No.579221

恋姫・鬼・無双 第一幕 Ep4

白雷さん

たんぽぽなんでそんなかわいいの?

「えっ?ほめても何もでないんだよ!もう、知らないっ!」

2013-05-23 01:25:28 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:5817   閲覧ユーザー数:4786

~一刀視点~

 

一日かけて、蒲公英の乗馬コース1"初心者でも上手にのれちゃうもん”をとっていた俺は、その翌日、上手にとはいかないが、なんとか乗れるようにまでなっていた。

 

「お兄様、だいじょうぶ?」

 

そんな風に聞いてくる蒲公英は、さすがあの馬岱といったところか、とても鮮やかに馬を乗りこなしていた。それに比べて、俺・・・情けないよなぁ、そう思いながらも俺は必死に先をかける蒲公英についていっている。

 

「お兄様、ちょっと、休憩する?」

 

俺が腰を痛そうにさすりながらそう馬に乗っていると蒲公英がそう聞いてくる。

 

「多分、大丈夫だ。ありがとうな、蒲公英」

「そっか、ならいいけど。あんま無茶はしないでねっ!それにしても、お兄様、この道をいま南のほうに向かっているけど、目的地はあるの?」

「そうだな。天水の地だな。」

 

これから、俺の予想、いや俺がしっている歴史どうりであれば、まもなく黄巾党がではじめ、その乱は次第におおきくなる。その戦いに生き残った勢力は次の時代へとさらにその勢力を強めるだろう。この時代、王朝は腐っている。まず最初におこるのは、三国史上最大の茶番劇反董卓連合が組まれる。そして、その功績をおさめたものたちは諸国に帰り、三国時代の幕開けとなるわけだ。それだったら、まずは董卓の動きを抑えておくのがいい。確かこのころは天水の地に董卓はいるであろう。腐っても官軍だ。奴に近づけば、いろいろと情報も入るしな。

 

「おー、それって月ちゃんのところだね!」

「?誰だそれは?」

「董卓ちゃんのことだよ。」

「何っ!董卓は男じゃないのか?」

「もう、なにいってるのーー?月ちゃんはかわいい女の子だよ。」

 

この世界がおかしいというのはしっていたが、あの董卓までもが女の子だとは思わなかった。しかも、蒲公英の言い方からして、大人の女性ではない。蒲公英くらいの年齢だ・・・はあ、なんなんだこの世界は・・俺の知ってる董卓は、ゲームでの台詞が酒池肉林がーとか叫んでいるひげ親父だぞ・・・はぁ・・

 

「なんで、蒲公英は董卓のことを知っているんだ?」

「なんでーって。たんぽぽのおば様が仲がいいから、昔遊んだことがあるの。」

「蒲公英のおば様?」

「うん、馬騰っていう名前でお姉さまよりものすごいつよいんだから!」

 

想像はしていたが・・あの馬騰までもが女性か・・・この世界はすべての将や王が女性なのか・・・すると、曹操や孫策、劉備も女性だったりして・・・まあ、それはあとでしることになるだろう。それにしても、蒲公英が仲が良いということはそれは、つまり

 

「蒲公英、その董卓のことをどう思う?」

「どう思うって?かわいいとは思うけど・・・あ、お兄様!狙ってる!狙ってるんでしょ!だめだよ、犯罪だよ!つかまっちゃうよ!」

「おいおい・・どうしてそうなるんだ。俺が聞きたいのは、董卓が悪政を働くような、悪い奴かということをききたいんだけど?」

「そんなのありえないよーー!あの月ちゃんが。なんでそんなこというのーー?もしかして天水の治安ってそんなに悪いの??」

 

蒲公英はそんな俺の言葉に、ちょっとその表情を暗くしながら聞いてくる。なるほど・・蒲公英のこの反応、つまり董卓は俺が知っているような人物とは正反対のようだ。それならば、この世界では諸侯による反董卓連合は組まれないということか。それかもしくは、誰かにより、祭り上げられるか・・・

 

「いや、これから向かうところが天水だから、その地方の治安を聞きたかっただけだ。蒲公英の友達を悪く言ったようなら、ごめん」

「ううん、そうなら、別にいいよ。」

 

蒲公英はそういわれて安堵の表情を示す。

 

「蒲公英が、天水をしっているということは、ここからどれくらいなのかも知っているか?」

「うーん。このままいけば2日、3日でつくと思うよ」

「そうか、ならば、今日はこの近くの街で休んでいくか。」

「うん!たんぽぽもおなかすいたしそうするの!」

 

あまり、今はあせる必要はない。それに、いろいろなところにより、様々な情報を手に入れたい。そう思いながら、俺たちはその街へと馬を走らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「賊だ!賊がきたぞーーー!」

「逃げろ逃げろーーー!」

 

 

そんなときだ。そんな叫び声がが街のほうから聞こえる。嘘・・・だろ、なんなんだよ、この世界は・・・そんな叫び声にそう俺は思う。見れば、もうすでに街のほうからは火があちこちからあがっていた。

 

 

いたるところで、賊が好き勝手し放題だ。止める奴なんて、誰もいない・・王朝は腐ってやがる。人が死んでいく、また人が死んでいくんだ。ほかでもない、人の手で。俺は街からのそんな叫び声にこの世界で見た最初の光景を思い出す。とたん、気持ちが悪くなり異の中のものを戻そうとしていた。

 

「お兄様・・・」

 

馬をとめた俺の近くに蒲公英は近寄ってきて、そっと俺のすそをつかむ。俺は、そんな蒲公英の姿をみる。彼女は震えていた。

 

「蒲公英」

 

俺はそんな風に震える彼女の名を呼ぶ。そう、だよな。賊のせいで蒲公英はすべてを失ったんだ。彼女は怖くて逃げ出したいだろう。でも、そうしたらここの人はという思いがあり、必死に自分と戦っているんだ。俺が、しっかりしなくてどうするんだよ・・・。もう、決めたじゃないか。俺はそう震える蒲公英の手を握る。

 

「お兄様?」

 

それがすこしばかり強かったのか、蒲公英は不思議そうに俺のほうをみる。

 

「蒲公英は、ここで待っていてくれ。」

「ここでって・・・何でよ。お兄様はどうするの」

「俺は、そうだな。少し、様子を見てくる。」

「うそつき、そういいながら、街の人を助けに行くつもりでしょ」

 

そういう蒲公英は、俺の目をしっかりと見つめていた。

 

「あのとき、たんぽぽを助けてくれたみたいに、お兄様は一人で助けにいくつもりでしょ。」

「蒲公英・・・」

「それくらいわかってるもん。たんぽぽは、それくらい・・・それくらい・・・。」

 

強いな、そう思う。まだ、目の前で両親やみんなが殺されてからそれほど時は過ぎていない。しかし、蒲公英は恐怖に震えるからだをその手で押さえて、踏ん張っている。ここから逃げないでちゃんと立ち止まっている。  

 

許さない・・・また、だ。彼女を見ているとそんな憎しみがこみ上げてくる。彼女には、決して知られることのない、いや知られてはいけない俺の心の中にある闇。この世界は、狂っている。

 

「ありがとう、蒲公英、その気持ち、うれしいよ。でも、ここに残ってくれ。」

 

だから、せめて俺は、俺の大切なもののために、この世界に抗い続けたい。

 

「なんでっ!たんぽぽもいくっ!いかせてっ!たんぽぽも戦うの!」

「だめだ、蒲公英。そんな状態で戦えるか?俺は無理だと思う。」

「大丈夫だよ!」

 

そう強がっていう蒲公英はその足を震わしていた。それでは、逃げるどころか、戦うことなどできるはずがない。でも、彼女は思ってしまっているんだ。ここで行かなかったらまたあの時とおんなじになってしまうと。

 

「蒲公英、きいてくれ。まだ、君じゃ無理だ。」

「なんでっ!なんで、そんなこというの。大丈夫だよ!たんぽぽだって、さよならしたんだよ!もう大丈夫。今度はきっと戦えるよ!」

「そうかも、しれないな」

「お姉さまにはかなわないけど、戦えるの!」

「ああ、知ってるよ。」

「だったら、たんぽぽも!」

「悪いけど、連れて行けない。」

「なんでっ!」

「足手まといだ。」

 

彼女の気持ちはうれしい。そして、なにより彼女が今の自分ではいやだと思っている。その気持ちは大切だ。けれど、これは稽古はない。命のとりあいだ。だから、こそ俺はそうはっきり言った。こんなところで、彼女の気持ちに同情して、彼女を失うくらいならばこうしたほうがいい。

 

 

「お兄様・・・」

 

そんな一言に、えっ、という表情でこちらを見てくる蒲公英。そんな俺は、彼女を無視し、馬にまたがる。しかし、蒲公英は馬にまたがった俺のズボンのすそをちょんとつかむ。

 

「蒲公英、聞こえなかったのか、俺はっ」

 

そういおうとしたときだった。蒲公英はその首をぶんぶん振りながら俺の言葉をさえぎった。そして、こちらに向けられる彼女の瞳からは涙が出ていた。

 

「ありがとう、お兄様・・・」

 

彼女は、そう確かにいった。

 

「ああ」

 

そういって、俺は馬を走らせた。街へ駆けて行く俺をを蒲公英はもうとめることはしなかった。俺のこぶしには力が入る。蒲公英、彼女の気持ちを思うと俺はあふれ出すこの感情を抑えきれない。俺が、この世界で守らなければならないもの。俺はそれを知る。なんで、なんで・・・助けを求めている人たちが殺されなきゃいけない。なんで、普通に楽しく生きている人たちがこの世界から消えなければいけない・・・。

 

 

なんで、この世界はこうも思い通りにならない・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおぉぉおおおおおおお!」

 

 

俺のそんなどうしようもない感情はそんな天への叫びとなって、だれに届くこともなく、その大きな空へと消えていった。

 

街に入ると、そこにはあの時と同じ光景が広がっていた。いや、それよりも悲惨であった。あの時は、少女一人しか残っていなかった。しかし、今は賊たちがまさに襲っているのである。俺が歩く中、そんな血しぶきが俺に飛ぶ。俺は、剣を抜く。周りは騒がしいはずなのに、俺にはそれがきこえない。お前ら・・・何が楽しいんだよ、俺は人をかって笑っている賊どもにそう心の中で問いかける。

 

「なんだ!貴様はっ!」

 

俺が、ふらふらと歩いていたのか、近くにいた賊がそう剣を俺の前で構える。しかし、その賊の首はその直後にはなくなっていた。

 

「自分がしたことを、地獄で反省するんだな。」

 

俺はそういいながら、走り出していた。

 

「貴様らぁぁぁああああ!お前らの相手はここにいるぞ!お前ら、殺すのが好きなんだろう。」

 

そういいながら、俺は刀を振り回し、賊をかっていく。

 

「だったら、殺される覚悟があるんだよな」

 

俺はそういいながら、次々と賊の首を跳ね飛ばしていく。

 

「だったら、俺にかかってこい!俺を殺してみせろ!」

 

   「ひっ、ひけぃ、退くんだ!!」

 

賊のかしらみたいな俺に恐れ、そういいながら、部隊をまとめていく。なんだ?・・そこで俺は異変に気がつく。なにか・・・おかしい。いや、賊なのに、まとまりすぎている。どこかの軍とまではいかないが。なんだ、あの動きは。殿をおき、迎撃の陣のようなものをつくり、乱れずに賊は引き始めた。これは・・・つまり、裏に誰かがいるということか。賊をこんなまでにきれいに束ねあげるなんて。だれだ、だれが裏についている・・・そして、そんなことができるのならば、なぜその力を人々のために使うことができないっ、いや、考えられるのは・・・、俺はそう思いこぶしを握り締める。

 

 

「許さない・・・」

 

 

俺はそうつぶやきながら、その賊に突撃していった。

 

   「おいおい、俺たちの思い通り、奴はつっこんできたぞ。」

   「そうか、ここであの陣形を取れば俺たちの勝ちだ。」

 

そう賊はいいながら、俺が突っ込んできたところに道をあける。しまった、あせりすぎたか。俺はそう思い引き返そうとするが、一度あげてしまったスピードはなかなかとまらなかった。囲まれた・・か。賊たちは俺を呼びよせて、俺を包囲したのだ。

 

   「お前、一人でよくもやってくれたな。」

   「もう、偉そうにしているのは終わりだ。」

   「お前も、あの間抜けな奴らみたいに助けを求めるのか?」

 

賊はそんなことをいいながら、俺のほうへと剣を構える。俺はそんな彼らの姿を目の前に下をむく。

 

   「あ?どうしたお前、さすがにあきらめんのか?つまんねえ奴だな。」

   「しょうがねえよ。こんな数に囲まれちまっては。」

 

そういいながら、賊たちは笑っている。

 

「違うさ。」

 

顔を上げた俺を見た賊はその表情を驚愕のものに変えた。なぜなら、俺の口元はにやっと、笑っていたから。

 

「ふっ、ふははははは。」

 

俺は、そんな賊たちの表情をみて狂ったかのようにそう笑う。

 

   「な、なにを笑っている!」

 

「馬鹿が。退いていれば命はあったものを。 お前ら、ここで終わりだ。」

 

俺は、笑いをとめ動揺する賊たちにそう告げる。

 

   「なっ、なんだ、こいつ。おかしくなっちゃたのかよ。」

「ああ、そうかもな。でも、お前らには関係ないだろう?人をかることでしか喜びを味わえない、このくずどもが。さあ、どいつから命を捨てたい?」

 

そう聞くと賊たちは貴様ーーーといいながらまとめて、かかってくる。

 

「なんだ、みんな死にたかったのか。」

 

俺はそういいながら、向かってくる賊を鋭くよけては首をはね、低く状態を保ち、急所をきりすてる。その繰り返しをしていた。敵からすれば、俺は現れては消えているように思えたであろう。

 

ときも立つことなく俺の周りはもう動くことのない賊でうめつくされていた。そんな中、一人男は腰をぬかし、隣の女にむかって助けてと足にしがみつきながらそういっている。しかし、その隣の女は俺のことはみようともせず、ただ呆然と空を見上げていた。

 

「お前らか・・・」

 

俺は、剣についた血をふき取り、奴らのもとへと、ゆっくり歩いていく。

 

「ひぃぃい!おっ、お助けを!お助けを!おいっ!お前、俺を助けんか!」

 

そういいながら、男はおびえながら女にしがみついている。

 

「お前は、この賊の頭なんだろ?」

「ああっ、けれど俺には関係ない!関係ない!そっ、そうか金がほしいのか?なんんらば俺の」

「そんなものはいらない。」

「そうか、なら何がほしい?何でも、用意するぞ。」

「何でもか、であるのなら、お前らが今までに奪ってきた民を元通りにしてもらう。」

「そっ、そんなことができるわけがないだろう!」

「ああ、そうだよな。なあ、お前の部下はもう死んでいったんだ。」

「あんな奴ら、使えない奴らは俺の仲間ではない!そっ、そうだ。お前、俺のもとではたらか」

 

そんなふうに俺にこびをうりながら助けを求めている男の言葉はそれ以上続くことはなかった。

 

「お前も、潔く死ぬんだな。」

 

俺は、二度と話すことのない男にそういいながら、次に女の首に刀をつきつける。女は刃が首にあたり、やっと自分が置かれている状況を理解したのか、俺のほうに目線を移す。その目を見て俺は思う・・・。こいつ・・・。俺がしていた同じ目をしていやがる。

 

そう、俺が愛里のことを守れなかったあの日から俺は愛里をこんな目にあわせた世界に絶望した。そして、そんな世界から愛里を守れなかった自分にさらに絶望した。俺の目は死んでいた。確かに命はあるのに、まるでここに存在をしていないかのように。俺の目は現実を見ていなかった。

 

「お前が、賊をまとめていたのか?」

 

さきほど、首をはねた男があんなふうな策を考え付くわけがない。そう思った俺は、そう聞く。

 

「・・・殺せ」

 

しかし女はそんな俺の質問に答えることもなくただ、そういった。くそったれが・・・なんて目をしていやがるんだ。以前、自分が自分自身で見た目であるがために、俺はなぜか怒りを押さえつけることができない。

 

「ふざけるな、いいか。お前に選択肢はないんだよ。俺の質問には答えてもらう。」

「選択肢は・・ない、か。確かにそうだな。」

 

女はそういいながら、少しその表情を暗くする。

 

「賊をひきいていたものは今お前が殺したそいつだ。私は、ただ知恵をかしていた。」

「知恵・・・だと。ふざけるな!お前が行っていたのは殺人鬼に殺人の道具を次々と与えていたようなもんだ。」

 

俺は、そんなふざけたことをいう女の首下をつかむ。

 

「ああ、そうだな。」

「お前は、それを望んでやったのかよ・・・」

「お前にそれを答える筋合いはない。」

「お前に答える選択肢はないといっているんだよ。」

「・・・・。なんてことはない。親が人質にされたんだ。」

「そうか。」

 

わかってはいた。普通の賊であるならばこんな目はしない。むしろ人をかることに喜びを覚えている目をしている。それに、あれだけ賊をまとめて動かせるんだ。この時代、仕えるところは、どこにでもあるであろう。そう考えると、結論は自分ではどうしようもない状況に置かれているということだ。

 

「馬鹿かお前は。こいつらは賊だぞ。約束なんて守るわけがないだろ。それに、弱点はもたないというのが賊なんだよ、やつらは腐っているんだぞ。だから、お前の親は殺されてる可能性が高い。お前も、そのくらいわかっていただろう。」

「ああ、わかっていたさ。」

「じゃあ、なぜ!」

「この世界に私は絶望したから・・・。」

「お前・・・。」

 

やはりそうだ。彼女もまた、どうしようもない世界に絶望ししかし、その世界に立ち向かうこともできないあの時の俺と同じだ。

 

「この、臆病ものが」

 

そうだ。かつての自分も何もできずにただそこにいることがたまらずに逃げ出した。

 

「しかし、何もできずにいる奴はどうする!何も選択肢がない奴はどうする!」

「違うな、そもそも前提が間違っているんだ。絶望したからそこで終わるのか!なにもしないままここで終わるのかよ!そんなのただの臆病者のすることだといってるんだよ!」

「そんなことがどうしてお前なんかにわかる!」

「俺も、同じだったからだ。世界に絶望して、ただ現実を見ないようにしてきた。でも、気づいたんだ。それは、その世界を変えることができない自分からの逃げにしか過ぎないと。お前は、この世界に絶望したとかいっておきながらも、どこかでは祈っていたんじゃないか、どこかに、まだ歩ける道があるんじゃないかと。だから、お前は、自分でしぬ覚悟すらなかった。」

「しかしっ、それはっ!」

「現実をみろ!自分がやってきたことをみろ!」

 

 

そういって、俺は彼女の首元をつかんだまま、民達の死体に彼女の目を向けさせる。彼女は、その途端目を瞑る。やはり・・か。こいつはずっと、こうやって何が起こっているのかを見ないですごしてきたんだな。

 

「目を瞑るな!お前はその考えた策で何人もという笑顔を奪ってきたんだ。そいつを、うけとめろ。」

 

そういって、俺はその女の目を開けさせる。

 

「いやだっ、いやだ!やめろーーー!!」

 

女は最初はそういって暴れていたが俺がおさえつけると、彼女はだんだんと静まり、ついにはその光景を凝視しながら涙をあふれださせていた。

 

「うっ、うっ、うわーーーー。」

 

はじめてそう、受け止める人の命に彼女の静かな涙はやがては空へと響く叫びとなっていた。

 

「これは、私がやったのだな・・・。」

「ああ、お前がやったんだ。お前が殺したんだ。」

「あの少女も、あの坊やも、あそこで赤ん坊を抱えている母親も、私がやったんだな。」

「ああ、お前がやったんだ。」

「はっきりいうんだな。」

「本当のことだからな。」

「そうか・・・。」

 

そういいながら女は立ち上がり、俺の前で正座をする。俺は抵抗する様子をみせない彼女から手を離した。

 

「いや、最後ではあるが、礼をいわせてもらいたい。」

「何にだ?」

「私は、最後の最後で、どうやら私は自分に向き合うことができたみたいだ。ありがとう。」

 

そう彼女は涙を流しながらいう。その目はもう前までの目ではなかった。しっかりと、俺を見つめていた。ちゃんと、自分を見つめていた。

 

「だから・・・殺してくれ。」

 

彼女はそういうと、こぶしに力を入れながら目を瞑った。その表情は力ばんでいた。今の自分を見つめることができたから、彼女は死を恐れていた。でも、それが・・お前の望みなのであれば・・・

 

 

 

「そうか、歯を食いしばれ。」

 

 

 

 

俺はそう静かにつぶやく。そうして、彼女を手加減なく思いっきり殴った。彼女は、その殴りに体勢をもちこたえることができず、後方にその身を飛ばしていた。

 

「なに・・・を?」

 

吹き飛ばされた彼女はなんとかその身をおこすと、俺が殴った頬をおさえながら、なにが起こっているかわからないといった表情で俺にそう聞いてきた。

 

 

「なぜ・・・なぜ、なぜ殺さない!」

「俺は、お前を殺さない。」

「なぜだっ!」

「それは、お前が一番良くわかっているんじゃないのか?」

「しかし!私は、もう生きる資格など・・・」

「だったら、その命、俺にささげてもらう。これから、お前は俺とともに死ぬまで共に道を歩いてもらう。」

「なっ!?」

「いやとはいわせない。安心しろ、俺は賊のようなものではない。かといって、官軍の将というわけでもないがな。」

「いや、それはわかってはいるが。」

「ならいい。で、お前はどうする?くるか、来ないか・・・。選択するのはお前だ。」

「選択、するのは私・・・。」

「ああ。」

「ひとつ聞いていいか、お前の望むものとは何なのだ。あのような武力がありながら、官軍でもどこかの軍の将でもない。お前は、その力をもって、何をするんだ。」

「この世界はどうしようもなく、非常だ。地方では賊が横行し、王朝は権力争いかなんだかはしらないが、民達を助けようとはしない。」

「ああ、そうだな。」

「この世界はどうしようもなく俺たちの思い通りにはならない。」

「それは、当然だろう。」

「だから俺は、この世界を変えてやる。」

「世界を・・・かえる、だと・・・」

 

女は俺のそんな言葉を理解できなかったのか、それともあまりにも言うことが大きすぎてついていけなかったのか目を大きくして驚いている。

 

「それは、自分が思い通りにする世界をつくるためなのか?」

「いや、違う。民達や、みんなが強くあれる世界だ。希望がある世界だ。しかし、そうだな、それは確かに自分のわががまなのかもしれない。」

「お前・・・」

 

 

 

「でも、俺はもう逃げたりはしない。この世界は誰かが変えなければいけないんだ。その誰かを待っていてはいけない。だったら、俺がやってやる。そのために俺には道を示してくれる者、そうだな。いわゆる軍師が必要だ。」

「それって・・・。」

「ああ、お前のことだ。その一生、俺の道に投げ出す覚悟はあるか?」

 

その言葉に女は今度はためらうこともなく、俺の前で姿勢を変え、ひざまづく。それは、臣下が王にとる礼のようなものであった。

 

「姓は司馬、名は懿。字を仲達。真名を桜華と申します。この命、すべてを貴方にささげます。共に、世界を変えましょう。貴方様が思うままに。」

「ああ、桜華。俺の名前は北郷一刀。真名はない。だが、一刀がそれにあたるものだ。そう、よんでくれ。これは、俺とお前、二人だけの契約だ。俺が世界を変えるそのときまで、お前の命貰い受ける。」

「御意、一刀様」

 

そういって、俺たちはそんな契約をかわした。蒲公英には決して知られることのないそんな契約を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~桜華視点~

 

 

「お兄様ーーーー!」

 

私が、彼に乗れといわれ、馬にまたがり、街を出てまもなく馬に乗った女の子がこちらにそういいながら、駆けてきた。そうか、一刀様には妹がいるのか。

 

「蒲公英、ただいま。」

 

一刀様は馬から下りて抱きつく彼女を受け止める。

 

「もう、馬鹿馬鹿!街の人たちがたくさん逃げているのが見えたのに、ぜんぜんお兄様が帰ってこないからもしかしたらって、思っていたんだよーーー。」

 

一刀様に抱きついた彼女は、少しばかり泣いているようだった。

 

「ごめんな。でも、大丈夫だから。」

「ありがとう、お兄様。」

「ああ、いいって。」

 

そういって彼女の頭をなでる一刀様はやさしくほほえんでいた。ああ・・・そうなのか。私は彼をみてそう思わずにはいられない。一刀様がしてくれた契約は、おそらくこの少女には話していない。私にだけなのであろう。彼がかかえる闇を、その表情へあらわさない、この世界への恨みを、彼女はしらない。

 

この人は、一刀様は、何者なんだろうか・・・私はただそう思わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ1

 

 

 

「ところで、お兄様、なんかたんぽぽにいうことあるよね?」

「ん?いうこと?」

「ごめんなさいは!」

「えっ?なんか俺、悪いことした?」

「その後ろの美人なお姉さんはだれなの!もう!月ちゃんの話をしたときは信用したのに!だいなしだよ!我慢できないで、美人だから連れ去ってきたんでしょ!」

「いや、違うよ?」

「違わないの!もう、お兄様はたんぽぽだけじゃ足りないと思っているの!」

「えっ!?」

「あっ、あわ・・・なっ、なんでもない!とにかくいい!誘拐はだめなんだよ!」

 

 

「すみません、一刀様の妹君でしょうか?」

 

俺たちがそんな会話をしていると、桜華がそんな風にたんぽぽに聞く。その丁寧な扱いに蒲公英はすこし、恥ずかしそうだった。

 

「う、うん。」

「いや、ちげーだろ。何でお前は勝手に俺の妹君になってんだよ。」

「もう!いいじゃんそこは!」

「いや、よくねーよ。・・はぁ。桜華。この子は馬岱っていって、数日前にであったんだ。」

「あら、数日前というのに仲がよろしいのですね?」

「ああ、まあ、いろいろあったからな。」

 

その一言と、蒲公英が一瞬見せる表情から桜華は俺の言いたいことをよみとる。さすが、司馬懿だけのことはある。

 

「馬岱様、私は一刀様についてゆくことに決めました、司馬懿と申します。よろしくお願します。」

「えっ。たんぽぽに丁寧な言葉は使わないでいいよ。お兄様に何もされなかった?」

「はい、されていませんよ。ご安心ください、一刀様はどうやらあなたに夢中だそうですので」

「えっ、えっ!!ええええーーー!!!」

 

はぁ、桜華。お前、こういう性格だったのね・・俺は、あわてるたんぽぽを見ながら満足している桜華をみてため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ2

 

 

「おっ、お前何やってるんだよ!」

「一刀様、なにって・・・わかっていらっしゃるくせに。」

 

川で俺が水浴びをしていると、桜華が着物のような格好をして俺に近づいてきた。その服はもうぬれていて、下が透けていた。

 

「いや、桜華。下着、下着つけんの忘れてるから。」

「忘れる?いらないでしょうそんなもの」

「え・・・」

 

桜華はその服の下につけるべきものをつけていなく、いろいろなところが危ない感じで透けていた。というか、もう危ないを通り過ぎてんぞこれ。

 

「私の身はすでに、一刀様のものなのだから、いいのですよ?我慢しなくても」

「いや、うれしいお誘いだけど。それは、やめておくよ。」

「あれ?それはどうしてかしら?」

「こういうのは、大切なやつとするべきだ。俺は確かにその命をささげてもらうといったが、無理にその身までささげろとはいっていない。」

「・・・・ふむ。さすが、ですね。」

 

そういいながらタオルで俺は身を包みそういう。俺のそんな答えに彼女はそういった。なんだ、俺を試していたのか、いろんな意味で。まあ、そうならば、少し仕返しを。俺はそう思い、タオル一枚のまま、彼女の近くにより耳元でつぶやく。

 

「次に俺をこんな風にためしたら、お前の処女はいただくからな。」

「えっ!?」

 

とたん彼女の顔は恥ずかしさで赤くなるが、俺は気づかないふりをして蒲公英がまつ場所へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

おまけ3

 

 

うん・・・そうだよな。

 

「えーーーーーーー!!!!」

 

 

俺は抑えていた驚きを一人になって声に出す。なにせ、あの三国史上、策士のなかで孔明と1位を競うあの、司馬懿だぞ。まさか、こんな形で出会うとは思わなかった。

 

しかし、この世界の有名人たちはみんな美人やかわいい子だらけなのか・・・。

 

 

 

 

 

紹介

 

司馬懿仲達。真名を桜華。5ヶ月ほど前、両親と共に住んでいた村が襲われる。賊は、桜華がとびぬけて頭がいいことをしっていたのか、両親の命と引き換えに、賊の参謀として働かされる。何もできない非常な世界に絶望していた彼女であるが、一刀との出会いをきっかけに、自分を見つめ現実から逃げない覚悟を決める。

 

身長、164センチ。上から、?、?、?。

綺麗な長い紺の髪をもつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

みなさんの予想を覆して、もう一人ヒロインがでました。

 

愛里は今回出番はなし。

 

 

前回で隠れ蒲公英ファンを見つけてしまったのでそろそろ、たんぽぽ

ファンクラブを設立してもいいころかと悩んでいる白雷です。

 

 

あっ、そろそろ、たんぽぽの乗馬コースその2

"馬にのっているのに変なこと考えたらいけないんだよっ!”

が開かれますよー。


 
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