の夕刻、朱里は城壁の上に一人でいた。

 

「何だか自信が無くなってきました…おばあ様は同じような状況をどうやって

 

 乗り越えたんだろう?やっぱり私とおばあ様じゃ違うのかな…」

 

 朱里が空に向かってそう呟いていたその時、上空から光の球のような物が落

 

 ちて来るのが見えてきた。しかも近付いてくるにつれ、この世の物とは思え

 

 ない位におぞましい声のような物まで聞こえてきたのである。

 

「…うっふーーーーーーーーーーーぅぅぅぅぅぅんんん!!!!!」

 

「…はわっ!?まさかあれって…?」

 

 聞き覚えのあるその声に朱里が慌てふためいたその瞬間、光の球から一人の

 

 人間というのか怪人というべきなのか判断しずらいものが飛び出す。

 

「ぶるわぁぁぁぁぁ!!どぅふふ、華麗に着陸ねぇん♪愛と正義の使者、貂蝉

 

 ちゃんただいま参上よぉん♪」

 

 それは予想通りと言うか何と言うか…貂蝉であった。

 

「はわわわわ…本当に貂蝉さんでしゅ」

 

「お久しぶりねぇん、朱里ちゃん。あなたとご主人様の活躍、私も遠い空から

 

 しかと見させてもらったわぁん。おかげでこの外史も救われたし万々歳ね。

 

 ここまで完成されたのを見た否定派の連中も遂に諦めてくれたから私も来れ

 

 たのよぉん。これでこの外史を作る基になった人の想いも成就したわねぇん」

 

「…ここの外史を作る基になった人?」

 

「詳しくは言えないけど、正史において魏に簒奪された漢の存続を願った人達

 

 とだけ言っておくわぁん。それを叶える為に外史を漢の建国まで遡った位に

 

 ねぇん」

 

「まさか…あの方が自分の命を賭してまで漢の再興に執念を燃やしたのは此処

 

 が正史での自分の想いで創り上げた外史だったから…?」

 

「それ以上は禁句よぉん」

 

 朱里が考えを巡らそうとするのを貂蝉はやんわりと押し止める。

 

 

 

 

 

 

 

「…分かりました。それはそうと貂蝉さんが此処に来たという事は、もしかし

 

 て…?」

 

「そうよぉん、此処でのご主人様と朱里ちゃんの時間は残り僅かという事ね」

 

「それは後どれ位ですか?」

 

「私も詳しくは分からないけど…多分もう二ヶ月は無いわねぇん」

 

 朱里がその言葉に息を飲む。何故なら、自分が前に北郷軍の面々に言った期

 

 日も二ヶ月であったからだ。自分としては確証があったわけでは無かったが、

 

 予感していたものは正しかった事が貂蝉の口から発せられた言葉で証明され

 

 たのである。

 

「ならば…いろいろと考える事はありますね」

 

 朱里の眼は再び上空を見つめていたのであった。

 

 

                 

 

                                           続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 何か前半の流琉の件はいらなかったような感じに締めくくって

 

 しまいました…。

 

 とりあえず後は朱里が一刀への皆の攻勢をかわしつつ、現代へ

 

 帰るという段取りで進みます。

 

 

 それでは次回、外史動乱編ノ四十二でお会いいたしましょう。

 

 

 

 

 追伸 ちゃんと六韜の後継者は決めてから帰りますので。

 

 

 

 

 


 
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