~華琳視点~
戦場にはただ、静けさが広がっていた。
三国を覆すかもしれない脅威は、私たちの勝利で幕を閉じることとなった。つまり、この長い戦いが終わったのだ。私は、この戦いで、かつてないほど死を目の当たりにした。それは私も含んでのものだった。私は、正直、死を覚悟した。しかし、だ。そんな時、彼は来てくれた。私たちのもとに。
本当に・・・
私は彼のことを思う。一刀は、私たちのために、自らを鍛え上げ、私たちを命をかけて救ってくれたのだ。彼がいなかったら、私の命はなかったであろう。彼のそんな私たちへの思いに私の心は温かくなる。
そんなことを考えながら、私は彼がいるであろう城壁へと歩いていった。彼は、静まり返った戦場をどこか、さびしげにそう眺めていた。私の心がチクリといたむ。その表情は、彼が消えていった日の表情と似ていたから。彼がまた、消えてしまうのではないかという不安に襲われたから。
「こんなところでなにしているのよ?」
だから、私はそんな何事もなかったような、そんないつもと変わらない一言をいう。
「それはこっちのせりふだ、華琳。 今、会議中じゃないのか?」
私の言葉に振り向いた彼は、私の姿をみてそんなたわけたことを言っている。確かに、将は皆、戦いの後、これからの事を話し合うために会議を執り行っていた。しかし、その会議も今後の話となるとあまり、すすまなかったのだ。なぜなら、天の御使いの名をもつ彼がその場所にはいなかったから。
「それはあなたもでしょう。はぁ・・一番の立役者がこんなところでなにをやっているの?」
「いろいろ、あったなと思っていたところだ」
そうやって再び遠くを眺める一刀。ふいに、自分の知る一刀はもうそこにはいないのではないかという感覚にさえも襲われる。
「そうね・・いろいろとあったみたいね。 他の国の将とましてや、王とも真名で呼び合う仲になってるとはね。」
だから、私はそんな冗談めいたことをいって、ごまかす。
「いやいや、それは、まあ、いろいろあったにはいるけどさ・・・。」
そこはちゃんと、否定なさいよ。
「まぁ、あなたのことだから、そのくらい許してあげるわ」
「そのくらいって、どのくらいだ?」
「あなた、まさか・・・・・・してないわよね?」
「・・・・・?」
「フンッ」
「ぐほっ、 いやいやいや華琳様? なぜいきなり殴ったの?」
「うるさい。」
こんないつものやり取りが私にとってはうれしかった。そして、そんな一刀の姿に思わず、笑みがこぼれてしまう。だってそこには私が知っている一刀の姿があったから。
「一刀、あなたなら司馬懿をどうする?」
しばい、敵軍大将は最初の威勢もうそのように、勝敗が決した時、おとなしく私たちに捕まった。そして、私たちは彼をある天幕に、縄でその体をしばり、動けない状態にしていた。彼はただ一言、殺せと私たちにそう告げた。しかし、私たちは先ほどの会議では彼のことは決めることはできずにいた。 それは、第一に敵の大将の処遇を決めるほかに、いろいろ話し合わなければならなかったこと、第二に、一刀なしで決めていいのかという意見が上がったことであった。
「司馬懿・・・か」
一刀はその瞳を真面目なものに変える。
「華琳なら、どうする?」
「あら?私が聞いているのだけれど?」
「そうだな。 俺だったら、殺しはしない。」
二年前の彼だったら、そこに甘さがあったであろう。しかし今の彼のその言葉からは、その甘さは伝わってこなかった。それを私は素直にうれしく思う。
「なぜ、ときいても?」
「死罪にして何になる?この戦いで、たくさんの仲間がしんだ。その家族たちに、仇は俺たちがうちました。大将の首もしかとここにあります、司馬懿を殺せば、確かにそんなことがいえるだろう。しかし、そこから何が得られる?」
「少なくとも、その家族は仇の命が絶たれたことを喜ぶかもしれない。」
「そうかもしれない。でも、それじゃ、だめだと思うんだ。俺は、司馬懿がこの世界をその目で見、自分が奪ってきたものを確かめ、自分の罪を認めなければ、意味がないと思う。俺は司馬懿が死ぬことは許さない。」
そういった彼からでる一瞬の殺気に体がびくっとする。それは、今まで彼といて初めて感じたものであった。
「死ねば、なにもかもおわりだ。生きて、その命で、罪を償ってもらう。」
二年間。確かに彼とあっていない時間は二年という間だ。しかし、こう彼と話していると、二年という時間がとても短く思えてしょうがない。それほどまでに、私は一刀の成長に驚いていた。
「ねぇ、一刀・・・」
だからこそ、私はまじめに彼に聞く。
「もう、私の前から消えることはないわよね?」
ここにはもう覇王としての私はいなかった。ただ、あるがままの私がここにはいた。戦も終わったのだ。このくらい許されるであろう、私はそう思っていた。
「あの時、俺が消えてしまうとき、俺が言ったことおぼえているか?」
そんな私の雰囲気を察したのか、彼もこちらを向き、まじめに答えてくる。
「俺は君にこういった。役目を終えたから、俺は帰らなくちゃいけないと。」
「そうね。」
「そのときは、華琳。俺も思ったよ。俺の役目は華琳を大陸の覇王にすることだ。それがかなったんだ。俺は、消えなくちゃいけないと。」
「あら、その言い方では、あなたの役目は私を大陸の王にすることではなかったのかしら」
「それも、ある。けれど、俺にはもうひとつの役目が、いや望みがあるって気づいたんだ。」
「へぇ?」
「それは、」
そう一刀はいいながら、その手を私の頭にのせてくる。
「華琳、君やみんなとずっと一緒にいたいってことだ。」
そう彼は笑顔でそんなことを言った。そんな言葉と一緒に私の中にあったすべてのわだかまりが消えていくのを感じる。やっぱり、一刀は一刀、そんな思いが私の中で強くなる。だから、私は一刀を、そっと抱きしめた。
「華琳?」
「一刀。ありがとう。」
私は、そんな風に素直に、自分の言葉を伝える。それができたのはきっと、彼が彼の思いを私にそのまま伝えてくれたからなのであろう。
「華琳、これからも、よろしくな」
「ええ、もちろんよ。」
私は、やっと、心から笑えた気がした。
~一刀視点~
華琳との再会の会話も一区切りついたころ、俺たちは会議の席へと向かっていった。華琳がいうに、俺がいないとはじまらないという。
「ほら、みんな、一刀を連れてきたわよ。」
そう華琳はいいながら天幕の中へと入っていった。そうして、じいっと注がれる目線。
「え・・なんだよみんな。」
その目線に少し遅れをとるが、華琳が顔を赤くしながら、つないでいたその手をばっと離す。
「はぁ~、お兄さん。風はひどく傷ついたのですよ。ちょっといなくなっていたから心配していたのに、なんですか。それは。この年中盛っている種馬野朗が」
「いやいやいや、風?聞こえているからね?」
「ちっ」
風がそうぼそっとつぶやいたのだが、そのつぶやきは皆にも聞こえるような大きさだったのだ。 というか、何ですか・・この扱い?俺、けっこうがんばったような気がするんですが・・・ちょっとまたも感動の再会を期待した俺の思いは一瞬のうちに砕かれた。
「風、舌打ちしないの!」
「ちっ、です。」
「いやいや、ですをつけたところで、したうちには変わりないからね」
「貴様、華琳様に何をしていた!その、あれか!あれなのか!ええぃ答えろ!」
「いやいや、落ち着けって。春蘭!何もしていないから。というか、あれってなんだよ!」
「あれはあれだろうが!その、あれだよ。あれだ!なぁ、秋蘭」
春蘭があれあれとどたばた言っている。秋蘭は・・まぁいつものことなので言わないでおく。
「あら、春蘭。私が一刀とあれをして何か問題があるのかしら?」
「華琳様!!」
先ほどのことから冷静さを取り戻したのか華琳がそう追い討ちをかけてくる。春蘭はそんな華琳のことばにあわてふためいている。 秋蘭は・・・・もうどうだっていいや。
「いや?華琳・・・。 して、ないよね・・・?というか、あれってなんだよ」
ここまで皆からそういわれると、何もしていない自分が何かをしたように思えてくるので怖い。
「いや~、一刀。かえって、早速我らが王に手出すとは、根性ありまくりやないか。それもいいんやけど、うちのことも忘れんでくれな~」
「いや・・・だから何もしてないって。」
「あら、一刀。あれの意味わかっているじゃない?」
華琳、お前、本当にSだな。
正直なきそうになった。感動の再会がめちゃくちゃだった。
「もう、華琳ってば、だめよ。一人占めしちゃ。一刀のはもう私に注がれて私をいっぱい満たしているのだから」
そんな言葉に皆が静かになる。
・・・・は?なんだ、と?
俺はその爆弾発言に硬直する。その爆弾発言をした主は呉の王様、雪蓮だった。
「あの・・・雪蓮さん?」
ちょっと、それは冗談にしてはきついのではないでしょうか?ちょっと、感動の再会をしましょうよ。ちゃんと、俺なんか、いろいろ言葉を考えていたのに。もうやめてください。それに、なんか、魏の面子からただようオーラがさっきと一変しているんですけど・・・
「あら?覚えてないのかしら?冗談ではないわよ?」
人の心を読むのはやめてください。本当に心が折れそうです。
「ちょっと、一刀・・・あなた、どういうことかしら」
はいはい・・こうなることくらいわかってました。俺の前には華琳様が絶を構えて、覇気をにじみだしながら、俺に迫ってくる。
「はぁ~、雪蓮もそこまでにしてやれ」
そんなところで俺に助け舟を出してくれたのは、何を隠そう、呉の軍師冥琳だ。いいぞ、いいぞ冥琳!俺は、こんな状況でも助けてくれるそんな彼女を心より応援していた。俺の心には明かりが差し込み俺の将来はこれで助かった・・・・
そんな風に思ってたときもありました。
「あら?なに冥琳。 あなたも、一刀のでみたされているくせに」
「は?なにをいって・・・」
冥琳は何をふざけたことをという様子であったが、その言葉は最後まで続くことなく、雪蓮の言葉に顔を赤く染めてしまった。
え・・・・?どういうことですか、冥琳さん?俺何もシテイナイヨ?していないはずだ。きっとしていなかったような気がする。うん、多分していなかっちょうな・・・
「あら、孫策殿は受身でしたか。私は、私のを流し込みましたけど。」
えへっ、という面をしながら、とんでもない爆弾を投下してきたのは、貂蝉だった。
「おいおいおい。貂蝉、お前・・・」
「あら、貂蝉もなかなかやるわね。 私のことは雪蓮と呼んでいいわよ。」
「私は真名がないから、なんでも好きに呼んでください。 そういうゆきちゃんこそなかなかどうして。一刀のを受けきれるとはたいしたものね。」
いや、お二人方・・・?何はなしているのですか・・・そもそも貂蝉、お前この場になじみすぎだろ。というかゆきちゃんってなんだよ。ゆきちゃんって。
「そうね。大変だったわ。せんちゃん。」
いやいやいや。大変だったわとかいいながらおなかの辺りさするのはやめてください・・・まじで困ります。というかこっちもせんちゃん?ノリがよすぎるだろっ!というか机!机!霞お前、笑いすぎだっての。机、はたくのやめろ。壊れる。まじ、きしんでるから。
「か~ず~と~~」
そんな彼女たちの様子に華琳がこめかみをピキピキ言わせながらこちらに近づいてくる。
「ちょっと、待てって華琳。落ち着け。俺は無罪を主張する。」
「はいはい~。被告人北郷一刀。無罪を主張しています。」
「隊長・・・罪はちゃんと認めないと・・・」
いや、風さん?この状況はそんな楽しいものじゃないからね?それと、凪さん?なんで、そんな冷徹な目で俺をにらんでくるの?俺は無罪ダヨ?
「あら、それはなぜかしら?あなたの仕事が種馬であるからかしら?」
「被告人、北郷一刀、汝の無実を証明する材料は汝が種馬であるから。間違いはないですか~?」
「え・・・?そうなの?」
「自分で聞くんじゃないこの馬鹿!」
「あらら~。これほど無知だと、逆におそろしいのですよ~。無知が故の罪。なんて恐ろしいのでしょうか~。そのうち彼はそのふたつ名をいいことに、三国の将をその懐に抱え込んで、毎晩・・・うふふ、わはは、の展開を・・・」
「いや、しねーよ。」
とりあえず、風の口を押さえておいた。まぁ、宝譿を口につめこんでおいたから、問題はな・・い。
「あががが、お兄さん、 ほう、ほうけいを風の口につっこま・・・」
まぁ、突っ込むとき余計なことを言われたかもしれないが、少し怒っていた俺は華麗にスルー。
はぁ、まったくどうなってるんだよ。まず、稟さん。いいかげん鼻血とめようか。もうギャグを通り越して、迷惑レベルだから。あとで、ちゃんと血ふいとけよ。あっ、ここは天幕だから地面に血が飛び散っても関係ないのか・・・はぁ。
「ひぃぃぃい・・・」
いや、桂花。俺のほうをみながらマジでドン引きするのはやめてくれないか。俺は被害者だぞ。何もしてない何もしてない。
「ええやん。それでこそ隊長やで。」
「さっすが、隊長なのー。帰ってそうそう修羅場展開とかマジありえないのー。」
いや、こんな俺をさすがと呼ぶのはやめてほしい。というか、修羅場というより、みんな俺をいじめて楽しんでいるだけだろ。
「一刀殿、私のことも忘れてもらっては困ります。あの夜、ともにすごした仲ではありませぬか。」
「おおーーー。ここで、まさかの星ちゃんが乱入してきましたー。」
「なっ、星!私だって、その一刀殿と!」
いやいやいや、星さん?あの夜って、ただ話しただけだよね?って、また風。お前かよ。いい加減でかいほうけいをつくって、突っ込むぞ。それに愛紗さん?大切なところを言わないで口ごもるのは反則ではないでしょうか・・・?
「・・・・みんな、めっ。にぃにぃはみんなのもの」
「恋殿は優しいのですよー。 というか、恋どのにぃにぃとかよばせるとか本当に風はひいてしまうのですよ。マジひくわー、ですー。」
おいおい、俺が呼ばせたわけじゃないから。というより、風はいちいちつっこんで、状況を悪化させるのはやめろ。
「かずと、あなた覚悟はできているのかしら?」
・・は?覚悟ってなんだよ。いやいやいや・・・ちょっと・・まじでやばいよ。華琳さん・・ちょっと覇気が駄々漏れですよ?というか、雪蓮の奴、すみっこで腹抱えて笑ってるし。いや、地面をそんなはげしくたたいてんじゃねーよ。そんな面白くないよね?この状況・・・
「あ~、面白い。さすが一刀ね。 華琳も、王なんだから、そんなに覇気をだだもれにしないの」
俺が雪蓮のほうを向いたとき、やっと彼女が彼女の言葉の意味を説明する気になった。
「はぁ、まったく、だれのせいだと思っているのよ」
そんな雪蓮の言葉に、さすがにやりすぎたかと思った華琳は絶を俺の目の前から下げ、もといた場所へと戻っていった。
「それで?雪蓮?」
「えーっと、どこから話したらいいかわからないから言うけど、私、いえ、私たちは死にそうになったの」
「雪蓮、ちょっとそれでは、言葉が足りなさ過ぎると思うが」
「いいじゃない。要は私たちがもうしんでもおかしくない状況を一刀は命がけで、その気を使って助けてくれたのよ。そんなわけでね。私たちは一刀にいろいろとお世話になったのよ。」
そう雪蓮がいうと冥琳もその言葉にうなづく。
「へぇ。一刀、あなた。そんなことまでできるの?きいてなかったのだけれど?」
「そりゃ、話す時間がなかったしな。」
「まぁ、いいわ。誤解もとけたみたいだし。」
いや、よくねーよ。というか、俺は最初から無罪を主張してましたが・・・というか、蜀の面子は途中から俺に絶望のまなざしをむけていたぞ。ずっと軍師殿は震えていたし・・・
「さて・・と。」
華琳がそう一区切りつけるような言い方をし立ち上がると、天幕の今までの冗談めいた雰囲気が一転する。そこは王たちの覇気にみちていた。そんな雰囲気に周りの将たちもその姿勢を正す。
「これより、我らが王を迎える。」
そんな雰囲気の中、華琳が堂々とそう宣言した。
・・・・・え?あのーー。どういうことですか?多分この中でこんな間抜けた面をしているのは俺だけだけであろう。皆の目線がそんな俺に注がれる。
あれ・・・?俺、何かしました?というより、俺のほうじゃないか、俺の後ろは天幕の出入り口だしな。多分これから現れるのだろう。というより、我らが王ってだれだよ・・・この三国の王は、まぁ、三人いるけど、まとめ役みたいのは華琳じゃないのかよ・・・
俺はそう思いながら、皆様の視線に合わせて俺の後ろを見る。その手は新しい王に初めて会うためか緊張で汗ばんでいた。
ごくり。俺のつばを飲み込む音が天幕に響く。
「って、あなたよ!」
俺が後ろを見ながら、そんな緊張感に襲われていると、華琳が何かをこちらに投げてきた。
「いてっ」
「いてっ、じゃないわよ。なに、あなたはこの緊迫した状況を楽しんでいるのかしら?私たちは真面目なのだけれど。」
真面目?そんな言葉がいえた義理ですか・・・?まぁ、それはいい。よくわないが、目の前の重大な問題に比べればちっぽけなもんだ。
「天の御使い北郷一刀よ!。我、曹孟徳の名の下に告げる。この三国を統べる王となれ!」
そういった華琳の声からは冗談は感じられない。周りを見ても、皆が方膝をつき臣下の礼をとっている。だから俺も、真面目に答えなければならない。
「断る!!」
俺のそんな真面目な回答に、再び天幕は静寂に包まれた。
「・・・・は?」
だれもがそんな俺の回答に呆然としていた。そして、華琳からもそんな腑抜けた声が聞こえてきた。
「あなた、自分がどういう立場にいて、何を言っているのかわかっているのかしら?」
華琳はその冷静さを取り戻し、俺にそうきいてくる。
「ああ。確かに、俺は天の御使いという肩書きがある。そして、この三国同盟には、三国を一国のように束ねる存在が必要だということも知っている。今回の事件で、同盟であることの甘えが裏目に出た。そして、敵にはそこをつけこまれた。」
「そう、よくわかっているじゃないの。そこまでわかっているのなら、なぜ?」
「第一、華琳もしっているだろう。天の御使いというのは単なる肩書きであって、俺に王になる器はないよ。」
「あら、その肩書きですらも、本物にしてしまったのはどなたかしら?それに、王の器についてだけれど・・・」
そう聞こうとした華琳はさらにその覇気を強める。
「本当に貴方はそれがないといえるのかしら?」
だから、俺もそんな質問に真面目になって答える。
「ああ。ないさ。」
そうゆっくり答えた俺の覇気に華琳ですらも、体をびくっと震わせる。桃香は少し震えだし。隣にいる雪蓮はまるでそれを楽しんでいるかのように、その口元は笑っていた。
「へぇ。一刀。その覇気をみにつけながらもよくそんなことがいえるわね。」
「けれど、俺はそれが王の器を決めるとは思えない。桃香、雪蓮、華琳、三人とも幼きころより大志を抱き、遠くを眺め、それでいて現実を見ることも忘れず、皆の上に立ってきた。その重みをずっと君たちは背負ってきた。どんなにつらかろうが、君たちは王であることを決して捨てはしなかった。だけど、俺は、そんな君たちから逃げたんだ。」
そんな告白をみんなは馬鹿にせずに真面目に聞いている。
「だから、俺にはなれないよ。たとえ、みんながすすめてくれても、俺には、それをつかむ覚悟がないんだ。だからお断りします。」
「そう、それがあなたの意志というのであれば、そうなのでしょうね。」
華琳はまるで、俺の答えがうれしかったようにそんな風に軽く答えた。
「それでも、」
そういいながら華琳はその言葉を続ける。
「あなたにはそれなりの位置にはついてもらうはよ。そうね、三国同盟の象徴という存在になってもらうのがいいかしら。」
華琳はまるで、こちらが本命であったかのようにそう皆に促す。
「ええ、私たちは異議はないわよ。これで、一刀は魏のものだけではなくなるから」
そういう雪蓮は華琳のほうを見ながらにやっと笑う。
「はい。私たちもいいと思います。御使い様がこの三国の象徴となってくれるのであれば、みんなもうれしいと思います。」
桃香はそんな風に笑顔でそう答える。
「はぁ・・華琳。お前、元からこれが狙いだったんだろ?」
「あら?どうかしら?」
あいかわらず、彼女はSなままだった。
「そうだな。うん。」
俺はそういうと、服をただし、皆にちゃんと向き合い答える。
「この北郷一刀。その役目、ありがたく、引き受ける。」
俺のそんな声はその天幕の中に響きわたっていた。
皆様の希望にこたえまして、エピローグその1でした。いかがでしたでしょうか?
新たな外史を始める前に拠点でこの人がみたいなーという希望があったら、コメントによろしくお願いします。
なるべく、書いていきたいかな。
ではでは。
またーーー
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~貴方の笑顔のために~のエピローグです。よんでいってねー