真・恋姫†無双 魏END 外伝第1章
~琥珀の月~
琥珀の月が夜空の星々と共に輝いていた夜。
北郷一刀は逝った。
その事実は天命と言うべき、変えられないもの。
「・・・・・・・・。」
月明かりのもとで涙する少女の慟哭は、もう声にはならなかった。
声にはならない・・・・・だが大粒の涙はいまだに地面に落ちていた。
北郷一刀が消えてからどのくらいたったのか。
少女は先ほどまでの事が、まるで夢であったかのように平然としていた。
「行ってくるわ・・・。」
そうポツリと天を見上げ呟く。
何もなかったように歩き出す。それは、寂しがりの少女ではなく間違いなく覇王・曹孟徳であった。
宴に戻ると、
「もう~、どこに行ってたんですか華琳さ~ん」
桃香が、ヨタヨタと華琳の腕に抱きついてくる。
「すまないわ。ちょっと涼みにね。」
「何かありました?」
桃香の質問に心が揺れる。
「いえ、酔っぱらいの相手が疲れただけよ。」
不安な症状を浮かべながら瞳を一心に見つめてくる桃香に微笑する。
それだけを見ればそれは、なんでもない普段の華琳そのものだった。
誰も華琳に何があったのかは気付かないだろう。たった2人を除いて。
1人は先ほどから華琳の腕に抱きついて離そうとしない桃香。
戦が終わりをつげ平和が訪れる事を喜ぶ宴の中で嘘を言われた事に不満を抱く。
「うぅ~せっかく仲良くなったのに~。」
だが桃香も、それ以上は聞いてはいけない事だとわかるため聞こうとはしなかった。
だが納得はいってないらしく、華琳に対してプンスカと頬を膨らませる。
もう1人は遠くで華琳と桃香の事を見つめいている呉の王、雪蓮であった。
「まったく、何をやってるんだか。」
桃香の行動に呆れながらも、雪蓮も桃香と同じ気持ちであった。
「無理しちゃって、せっかくのお酒が不味くなるわ。」
王であり乱世の英雄と呼ばれた者同士、どこか通じるものがあるのだろう。
雪蓮は、母・孫堅と戦友・黄蓋が亡くなった時の自分と今の華琳を重ねていた。
そんな1人で酒を飲んでいた雪蓮に気付いたのか2人が近づいてきた。
「桃香、いい加減離れなさい。」
「いやですよ~、それにもし無理やり離したら華淋さんのおっぱいを揉みまくりますよ~。
そっちの方が嫌ですよね~。」
華琳が「はぁ」と溜息をもらす。
「あらあら、今度は桃香を恋人にしたの?モテモテじゃない。」
「いくら何でもそれはないわよ。」
「そうよね、華淋には本当に愛した人がいるものね。」
その瞬間、華淋の体が硬直し小刻みに震えだす。
「曹孟徳とあろう者が、これしきの事で動揺するなんてね・・・・・。」
「何の事かしら?」
雪蓮と華淋の間に張り詰めた空気が流れ、2人は睨み合う。
そんな2人をみて、オロオロとしだす桃香。
「あ・・・あの・・・・2人とも・・・・・・。」
意をけっしって桃香が口を開く。
「別に何でもないわよ桃香?胸もお尻も貧相なおこちゃま相手にイラつくはずないじゃい?」
「っふ、あの孫策が、そんな子供じみた挑発してくるなんてね。無駄に胸に栄養でも取られたのかしら?あまりにも馬鹿ね。話にならないわ。胸、垂れるわよ?」
「あら?貧相な子がよく言う事ね。馬鹿なのはどちらかしら?」
「え・・・・・えぇ!?なんでそうなるんですか!?」
2人の間には戦場にいるかのような殺気がたちこめる。
そんな2人を見ていた桃香が、
「せっかく仲良くなったのになんで・・・?うわぁ~~~~~ん!!」
酒も入ってか子供のように桃香がボロボロと泣き出す。
「「っ!?桃香どうしたの?よ?」」
あまりにも突然に泣き出した桃香に2人がそろって驚いたように桃香を見る。
そしてその桃香の様子を見ながら華淋と雪蓮は互いに顔を見合わせた。
「「っふ・・・。」」
その時だった、さっきとは打って変わって同時に華淋と雪蓮が肩を震わせお腹を抱えて笑い出した。
「「っふ、ふふふふ・・・・・ふははははあはははあははははは!!」」
まるで事前に打ち合わせでもしたかのようなタイミングと笑い声により、桃香は驚き泣くのをやめ、あっけにとられてしまう。
「・・・・・・・・・え?今度はどうしたんですか!?2人ともー!?」
華琳と雪蓮の笑い声と桃香のとまどいの声が夜空にこだまする。
それは、親友同士が単純に戯れているだけの声。
そこには悲しみも憎しみも何もない・・・。
この世界の誰もが望んだ幸せが、そこにあった。
琥珀の月が輝いていた夜、大切な人を亡くした夜・・・。
華琳は・・・・・・2人の親友(とも)を得た。
「もう~仲間はずれにしないでよ~~~!!」
第1章 完
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初投稿、自分自身の処女作品。誤字・脱字やキャラ崩壊が見られると思いますが、よろしくお願いします。勢いで書きました!!