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魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第七十四話 大掃除のお手伝い

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2013-05-18 09:14:37 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:26719   閲覧ユーザー数:23676

 「ユウキ、キッチンの掃除は終わりましたので冷蔵庫や食器棚を戻してくれても大丈夫です」

 

 「了解」

 

 シュテルに言われ、宝物庫から冷蔵庫と食器棚を出すと同時に浮遊魔法を使ってゆっくりと下に下ろし、元の場所に立てる。

 今日は1年の締めとも言える大晦日…12月31日だ。

 俺達長谷川家は増築した我が家の大掃除に取り掛かっている。

 時間は午前10時過ぎ。

 

 「おにーちゃん、おにわのおそうじおわったよ」

 

 「そうか、よく頑張ったねルー。それで一緒に掃除してたディアーチェは?」

 

 ディアーチェとルーテシアに庭で草むしりと掃き掃除をする様、俺は指示していた。

 ちなみにレヴィはユーリとメガーヌさん、3人で増築した際の空き部屋を、シュテルはキッチンと各部屋のシーツを洗って貰っている。

 俺はリビング、玄関、脱衣所、風呂場の掃除の担当で今はリビングの掃除をしている。

 俺が受け持ってる場所が一番多いので、手の空いた人が出てきたら遠慮無くお願いして手伝って貰うつもりだ。

 

 「でぃあーちぇおねーちゃんなら…」

 

 「ここだ」

 

 振り返ると丁度ディアーチェが立っていた。

 

 「庭の掃除はもう終わりだ。ユウキ、人手がいるなら手伝うぞ」

 

 「そうか?なら風呂場の掃除をしてくれるか?ルーはシュテルの洗濯のお手伝いをしてあげてくれる?シュテルは脱衣所にいるからディアーチェについていって」

 

 「「うむ(はーい!)」」

 

 2人に指示を出すとリビングから出て行き、別の掃除に取り掛かってくれる。

 結構良いペースで掃除は進んでる。

 これだと2~3時頃には終わるかな?

 今日の夕食は当然年越しそば。けどレヴィはカレーを食いたいらしいんだよね。

 で、交渉した結果カレーそばで手を打つ事にした。カレーのルーはまだ余ってるし野菜や豚肉もあるし…。

 頭の中で夕食の献立を思案していたところ

 

 ~~♪~~♪

 

 携帯に着信が入る。

 はやてか。何の用だろ?

 

 ピッ

 

 「もしもし?」

 

 『あ、勇紀君?はやてです~。今ちょっとええかな?』

 

 「おう。大丈夫だ」

 

 『そかそか。あんな…今日わたしの家の大掃除を少し手伝ってくれへんかな?』

 

 「ん?それぐらいならいいけどどうしてだ?」

 

 『昼から皆管理局の仕事で家を空けてまうんよ。わたし1人でやってもええんやけど時間掛かってまうから人手がほしくてな』

 

 ふむ…シグナムさん達は仕事か。

 1人で大掃除は確かに大変だな。

 

 「了解。家で昼ご飯食べてから寄らせてもらうわ」

 

 『ホンマ!?おおきにな』

 

 「良いって事だ」

 

 『じゃあ、お昼からよろしくお願いします~』

 

 そう言ってはやてとの通話を終え、俺も掃除を再開する。

 昼食の際に皆に言っておかないとな………。

 

 

 

 「お邪魔しまーす」

 

 昼食を家で済ませ、八神家へ足を運んだ俺。

 シュテル達には昼食の際に伝えたし、『家の大掃除が終われば手伝いに来てくれる』との事。

 

 「いらっしゃーい」

 

 奥の方から声が聞こえ、出迎えてくれるはやて。

 

 「今日はゴメンな。せっかくの大晦日やのに」

 

 「別に謝る必要無いぞ。ウチには人手が充分足りてるから俺が抜けても問題無いし、シュテル達も掃除が終わったら手伝いに来てくれるってさ」

 

 「ホンマ!?それは助かるなぁ。一応なのはちゃん達にも声掛けたけど、皆も『大掃除で忙しい』言うとったから来れるかは分からんみたいやし」

 

 「ま、誰かが手伝いに来るまでに終わらせれたらいいけどな」

 

 「そこはわたし等の頑張り次第かな。とりあえず立ち話もなんやし上がって」

 

 「ん。さっさと掃除に取り掛かろうか」

 

 靴を脱ぎ、上がらせてもらうと

 

 「…凄い数のダンボールだな」

 

 八神家のリビングには相当数のダンボールが積み上げられていた。

 

 「そこに入ってるんはみんなの私物なんや。名前書いてるやろ?」

 

 確かにダンボールには油性マジックで個人の名前が書かれている。

 けど家主のはやては別としてヴィータの荷物が意外に多いな。

 

 「なあ…なんでヴィータだけこんなにダンボール多いんだ?」

 

 「ヴィータ、『のろいうさぎ』のぬいぐるみが好きやから。多分ダンボールのほとんどは『のろいうさぎ』のぬいぐるみやと思うで」

 

 ああ、アレか。ゲーセンのUFOキャッチャーの景品にもよくなっているな。

 でもこんだけヴィータのダンボールに『のろいうさぎ』があるって事はアイツ、相当ゲーセン通って景品ゲットしてるな。小遣いとかどうしてるんだ?

 

 「…ミッドの通貨を日本円に換金すれば問題じゃないか」

 

 本局では優遇されてる筈だから給料もかなりのものだと予想する。

 

 「…で、はやて。俺は何手伝えばいいんだ?」

 

 「それやねんけど、皆の部屋にあるクローゼットとかベッドとかを勇紀君のレアスキルで収納してくれへん?部屋の隅っことかを掃除したいんよ」

 

 「それぐらいならお安い御用だな」

 

 「お願いします~」

 

 はやてに連れられ、守護騎士の皆の部屋にあるクローゼットやベッド、机等を収納していき室内を殺風景なモノに変えていく。

 

 「ザフィーラがおったらどかす事出来たんやけどなぁ」

 

 「仕事なら仕方ないだろ」

 

 というか大晦日にお仕事か。

 俺だったら基本拒否するな。『笑っ〇はいけ〇い』シリーズ見たいし。

 会話しながらも溜まった埃を掃除機で吸い取り、雑巾で拭いて綺麗にしていく。

 

 「…よっしゃ。こんなもんやろ」

 

 はやてと2人で掃除の終わった場所を見る。

 つい先程まで埃被っていた場所が嘘の様に今はピカピカになっている。

 

 「じゃあクローゼット出していいか?」

 

 「うん」

 

 宝物庫からクローゼットを出して元の場所に配置し直す。

 

 「けどええなぁ、そのレアスキル。わたしも欲しいわ」

 

 「皆言うんだよなその台詞」

 

 はやてのぼやきに俺は苦笑しながら返す。

 

 「勇紀君、わたしの家族にならへん?今やったら3食昼寝付きでニート生活満喫できるで?『わたし』っちゅー特典もついてくるしな♪//」

 

 「…お前を特典に貰って何に使えと?」

 

 「そ、そんな事女の子の口から言わせんの?勇紀君、鬼畜やわ////」

 

 「…むしろお前が何想像してるのか聞きたい」

 

 いや、大体予想は付くけどね。この歳で性知識持ってんのかこの子は?

 普段からどんな本読んでるのか…。

 何となくはやての将来に一抹の不安を感じる。

 未来の乳揉み魔がセクハラで捕まる姿を容易に想像できるのがまた何とも…。

 俺ははやての肩に手を置いて

 

 「その…俺がお前を逮捕する様な未来にはならないようにしてくれよ?」

 

 「むしろ勇紀君がどんな未来を想像したんか凄く気になるんやけど!!?」

 

 どんな未来って…

 

 「お前がセクハラの現行犯で俺に逮捕される未来…かな?」

 

 「何でさっきの会話からそうなんの!?」

 

 「以前、お前が女の胸を揉むという暴挙に出た事を聞いた事があってな…」

 

 相談された事があるんですよ。君の家族のピンクのポニテさんと銀髪の管制人格さんに。金髪のショートさんはまだ来てないのですがいずれ来そうな気がしてならないのですよ。

 

 「大丈夫や!!女同士で胸を揉むなんてスキンシップに分類されるんやから!!」

 

 今はスキンシップで済むかもしれないが成長して大人になったら確実に犯罪扱いされても仕方ないんだぞ。

 

 「…『止める』という選択肢は無いのか?」

 

 「無い!!」

 

 キッパリと言い切ったこの子を尊敬してはいけないな、うん。

 

 「まあ、話を戻すけど王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)に似た様な魔法なら次元世界…というよりも管理外世界の何処かにあるかもな」

 

 「あるかなぁ?そんな便利な魔法」

 

 「断言は出来んけどな。もし見付けたら夜天の書に記録しとけばいいだろ」

 

 あ、でも蒐集はすんなよ。

 

 「…そやなぁ。見付けたら記録しとこ」

 

 王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)が魔法で存在してたらビックリだけどな。

 他愛無い会話をしながら、ベッドのあった場所も掃除し終え、宝物庫から取り出して元の位置に置く。

 次に俺は雑巾で窓のガラスを拭き、はやてはベッドのシーツを外して新しいシーツと交換する。

 

 「はやて、洗剤ないか?」

 

 水だけでは少し汚れが取れない。

 

 「ちょっと待ってて」

 

 一旦部屋から出て行ったはやて。

 程無くして洗剤を持って戻ってくる。

 

 「これ使って」

 

 「サンキュ」

 

 窓に洗剤をかけて、頑固な汚れを落としていく。

 やっぱり水だけじゃなく洗剤もあると見違えるくらい綺麗になるわ。

 後は乾いた雑巾でもう一度窓を拭いてやり、窓拭きを完了する。

 

 「こっちは終わったで」

 

 「俺も丁度終わった」

 

 はやての手には折り畳まれたシーツがある。先程外したシーツだろう。今から洗濯して綺麗にしないとな。

 

 「この部屋はこんなもんか?」

 

 「そやね。これだけ綺麗になったらシグナムも満足してくれるやろ」

 

 ここはシグナムさんの部屋だったのか。

 思い出してみたら八神家には遊びに来る事があっても個人の部屋に入った事は今まで無いな。

 個人の部屋に足を踏み入れたのは今回が初めてだ。

 

 「あとはリビングに置いてあるシグナムの私物が入ってるダンボールを部屋に運ぶだけやから」

 

 「じゃあ俺が持ってくるからはやてはそのシーツ、洗濯機に入れてこいよ」

 

 「うん、お願いするわ」

 

 リビングに戻ってシグナムさんの名前が書かれたダンボールを宝物庫に収納……するまでもなく、自分の手で運んでシグナムさんの部屋の中に置く。

 荷解きは自分でしてもらわないと。勝手に他人の物を触る訳にはいかないし。

 リビングに戻ってきて時計を見ると昼の2時過ぎ…。

 はやての家に来たのは1時30分前後だったから部屋の掃除に掛かった時間は30分程。

 後はシャマルさん、ヴィータ、ザフィーラ、リンス、はやての部屋を掃除すればいいだけだ。リインははやてと同じ部屋で過ごしてるらしいし、庭やこのリビング、キッチンや風呂場といった共有場所は午前中で終わらせてるらしい。

 この調子なら4時30分頃…遅くても5時には大掃除完了だな。

 

 「じゃあ次の部屋を掃除するか」

 

 「次はシャマルの部屋の掃除しよか」

 

 俺達はシャマルさんの部屋へ移動する。

 こうして俺とはやては2人で個人の部屋を掃除していくのだった………。

 

 

 

 ~~はやて視点~~

 

 いや~、やっぱ人数が多い方が掃除は早く済むからええなぁ。

 …多い言うてもわたしと勇紀君の2人だけやけど。

 

 「…これで部屋の掃除は最後だよな?」

 

 「うん。わたしの部屋で終わりや♪」

 

 家の中の掃除を全てし終えたわたしと勇紀君。

 今はリビングでお茶菓子を摘まみながら休憩してる最中や。

 

 「あと掃除する場所はもう無いか?」

 

 「掃除してる最中に思い出したんやけど、庭の物置がまだ手付かずなんよ」

 

 すっかり忘れとったけど庭の隅っこにポツンと立ってるプレハブ。物置として使っとるんやけど、誰も朝から物置には一切触れんで掃除しとった筈やからな。

 別に掃除せんでもええんやけどせっかくの機会やし。

 

 「(それに…)//」

 

 チラッ

 

 「(もう少し勇紀君と一緒にいたいしなぁ…)//」

 

 誰も手伝いに来とらん現状を考えると自分の家の大掃除で手が離せんのやろ。

 わたしにとっては現状維持が望ましいんやけど。

 そう思ったら誰も家に残れんかった事にも感謝やな。

 勇紀君の事に関してはザフィーラを除いて誰も譲ろうとせんし。主として『勇紀君の事は諦め』って命令は出来るけどそんな事して皆の自由を奪いたくはないし、家族は仲良うせなアカンからな。

 

 「…さて、と。そろそろ物置の掃除するか?流石に日が完全に暮れるまでには終わらせておきたいんだが?」

 

 「そやね。じゃあ最後の掃除再開や」

 

 わたしと勇紀君は庭に出て物置へ向かう。

 入り口の扉を開けると中には色んな物が埃被って入っとった。

 箒や塵取りは勿論、何故か金属バットにグローブ数個と野球のボール、鍬や鎌といった農具、赤色のカラーコーンやラインパウダーといった物等、色んな物が収納されとった。

 …少なくともわたしが1人で車椅子生活しとった時や、シグナム達が家族になった日からは一度も物置に近付いた記憶は無い。

 て事はこれらの物はわたしの両親がここに保管してたっちゅう事やねんけど…

 

 「(こんなんここに置いて何に使うつもりやったんや?)」

 

 今はいない両親の意図が全く理解出来ひん。

 バットやグローブはまだええ。子供(わたし)と遊ぶために買ったんやったら物置にあるのも理解出来る。

 けど他の物は?鍬と鎌なんか何であるんや?こんな小さい庭で野菜の栽培でもするつもりやったんか?

 それにカラーコーンとラインパウダー…絶対にいらんやろ!!?ホンマ何せーっちゅうねん!!?

 

 「何つーか…混沌(カオス)だな」

 

 勇紀君も呆れとる。

 

 「(天国のお父さん、お母さん、恨むで…)」

 

 うう…恥ずいわ。

 

 「と、とりあえず中の物全部出して早う掃除しよか?」

 

 「ん、そうだな」

 

 早速物置の中にある私物を庭に出していく。

 何つーか…結構沢山の物を強引に詰め込んどるせいで物置の中を空にするのに時間が掛かるわ。

 しかも使った形跡がほとんど見当たらへん。

 お父さん、お母さん…ホンマ何のためにこれらのモン買うたんよ?もし衝動買いで買うたんやったらお金の無駄遣いにも程があるで。

 

 「はやて、麻雀牌と全自動卓も出てきたぞ。しかも全自動卓に関しては未使用みたいだ」

 

 勇紀君が言う様に麻雀牌の入っとるケースと全自動卓が出てきた。勇紀君は『よっこいしょ』って掛け声と共に身体強化を使って物置から全自動卓を出してくれる。

 全自動卓はビニール袋が被せられており、袋越しに見える全自動卓はシミ一つ付いていない新品だった。

 

 「面子が揃えば麻雀出来るな」

 

 「誰か出来る人おるん?」

 

 「はやては出来るのか?」

 

 「一応打てるで」

 

 「ふむ…ならはやて、ディアーチェ、メガーヌさん、ルー、アリサ、すずか、アルフさん、シグナムさん辺りが無難なメンバーだな」

 

 「えっと……今挙げた人達って麻雀出来んの?シグナムが打てるなんて聞いた事無いんやけど?」

 

 「出来るだろう。中の人的に(はやてとディアーチェの中の人である『植田ちゃん』が担当してるあの子は夏休みにアリサと行った縁日で見掛けたしな)」

 

 「中の人?」

 

 「気にすんな」

 

 うーん…『気にすんな』と言われたら気になるんやけど…。

 ……ま、ええか。

 

 「それより今は麻雀じゃなくて掃除だな」

 

 「せやね。早う終わらせんと」

 

 再び中の物を漁っては物置の外に出していく作業を行う。

 やがて物置の中の物を全て出し終えると案の定、埃だらけですぐさまわたしが掃き掃除、勇紀君はバケツに水を汲んできて、掃き終わった所に洗剤を撒き、レアスキルで取り出したモップを使って拭いていく。

 徐々に綺麗になっていくプレハブ内を見て思わず感動する。

 

 「おお…あれだけ汚れていた床がこんなに綺麗になると達成感が」

 

 「後は中に戻す物も綺麗にしないとな」

 

 確かに。出した時は埃被っとった物を拭いて綺麗にせんとアカンな。

 

 「けど農具とか体育用具は正直いらんわ」

 

 「じゃあ俺の宝物庫に収納しとくか?」

 

 「ええの?わたしは捨ててくれてもええんやけど?」

 

 「スペースには余裕あり過ぎるからな。てか収納量は実質無限だし」

 

 やっぱ便利過ぎやで王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)

 

 「じゃあ勇紀君に任せるわ。捨てたくなったら勝手に捨ててくれてもええから」

 

 「了解」

 

 農具や体育用具を綺麗にしてから宝物庫に収納していく様を見て、わたしも他の私物を雑巾で拭いていく。

 もう日も暮れ始めてきて空が少しずつ薄暗くなっていく中、わたしと勇紀君は拭き掃除に専念する。

 必要のない物は勇紀君の宝物庫行きか、不要物として年が明けてから捨てる事にする。

 しばらくはお互い無言で作業に取り掛かり

 

 「「…終わっ……………たーーーーーーーっっ!!!!!」」

 

 最後の私物を拭き終えて勇紀君と同時に声を上げる。

 いやー、もうホンマ疲れた。

 これ、1人でやってたら絶対年内に終わらんかったわ。

 

 「じゃあこれ全部物置に直していくか?」

 

 「うん」

 

 勇紀君が物置の奥から順に拭き終えた私物を直していく。わたしは物置の外から勇紀君に私物を渡していく。

 今度は物置に収納し直す物が減ったため、強引に詰め込まんでもええ様になった。

 

 「勇紀君、全自動卓はどないする?」

 

 家の中に置くとしてもどこに置くべきか…。

 それに毎日麻雀するっちゅう訳でも無いから誰かの部屋に置くにしてもリビングに置くにしてもスペース取るだけにしか思えん。

 

 「そうだなぁ。それも宝物庫行きにするか?」

 

 やっぱそれが一番ええ判断やな。

 

 「お願いしてもええかな?」

 

 「おう。じゃあ麻雀牌もついでに入れとくな」

 

 全自動卓と麻雀牌の入ったケースが空間に呑み込まれていく。

 そして庭に一旦出していた物をどんどんと片付けていき、

 

 「これで最後や」

 

 わたしは野球のグローブをダンボール箱に詰め込み、自分で持ち上げて物置に入る。

 

 「はやて、足元が滑り易いから気を付けろよ」

 

 「わかっ……たーーーっととっ!!?」

 

 「って言った傍から!?」

 

 物置に足を踏み入れた途端足が滑り、勇紀君の方へ体が傾いていく。

 勇紀君もコッチを見たまま避ける事が出来ず

 

 ガシャーン……ガタガタン……

 

 物置内で派手な音が響き渡る。

 わたしは足を滑らせた際に勇紀君を押し倒してしまい、その衝撃で勇紀君が綺麗に置き直していたいくつかの私物がバランスを崩して倒れてしまう。

 幸いにもわたしや勇紀君の倒れている方へ私物が落ちてくることは無かった。片付けてスペースに余裕があったおかげやな。

 怪我はせんで済んだけど、もしわたしの方に私物が落ちてきても、わたしは痛みを感じなかったかもしれへん。

 何故なら

 

 「「っっ!!!?」」

 

 わたしの感覚は全て、自分の唇に集められていたからや(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 「ふ……んっ、……えっ?…んんっ!!!?」

 

 文字通り目と鼻の先で、勇紀君の大きな瞳が見開かれる。

 その瞳の中にいるわたしがはっきりと確認出来る程の距離におる。

 

 「んむ………ん、ふ……!」

 

 勇紀君の唇の柔らかさ、温かさ、匂い、味………それら全てが、わたしの唇から伝わってきてた。

 そこでようやくわたしの止まってた意識が回り始めた。

 わたしは今、勇紀君と(・・・・)キス(・・)しているのだと(・・・・・・・)………。

 

 「んんむぅーーっ!?は、はや…んんっーー!?////」

 

 「んむっ……んん……《ご、ごめんな。その…躓いて……》////////」

 

 勇紀君と唇を合わせつつも念話で答える。

 

 「…んっ……ふ……《と、とにかく立ってくれ!》////」

 

 「……んむっ……ちゅっ……《う、うん……》////////」

 

 勇紀君の指示通りわたしは身体を起こし、勇紀君の上から退く。

 勇紀君も身体を起こし、立ち上がるが

 

 「…………////////」

 

 「えっと…////」

 

 お互いに気恥ずかしい雰囲気が漂う。

 あ……アカン、何か言わんと……。

 とりあえずこの雰囲気を打ち消すため、わたしが口を開く。

 

 「コレ、事故。悪気、ナイ」

 

 「何でインディアン風の口調!!?」

 

 しゃ、しゃーないやん!!わたしかて混乱してるんやもん!

 け、けど…

 

 「(はわわ…勇紀君とき、キスしてもうた…)////////」

 

 こんな事態になるとは思わんかったけどわたしにとっては棚ぼたラッキーや。

 

 「(今年の最後にええ思い出が出来てもうたわ)////////」

 

 わたしはしばらくニヤけ顔を浮かべたまま自分の指で勇紀君とキスした自分の唇をなぞっていた………。

 

 

 

 そんな(嬉しい)事故が起きてからすぐにわたしと勇紀君は家の中に戻って来た。

 お互いリビングのソファーに隣同士で座ったまま

 

 「…シグナムさん達、遅いな」

 

 「そ、そやね…////」

 

 一瞬で会話が終了してしまう。

 さっきの事でわたしは意識しっ放しである。

 勇紀君はもう気になってないみたいやけどアレか?なのはちゃん達ともキスを経験したせいで、もう慣れてもうたんか?

 そう思うと何やイラッとするんやけど、勇紀君の顔見たらさっきの事が脳裏によぎってまうから目を合わせられへん。

 時計の方を確認するともう午後6時。

 外は充分暗くなっている。

 

 「結局、誰も手伝いには来なかったな」

 

 「や、やっぱ大掃除やから手間がかかるんちゃう?//」

 

 「うーん…少なくともシュテル達はもう終わってても可笑しくないんだけど…」

 

 チラッと勇紀君の方を見ると首を捻って疑問に思っている様子だった。

 

 そんな時

 

 prrrr…prrrr…

 

 八神家の電話が鳴る。

 

 「あっ、電話や!ちょう失礼するな?」

 

 「ん」

 

 短く返事する勇紀君から一旦離れ受話器を手に取る。

 

 「もしもし、八神です~」

 

 『主ですか?シグナムです』

 

 おっ、電話の相手はシグナムからやった。

 

 「シグナムか?どしたん?」

 

 『ええ、実は今日思った以上に仕事が長引いてまして帰るのにまだ少し時間が掛かりそうなんです』

 

 「そうなん?じゃあ他の皆も」

 

 『はい…すみません』

 

 申し訳無さそうな声色で謝るシグナム。

 

 「別にええよ、コッチの事は気にせんで。けど遅なるんやったら晩ご飯はどないする?」

 

 『私達はミッドで何か食べてから帰ります。重ね重ねすみません』

 

 「だから気にせんでええって。それより皆無事に帰ってきてな」

 

 『勿体無いお言葉です。では失礼します』

 

 そう言ってシグナムが電話を切ったのでわたしも受話器を置く。

 再び、勇紀君の隣に腰を下ろす。

 

 「電話の相手、シグナムからやったわ」

 

 「へぇ、何て言ってたんだ?」

 

 「『もう少し帰るのが遅くなる』言うてたわ」

 

 「そっか…………ん?」

 

 「どうしたん?」

 

 「シグナムさん、仕事で『ミッド』にいるんだよな?何で『ミッド』から『地球』の八神家に電話掛けれんの?」

 

 言われてみれば…。

 

 「「……………………」」

 

 沈黙がリビングを支配する。

 

 「き、気にしたら負けだな」

 

 「そ、そやね」

 

 うん。何か考えたら怖なったから気にせんとこ。

 

 「でも、これで今日の晩ご飯は1人かぁ…」

 

 何か久しぶりの1人で食事や。

 …寂しいなぁ。新しい家族が出来てからはほとんど1人で食べる食事にはならんかったんやけど。

 

 「…ま、たまには賑やかな食事やのうて静かに食べるのも悪うないかな」

 

 勇紀君がおるから作り笑顔を浮かべながら答える。

 

 「……なら家に来るか?」

 

 「へ?」

 

 そこへ勇紀君からの提案が入る。

 思わずわたしは目が点になっていた。

 

 「せっかくだし家で年越しそば食おうぜはやて」

 

 「で、でも悪いわ。そこまでして貰わんでも」

 

 「そう言うな。お前、1人で食事するの辛いだろ?作り笑顔なのバレバレだぞ?」

 

 「うっ…」

 

 ば、バレてたんか。

 

 「それに1人増えたぐらいで別に慌てる程食事の量が減る訳じゃないしな。そばは大量に用意してるし」

 

 「…そんなにあるんや」

 

 「ま、レヴィがいるからな」

 

 2人して苦笑する。

 

 「ただ、カレーそばだけどいいよな?」

 

 「別に構わへんよ」

 

 「良かった。じゃあ行くか」

 

 そう言って立ち上がろうとする勇紀君の肩をわたしは掴む。

 

 「???どうしたはやて?」

 

 「勇紀君、ゴメンな…。それから……いただきます////」

 

 「え?……んむうっ!!?」

 

 一言謝ってからわたしはそのまま勇紀君をソファーの上に押し倒し、再び勇紀君と唇を重ね合わせる。

 

 「…ん……んちゅっ……////////」

 

 「…んむむっ……////」

 

 静かなリビングで10数秒程キスをしてから一旦唇を離す。

 

 「ふう……////////」

 

 「は、はやてさん!!?いきなり何!!?////」

 

 大声を上げる勇紀君。

 

 「さ、さっきのは事故やったけど……今のは今日の掃除手伝ってくれたお礼やで♪////////」

 

 「い、いや!別にお礼が欲しくて手伝った訳じゃ……むぐっ!!?////」

 

 若干顔が赤い勇紀君の言葉を最後まで言わせぬ様に、もう一度わたしの唇で勇紀君の唇を塞ぐ。

 

 「…ふう……ん……んんっ……////////」

 

 「…んん……んんんっ……////」

 

 お互いの意識が相手の唇に一気に集中するのが分かる。さっきは突然の(嬉しい)事故やったから気が動転してアレやったけど、自分からキスした今は違う。

 

 「…ん……んちゅっ……////////」

 

 勇紀君の唇は瑞々しく甘やかで、まるで春の果実を思わせてくる。

 唇の柔らかさはわたしの意識や理性を溶かしてしまうぐらいに強烈で、吸い立てて自分だけの物にしたくなる。

 アカン……こんなん知ってもうたら……

 

 『止められない止まらない~…』

 

 とあるお菓子のCMのフレーズが脳内に流れ込むけど、今は勇紀君とのキスをホンマに止められへんわたしがおる。

 至近距離にある勇紀君の瞳にはトロンとした表情のわたしの顔が映ってる。

 

 「…んむっ……ぷはっ……(こ、このままじゃアカン。自分の気持ちもちゃんと伝えな…)////////」

 

 顔を上げ、唇を離したときに名残惜しさを感じるけどまずは自分の想いを伝え、告白する。

 

 「勇紀君…あ、あのな……////////」

 

 「お、おう…////」

 

 押し倒した状態、勇紀君を見下ろしたままの恰好でわたしは口を開く。

 

 「わたし…勇紀君の……「ほう?ユウキの、何だ?」…せやから……へ?」

 

 突然、わたしでも勇紀君でもない第三者の声が聞こえたので振り向くと

 

 「家の掃除が終わり、まだ子鴉の所から帰ってきてないから『手間取ってるのだろう』と思って来てみれば…」

 

 腕を組んで仁王立ちしてこめかみをヒクヒクさせてる王様と

 

 「……………………」

 

 無表情で光の無い瞳をコチラに向け、ルシフェリオンの先端を突き出しているシュテルがおった。

 

 「呼び鈴を鳴らしても出ぬから『どうしたのか?』と思った途端、ユウキの大声が中から聞こえてきたので『何かあったのか!?』と思い、鍵の掛かって無い玄関の扉を開けて入ってきてみれば…」

 

 「よ、呼び鈴鳴らしてたん!?」

 

 き、気付かんかった…。

 わたしも勇紀君もキスに気を取られてたせいやろうけど。

 

 「随分お楽しみみたいだなぁ子鴉?」

 

 アカン、メッチャ怒っとる。

 というか王様よりその一歩後ろに控えてるシュテルが超恐い。

 

 「とりあえず、我が家に来てもらおうか子鴉?そこでじっっっっっっっくりと話を聞かせてもらうからな」

 

 「あ、あはは……」

 

 拒否る選択肢は無さそうや。

 ゴメンなシグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、リンス、リイン…。

 わたし、無事に年越せそうにないわ………。

 

 

 

 ~~はやて視点終了~~

 

 ~~あとがき~~

 

 以前からコメントに書かれていたはやてのイベントをやっと書けました。

 といっても各キャラのイベントを書く順番はあみだくじで決めたのでここまで遅くなったのは必然です。

 今回はなのはの時と同じぐらいに甘いイベントにしたつもりです。

 はやてとの絡みを待っていた読者の方に満足いく内容になっていればいいんですが…。

 それにしてもこの小説を読んでいる方ははやてファンが多いんでしょうかね?何人かのコメントに催促されてましたので。

 


 
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